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 『休みの日は、いつでもバイト日和』
 
 
「で、どーすんのよ。やっぱバイト?」
 さも投げ槍に言うリラ。ちら、と左右に視線を振る。
 右側では、何やら神妙な顔つきの若葉が。
 左側には、珍しく上機嫌な表情を浮かべたウェンディが居る。
 どうやら思った以上に部屋の模様替えが順調にいったのだろう。
 尤も、その分あとの苦労が思いやられるのだが……。
 視線を元に戻せば……悠也と、側でぱたぱた浮いているフィリー。
「げー、またあのバイト親父の世話になるの?」
「やっぱそうなるんだろう……なぁ」
 心底イヤそうな声で抗議するフィリーに、応える悠也。
 まあ、アンタはバイト親父の顔を見るだけだからまだマシよ、とリラは心の中でこっそり舌を出しておいた。
「でも、この街は大きいですから。
 いろんなところに行けそうですよね」
「私は……静かなバイトなら」
 若葉とウェンディが、それぞれ感想(らしきもの)を述べた。
 何だかんだ言って、2人ともそれなりにバイトは得意であるし、リラに至っては言うまでも無い。
「そーねえ、こんなこともあろうかと思って、ツェンバルンのバイト先、幾つか見繕っておいたんだけどさ」
「おっ、さすがリラ! 頼りになるなぁ」
「ホントは、遊びに行けそうな場所をって調べたんだけどね。
 これってやっぱ、誰かさんのせいー?」
「うう、はいはい。俺が悪かったっす……」
「分かればよろしい。
 じゃ、後は任せるから、よろしくね悠也?」
「げッ……」
 しまった、と思っても後の祭りである。
 しかも、リラはさっさと逃げを決め込み、アテにできない……というより、アテにするとどつかれそうな気もする。とりあえず、悠也は彼女からバイト先(になりそうな観光スポット)をリストアップした紙を受け取り、しげしげと眺めた。
「ふーん、やっぱ結構あるのね。
 アクセサリ店、でっかい病院、動物園、劇場、ハイパーゲーセン、遊園地、メロディランド、街路……。どうして、遊園地とメロディランドが同じ街にあるわけ? バグってんじゃないの、これ?」
「それだけ、この街が大きいってコトだろ。流石は大都ってとこだな」
「そんなもんかしら……」
 ひょい、と脇からペーパーを覗きこんだフィリーに応えつつ、しばし考え込む悠也。リラがアテにならない以上、若葉かウェンディか……。悩ましいところだ。
 どういうワケだか、この世界、バイトに就く者は2人1組でなければならないという風習がある。何でも、電子の神が0と1の2つを組にして1バイトと読んだのが起源とか言う、とてつもなく怪しい伝説をロクサーヌから聞いたような気がするのだが……。
(やっぱアレだなあ。稼ぎからいけば絶対メロディランドだよなぁ。
 でっかい病院で看護婦さんするウェンディとか、ハイパーゲーセンでブイブイ言わすリラとか、街路でビラ配りする若葉ってのも捨て難いんだけど……)
 さんざん迷ったあげく、悠也は一つの決意を胸に口を開いた。
「ウェンディ」
「嫌です」
「ま、まだ何も言ってないのに……」
「どうせ、私が静かなバイト先がいいって言ってるのを無視して、劇場とかゲーセンとか動物園とか、賑やかなところに連れ込むつもりなんでしょう、悠也さん。
 そうですよね、私なんか、賑やかな場所の隅で暗くどんよりしてるのがお似合いなんです。それで悠也さんは、そんな私を見世物にして見ず知らずの通行人からたんまりお捻りをもらうつもりなんだわ……」
「…………」
 ある意味ぶっとんでいるウェンディの思考に、さすがに面食らう悠也。
 これが無ければ、いいコなのになぁ……と思いつつ、しかしちゃんと用意してあった対抗策を取り出す。
「でもウェンディ。行きたいだろ、メロディランド?」
「……」
 ぴく、とエビを連想させるウェンディの後ろ髪が跳ねた。
 何だかんだ言って、彼女も女のコである。特にいかついヤンキー系ではなく、無邪気な子供の集まる遊園地やメロディランドなら苦手でない事を、ちゃんと悠也は把握しているのであった。
 ちなみに彼女の場合、動物園で働くのは無頼のおさかな好きが許さないらしい……という事情もチェック済みである。
「で、でも私……」
「大丈夫だって。俺は着ぐるみのぬいぐるみで、ウェンディは子供たちに風船をあげるお姉さんだ。見世物になるのは俺なんだから、安心していいよ」
「そ、そうですか……」
 少し、ほっとしたような顔を見せるウェンディ。
 それを確認して、悠也は席から立ちあがった。バイトをするなら、例のバイト親父に話を通さなくてはならないからだ。これを怠った場合……。
「貴方は二度と、元の世界に帰ることができないでしょう。
 いえ、それ以上の災いに見舞われるかも知れませんよ」
 と、ロクサーヌに散々脅されている。
 いつもの軽い冗談かと思いきや、この時のロクサーヌの声があまりにも真剣であったため、何となく忠告を守っている悠也だった。
「あのう、メロディランドでしたら、わたしを誘って頂いてもよろしかったのに……」
「若葉……」
 アンタを連れてくと、絶対迷子センターのお世話になって稼ぎが落ちるんだから……と言いかけて、ぐっと言葉を飲み込むリラ。その代わり、ぽんと彼女の肩を叩いたのであった……。
 
