国立長野病院循環器科
これからカテーテルアブレーションを受ける人のために
最終更新日:平成16年4月11日
 
国立長野病院
 
 
「ある初冬の午後に」
以下の文章を医療関係者に見せたら、衆人環視には曝さない方がよいと言われた。しかしながら、敢えて、記述する事とする。
外来が終わって、14 時頃に病棟で患者さんの翌日の指示を書いていると、副婦長の「先生、先生! ちょっと来て、ちょっと来て!」とのDoctor call(言葉は正確には覚えていない)に呼ばれて、病室に行ってみると、2年目の看護婦が患者さんに心マッサージをしている。診ると、意識がなく、呼吸も心臓も止まっている。最初に、どういう患者さんかと聞くと、「心筋梗塞で数日前にHCUから来た」との答えが返って来た。ああ、あの患者さんか、”数日前に心筋梗塞発症24時間以上経過していたが、冠動脈にステントを入れたが、ステント挿入中に心室細動となり、直流除細動器にて除細動された患者さんか”と頭の中に記憶が蘇った。「モニター、モニター、アンビューバッグ、ライン、ライン」言った言葉は正確には覚えていないが、兎に角、そんな言葉を言った様な気がする。ベッドサイドモニターが来るまで非常に長いと感じた。アンビューバッグはすぐにあった?(来た)ので、兎に角、マッサージとアンビューバッグで5:1の割合で心肺蘇生を開始した。この時、2年目の看護婦に聞いてみた。「どうしたらいいか?」と。答えは、解っているのだけれど。答えは返って来なかったが、私自身の答えは決まっていた。心停止が、ECGにてStandstill(俗に言う波形がフラット)ならば、心マッサージしか治療方法がないが、心室細動なら、脳循環保持のためにはマッサージは有効だが、心臓には効果がない。直流除細動しか助かる道はない。モニターが来て、心室細動を確認し、今度は、「DC, DC」。(最初に、何故、DCとも一緒に叫ばなかったか、私自身反省している)DCがくるまで少し時間がかかり、DC 200Jにて、ECG波形はフラットへ。マッサージを続けると洞調律が出現し、血圧も呼吸も回復した。頭の後遺症が無かった事に、胸をなぜおろした。その後、キシロカインの持続投与にもかかわらず、心室細動が頻回出現するため、集中治療室に転室し、管理を行った。少し、落ち着いた時点で、看護婦諸君に聞いてみた。「旧東信病院なら死んでいるね?」。「私もそう思う」。とある看護婦。「どうしてですか?」。と1年目の看護婦。理由をよく説明したが、納得した様子。こんな貴重な現場に若い研修医が病棟にいなかったのが残念だが(循環器科には研修医がいない)、この様な経験を積んで、看護婦も医者も一人前に大きく育って頂きたいと思い、筆を執った次第である。
新病院は、着実に進歩、向上している。これに、小生が少しでも貢献できれば、幸甚である。(1月/1998)
 

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