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EMリレーSS 第二期 第七話 「死闘! 伝説の魔竜!!」
 
 
 魔竜パーペチュアル・ドラゴン。
 遙かな昔、何十もの街を焼き尽くし、幾つもの国を滅ぼしたと伝えられる、伝説の八頭竜。
 伝説には、長き戦いの末に、伝説の勇者が“影の民”の力を借りて封印したとある。
 ……その伝説の魔竜が、今まさに復活を遂げようとしていた!
 
 
「それでは!
 みなさん、いいですか! これからそのドラゴンを再び封印します!
 私の指示に従って下さい!」
 メイヤーの声が、もはや原型をとどめていないミスコンテスト会場に響く。
「パーペチュアル・ドラゴンは、力では倒すことはできません!
 たとえ封印が完全にはとけていない今でもです!
 そこで!」
 バッ、とメイヤーが後方に手を振る。
 皆がつられてそちらの方を向き……一斉に蒼白になった。
 
『ムフッ!』
 そこにいたのは、大きな樽を担いだバイト親父の群!
 これを見て、平静でいられるような心臓の持ち主はそういない。いつもと変わりないのは楊雲くらいか。ティナやウェンディなどは、立ちくらみすら起こしていた。
「おいこら、これは一体なんなんだっ!?」
 血の気の引いた顔でメイヤーにつかみかかるカイルだったが、
「今は非常事態なんです!」
 メイヤーの一撃にあえなく撃沈される。
 その間にも、バイト親父達は広場の真ん中に樽の山を築いている。
 
「どこの街に行っても必ずいるから、どーもおかしいと思っていたけど……一人だけじゃなかったのか」
「アタシも初めて知ったわ……」
 呆然とつぶやく悠也と、いつの間にかその肩にとまっているフィリー。
「ええ、彼らは親父族と言いまして、バイト斡旋業を一族で独占しているという……」
 後ろでロクサーヌが胡散臭いウンチクを披露しているが、そんなものは当然無視だ。
 ポロロン……
 寂しそうにリュートの音が響いた。
 
「さて」
 ぞろぞろと親父一族が去った後には、まさに見上げるようなほどに樽が積まれていた。
 メイヤーはその近くに寄ると、樽の一つ向かって右手に持っていた杖を振り下ろした。
 バコン!
 板の割れるいい音と共に、樽の中から独特の臭いがあふれ出す。
 それと共に、今までうねうねとうごめていたパーペチュアル・ドラゴンの首が、動きを止めた。十六の視線が、彼らの中央に築かれた樽の山に集中する。
「それは……酒か?」
「その通りです」
「どーしてこんな世界なのにエールとかじゃなくて日本酒なんだ……って、そんな事よりまさか……」
「察しがいいですね、悠也さん」
 メイヤーは、周りに集まった皆に向かって、きっぱりと宣言する。
「パーペチュアル・ドラゴンを封印する方法はただ一つ!
 ドラゴンと飲み比べをして勝つこと、それだけです!!」
「えーっ!?」
 皆の間に衝撃が走る。
「お酒なんて、飲んだことないです……」
「大食い競争だったら自信あるんやけどなぁ」
 今にも泣き出しそうなウェンディと、すこし残念そうなアルザ。
「そういう問題じゃないでしょ! ほんっとーに、それしか方法ないの!?」
「ありません!」
 リラの剣幕にも、きっぱりと言い返すメイヤー。さすがのリラも、ここまできっぱりと断言されてしまうと文句も言えない。
「……どうぞ」
 そんなリラに、横からひょいと楊雲が杯を手渡す。
「この戦いには、世界の運命がかかっています!
 みなさん、死ぬ気で飲んで下さい!」
 ……かくして、世界の命運を賭けているにしてはどこか笑える死闘が開始された。
 
 
「うー」
 なみなみと酒のつがれた杯を前に、レミットはうなっていた。
 当然の事ながら、レミットは今まで酒など飲んだことはない。飲んでみたいなー、などと思ったことはあったのだが、アイリスに見つかって止められてしまうのが常だった。
「レミット、やっぱり無理か?」
 なかなか口を付けようとしないレミットに、後ろから悠也が声をかけた。
「だっ、大丈夫だもん! お酒くらい、飲めるんだから!」
 そう言って、ぐいっと杯をあおる。
「〜〜〜〜〜っ!!」
 慌てて口を押さえ、吐き出すのをこらえる。どうにかして飲み下したが、もうその顔は真っ赤になっていた。
 その視線の先で、ドラゴンの首の一つが酒樽に口を直接つっこんで酒をがぶ飲みしている。
「だ、大丈夫か?」
「ま、負けないんだから〜〜〜!」
 言いつつ、悠也の前に空になった杯を突きつけるレミット。
「おい、無理するなよ?」
 杯についでやりながら、それでも心配そうに声をかける悠也だが、
「うるさいわねっ! 負けるわけにはいかないんでしょっ!!」
 との一喝に、黙り込むしかない。
 自分が初めて酒を飲んだときのことを思い返し、いやーな予感に襲われつつも自分に割り当てられた分に口をつける悠也だった。
 
