鋸岳(南ア)縦走 2005,8,3

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鋸岳は南アルプス最北端に位置し、上級者向きの難所の多い山です。2005年7月発行の昭文社のルートマップ、「北岳・甲斐駒」によると、特に難所だった鹿ノ窓ルンゼ他の数ヶ所に近年鎖が付けられた、とあります。

これなら、私のようないわゆる本格的な岩登りの経験がない者にも行けるかもしれないと思い、この夏、挑戦しました。私はハーケンを打ったことはないですが、懸垂下降はできるという程度の経験者です。

写真は双児山から見た稜線です。
長谷村の仙流荘を6時25分に出た臨時バスは55分で北沢峠に着きました。運転手さんが道中でいろいろな話をして下さり、退屈はしません。峠を7時20分に登り始めました。

今日は双児山コースで登ることにしました。双児から鋸岳の稜線を見るためです。仙水峠方面にはたくさんの人が行きましたが、こちらは2人だけでした。

左の写真は駒津峰から甲斐駒ヶ岳。仙水峠から続々と登ってこられました。
11時30分、甲斐駒ケ岳の山頂。もうガスってきて、遠望は楽しめませんでした。どうも山にはめぐり合わせというものがあり、この甲斐駒ではまだ一度も遠望を楽しんだことがありません。

まあ、今日は通過するだけですのでいいのですが。
甲斐駒には、鋸方面を示す看板が1枚だけ、地面に転がっていました。歩き出すといきなり迷いました。踏み跡がたくさんあるのに、マークがないので注意しましょう。

5分ほど歩くと、石にテープを巻いたものや、木にテープを巻いたものが頻繁に出てきます。これなら迷いません。
ガスの中、時たまルートを見失うことがありました。広い尾根に来た時は注意して下さい。でも天気がいいときはまったく問題ないと思います。

砂礫の道を下っていくと、ガイドブックにも出ていた古い針金が出てきました。写真は通過してふりかえって見た絵です。ですから右が信州側です。特に怖くも難しくもありません。針金などつかまらずに行けます。
鎖場です。下ってから見上げた絵ですが、傾斜はゆるく、特に鎖をつかまなくても下れました。正面の鎖より右側に手がかりがたくさんあります。

岩室までは鎖場はここだけです。あとはなんということもない下り斜面でした。花が少なくて寂しい気がしました。
鎖場からは赤マークがやたらに増えてきます。しかもわりと新しい感じですので、今年つけたのかもしれません。
岩室です。甲斐駒からちょうど1時間でした。稜線から50mほど信州側に下った、岩塊斜面の中にあります。壁の部分は花崗岩を現地で切り出し、積み上げた小屋だと思いますが、立派な技だと思います。

一方、屋根はかなり老朽化しており、大きな穴が2ヶ所、隙間は無数。大雨が降ればないに等しい屋根です。ですからこの小屋の意味は、土のテントサイトを確保できるということだけです。シュラフだけというのはやめましょう。
内部です。奥のテントは千葉から来た単独の青年。1〜2人用テントです。こちらのツェルトが私。幸い雨が降らなかったから良かったのですが、夕立でもきていたら、私はどうなっていたでしょう。夜露でさえ、けっこうポタポタと屋根から落ちてきていました。
水場はちょっと遠いです。ザレ場に向かって小屋からほとんど水平に行くとあっという間にそのザレ場に出ます。その下に赤の×印の書いてある石から林に入ると5分下って水場です。枯れそうにないしっかりした水でした。
朝の鋸岳の稜線。
屋根が濡れているのは夜露のせいです。向こうにザレ場が見えますが、実際は近いです。この絵は28oの広角ですので。
三ツ頭を過ぎて中ノ川乗越を隔てた対岸の第二高点を見たところです。ここまで来るのにも、結構なアップダウンがありましたが、危険なところは特にありません。

中心のガレ場に道があります。途中に水が出ている岩があり、私はここで300ccほど汲みました。
中ノ川乗越です。なんと、ビバークサイトがありました。岩を平に敷き詰めてあり、けっこう良さそうでした。ただ、落石が起きたら怖いでしょうね。緊急時に限り使うべきでしょう。

小屋を出てここまで私の足で2時間です。ただし私は途中で花や鳥をさんざん撮ったので、普通なら1時間30分で来れるでしょう。
第二高点です。天気は上々でした。中ノ川乗越からはガレ場を慎重に登って30分弱かかりました。