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
 
 翌日。
 空は無意味にどこまでも蒼く晴れ渡っていた。
 しかも上手い具合に何かの休日に当たったらしく、人出も多い。バイト料もそれなりに見込めるというものであろう。
「さー、いらっしゃいらっしゃ〜い!
 電撃戦隊エタレンジャーショーの会場はあちらになりまーす」
「よ、ようこそメロディランドへ!
 あ、こ、これプレゼントですからっ」
 威勢良く声を上げる悠也と、その影に隠れながら風船配りのお姉さんを務めるウェンディ。保護者など、比較的高い年齢層の客を彼が引き受け、その隙にウェンディが、子供たちにイルカを型取った風船を渡すと言う組み合わせは、予想以上に効果を上げているようだった。
(ウェンディもまた少し自信つけたみたいだし……。これもまぁ、災い転じて何とやらかな。にしても……)
 ふと、着ぐるみの中に居る自分を見つめなおしてしまう悠也。
 彼の外見は、東京ねずみや電気ねずみといった生易しいシロモノではなかった。有り体に言えば、テニスボールにスマイリーな表情を付け、電極のようにひょろひょろした手とSDな足(というか、靴)が申しわけ程度についていると言う、謎の生命体なのである。
(前にティナがこれと同じデザインの縫いぐるみを持っていたような気がするなぁ……戦闘に勝った後だから、聞きそびれちまったけど)
 悠也は知らなかったが、それは彼女の手作りなのである。
 しかし、どういう効果を持った物なのかは……パーティの誰に聞いても教えてもらえなかった。
「悠也さん」
「は、はい何でしょうかお客さま?」
「ふーん、ちゃんとバイト頑張ってるのね」
「あったりまえじゃない。財布スられたんだもの、これくらい当然よ当然」
「えっと……」
 どう対処したものか、困ったような表情をウェンディが向けてくる。
 考え事に没頭していて、ついつい接客言葉を口にしたのがマズかったというところだろうか。
「若葉、フィリー。それにリラも」
「せっかくだから、遊びに来てやったわよ」
 ぷいーん、と気ままに飛びながらフィリーが言う。
 しかしまぁ……辛い立場のリーダーとしては、ぼやきたくなる状況なのは間違いない。
「だったら手伝ってくれてもいいのに……」
「あっまーい! ちゃんと入場料はアンタのバイト代から天引きってコトにしてあるから、サボるんじゃないわよ!」
「あの、天引きって、紐はどこにあったんでしょう?」
「がくッ」
 リラが調子よく悠也をやりこめた瞬間、不意打ちで若葉のボケを喰らってコケる。これも割に、よくあるパターンだ。
「ま、まぁ楽しんでいってくれよ。
 どうせ、フリーパスにしたんだろ、リラ?」
「へへー、分かってんじゃん」
「ところで、その紐は?」
「そーねえ……天引きってやつかな」
「あ、これが天引きの紐なんですね」
 しかし……良く見ると、若葉の着物の飾り肩紐に丈夫そうな麻紐が結んで
あって、反対側の先はリラの手中にある。これを見た瞬間、悠也はリラと若葉が迷わず自分たちを発見できた理由を暗黙のうちに悟った。
「結構、苦労してるんだなリラも」
「ま、アンタほどじゃないつもりだけど。せいぜいガンバんなさいよ?」
「ああ、ありがとな」
 にこやかな笑顔で手を振りつつ、若葉を引っ張りながらリラは去っていった。
 とんだ陣中見舞いになったものだ……と苦笑しつつ、それを見送る悠也。確か、あっちは中央ガーデン前広場になっているはずだ。
「ねえ」
「はい、何でしょうかお客さま」
「中央ガーデン前広場って、どっち?」
「あ、それならこの奥の方に……って、げげッ、レミット?」
「しっつれえな奴ぅ〜! レディに向かってげげッ、ってばどういうつもり?」
 その直後。
 およそバイトというシーンにおいて最もタチの悪い……もとい、厄介な相手に悠也は出くわしてしまった。バイト現場の小悪魔、いや、破壊神と呼んでさしつかえないであろう! 誰をか云わんや、名をレミット・マリエーナと呼ぶ。
