剣舞
「何の冗談だ?」
待ち合わせ場所だった酒場に届いた書面。
それを見た船長リュウガは、呆れたように眺めて、ソウシに渡した。
「お前に任せた」
さっさと、酒場の女の中へ行ってしまう。
書面を受け取ったソウシが、難しい顔で、文面を眺める。
「何ですか?」
ソウシは、黙ってシンに手渡した。
文面を見たシンがナギに書面を渡し、読んだナギもトワに渡して、変な顔をする。
「えぇっ、大変じゃないですかっ!」
トワが、驚いた声をあげて、ソウシやシンやナギを見た。
「…何かあったんですか?」
ヒロインが聞けば、トワは持ってた書面を渡してくれる。
『剣士は預かった。夜明けまでに古城へ金貨100枚持って来い。金貨は女に持たせろ。無視した場合は剣士の命はないものと思え』
書面の文字は、それだけだった。
「これって……ハヤテさんが捕まったということでしょうか?」
「だとしたら、犯人は、ハヤテの懸賞金を知らないらしいな」
ヒロインの言葉に、シンが腕を組んで笑う。
確かに、ハヤテの懸賞金ならゼロが、あと5つも付く。
「もしもこの内容が本当だとしたら、相手はよっぽど強いのかもしれないね」
ソウシがのんびり言えば、ナギはため息をつく。
「……どうだかな」
そんな強い奴が、たかだか金貨100枚程度を身代金にするとは…何かの冗談のような気がする。
正直、あちこちでそれなりに稼いでいるシリウス海賊団の面々に払えない額ではない。
個々でも、容易に払える額ではあるのだが。
「どうしようか?」
「ヒロインに金貨を持たせろっていうのが、気に入らないですね。無視しましょう」
ソウシの問いに、シンが即答する。
「あはは。でもそれで、本当にハヤテの死体が届いちゃったら、気分悪いよね?」
「馬鹿は殺さないと治りません。死体は換金すればいいでしょう?」
笑って言うシンは、あながち冗談でもなさそうで。
「うん。わかった。じゃあ、シン、ハヤテのことよろしくね?」
にっこり笑ったソウシの目が、全然笑っていない。
「…………」
シンが口を噤む。
「明日の朝、ハヤテの死体が届かないようにね? さ、トワ、ナギ、この件は二人に任せて私たちは行こうか」
書面はまだヒロインの手に握られたままで。
ソウシに促され、トワは心配げな目で二人を見ながら、歩きはじめるが、ナギは動かない。
「ナギ?」
「…………」
ソウシが、笑みを深くしてトワだけを連れて行く。
ため息をついて、ジロリとナギを見たシンが言った。
「行けよ」
「……守るモン多いと不利になるからな」
手伝ってやる、という無言の意思表示。
相手の数も目的もよく判らない。
届いた書面に女と指定されている以上、ヒロインが係わるのは必然。
ヒロインが巻き込まれれば、当然シンも係わらざるを得ないわけで。
確かに、状況によっては、シンがヒロインとハヤテの二人を守らざるえない状況もありうる。
「ま…どこにも五体満足で剣士を返すとは書かれていないな。最悪、手足を切り落とされてる可能性もある…」
シンの言葉は、やっぱり冗談とは思えなかった。
古城というのは、港町からかなり離れた森の中にあった。
シンに渡された袋を持ち、ヒロインはシンと一緒に門の朽ちた古城の前に立つ。
灯りのランプは持ってきたものの、夜の森は、視界も悪く気味が悪い。
何かの鳴き声が聞こえて、ヒロインは思わずシンに身を寄せた。
「金貨を届けに来た女性かしら?」
森の中から、コートを着た女が現われて、二人に話しかけた。
咄嗟にシンがヒロインを背後に庇う。
「あら? 騎士付きのお姫様?」
面白そうに笑った女は、両手を肩まで上げて掌を広げる。
武器はもっていない、という意思表示なのだろう。
「私は金貨を受け取りに来ただけよ。まさか、騎士まで付いてくるなんてね」
「1人で来いとは、どこにも書いてなかったからな」