実はこの第二高点に登っている途中、ヘリが飛んできて、すぐ近くでホバリングしているのはわかりましたが、本体が見えないので何のために来たのかわかりませんでした。後でわかったのは、赤印を付けに来ていたということです。岩の上のペンキが塗りたてでした。
第二高点から見た、第一高点です。
手前の崖が大ギャップですが真下なので見えません。このピークから左側の樹林帯の中を大きく下っていくと、大ギャップから信州側にガレている斜面にぶつかります。そこを横切るようにルートがつくられていました。
これが第二高点から樹林帯を下るルートです。以前のガイドブックには高い所から岩場のテラスをさがしてトラバースするように書かれていましたが、新しい赤ルートはとにかくどん底まで下らせています。

従って、危険なトラバースはまったくありません。
写真では見えませんが、どん底に大ギャップから崩れてきたはば5mほどのガレ斜面がありますので、それをひょいと横切り、いよいよ鹿ノ窓ルンゼに入ります。
右にほぼ垂直に見えるのが鹿ノ窓ルンゼです。
3人の人が今、まさにルートをマーキングしています。絵ではわかりにくいですが、この大斜面はわりに傾斜がゆるく、しかもそこをできるだけ直登しないようになっています。踏み跡もしっかりとありますので、そう怖くはありません。

ヘリで来るのですからこの3人はきっと公の仕事としてきているのでしょう。長野県か山梨県かあるいは長谷村か白州町か。いずれにせよ、鎖といい、ペンキといい、この縦走路は格段に安全みちになりました。
鎖場まできました。あの穴が鹿ノ窓です。
マーキングの人が鎖にもつかまらず、余裕で登っています。左の斜面にも多くの手がかりがあり、ここを熟知している人は足だけでも登れそうです。

ここが初めての私はルンゼ登りを味わってみたくて敢えてそこに入りました。鎖は使わずに登ってみると確かに多くの手がかりがあってなんとか窓まで登れました。むしろ一番集中したのは落石を起こさないことでした。すぐ下に千葉の青年が来ていましたので。
窓をくぐると甲州側に出ます。左に10mほど進むと岩の壁があり、それを乗り越えるとこうなりました。

さきほどの3人のマーキングの人を迎えにヘリが飛んできて、岩場のすぐ上でホバリングしています。このあとドアが開き、3人が乗り込むまでわずか30秒。あっという間に3人は山を降りていきました。いいなあ。

というわけで、第二高点から第一高点の核心部は明瞭な赤印がつき、ルートをさがすという楽しみはもうなくなりました。
小ギャップのほぼ垂直の7〜8mの岩場です。
ここにも真新しい鎖がかかっていますが、登りは青のルートで登れました。下りは素手では相当困難かと思います。安全に鎖なり、ロープなり使いましょう。
第一高点です。
午前10時ですから、岩室を出てちょうど5時間かかりました。写真を撮りながらですから、普通の人ならもっと短時間で行けることでしょう。

天気が悪くなり、雷雨が心配されます。こんなにとんがった山頂も他にはないので、さっさと下ります。ガスってきて展望はあまりききませんでした。
角兵衛沢の頭から10mほど、信州側に下ったところにテントサイトらしき平地が2つありました。水がないのであくまでも緊急時のビバーク用でしょう。
大岩下ノ岩小屋です。
角兵衛沢の中ほどにありますが、小屋は実際にはなくて、ただの岩陰です。一番奥からサーサーと水がしみだしており、じめじめしたところです。テントが2つぐらい張れるでしょうか。上から岩が落ちてこないか心配ですが、それらしい岩は1つもなかったので、まあ、隕石ぐらいの確率なんでしょうかね。

この岸壁はあまりに大きく、広角レンズでも入りません。28oで撮ってもこの程度です。
戸台川まで下りてきました。角兵衛沢ノ頭から2時間半です。ひざが笑いましたね。

すぐに正面の戸台川を靴濡れ程度で渡り、対岸の小道に出ます。
対岸の小道に立っている標識です。
ここからバス停までが長い長い。雨が降ってきましたので、傘をさして、ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷランランラン。

ラジオも入りにくいので、何か楽しいことでも考えながらと思いましたが、なかなかそれもできませんでした。話相手でもいれば紛れますが、単独行はこんなときに不利ですね。

2時間半歩いてバス停に着きました。
戸台大橋のバス停で下りのバスを待ちます。定期便にはまだ時間がありましたが、北沢峠から臨時便を増発しているので10分ほどでバスが来ました。

もちろん満員でしたが、ドアデッキに立って乗らせてもらいました。歩けば1時間、バスなら10分です。荷物込みで330円。

290枚を越える写真と鋸岳の鎖なし縦走の成功で、満足の2日間でした。
ハナイカリ ミヤマウイキョウ
シラネヒゴタイ タカネビランジ
タカネコンギク タカネコウリンカ
トダイハハコ チョウジコメツツジ
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