 
「ささ、どんどんいって下さい」
 たった今乾かしたばかりの杯を下に置く暇もなく次の酒が注がれる。
 これが何杯目になるのか数えてはいなかったが、カイルは少なくとも外見は普段と変わったようには見えない。魔族は酒に強かったりするのだろうか?
 注がれた酒を再び飲み干した後、ジト目ですぐさま次を注ごうとするメイヤーを睨んだ。
「おい、キサマはなぜ飲まない?」
「いえ、あの、私はお酒は弱くて……」
 焦ったようにいいわけをするメイヤーだったが、
「いーや、弱くても飲め! たとえ少ししか飲めないとしても、奴らに勝つためには少しでも多く飲まねばならんのだろう!!」
 カイルがその腕をガシッとつかみ、酒がなみなみと注がれている杯を手に持たせる。
 いつにもまして強引なあたり、これでも結構酔っているのかもしれない。
「いえ、私、ホントに飲めなくて」
「黙れ、飲め、飲まんかぁ〜〜〜!!」
「きゃああああ〜〜〜〜!」
 ……メイヤー・ステイシア、リタイヤ。
 
 
「ん〜、結構酒ってうまいもんやな」
「うー、ボクはそうは思えないけど」
 その頃、こちらはアルザとキャラットのコンビである。
「ガウガウガウガウ」
「『この味がわからぬとはかわいそうなやつめ』と言ってます……」
 なぜか、楊雲の通訳付きで、パーペチュアル・ドラゴンの首の一つと意気投合していた。
 酒による友情は種族間をも越える! ……のだろうか?
「それにしても、っく、あんさん結構おもろい奴やったんやなぁ。外見に似合わず」
「ガウガウガウガウ」
「『わははは、良くそう言われるわ』と言ってます……」
「……あー……なんか、あったかくなってきた……」
「わははは! よっしゃ、トモダチになった記念や! とっておきのネタを披露したる!」
「ガウガウガウガウガウガウ」
「『おお、それは楽しみだのう』と言ってます……」
「おお、まかせとき! キャラット、あれやるで!」
「はへ? なにやるのぉ、あるざぁ?」
「アレや、アレ!」
「ガウガウガウ」
「『キャラットちゃんもやるのか、それはますます楽しみじゃ』と言ってます……あの、私はそろそろ他の人の所へ行きたいのですが……」
「おお、ええよ。もおウチらの間に通訳はいらん! なぁ?」
「ガウガウガウガウ」
「それでは……」
「よっしゃ、やるで、キャラット!」
「うんっ」
 一瞬、その周囲に緊張が走る。そして次の瞬間!
「ども〜、アルザでーす!」
「キャラットだよ〜」
「二人合わせて……」
「合わせて?」
「アルザ&キャラットでーす!」
「そうだねぇ〜」
「『まんまやんか〜』っちゅうツッコミは?」
「まんまだねぇ〜」
「……」
「……」
「ま、まあ、ええわ。ところでキャラット」
「なに?」
「ここ、ツェンバルンは大都や。この間寄ったリョウコウやコスイにはないもんがある」
「なに?」
「それは……塀に囲まれとるんや!」
「へ〜」
 
 ひゅるりら〜
 
 一瞬の後、その場で動いているものはいなかった……
 ……アルザ・ロウ&キャラット・シールズ VS パーペチュアルドラゴン、相打ち。
 
 
 時間は少し巻き戻る。
「ウェンディ、あんたホントに初めてなの?」
「……はい。あの……」
「ま、こうなっちゃったもんは仕方ないし。覚悟決めて飲むしかないわね」
 こちらはウェンディ&リラ組。目の前で樽ごと飲みまくるドラゴンの首に圧倒されているウェンディと、半ばあきらめたようなリラである。
「ま、慣れればおいしいもんよ」
「でも、その……」
「あんたもさ、少しはお酒でも飲んでストレス解消すべきよ、うん。ということで、一つ」
「え……あ、はい、いたただきます……」
 
