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なんちゃってのんふぃくしょん 巻の伍

「ぱわーあっぷ」編

「さて二人とも、待たせたね。今日はいよいよ君たちを、おいでの皆さんにご紹介申し上げようと思うんだ」
 笑みを浮かべて二人に語りかける私。しかし。
「あ…はあ…」
「紹介…って言っても、ねえ…」
 ところが二人ともどうもノリが悪い。深篠姫はあきれたような顔でため息をつくし、エルメスフェネック改めエリスは、困ったような苦笑いを浮かべている。
 二人はしばらく何か目配せをしたりごにょごにょ耳打ちしあったりしていたが、やがてエリスの方が私にしぶしぶ、といった風情で言ってきた。
「あのさあ、もーらさん…。いよいよ紹介、って言ってもさあ…。
 あたしたちが今のこの体をもらってから…その…」
 まあ、言いたいことはわかる。
「あ、んー。確かに…紹介が、ちょっとばかし遅くなっちゃったよねえ」
「私たちがこの体をもらったのは6月ですよ。半年前です。
 普通、半年は『ちょっとばかし』ではないと、私は思いますけれど」
 深篠姫も、やれやれ、と言わんばかりの口調で言う。まあ、その通りだ。
「確かにそうなんだけどね。ま、せっかくだし」
「赤い扉を選ぶみたいなノリで言わないでよ」
「ツッコミがマニアックだね、エリス」
「そりゃね、マニアックな人との付き合いも長いから」
「まあ、ともあれ。やる気になってくださったのなら紹介して頂きましょう。それこそ、せっかくですし」
 そう言ってくれたことだし、まずは深篠姫から紹介することとしよう。
「というわけで、第参代深篠姫です」
「以前同様、もーらさんのメインマシンをつとめさせて頂きます、深篠です。サイトの更新などは私を通じて行われておりますので、皆様にもお世話になります。今後もよろしくお願いしますね」
 モニターの前の皆様には、深篠姫がお辞儀したところを思い描いて頂きたい。
「そして深篠姫の何が変わったかというと」
「私の何が変わったかと申しますと」
「図体がでっかくなって、重たくなりました」
 きっ。
 わ。深篠姫の目がコワイ。
「そういう仰り様はないのではありませんか。わざわざかさばる19インチCRTなんて装備させてみたりとかしたのはもーらさんでしょう。
 それに今度の私は水冷式なのですから。冷却システムがファンだけのときよりも、冷却液タンクやらラジエターやらがあるぶん大型化するのは仕方ないです。
 そのぶん物静かになりましたでしょう?」
「…ビデオカードにファンがついてるから期待してたほどでも」きっ「…ええ静かです」
 まあ実際、ハイスペックな割には充分静かではあるのだけれど。
「初代の私が94年から、弐代目の私が99年からですから、前回の代替わりよりも1年早い交代でしたね」
「やっぱりキミはメインマシンだからね。スペック的に動かないソフトがあると何となく我慢ならないわけよ」
「そのソフトというのが某同人対戦格闘ゲームだったというのが、らしいといえばらしいですね」
「…いいじゃないか」
 なんだかだんだん紹介と言うより私へのツッコミばかりになってきた気がする。
「っさぁて、じゃあエリスの紹介に移ろうかなっ」
「逃げましたか。ある意味賢明ではあります」
「だまらっしゃい。さてエリス」
「はいはい」
 なんかエリスも苦笑しているがまあ気にしない。
「ええと、エルメスフェネック改め、エリス=フェネックです」
「名前はもう一度変わるかもしれないよ」
「え、そうなの?」
 エリスがきょとんとしている。
「『エルメスフェネック』っていう名前をどうして付けたかは知ってるよね?」
「え? あ、うん。昔のあたしはすぐに壊れたから、『壊れてもまた復活してくるように』って、爆発したはずなのにいつの間にか復活してる、『エルメスフェネック』の名前をくれたんだよね」