シンが嗤うと、女も頷いた。
「そうね。名のある海賊団の女性だから、どんなツワモノかと思ったら、そのお姫様じゃあね。夜遅くにこんな場所に来るには、騎士の一人や二人、必要よね。…期待はずれだわ」
「ハヤテはどこだ?」
「あのボウヤ、ハヤテというの? ここでお金をもらったら、後で解放してあげようと思ったんだけど…」
女はチラ、と暗い森に目をやる。
「あら、随分と手慣れたお仲間だこと…」
感心したように呟いて、シンとヒロインの目の前に立った。
「ねえ、かわいいお姫様、金貨をくださいな」
にっこり笑って手を差し出す女は、特に力もなさそうで無害に見える。
ヒロインがシンを見上げた。
「…渡してやれ」
ヒロインが、シンに持っているように言われた袋を差し出した瞬間。
女は袋ではなくヒロインの腕を持って、コートの中に抱きよせる。
ヒロインの持っていたランプが、足元に転がる。
地面に落ちた袋が、ジャリ、と音を立てた。
「小石じゃ困るのよね…」
「え?」
「チッ…」
自分が渡された袋は金貨入りだと思っていたヒロインも、驚いてシンを見た。
「おまえ、何、あっさり捕まってんだ」
仄かな灯りに照らされたシンが不機嫌そうに言う。
「その銃、こちらにくださらない?」
シンが銃を構えて女を見返す。
「あのね、女は便利でね。こんなものでも、人は殺せるの…」
ヒロインの首に、尖ったものが押し当てられた。
髪飾り…先端は鋭く磨きあげられていた。
「一付きで殺すには、ココ…」
尖ったものが、ヒロインの肌の上を移動する。
女とシン、二人分の凄まじい殺意が一瞬で辺りを覆う。
「……」
シンが一瞬、森に視線を走らせた。
「…受け取れ」
銃を女の方へ放り投げた瞬間、女は素早く持っていた髪飾りを森の暗闇に投げ、空中の銃を掴んでヒロインに銃口をあてた。
「せっかくの目論みを、ごめんなさいね? そちらの騎士さんも、その物騒なもの、下に置いていただける?」
森の暗闇の中から、ナギが現われた。
右手の甲に髪飾りが深々と刺さったまま、左手に持っていた鎖鎌を下に落とす。
ヒロインを助けるために鎖鎌を構えた途端、女の投げた髪飾りが刺さったのだった。
「せっかく逃げる時間稼ぎに用意した罠を、あなたが全部壊しちゃうんだもの。あなた本当に海賊?」
「………」
「仕方ないから、計画変更。お姫様も預かることにするわ。金貨は100枚でいいわよ。二人とも、もう少し左へ移動してくださらない?」
シンとナギが憮然とした表情で、指示されたままに、朽ちた門の近くへ移動する。
「…チッ、罠か」
「ああ、罠だな」
二人の呟きを聞いた女が、艶然と微笑んで、崩れ残っていた壁の一角を蹴った。
シンとナギの足もとが崩れ、穴が二人を飲み込んだ。
「シンさんっ!! ナギさんっ!!」
悲鳴のような声をあげるヒロインに、女が言う。
「大丈夫。彼らなら、すぐに出て追ってくるわ。ハヤテ、だったかしら? あの子を助けたいなら、大人しく一緒に来なさい」
女は、ナギの鎖鎌を拾うと、ヒロインを抱きかかえるように森の中の暗闇へ向かう。
「……あの男、やっぱり、この逃げ脚は残したわね…」
自分たちが逃げる時に使うつもりだったんでしょうけど、と呟いて木に括られた馬の縄をはずす。
女は馬に乗り、ヒロインを引き揚げた。
「強い男相手は、本当に面白い……追ってらっしゃい」
森の中を、馬は足跡を残して去って行った。
「チッ…あの女…」
「……完全にやられたな…」
落ちた穴の底は、枯草が積もっていた。
ナギが、手の甲に刺さったままの髪飾りを抜き、バンダナで止血する。
「…大丈夫か?」
「指は動く」
シンが辺りを見渡す。
古い井戸の中のようだった。
「おかしいな?」
足もとの枯草は、新しくふかふかしている。
まるで、落ちても死なないように、怪我をしないように。
「計画の内か…」
