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「牽強付会と言い訳と」
今回も、よく私がやるような長ったらしい前置きから。 ここのタイトルに相応しく、お茶濁しな雑談です。
さて。 「漢字」というものは、ご存じの通り、もともと中国の文字です。現在日本で使われているものはもともとの字より簡略化されていてある意味日本オリジナルといえなくもないですし、「国字」という日本生まれの漢字もありますが、それでも中国起源であることに違いはありません。
ですから、漢字の成り立ちを考えるにあたっては、元々は中国語の字だった、ということを念頭に置いておく必要があります。
漢字の成り立ちについては中国でも研究が当然されておりまして、AD100年頃既に「説文解字」という解説書が成立しています。さすがに1900年も前のシロモノですので研究が進むにつれ正確でない箇所も多く見つかってはいるのですが、文字研究の原点として現在の研究にも大きな影響を与えている書です。
中でも一番大きな影響といえるのが、中で述べられている「六書」ではないでしょうか。文字の成り立ち六種類、みたいなものなのですが、例えば皆様も一度はどこかで聞いたことがあるであろう「象形文字」という用語は、この六書の一つです。ものの形をそのまま描いた絵文字が起源の字、それが象形文字ですね。 六書のうち二つは、実は文字の成り立ちというよりは文字の使われ方でして、文字の成り立ちとしては今の象形文字を含め四種類なのですが、あとの三つは、 絵では描けない抽象的な事柄を表した記号が起源の「指事文字」。「上」とか「下」とか。 象形とか指事の文字の意味を組み合わせて作った「会意文字」。「休」とか「明」とか。 意味を表す文字と、音を表す文字を組み合わせて作った「形声文字」。「家」とか「婦」とか。 …です(もっと細かいことを言えば、「象形」と「指事」が「文」で「会意」と「形声」が「字」、あわせて「文字」なのですが)。 このうち、漢字の中で一番多いのは、最後に挙げた「形声文字」ですね。すべての字のうち80%を占めるんだそうです。いわゆる「へん」と「つくり」のように、「部首」+「それ以外」で出来てるのはほとんどこれだと思っていいでしょう(会意もそれなりにありますけど)。
この「形声文字」は上述のように、意味を表す文字と音を表す文字の組み合わせです。つまり、文字の一部分は音を表す部分で、あまり(全然ではありませんが)意味はないのです。 上で挙げた例では「家」の「豕」は「ぶた」って意味ですが、「カ」という音を表すのが主な役割ですので、「宀」(屋根)と組み合わさっても別に「豚小屋」って意味にはなりません。ご存じの通り「いえ」です。 もう一つの「婦」も実は同様で、「女」+「帚」(ほうき)ですが別に「おそうじ女」って意味はありません。「帚」は「フ」って音を表すのが主な役割なわけですね。
ところが日本人はなぜか、漢字を会意で捉えたがります(だから、日本生まれの「国字」には会意が多い気がします。山を上って下るから「峠」とか、神様にお供えする木だから「榊」とか)。上の例で言えば「『婦』という字は『女』に『帚』と書く。これは掃除は女の仕事だと…」とか言って目尻をつり上げるようなパターンですね。 この手の考えは、ほとんどすべてがただのこじつけか、本来の意味にまぐれ当たりしたこじつけです。 ちょっと脱線すると、形声以外の字にも日本人ってヘンないわれをくっつけるのが好きなようですね。「『人』という字は人と人とが支え合って…」なんてのがそうです。あれは人が一人で立ってるところの象形文字で、ちっとも支え合ってないんですけどね。第一あの字形で支え合ってるんだったら「入」だって一緒じゃないですか(笑)。
さて。ここまでが前置きです(^_^;)。
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