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個人民事再生手続とは |
借入金などの債務の返済ができなくなると、経済的に苦しい状況にある個人が、将来の給料などの収入によって、債務を分割して返済する計画を立て、債権者の意見などを聞いた上で、その計画を裁判所が認めれば、その計画にしたがった返済をすることによって、残債務が免除される手続をいいます。
保証人に迷惑をかけたくない、住宅ローンを約定どおりに支払えないが住宅を手放したくない人、そして、支払不能になっていないが約束どおりの支払ができない人等にとっては、自己破産の申立ては利用できないでいました。このような人たちに簡易・迅速な手続で、破産することなく経済生活の再生を図ることを目的として立法されたのが「個人再生手続」です。
個人民事再生手続には、小規模個人再生と給与所得者等再生手続の2種類があります。 |
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個人民事再生手続の利点等 |
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1 個人民事再生手続の利点 |
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 1.
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破産しなくて済む |
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2.
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住宅資金特別条項の利用により、自宅(住宅ローン支払い中を含む)を失うことなく生活再建を図ることができる |
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3.
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小規模個人再生の場合、債権者の同意要件が緩和されており、給与所得者等再生の場合には、債権者の同意が不要 |
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4.
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給与差押えストップが可能 |
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5.
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浪費・賭博が主たる原因の場合でも利用可能(→この場合、破産手続により免責を受けることは困難) |
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6.
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要件は、「支払不能のおそれ」で足りる(破産は支払不能であることが必要) |
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2 個人民事再生手続のデメリット |
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1.
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履行を怠れば、破産に移行するリスクがある |
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2.
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利用できる要件が厳格である |
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個人民事再生手続の概要 |
個人民事再生手続の概要 |
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 1.
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民事再生申立て
↓
(個人民事再生委員選任)
↓
手続開始に関する個人民事再生委員の意見書提出
↓
民事再生開始決定
↓
債権届出
↓
債権確定
↓
再生計画案の提出
↓
再生計画案の審議・議決
↓
再生計画案の認可
↓
弁済開始
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個人民事再生の要件(どんな人が手続きを利用できるのか) |
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1 個人債務者再生の基本要件
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・個人であること
・無担保の負債の総額が3,000万円以下であること
・月々1万7,000円以上の返済が可能であること |
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2 小規模個人再生に特有の要件 |
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→将来において継続的または反復して収入を得る見込み |
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3 給与所得者等再生に特有の要件
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→小規模個人のうち給与またはこれに類する定期的収入を得る見込みがあり、かつ変動の幅の小さいもの(年間で5分の1の変動幅であれば可能)。 |
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小規模個人再生に関する要件 |
将来において、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、かつ再生債権の総額が3,000万円を超えない個人債務者が利用の要件となります。
具体的にどのような方が利用できるのか。
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・飲食店、八百屋さんなど等小規模な個人自営事業者 |
・農業者、漁業者等 |
・年金生活者(生活保護者は不可) |
・現在失業中だが、再生計画提出までは就職が内定している |
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などなど広範囲に及びます
再生計画で定める弁済期は、再生計画認可の決定確定の日から原則3年間でなければならなりませんが、特別の事情があれば5年まで伸長することが可能です。