壁を見上げたナギが、苦笑した。
シンとナギが立つ位置から2メートルほど上部に真新しく掘られた窪みがあり、剣が二つ、置かれている。
「ふん。ご丁寧なことだな」
剣を取ったシンが、目を眇めた。
もう一つをナギが手にとって、無傷の左手に持って言う。
「…ハヤテのだな」
「あの女相手なら、納得できるか…」
どちらともなく壁に剣を突き立てながら、垂直の壁を登り始める。
「どう思う?」
登りながらシンが聞いた。
「森の中に、仕掛けが山ほどあった。たぶん、あの女プロだろ」
呼吸も乱さずに登るナギが答える。
「…確かにな」
ヒロインに凶器を向けるまで、殺意も何もなかったのだ。
だから、騙されて油断した。
金貨を持ってくるように言われただけの、使い走りの女かと。
二人は、地上に付いて苦笑する。
「気配も何もないな…」
「……馬だ」
ナギが、森の中の暗闇へ向かう。
ほどかれた縄が落ちて、馬の足跡が森の中へ続いていた。
シンが足跡を追って走り出す。
ナギも掌に滲み出てきた血を握りしめて、走りだした。
追手を撒くためなのか、足跡は森の中を右往左往する。
いつしか、真夜中を過ぎて昇る半月が空にかかっていた。
散々足跡に翻弄されて森の中を走ったシンが、見えてきた向かう方向に走る足を緩めた。
眼の前に、古城の裏口が見える。
ナギも歩きだして、肩で笑う。
「まったく。ここまで馬鹿にされると、怒りも失せるな…」
シンが呼吸を整えながら歩いて向かった古城の裏口には、まだ走った熱の冷めきらない馬がつながれていた。
乗せられた馬が古城に戻ってきて、ヒロインは唖然とした。
「静かにね」
裏口に馬をつないで、壊れた壁の裂け目から古城の中へ入る。
女が灯りを手に階段を下り続ける。
やがて暗く広い空間があり、さらにその下へ続く階段があった。
ヒロインは優しく腕を引かれて、さらに下へ下へと階段を下る。
牢屋のような格子戸があり、さらにその奥に洞窟が広がっていた。
声が響いて聞こえてくる。
「おいーっ。出せよっ。ちくしょーっ」
「ハヤテっ!」
洞窟の奥、鉄製の鳥籠のような牢の中でハヤテが騒いでいた。
「ヒロイン? なんで?」
「助けに来たのっ…捕まっちゃったけど…」
申し訳なさそうに俯くヒロイン。
「うわっ。オレ、すっげーかっこわりぃ…くそおぉぉ。あっ、お前っ。ヒロインなんか捕まえてくると、後悔するぞ。鬼みたいに怒ったシンとナギ兄が、乗り込んでくるからなっ」
「ふぅん…お姫様の名前はヒロインって言うの。しばらく、ここにいてね。あ、はい。コレもあなたに渡しておくわね」
女は、ヒロインの手にシンの銃とナギの鎖鎌を渡して、背を向ける。
「待ってっ!」
ヒロインは思わず追いかけた。
「あ、おいっ、ヒロインっ。待てよっ」
ハヤテの声が洞窟内に響く。
女は、ヒロインとの間に格子戸を閉めた。
「なんなら、それ使って逃げてもいいわよ」
くす、と笑ってコートを脱ぎ、棚に置かれていた剣を腰に帯びる。
「な…んで、こんなことするんですか?」
「生きるため…かな」
「え?」
ヒロインは銃と鎖鎌を握りしめる。
「人をね、探しているの」
「………」
「顔も知らない。名前も知らない。強い男を探しているのよ」
女は剣を鞘から抜いて掌で撫でた。
コートを抜いだ下は薄着で、酒場で煽情的な踊りを披露するかのような服だった。
ただ、なんとなく卑猥さを感じないのは、明らかに鍛えられたと判る身体と、きつく閉じ合わすように巻かれている胸元の布。
踊り子たちが、あえて胸を誇張して揺らすようにしているのとは、明らかに違っている。
「…まるで消えたように居なくなってしまった、唯一の男なのよ……」
「…あの…顔も名前もわからなくて、どうやって探すんですか?」
