上伊那地形写真集
上伊那郡教育会編
矢島忠三郎撮影
1951
これほど貴重な記録写真集が廃棄処分(つまり捨てられていた)
になっていることに耐えかね、敢えて公開することにしました。
「伊那谷南望。辰野駅北方の高地より南を望む。(昭和11年5月1日撮)」と説明書きがあります。
実際は2枚別々の写真ですが、こちらでつなげました。
下の写真と比べると、
山肌の鮮明さに驚異すら覚えます

2004,11,27 辰野町の大城山(おおじょうやま)山頂から。
上の写真より少し標高が高く、しかも少し東の地点ですね。
谷いっぱいに家が建ってしまいました。

「中央アルプス(木曽山脈)北部。箕輪村東方の山上より西望。(昭和11年4月21日撮)」
ほぼ中央が経ヶ岳。扇状地の山側、黒っぽいところは未開墾の原生林です。
里の平地にもこんなに原生林があったんですね。

「南アルプス(赤石山脈)天竜川三峯川の合流。西春近村小出西方の山上より東望
(昭和11年1月12日撮)」
右の写真はどうもネガの傷、破れのようで、惜しい写真です。
画面上ではわかりにくいかもしれませんが、70年前の空気の清浄さはまさに驚異です。

「富県小学校東南方の山上より西北望(昭和10年12月13日撮)」
左方に雲をいただいているのは西駒岳主峰、右方は経ヶ岳。
中央を流れるのは天竜川。右の集落は伊那町です。
これだけしか家がないのに、きれいに田畑が広がっています。

「伊那村学校東方の山上より西望(昭和11年4月17日撮)」
中央の大田切川の扇状地でできたことを説明しています。
右が宮田村、左が赤穂町。
この雪の多さはなんでしょう。左端の烏帽子ヶ岳の中腹までしっかり
雪が見えますので、これはまるで現代の3月の風景です。

「南向村陣馬形山上より西望(昭和10年12月25日撮)
正面が空木岳、南駒岳、右方に白きは西駒主峰。真下は
飯島村、右が赤穂村、左は七久保村。」
現在のように車道がない当時、この陣馬形山まで大きな
カメラを持ち上げた人に万歳!

「宮田村駒ヶ根キャンプ場より東望(昭和10年12月9日撮)
左方より東駒岳、仙丈岳、北岳、間岳、農鳥岳、やや離れて塩見岳、
荒川岳、赤石岳の山々。前衛の伊那山脈の山ひだが鮮やかである。
中央は大田切川である。」
陣馬形山以上にここは高いのでこの景観はすごいですね。
この写真集の1枚1枚は非常に鮮明に写っていて、撮影とプリントの
技術の高さが伺えます。管理人のスキャナーで最高画質でスキャンすると
家の一軒一軒がわかるほどキメが細かいものもあります。
その驚異的な鮮明さがここではお伝えできなくて残念です。

昭和10年というと70年前ですが、空を汚すものは何もなかった
時代ですから、空気はさぞ澄んでいたことでしょう。
かつての日本に、そんな時代が確かにあったことだけは
忘れないでいたいです。

                                     

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