国立長野病院循環器科
これから心臓カテーテル検査やカテーテルによる治療を受ける人のために
最終更新日:平成18年6月4日
 
国立長野病院
 
これからは、先ほどとは縦の関係にある疑われた疾患別に見てみます。
[ 冠動脈病変 ]
1. 虚血性心疾患
簡単に言えば、急性心筋梗塞とは、冠動脈が血栓によりつまってしまうことです。狭心症とは、動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなったり、冠れん縮(スパスム)で冠動脈内径が、一過性に狭くなった病態です。先ほどの冠動脈造影で、冠動脈内径の状態を見ることにより、明らかとなります。あくまでも、血管内腔の変化から、血管壁の状況を間接的に観ています(投影像一所謂影絵です)ので、壁の状態を直接観るためには、血管内超音波検査等を併用しなければなりません。冠動脈造影はしばしば左室造影と対になって行われます。
2. 弁膜症
体表からの超音波検査で大凡のことは、わかりますので、その補強や手術するにあたって、より正確な情報を得るために行うと言うことになります。障害された弁前後の圧較差を調べたり、造影剤を注入して、逆流の程度を調べます。
3. 心筋症
筋肉が厚くなる肥大型心筋症と左室内腔が拡大し左室収縮力が低下する拡張型心筋症に大別されます。冠動脈に狭い所がないことを確認し、心筋生検を行い、心筋を顕微鏡で調べ病気を診断します。
4. 先天性心疾患
各部位での圧力(心内圧)や酸素濃度を測定したり、造影検査を必要な部位で行います。
5. 大動脈疾患
CTやMRIの発達した現在、造影検査の役割は少なくなりましたが、目的の大動脈造影にて調べます。
心臓カテーテル検査の実際について
内服薬について
検査施行当日の薬ですが、不整脈の検査ならば、頻拍発作を起こさなければなりませんので、不整脈の薬は前日から止めて頂きます。ワーファリン等の抗凝固薬は続けても構いませんが、当日どのくらい効いているか採血して調べます。抗血小板薬は飲みつづけて構いません。詳細は主治医の指示に従って内服を決めて下さい。
食事について;検査直前の食事はとりません。

血管確保
点滴を検査に行く前にします。右手からの検査なら、左手から点滴します。

尿道留置カテーテル
検査時間が長くなる場合は尿の管を挿入します。主治医が説明しますが、希望を言って下さい。

カテーテル挿入部位について
まず、カテーテルを太股や左右の手首や肘又は肩の下又は首から体内に挿入します。この時、挿入部位は局所麻酔(歯の治療をする時の痛み止めと思って下さい)をしますので痛くありません。太股から行う場合には、剃毛が必要です。

検査中について
管が血管の中に入ると痛くありません。多量の造影剤を注入する場合には、”カー”と熱い感じがします。カテーテルが物理的に心臓を刺激すると”ドキドキ”と感じます。検査時間は、カテーテル検査の内容にもよりますが、30分から2時間程度です。

検査後について
カテーテル検査室から病室に帰ったら、水分は飲んで結構です。吐き気がなければ、食事を摂っても構いません。使用した管の太さにもよりますが、右太股の安静時間は4時間程度です。左足は動かしても構いません。4時間経ったら、点滴と尿の管を抜いて、起立、歩行して頂きます。手首から行った場合には、手首の安静は、4時間保ちますが、すぐに歩行できると言う利点もあります。

合併症、危険性について
管を挿入する部位、大動脈や冠動脈の内側(内膜といいます)を傷つけるー医学用語で解離と言います。大動脈解離は、現在までの7070例中2例に、冠動脈解離は小さなものまで含めると10例に生じています。穿刺部位の出血は時々認めます。手からの場合には、首の血管の近くを通るので大動脈内粥腫や管の中に出来た血栓が頭に飛んで脳梗塞を生じた方が1例ありました。心室細動のような危険な不整脈を生じ、電気ショックを行った方が6例、心筋生検や硬いカテーテルを使うことにより心筋外心嚢腔内に血液が出てしまうことが数例でありました。ひどい場合には心タンポナーデと呼ばれますが、心嚢穿刺といって針を刺し、血液を取り除きます。当院ではありませんが、造影剤のアレルギー、ショック、急性腎不全も生じえます。手首の血管が触れにくくなる事もあります。首や鎖骨下から管を挿入する場合には、気胸になることもあります。
 
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