「そうね…でも、そいつは恐ろしく強くて、速いの。私の目の前で、まだ子供みたいだった男は数百の訓練された兵隊を一掃した。たった一人でね。剣は一本だけだったはずなのに、いつの間にか両手に持っていて…風みたいで…。ホント、悔しいじゃない? きっと、あいつとは、剣を合わせれば判るはずなの」
「剣を合わすって…」
女が、クスクスと笑う。
「人探しの旅には先立つものが必要でしょ? だから、賭けを申し込むの。そこで喚いているボウヤにもね。…二刀流の男には、必ず申し込むのよ」
「賭け、ですか?」
「剣の勝負しない? 貴方が勝ったら金貨100枚あげる。でも、私が勝ったら、金貨100枚払って。とね」
「………それで、ハヤテさんは負けたんですね?」
「ちょっと私が薄着になっただけで、情けないほどボロボロだったわよ。もう、馬鹿馬鹿しくて、がっかりしちゃった」
どの程度薄着になったのかわからないけれど、今の恰好がそうだとしたら、ハヤテが顔を赤くして大騒ぎする様子が、ヒロインにも想像できる気がした。
「そしたら、金貨の持ち合わせが無いっていうじゃない? こっちも生活がかかっているから、取りに行ってくると言われて手放すわけにいかないのよね。しかも、本人、名のある海賊の一味だって言うじゃない。海賊には興味がないし、あんな甘ちゃんで海賊が務まるのか知らないけど、だったら仲間に立替えていただこうかと思ったの」
「やっぱり、そんな馬鹿馬鹿しい理由だったか」
シンの冷たい声が響いて、女は剣を構えてほほ笑んだ。
「お疲れ様。ウォーミングアップはどうだった?」
「シンさん…」
姿を見せたシンは、汗ばんで髪が頬や首に纏わりついている。
「これ、格子戸のカギ」
女はシンに見せた鍵を自分のきつく巻かれた胸元へ入れて、剣を構えた。
「がんばって取ってね、騎士さんたち」
すかさず、女の切先が振り下ろされて、シンは手にしていた剣で受ける。
キィン、キィン、キィン…
何度かの金属音のあと、女が笑った。
「教科書通りね…もしかして、帝国の学校で習ったのかしら?」
上から落としかけた刀身を、シンの持つ剣と合わさる寸前に真横へ薙ぎ払う。
「くっ…」
変則的な動きに、反射的に飛びのいたシンの袖口が裂けた。
「強いけど…綺麗すぎる太刀筋。隻眼のハンデが大きいのね……気をつけなさい、貴方は死角が広い……そこ、見てないで加わったら?」
女が目で入口の影にいたナギを誘う。
明らかに、シンが押されて防戦状態になっている。
ナギが動いたのを見た女が、笑ってシンに何か呟いた。
加わったナギは、左手に持った剣を突きだし、払う。
女の手が、それまで操っていた剣刃をカチャリ、と二つに分けて二刀流になる。
「!…」
「こういう剣もあるのよ?」
逆手に持った剣でナギの繰り出す切先を受けながら、もう片方でシンを切り付ける。
ようやく、防戦のみの状態から解放されたシンの口許が、愉しげに緩む。
二本の刀身を避ける柔らかな身体が、ありえないように反り返り、思わぬ速さで間合いを詰める。
「へぇ…全くの我流なのね。実践だけで培ったのかしら? 対照的なこと」
くるくると向きを変え、方向を変える細刃の剣に引っ張られるように動き回るナギが、苦笑した。
「でも、利き手が使えないハンデが大きいわね。こっちもちゃんと鍛えたら? 強いのにもったいない…」
まるで剣を持って踊っているかのような女の動きに、思わずヒロインが見とれた。
男二人を誘う剣舞が、次第に格子戸へ移動して、止まる。
「ねぇ、お姫様、そろそろ騎士さんたちに渡してあげてくれない?」
シンがヒロインを見て、怒ったような呆れたような声で言う。
「ヒロイン、お前……持ってるならさっさと寄こせ」
「え? あ…」
ヒロインが握りしめていたのは、シンの銃とナギの鎖鎌。
「あ、す、すみません」
女が格子戸から滑るように離れる。
格子戸の隙間から銃と鎖鎌を渡そうとするヒロイン。