 ……そして現在。
 
 ばんっ
「リラふぁん!」
「は、はい……」
「れすから! リラふぁんはだめなんれすっ!」
「あの……意味が分から」
 ばんっ!
「ちょっと黙っててくらはいっ!」
「はっ、はいっ!」
「だいたい! リラふぁんはいつもいつも悠也ふぁんを」
「ちょ、ちょっと、なんでそこであいつが出てくる……」
 ばんっ!
「うるふぁいです!」
「ご、ごめんなさい……」
 説教(?)が始まってすでに数十分。口を挟む余地すらない。ちなみに、リラはノックダウン寸前である。
「それから、そこのあなた!」
「ガウ?」
 とうとうパーペチュアル・ドラゴンにまで絡み始めるウェンディ。あの気弱な彼女が、お酒を飲んだらこうなってしまうとは誰が予想し得ようか。
「あなたもそこに座ってくだふぁい!」
「ガ?(汗)」
「座りなふぁい!」
「あ、あのね、ウェンディ。座れって言ったって、こいつは……」
「リラふぁんはだまっててくだふぁい!」
「は、はひっ!」
「ガ……ガウガウ」
「そうれすか、わらしのいふことなんて、バカらしくて聞いてられないっていうんれすか……」
「ガウガウガウ!!(汗)」
 ぶんぶんと首をふるパーペチュアル・ドラゴン。伝説の魔竜も酔っぱらったウェンディの前には形無しだ。
「そんなわるいこには、お仕置きれす!」
 側にあった樽を担ぎ上げるウェンディ。
(ああ……だれか助けて……)
 そりゃカレンのセリフでしょ、というツッコミを入れる余裕すらなく、ただリラにできたことは天を仰ぐことだけだった。
「いじめっ子はこうなる運命なんれす!」
 ……リラ・マイム&ウェンディ・ミゼリア VS パーペチュアル・ドラゴン、ウェンディの一人勝ち。
 
 
「なんでアタシまで飲まなきゃならないのよ……」
 そうぼやいているのは、人間サイズより遙かに小さな杯を抱えたフィリー。
「まあまあ、たまにはいいではないですか」
 そう言いつつ、杯を乾かすのはロクサーヌ。
「ガウガウ」
 その前では、パーペチュアル・ドラゴンの首がやはり樽ごと酒を飲んでいる。
「ほら、この方もそう言ってらっしゃいます」
「わかるかってーのよ」
「ガウガウ」
「え? 何か芸を見せろ? いいですね〜。フィリー」
「え、なに? アタシ?」
「何か宴会芸ありませんか?」
「あるわけないでしょ!」
「仕方ないですね〜。じゃあ、歌でも歌っていただきましょうか」
 リュートを抱えて立ち上がるロクサーヌ。そしてリュートをかき鳴らす。
 ギュイーーーン!!
「ちょ、ちょっと! なんでリュートからそんな音が出るのっ!?」
「さあ、行きますよ、フィリー」
「あんた、しらふの振りして実は酔ってるでしょっ!?」
 ギュイギュイーーーン!!
「ガウガウ」
「ほら、そこの方も楽しみにしてらっしゃいます」
「し、しかたないわね……」
 ギュイーーン!!
「ワン、ツー、ワンツースリーフォー」
『ボエ〜〜〜〜!!!!』
 直後、周辺は壊滅した。
 
 
「はあ、お酒って思ってたよりおいしいんですねぇ」
「……そう、ですね」
 こちらは若葉と楊雲である。
 意外と酒豪だったらしく、結構なペースで飲み続ける若葉と外見上は全く変化のないように見える楊雲だったが、やはり酒を飲むペースではパーペチュアル・ドラゴンにはかないそうもない。
「はあ、このままでは負けてしまいそうですねぇ」
「ガウガウ」
「『わはは、そう簡単に若い者に負けるものか』とおっしゃってます」
「そうですかぁ。でも、楊雲さん、負けると困った事になるんですよね?」
「ええ、そうですが……」
「ガウガウ」
「この方は、『なに、世界を滅ぼすようなことはせん』とおっしゃってます」
「まあ、それなら安心ですね」
 どこが安心なのだか。どうやら、お酒が入ったことによっていつもよりさらにボケ具合が進行しているようである。
「それにしても……お酒だけ飲んでいるのも、飽きてきましたねぇ」
「ガウガウ」
「『そうじゃな、何かつまみでもあれば……』とおっしゃってます」
 それを聞いて、ぽん、と手を叩く若葉。
「あ、それならいいものがありますよ」
 そう言って、懐からタッパを取り出す。カメラやゲーセンがあるくらいだから、これくらいあってもいいっしょ?
 ぱか、と開けると、中には何かの煮物のようなものが入っていた。
「今朝作ったんですけど、誰も食べてくれないので……どうぞ、食べて下さい」
「ガウガウ」
「楊雲さんも、どうぞ……、あら?」
 ふとあたりを見回すと、いつの間にか楊雲は姿を消していた。意外と要領がいい。
「どこへ行かれたんでしょうか……」
「ガウガウ」
「そうですね、ドラゴンさんだけでも、どうぞ」
「ガウガウ」
 パクッ。
 ……ばたーん!
「あ、あら? どうされたんですか?」
 ……紅若葉 VS パーペチュアル・ドラゴン、若葉のTKO勝ち。
 
