償記



シリウス海賊団の定期イベント、宴の最中のことだった。
 ヒロインが、前から気になっていたと言って、リュウガ船長に尋ねた。
「皆さんは、ご自分の手配書見たことあるんですよね?」
「おう。手配書は、海賊にとって、勲章みたいなものだぜ。懸賞金は格付けってとこだな」
 リュウガは、得意げに笑う。
「あのー、私、見たことないんですけど、手配書ってどうやれば見れるんですか?」
 リュウガが大笑いする。
「おまえのいたヤマトでも、俺らの手配書は回っていたはずだがなぁ」
「そうなんですか? 見たことありませんでしたけど」
「まあ、そうだな。街中に貼り出されたものは、大抵、賞金稼ぎが早々に剥いで持ってくからな。知らない一般人も多いな」
「ええっ! 持っていっちゃうんですか? なんで!?」
「そりゃお前、賞金稼ぎにしてみれば、ライバルは少ない方がいいに決まってる」
 ヒロインは、自分が今まで、手配書を見たことがない理由をなんとなく納得した。
「あれ? でも、それじゃあ皆さんは、どうやってご自分の手配書を…?」
「そんなの、賞金稼ぎの奴等から見せられたに決まってるじゃん」
 ハヤテが答えた。
「見なくても、たまに軍人が、わざわざ言って、懸賞金額を教えてくれることもあるね」
 ソウシが、くすりと笑う。
「僕にも、ちゃんと懸賞金かかっているんですよっ」
 トワがちょっと嬉しそうに言うと、
「三桁じゃあ……賞金稼ぎも相手にしないがな」
 ナギがトワの頭を小突いた。
トワが言い返す。
「ナギさんがすごすぎるんですよ。金貨一千八百万枚だなんて」
「それでも、船長の五千万枚の半分以下だ」
 リュウガが、笑って杯を干す。
「そういや、あたい、最近、自分の手配書見てないねぇ…賞金稼ぎも、とんと御無沙汰だよ」
 ファジーが首を傾げる。
「てめーのザコ賞金なんか、誰も相手にしねーよ」
 ハヤテが、馬鹿にして言うと、ファジーが吼えた。
「なんだって? 女海賊ファジー様を見くびるんじゃないよ、ガキが。私だってねぇ、金貨一千万の懸賞金なんだからねっ」
「げっ……」
 シンがハヤテに笑って言う。
「なんだ、ハヤテと同じ金額じゃないか。良かったな、仲間がいて」
 うれしくねえっ、とハヤテが騒ぐ。
「あの…皆さん、手に入れた御自分の手配書はどうされているんですか?」
 ヒロインが興味と期待に満ちた表情で言うと…。
「「………」」
 一同が顔を見合わせた。
「…捨てたな」
 ナギが言えば、ハヤテも頷く。
「俺も、剣で切り刻んで海に捨てた」
 ファジーも言う。
「…まあ、あたいも、ぜんぜん似てない似顔絵みて、破り捨ててやったね」
 腕を組んだシンは怒ったようにヒロインを軽く睨んで言う。
「自分の指名手配書だぞ。そんなもの、大事に持ってる海賊がいるわけないだろう」
 リュウガは、そんな様子を「わっはっはっはっ」と笑って眺めていた。

空が白む頃。
 ナギと宴の片づけをしていたヒロインは、会話を思い出して、呟いた。
「賞金稼ぎの人が来ないと、無理なのかなぁ…」
「当分、こねーよ」
 すかさず、ナギが答えた。
「え?」
「ファジーも不思議がっていたが、ちょっと考えればわかることだ」
 ナギは、皿洗いの手を止めずに続けた。
「名だたる賞金稼ぎは、全部、俺らが返り討ちにしたからな。伊達に船長が海賊王名乗ってるわけじゃねーんだよ。今、俺らにちょっかい掛けてくるのは、海軍とロイだ けだ」
 シリウス海賊団に挑もうとする賞金稼ぎは、当分現れないのだと説明され、納得したヒロインが、溜息をつく。
「見てみたいと思ったのにな…」
「ま、そのうち見れるかもな。これふき終わったら、お前も早く寝ろよ」
 ナギは、洗い終わった皿をヒロインに渡しながら、苦笑した。


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