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能装束について

  能装束を大別すると、着付類、上着類、袴類、帯類の四種類になります。代表的なものは次のとおりです。

1.着付類

   上衣の下に着ける装束です。

  • 摺箔(すりはく)

    女性の役専用の小袖で、たんに箔ともいい、無地の平絹に金箔か銀箔で露芝とか霞、星などの優しい模様が摺ってあります。

  • 白箔(しろはく)・白綾(しろあや)

    練り絹と綾絹で織った純白のもので、「鷺」や「翁」の着付けに用いられます。白色は位の高さを表します。

  • 縫箔(ぬいはく)

    唐織りに次ぐ豪華なもので、繻子地に箔を置き、絹色糸で刺繍を施してあります。模様は草花を中心に多岐にわたり、用途では女性の役の腰に巻く着付のほか、貴族・童子・子方などの着付に用いられます。

  • 熨斗目(のしめ)

    無地(紺・茶など)と段(藍または茶と白の段織)などの模様がある絹布の小袖で、男性用の一般着です。前者は僧侶や従者、老人などの役に用い、後者は身分の低い武士の役や、里人の着付としてもちいられます。

  • 厚板(あついた)

    文字通り厚い織物で、色合い・模様など種類の多い小袖です。色、模様によって、白・無地・色無し・色入り・段・紅白段・大格子・中格子・小格子などに区別されます。用途は多く、主として男性の着付のほか、荒神・鬼畜の類の役、また、年配の女性の上着にも用いられます。

2.上着類

    着付の上に着ける装束で、表衣として羽織ったり、被ったり、いろいろな用い方で役の身分を象徴します。

  • 唐織(からおり)

    金糸銀糸やさまざまな色糸を使い、草花など多種多様の文様を浮織にした小袖で、唐(中国)風の織物の意で、蜀江の錦織にならったものと言われています。能装束の中で、最も豪華で代表的なものです。主として、女性の役の上着として用いられますが、まれに、公達など男性用の着付にも使われます。(ただし、その場合は長絹、単法被を上に着ます。)

  厚板唐織は、厚板と唐織を複合して、厚板の地に唐織風の模様を浮織にしたものです。

  • 長絹(ちょうけん)

    絹の単衣(絽または紗)で広袖です。立襟で前身頃と後身頃の脇から下が離れていて、両胸と両袖に露と呼ばれる組み紐がつ いています。地色は、白・紫・緋・萌黄・水色など、いろいろあり、胸と背と両袖の前と後に金糸銀糸で花鳥模様が置かれています。

  主として、舞を舞う女性の上衣ですが、修羅能の公達が法被の代わりに用いることもあります。唐織と共に、能装束を代表するものです。

  • 舞衣(まいぎぬ)

    長絹とよく似ていますが、前後の見頃が脇で縫い合わされてある点、胸紐など露のない点などが異なります。また、女性の舞衣として着ることは同じですが、長絹のように羽織ったままにはしないで、坪折りまたは腰巻風に着ます。

  • 水衣(みずごろも)

    薄い絹布で作られた広袖の上着で、長襦袢に似て、丈は膝くらいまであります。色は、白・紫・茶・黒・紺・浅黄などですが、生、地、柄によって、しけ・縷・縞に区別されています。用途はきわめて広く、老人、男女、僧侶などの、日常着、労働着、旅行着などです。

  • 直垂(ひたたれ)

    麻・絹地の染柄物の袷で、総模様または黒地に裾模様の広袖です。上下揃いで、上は胸紐、袖紐(露)があり、武士の礼服として用います。下には込大口(こみおおくち)という大口袴をはき、必ず梨打烏帽子を被ります。略装で上だけを着る場合には「掛直

  垂」と言います。

  • 素袍(すおう)

    直垂と似ていますが、地は麻布で単衣です。武士の日常服として用いるほか、里人姿のワキや供人など一般男性の平服としても使います。

  • 狩衣(かりぎぬ)

    丸襟の広袖で、前後の見頃が離れていますが、羽織って前身はたくし上げて腰帯で結びます。袷と単衣の別があり、袷は金・襴・緞子に幾何学的な総柄や、飛模様を織り出した生地に裏がつき、大臣(おとど)・神体・天狗・鬼などの威厳ある強い役に、単

  衣は絽・紗などに金銀糸を織り込んだ模様があり、神主・老神などの役に用います。狩衣を着けるときには、必ず大口か半切(はんぎれ)をはきます。

  • 直衣(のうし)

    狩衣の単衣物とほぼ同じで、天皇・大臣といった役の貴人性を強調するため、まれに用いますが、必ず指貫(さしぬき)をはくことになっています。

  • 法被(はっぴ)

    狩衣と生地が共通の広袖で、金糸で華やかな模様が織ってあります。単衣と袷があり、単衣は肩脱ぎになって、平家の公達の武装に、袷は鬼畜・怨霊などの強い役柄のほかに、唐人などにも用い、また武将の鎧にも流用されます。

  • 側次(そばつぎ)

    袷法被と同形ですが、両袖がなく、武士の甲冑姿を表し唐人役にも用います。

3.袴類

   下半身に着ける装束のことで、大口はその代表的なものです。

  • 大口(おおくち)

  大口袴の略で、前側にひだがとってあり、後側は平たく堅く織られた正絹地の半袴です。両側に角張った特異な形をしています。白大口、緋大口、色大口、模様大口などの種類があり、武将・僧侶・女性などの位の高い役に用います。

  • 半切(はんぎれ)

  大口と同形ですが、地質が異なり金襴・緞子などに華やかな模様が織りだしてあります。修羅物の武将、鬼畜、荒神、怨霊などに法被と上下に用います。

  • 指貫(さしぬき)

    長い袴の裾に、紐が輪状に通してあり、それを膝の下までたくし上げて締め、袋のようにしてはきます。直衣や狩衣の下に使われる「翁」のほか、高貴な身分の役に用いられます。

4.帯類

  • 鬘帯(かづらおび)

    女性役の髪の上から、それをしっかりと抑えるように締め、背中に長く垂らす幅四センチ、長さ二メートルほどの細帯です。結び目のところを除き、金・銀箔を置き、植物などの刺繍がしてあり、女性の扮装には欠かせない装飾品となっています。

  • 鉢巻(はちまき)

    男性用で、紅・白があります。白は修羅能の後シテと、現在物の武士に用い、公達の場合は面の上から締めます。紅は原則として子方用、また金襴のものは貴人・童子・鬼神などに用いられます。

  • 腰帯(こしおび)

    狩衣、法被、水衣など上着の上から、また縫箔を腰巻にして着た場合に、男女ともに腰を締め、帯を重ねて結び前に垂らします。


(このページは、三省堂発行の「能の事典」から抜粋しました。) 


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