入口に立った女が言った。
「騎士さんたち、その扉のカギ、剣で壊した方が速いわよ」
シンとナギは顔を見合せて苦笑する。
確かに、言われるとおりだった。
「……まんまと、あの女のペースに乗せられたな…」
苦笑している間に、消えてしまった女の気配。
シンが剣で一突きするだけで、格子戸の古びた鍵は壊れ、開いた。
「その、さ。すげえ、悪かったよ。だいたい、負ける気しなかったし…」
ソウシの手当てを受けるナギの横で、ハヤテが謝っている。
夜明けを迎えた港町は、すでに多くの人々が働き始めていた。
「結局、相手はとびきり強い女性が一人だけだったの?」
ソウシの言葉に、ハヤテもナギもシンも、どこかきまり悪そうにしている。
「あ、あの。でも、本当に強くて、動きも速くて…なんか、船長みたいでした」
ヒロインなりにフォローする。
「へぇ…私も行ってみればよかったかな…」
ナギの手に、包帯が巻かれ終わる。
「でも、よかったね。もしも相手が遊びじゃなくて本気だったら、4人とも殺されちゃっていたかもしれないね。この傷だって、武器に毒でも塗られていたらどうなったか判らないよ」
「そういえば、あのヒト、人探ししていて海賊には興味ないって……」
包帯の巻かれ終わった手を開いたり閉じたりしてから、ナギがハヤテに言った。
「……金貨100枚、立替えて払っといた。あとで返せ」
「ええぇぇ? ナギ兄が?」
「えぇ? いつの間に?」
驚いたヒロインに、シンが苦笑する。
「あの部屋に向かう途中で、入口にナギが置いたんだよ…あの女、俺と戦ってる最中に気づいて、素直じゃないとか言ってたが…」
みすみす金貨100枚をくれてやるのも癪に障った、というシンに、ナギも苦笑する。
結局、白刃を交えていた時、相手は愉しんで遊んでいるだけで、危害を加えるのが目的ではないと、二人は気づいていたのだという。
「まあ、諸悪の根源は、イキきがって賭けてボロ負けしたハヤテだ」
「ボロ負けなんかしてねぇっ」
「単純馬鹿ハヤテのことだ。どうせ、視野が狭いだの、甘いだの精神修行が足りないだの、さんざん弱点を指摘されただろ」
「ひきょーなんだよ。下着とか見せつけるし、勝手に剣が二本になるし、ごちゃごちゃと、うるせーし」
「…そしてあっさり負けて、鍵もかかってない檻に、大人しく入っていたわけだ」
シンのからかう言葉に、ソウシが笑う。
「ハヤテの閉じ込められてた檻、鍵、かかっていなかったの?」
「もともとあの女、自力で逃げるならそれも良し、という事だったんですよ。まったく…ちょっと冷静に考えればいいものを」
ハヤテが入っていた檻の出入り口は、実は下にあった。
つまり、それまでの床面を壁面にするだけで、容易に出られたのだ。
「そういえば、シンさんとナギさんも、闘いながらあの人にいろいろ言われてましたね…」
「…あれは、稽古だな…」
ナギが、本当にどうしようもなさそうな表情で呟く。
「あそこまで虚仮にされると、怒る気も失せる。指摘も間違っちゃいなかったからな。あの女は、いつもああやって、男と遊んでいるんだろ」
少し真面目な顔で言うシンは、ちょっと残念そうにも見え、ヒロインの奥で何かが揺れる。
「そんな魅力的な女性…ますます、会ってみたかったなぁ…」
ソウシの残念そうな呟きを聞いたハヤテが言った。
「冗談じゃねえ。オレ、ぜってー、あいつに会いたくねえ。もう、二度と会いたくねぇぞ」
言葉の割には、顔を赤くしているハヤテ。
「確かに、あれは魅力的な身体だったな」
意地悪く笑ってハヤテをからかうシンの言葉に、ヒロインは複雑な表情をする。
そんなヒロインを、ナギは黙って見て、小さくため息をついた。
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18歳以上の大人です