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STAGE 08 暗闇から目覚める光よ | 〜Yang−Yun〜 |
「・・・・・・」 ティナだけはなぜか目を覚まさなかったため、一同はそのままフォインの家まで行くことになった。「話がある」と言っただけあって楊雲も皆に同行したのだが、そのためひどく気まずく重苦しい沈黙が部屋の中に満ちることになった。 外に出ると、周囲は真っ暗闇だった。月も星も分厚い雲に覆われ、一筋の光も見えはしない。街の光も届かぬこの山の上は、それこそ鼻をつままれてもわからないほどの暗闇に包まれていたといっていいだろう。であるにもかかわらず、先に立って歩く楊雲の姿だけははっきりとわかった。「見えた」わけではない。「わかった」のだ。 |
「・・・・・?」 その後はとんとん拍子だった。 魔宝さえ全部揃えてしまえば、後はもうどうということもなかった。魔宝が再び世界中に散っていることから予想はしてたけど、イルム・ザーンの結界や守護者も復活してはいた。しかし復活した守護者なんて、今まで戦ってきた皆の足下にも及ばなかった。1人で容易く蹴散らせたくらいだ。 暁の女神も、ここまでたどり着いた私の願いを断ったりはしなかった。 もう一度会えるとはこれっぽっちも思ってなかっただろう私を見たあいつは、それはもう驚いた。けれどすぐに、あの懐かしい笑顔で、私を迎えてくれた。 そして私達は一緒に暮らすことになった。 …本当に? 脳裏にふと疑問の声が過ぎる。 あいつの住む世界。 あいつはそれでも根気よく私に付き合ってはくれた。 そうして、しばらくして。 待って、待って。ずっと待ったけど、あいつは帰ってこなかった。 「帰りたい…」 |
「あ…あああ…ああああ!! 嫌…嫌あああっ!!」 「ひっ…姫さま!? 姫さまっ!!」 楊雲に見つめられた途端頭を抱えて叫び始めたレミットを見、アイリスが血相を変える。 「楊雲さんっ! 姫さまに、姫さまに一体何をしたんです!?」 楊雲は小さく頭を振った。 「私がしたのは…お手伝いだけです…。 レミットさんの心の中にある不安…レミットさん自身、それがあることに気づいていながら、目を逸らしていたもの…。 それに、目を向けるお手伝いを…」 「そんな…姫さま!」 楊雲にくってかかっていたアイリスがレミットに目を向ける。楊雲も静かに視線を巡らせた。 レミットは未だ頭を抱え、目を見開き、言葉にもならない叫びを上げ続けている。 「レミットさんが見たものは、幻覚でしかありません…。 ですが、その幻覚は、レミットさん自身が恐れ、心の中に封じていた不安そのもの。 どのみち、打ち勝たなければレミットさんの旅もこれで終わりです…。 もし、自分自身の不安に潰されるようなことがあれば…レミットさんは…。 そこまで弱い人ではないと、私は信じますが」 『かなりの荒療治になりますが…。貴女でしたら、壊れたりはしないと信じます…』 楊雲が戦いを始める前にレミットに言った言葉の意味を、ここに来てアイリスは悟った。 人間は誰も、自分の心の中に、直視したくない部分を持っている。 普段はそれを心の奥に追いやったり、何かで蓋をしたりして、自分の心と自分自身を守っている。 楊雲はそれを暴いたのだ。 ただ、レミットが目をそむけていたそれは、彼女がこの旅を続けることさえ諦めれば問題ではなくなる。こちらの世界では、彼女には、キャラットが、若葉が、そしてアイリスが、それにほかのみんなが一緒にいてくれる。 受け容れられない不安、1人になる不安、見知らぬ世界に放り出される不安、得たものを失う不安。 別の世界に行くなどと言うことさえ止めれば、そんな不安とは縁がなくなる。 しかしそれでもなお、レミットが固執したのなら。 この不安を乗り越えるしかない。それができないのなら…、「壊れる」ことさえあり得る。 「楊雲さん! もう、もう止めてあげて下さい、このままでは姫さまが…っ!」 アイリスが楊雲にすがる。しかし、楊雲は静かに首を振った。 「ここで幻覚を見せるのを止めることは簡単です…。 けれど、もし、レミットさんがこの不安をなおざりにしたまま、彼のいる世界に行ったりしたら…。 今度レミットさんを襲うのは、幻覚ではなく、厳然たる現実なのですよ…」 「でも…姫さま…っ!」 |
・・・・・・。 …だって、好きになったから。 好き? どうして。 そんなのわからないし、別にわからなくたっていい。 顔を上げる。 これは私の迷い。弱さ。 例えこの先何があったって。 思いがそこまで至ると、胸の裡から淡く微かで、しかし確かな光が生じた。 |
「…それでこそです、レミットさん」 〈To be continued...〉 |
STAGE8 あとがき …ときに、今回の幻覚シーン。打ち切りのためのマキかと思った人、いました? |
STAGE 9 “想いと野望と” & Epilogue LAST ENERMY Cail−Ishbahn Unknown |