 
「ふふふふ……」
 その周囲は、暗く沈み込んでいた。
「あ、あの、ティナちゃん?」
「ふふふ……お酒って、おいしいんですね……ふふふ……」
 額に大粒の汗をひっつけたカレンが何とか明るくしようとティナに語りかけるが、ティナは頑なに自分のペースを崩さない。
 その向こうでは、すでにパーペチュアル・ドラゴンの首が目を回して倒れている。
「ふふふ……」
 相変わらずティナは、暗い陰の中で嗤っている。
 その陰は……うずたかく積み上げられた空の樽の影でできていた。
「あの、もうそろそろやめた方が」
「次の樽、お願いします、カレンさん」
「だから、ね……」
「お願いします」
 ギラン!
 顔の上半分にかかった前髪の下から、真紅の輝きが見えた気がして、カレンの背筋に戦慄が走る。
「わ、わかったわ……(怖い……)」
 そのまま逃げてしまう事も考えたが、そんなことをするとどんな目に遭わされるかわからないので、仕方なく樽を一つ担いでティナの元へ持っていく。
 ティナは、樽を開けるとすぐに杯につぎ、ぐいっ、と飲み干す。
「ふふふ……楽しいですね、カレンさん……」
「私は怖いわ……」
「どうしたんですか? こんなに美味しいのに……ふふふ……」
「ガ……ガウ……」
「あ、起きたんですか、ドラゴンさん。ふふ……楽しいですか?」
「ガウガウ……(泣)」
「そうですか……よかったですね……ふふふ」
「楽しいって言ってるようには見えないんだけど……」
 マヂで怖い……心で涙するカレンであった。
 
 
「っく……か、勝ったぞ……」
 どれくらいの時が過ぎたろうか。
 目の前で飲んでいたパーペチュアル・ドラゴンの首が倒れ込んだのを見て、悠也は杯を放りだした。
 ちなみに、レミットはとっくにリタイアして寝込んでしまっている。
「ふう、みんなは……?」
 ふらつく頭をふって、あたりを見渡す。
 その額に、大粒の汗が浮かぶのはすぐだった。
 隣でどうにかカイルが勝利したらしい首はいいとしても、アルザ、キャラットと共に凍り付いてる首だの、ウェンディにノックアウトされている首だの、耳から血を吹き出してぴくぴくいってる首だの……
「1、2、3……あれ、最後の一本は?」
 倒れている首の数を数えても7本しかない。もう一本は……
「あ、そうか、この樽の山の向こうか」
 どうやら、酔いで頭がうまく動いてないな、とか考えながら、樽の山を回り込む。そこには……
 ズダーン!
 倒れ込むパーペチュアル・ドラゴンの最後の首があった。
 その前にいるのは一人の女性……
「……イリアさん?」
「はい……あ、こちらは終わりましたよ」
 まるで酒など飲んでいないかのようなしっかりした様子で、イリアが立っていた。あたりに酒の樽がかなりの数散乱しているあたり、ただ者ではない。
「ということは……俺達は勝ったのか?」
「そう、みたいですね」
「はは……なんかバカみたいな戦いだったけど、やったぞーっ!」
 と、万歳をしようとしてバランスを崩してしまう悠也。
「あぶない!」
 倒れ込んでしまう所だったが、それを間一髪でイリアが支える。
「あ……」
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう……」
 イリアの腕に支えられ、かすむ視界にイリアの心配そうな顔がうつる。
「あ……アイリス……さん?」
「えっ?」
「アイリスさん……だよね?」
「ち、違います! 私はイリアと……」
「いや、コンテストの時は遠くてよくわからなかったけど、この距離なら間違えるわけないよ」
「な、なんで……姫さまにも見破られない自信はあったんですが……」
「アイリスさんを間違えたりするもんか……」
「……悠也さん」
 そのまま真っ赤になって黙り込んでしまう二人。
 