 そうだったのである。
「だからね、新しい体を手に入れた君はもうそう簡単には壊れないんで、『エルメスフェネック』っていう名前は相応しくなくなったな、と思ったわけさ。でも君の名前がなかなか思いつかなくってねえ。性能が向上したからって『ネガレイファントル』っていうのも安直だし、可愛い名前じゃないしねえ」
「うん、その名前はちょっと、あたしとしても嬉しくないな」
「で、なんとかひねり出した名前が『エリス』。これは私の好きな名前だから変えないと思うけど…後半がね、どうにも思いつかなかった」
「だから、『エリス=フェネック』。フェネックがそのまま残っちゃったんだね。で、そっちの方は何かいいの思いついたらそっちを変えることもあるかも…と」
「そういうこと。でもま、一時的にしてもそう言う名前が付いたんだし。せっかくだから君の外見イメージは、高校1年生くらいで、金髪碧眼で、フェネックギツネの耳がついてる女の子ってことで」
 私の言葉に絶句するエリス。
「…あ、あたしって…ケモノ耳なの…? しかもフェネックギツネだなんて…そんなマイナーな…」
「まー、スナメリやらゴールデンライオンタマリンやらがサブヒロインをつとめる昨今だ、マイナーどうぶつっ娘でもいいじゃないか」
「そんなちょーマニアック所を引き合いに出されても…」
「…しかも、ファーストネームもファーストネームですからね」
 突如、あきれ顔のまま黙っていた深篠が会話に入ってきた。
「きっと最後にはもーらさんに捨てられてパラノイアになって襁褓に顔を当てて泣くことになるんですよ」
「そ、そんなあ〜」
 深篠の真顔の冗談に、泣きそうになって私を見るエリス。
「それとも彼女で何か悪さを働くおつもりですか。コンピュータウィルス『黄金のリンゴ』とか作って彼女にばらまかせるとか」
「あうう…悪事の片棒は担ぎたくないよう…」
「やらないよ。てかウィルスなんて作る技術ないよ」
「下心がない割には剣呑な名前ですよね、エリスとは」
「いいの。実際下心なんかないんだから。大丈夫だよエリス」
「あ…うん」
 深篠が余計なことを言うからなんかエリスが不安になってしまったようだ。
「ささ、気を取り直してパワーアップしたところのご紹介など」
「ええっと…。あたしは、LaVieCからLaVieGTypeCへのパワーアップだから、全体的にスペックの数字が上がっただけだね。深篠さんみたいに水冷システムが搭載されたとかそういう新機軸は別にないかな…。強いて言うなら、メモリースティックとDVDが使えるようになったよ。あとそれから…ワイヤレスLANがあるから、デンパガジュシンデキルヨウニナリマシタピピピピピピ」
「エリス? エリス!」
「はっ? あたしはどこココは誰?」
「そーゆーでんぱは受信しなくていいから」
「はぁい」
 ともあれ、今後はこんな面々でパソコンライフを営み、かつサイト運営をしていきますので、よろしくお願いいたします。

 ・・・・・・。
「ふむ、エリス」
「なんですか、深篠さん」
「なんとなく、私どもでデスクトップアクセサリなどできそうな気がして参りました」
「そうだねえ、最近もーらさん喜んで使ってるみたいだし」
 ・・・・・・。
「で、深篠さん」
「なんですか、エリス」
「あたしたちがデスクトップアクセサリになったとしたら、やっぱりメインマシンの深篠さんがメインの方だよね」
「…でしょうね」
「…ああいうのって、メインがボケでサブがツッコミのことが多いと思うんだけど…」
「…私にボケをやれと」
「じゃあ、サブの方がいい?」
「…んー…」
「あー、大丈夫だよ二人とも、会話内容はともかくシェルなんて作れないから…君らを題材にゴースト作ったりはできないって…」


…ごめんなさい、ワケわかんない内容で…。

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