再生計画に基づく計画弁済総額は次の金額を下回ってはならないとされています。
基準債権の総額が
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100万円未満の場合……その全額 |
100万円以上500万円未満…100万円 |
500万円以上1,500万円未満…基準債権額の5分の1 |
1,500万円以上……300万円 |
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例えば1,500万円以上債務額があり、弁済額が300万円と決定されれば、残りの1,200万円の支払いは免除されるということです
再生計画案の可決要件は、再生計画に同意しない旨を書面で回答した議決権者が議決権者総数の半数に満ず、かつその議決権の数が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないことが必要です。
債権者数と債権額の双方の要件を満たさなくてはなりませんので、1人でも2分の1を超える大口債権者がいれば事前に事情を説明し、その内諾を受けておくほうがよいでしょう。当事務所では債権者の方々への事前の内諾交渉もしております。
再生計画認可の決定確定により再生手続きが終結するが、やむを得ない事由により再生計画を遂行するのが著しく困難になった場合は、再生計画で定められた最終期限から2年を超えない範囲でその期間を延長するよう再生計画変更の申立をすることができます。
それによっても再生計画の遂行が不可能となる場合、ハードシップ免責という手当てがなされています。
この申立は以下の要件を全て満たさなければなりません。
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1. 再生債務者がその責めに帰することのできない事由により、再生計画を遂行するのが極めて困難となった。 |
2. 一般的基準により変更された後の各基準債権に対し、その4分の3以上の弁済を終了している。 |
3. 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものではない。 |
4. 再生計画の変更をすることが極めて困難である。 |
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この手続きは後ほど述べる住宅資金特別条項を定めた再生債務者も申し立てることができるが、免責決定を得た場合でも抵当権者等には影響がないため、最終的には抵当権等の実行により、自宅を手放さなくてはならないことになるので注意が必要です。
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給与所得者等再生に関する要件 |
利用できる債務者は、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みのあるものであって、かつその額の変動の幅が小さいと見込まれる者」である。
給与所得者が主な対象者となることに違いはありませんが、全ての給与所得者が対象として申し立てられるものではなく、申立2年以内の年収が概ね年収ベースで5分の1以上の収入の変動があってはならないといえるでしょう。
また過去10年内に破産申立をして免責決定等を得ていたり、以下に説明する可処分所得に基づく最低弁済額要件があったりと、この手続を利用できない場合があります。
債権者の意見を聞いて裁判所は再生計画認可の決定をしますが、小規模個人再生と異なり、債権者の同意は必要ありません。
給与所得者等再生の一つのポイントです。
給与所得者の場合、小規模個人再生か給与所得者等再生かの選択が可能でありますが、上記のようにどちらの手続きを利用するかにより毎月の計画返済額が異なります。
当事務所において返済シミレーションを行います。
それをご覧いただき一緒に適切な手段を選択して返済計画を立てましょう。 |
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住宅ローン債権に関する要件 |
ご自宅を住宅ローンを借りてお建てになり、ご自宅にローンの金融機関が抵当権を設定している場合です。
住宅ローンのための抵当権以外の債務のための抵当権等の担保権が設定されている場合は利用できません。
抵当権の実行がされて競売手続きが開始されていても中止させることができます
・住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがあると裁判所が認めるときは、再生債務者の申立てにより住宅債権に基づく抵当権の実行としての競売手続きの中止を求めることができます。これにより、抵当権に基づく競売手続きが既に行なわれている場合でもその中止を求めることが可能となります。
《住宅資金特別条項の内容》 |
@期限の利益回復型 |
これは、再生計画認可決定までに遅滞していた元本・利息・損害金を一般債権の再生計画期間(原則3年)内に住宅ローンの約定元本と利息を合わせて支払っていくものです。 |
A最終弁済期延長型 |
これには要件があります。
1. |
期限の利益回復型と同じように、最後に分割払いをした後の残元本に対する、最後に分割払いをした日の翌日から次回の分割支払予定日までの約定利息及び次回の分各支払予定日から再生計画認可決定の確定日までの遅延損害金の全額を支払うこと。 |
2. |
住宅資金特別条項による変更後の最終弁済期が約定最終弁済期から10年を超えず、かつ変更後の最終弁済期における再生債務者の年齢が70歳を越えてはならない。 |
3. |
支払方法が概ね以前の住宅資金貸付契約と同程度であること。(弁済期と弁済期の間隔や弁済額等) |
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B元本据え置き型 |
一般債権者への再生計画遂行中(原則3年内)は住宅資金債権の元本を一部猶予してもらい、その後猶予されていた元本を期間延長等を利用して返済していくというものです。上記の要件が要求されます。 |
@ABの順に毎月の返済額は緩やかになっていきます。 |
C同意型 |
以上のような要件にとらわれず、債権者の同意を得られれば自由に住宅資金特別条項を定めることができます。 |
難しかったかもしれませんが、相談の際には住宅ローン関係の資料、収入、家計状況等をお教え下さい。
どの方法が適切かアドバイスいたします。 |
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個人民事再生の費用 |
1. 印紙(1万円)、予納郵券、予納金数万円(個人再生委員が選任されない場合)
2. 弁護士費用
着手金:40万円程度
報酬金:事件によって異なるので、弁護士と相談の上決する(概ね20万〜40万程度です)
破産手続きよりも長期にわたって弁護活動が必要になりますので、破産よりも弁護費用はやや高めになります。
この点は債務額、債権者数によって変動がありますので、当弁護士までよくご相談下さい。 |
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