「あーっ、なにやってんのよ、そこの二人!!」
 突然上がった声に、悠也とイリアことアイリスは慌てて離れると、声のした方を向いた。
 そこにいたのは、当然というかなんというか、レミットだった。
「レミット、お前寝てたんじゃなかったのか?」
「さっき目が覚めたの!」
 レミットは数時間に及ぶ激闘の、ごく初期にリタイヤしてしまっていたため、復活も早かったのだった。
「それより、初対面の女性にいきなり手を出すなんて、この女たらし!」
「い、いや初対面じゃ……もが」
 必死に言い訳をしようとした悠也だが、アイリスが慌ててその口を押さえる。
(悠也さん、私の正体はどうか姫さまにはご内密にお願いしますっ)
(そ、そんなこと言ったって……)
「とにかく、離れなさいよっ!」
「そうれす!」
 レミットの声に続くように突然上がった声に、そちらに目をやると……
「……ウェンディまで……」
「悠也ふぁん! おしおきれす!」
 目が据わっている……怖い。
「人が苦労してたってのに、その苦労もしらないで……」
「そーよね、一人だけいい目見てるのは許せないわねー」
 拳を握ったリラだとか、思いっきり不機嫌そうなフィリーとか。
「悠也さん……」
 なぜか涙ぐんでいる若葉なんかがいたりして。
「……逃げよう」
 決断は早かった。アイリスの手を掴むと、くるりと背を向け一目散に逃げ出す。
「「「「「待てーーーっ!!」」」」」
 
 
 背後で起こっているそんな騒ぎを後目に、楊雲は倒れたパーペチュアル・ドラゴンの首の一つに歩み寄った。
「………………」
 そして、つぶやくように呪文を唱える。
 それと共に、パーペチュアル・ドラゴンは光の粒となって中空へと消えていく。
 全ての首が消えた後には、荒れ果てた中央ガーデン前広場と樽の山、酔いつぶれている何人かが残っているだけだった。
「……どうにか、世界は救われましたか……」
 と、その時。
「貴様ら! よくも我々の野望を妨げてくれたな!」
 今までどこにいたのか、わらわらといかにも悪党な男達が広場へと乗り込んで来た。
 それを引き連れているのは、いかにも悪の組織の幹部〜、というような男。
「こうなったら、せめて貴様らだけでも……」
 だが、その声に答えるように、ゆらりと人影が立ち上がる。
「……貴様らが『ツェソバノレン観光協会』か。よくもこのカイル・イシュバーンさまにこんなくだらん事をさせてくれたな……」
 ゴゴゴゴゴ……というような効果音を背負い、カイルが幹部へと歩み寄っていく。
 そのあまりの気迫に数歩後ずさってしまう幹部。
「貴様らなど、『悪』とは認めん! 失せろ!!」
 酒のせいか、キれたカイルの魔法が炸裂し、『ツェソバノレン観光協会』は壊滅したのだった。
 
 
 結局お金を稼ぐことはできなかったので、まだまだアルバイトを続けなければならないとか。
 イリアことアイリスと共に、どうにか皆の追跡を逃れた悠也が後で女の子達にボコられたとか。
 『ツェソバノレン観光協会』って一体なんだったのだろうとか。
 そんなことはまた別の話である。
 
 
 ポロロン……
「かくして、『ツェソバノレン観光協会』のパーペチュアル・ドラゴン復活の野望はうち砕かれた。しかし、油断するな悠也、カイル、レミット! いつか、必ずや第二、第三の『ツェソバノレン観光協会』が……」
「「「やめてくれーーっ!」」」
 
 ちゃんちゃん。
 
 
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あとがき
 
 ごめんなさい!
 まずはじめに謝っておきます。遅れまくってごめんなさい!!(土下座)
 いや、もう言い訳なんていたしませぬ。どうか、許しておくんなさいまし。
 
 さて、今回で第二期リレーも終わりなんですが。
 なんか、キャラを壊しすぎている気がします。お気にさわったらごめんなさい。どうかな〜、面白くなってるかな?
 最後の方なんか、結構適当になってしまっていて、あんまり良くないかもしれないです。でも、これ以上長くするのもなんだし……これまたごめんなさい。
 
 では、また次回で。
 

 
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