「いや、すまん。小さいんで見えなかった」
「む、むかむか〜!」
 しかして。
 小さな姫さま暴走の原因が、何気ない自分の一言であると自覚しつつも、ついつい禁句を言ってしまう悠也であった。傍らでは、既に惨事を予測したか、せめて風船だけでも守ろうとウェンディがいそいそ片付けを始めている。
「ふんだ。そんなセコいバイトなんか、邪魔してやらないもん、バカ!」
「へっ……?」
「悠也は大人しくあたしの質問に答えればいいの!」
「は、はぁ……」
 そういえば、いつもレミットがバイト等々の邪魔しに来る時、悲鳴を上げるべき人物が見当たらない……。
「中央ガーデン前広場は、あっちだけどな。
 そういえば、アイリスさんは?」
「いないもん。見てわかんないの、バカ!」
 居ないのは見れば分かる。
 しかし、代わりにアルザとキャラット、ティナまで居るのはよく分からない。
「あのなぁ、悠也はん」
「あ、それ内緒なんだから! ぎゃふんって言わせてやるんだから!」
「そうだね、絶対優勝しなくちゃ! だもんね」
「ミスコンテスト……私でも、大丈夫でしょうか?」
 言ってから、しまった、と言う風に口元に指を添えるティナ。
 ええっと……、と小さく微笑んでみるものの、流石に後の祭りである。
「ミスコンテスト……マジで?」
「そうよ」
「本気か?」
「本気に決まってるもん!」
「ガキンチョなのに?」
「ううー、それだけは、許さなーむがむが……」
 顔を真っ赤にして怒りかけたレミットを、がば、と押さえるキャラット。
 彼女の素早い対応がなければ、今頃この場は阿鼻叫喚の地獄絵図……はおおげさにしても、とんでもない事態になっていたに違いない。
「ほ、ほらほらレミット。
 早く行かないと、申し込み終わっちゃうよ?」
「むーむーむー」
「ええっと……そういうわけなんです」
「ほな、またなぁ悠也はん!」
 すたこらさっさ、と駆け去るアルザとキャラットを、ふらふらと追いかけるティナ。もちろん、向かう先は中央ガーデン前広場である。
「そういえば……リラさんたちも、あっちに向かいましたよね?」
「そうだな……ってまさか! 追いかけるぞウェンディ!」
「え、でも……」
「いや、このまま野放しにはできない! あのリラとレミットが、同じタイトルを賭けて争ったら、絶対に周りが無事で済むはずがないんだ。そう思うだろ?」
「あの、私……」
「いいから!」
 焦るあまり、強引にウェンディの手を掴んで走り出す悠也。
 この着ぐるみのデザインで、どうやって手を掴み、どうやって走っているのか。考えようとして、ウェンディはあっさりとその努力を放棄した。
「どうしよう、風船……」
 
(次回に続く)
 
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
 
(中書き・2)
 
久しぶりに書き始めたら筆が止まらなくなって、泣く泣くカイルパーティ
の登場は見合わせました。まぁ、書かない方が次、書きやすいよね?(笑)
 
(あと、ゲーム遊びなおしてる暇が無いので……という理由があるかな?
 私もキャラの歪みがちと心配だー。アルザなんか挨拶だけだし^^;
 昔だったら絶対、ティナにボケ役振ったりしなかったよなぁ)
 
 
今回、私にしては珍しく、何故かウェンディがメインキャラです。
むぅ、もしかして私、ウェンディに目覚めてしまった?<をい^^;
本当は姫さまメインで遊ぼうと思ったのに……(笑)。
 
とりあえず、伏線としてはアイリスさんの動向と、カイルパーティの行動
ですね。あとは、ミスコンの内容かなぁ。
 
……そう。
ネタはベタなバイトから、ちょーベタベタのミスコンへと発展しそうな
気配です。とりあえず、悠也パーティは若葉とウェンディ。レミットん
とこは姫さま(笑)とティナが出るかな? と勝手に予想してますけど、
いっそ全員出してみるとか……(笑)。
 
 
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