花曇の朝を迎えた卯月の四日。桜の花咲く斑鳩の里を見下ろす信貴山に目覚めた朝は、 今日一日の空模様を眺めつつ 二日目の旅に思いを馳せる。 思えば最初にこの地を踏んだのは、三十四年の歳月をさかのぼる修学旅行の思い出。
それから九年後、二度目の 訪問からすでに二昔半。 その間京都に足を運ぶことは 有れど、ついに奈良まで は足を延ばすことはなかった。
三十四年前と二十五年前の 二度の印象が頭の中を廻り、 今この斑鳩の里は、変身した のか、否、しないのか。 楽しみの旅は始まる。
二度目の訪問の時、法隆寺から中宮寺を抜け、 レンゲの花咲く斑鳩の里を、お玉じゃくしと遊びながら一日歩き過ごしたあの道は、果たして有りや無しや。 と、古き記憶を呼び起こし、現代の地図に照らし合わせてみると、あの舗装の無き道も 今や車の往来で忙しいようだ。それを確かめる時間の無さは、私自身の体内時計が、 もうすでにあの昔の刻み方を忘れ、現代の時の流れに身を流されている証拠で有ろうか。 いにしえの 奈良の古刹の桜花 いやなつかしき三度の逢瀬