一茶発句全集(7)・・・春の部(6)

最終補訂2000年8月8日

 

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植物(続)

 

花 ( 初花、雨の花、花曇り、花衣、落花、花びら、花見、花見笠、花見衆、花の友、花の下、花の山、花の雲

花の都、花の陰、花の雨、花盛り、花吹雪、花の雪、花盗人、花の香、花莚、花の宿)

    華の友に又逢ふ迄は幾春や          知友録     寛3
        留別  渭浜庵
    華のもと是非来て除掃勤ばや        知友録     寛3    「除掃」→「掃除」
        首途の時薙髪して
    剃捨て花見の真似やひのき笠        寛政句帖   寛4
    父ありて母ありて花に出ぬ日哉      寛政句帖   寛4
    もし降らば天津乙女ぞ花曇          寛政句帖   寛4    (出)『霞の碑』
    玉ぼこの近道付り花のほとり        寛政句帖   寛5
    寝心に花を算へる雨夜哉            寛政句帖   寛5
    吹降や花にあびせるかねの声        寛政句帖   寛5
    蛇出て兵者を撰る花見哉            寛政句帖   寛5
    高山や花見序の寺参り              寛政句帖   寛6
    奈良坂や花の咲く夜も鹿の声        寛政句帖   寛6
    或時は花の都にも倦にけり          西国紀行   寛7
        二月廿二日、伊曽野、都芙子と折から雨後のさくらのちり 〜 なる神社に参りて
    拝上頭に花の雫かな                西国紀行   寛7
        神前寺
    お百度や花より出て花に入          西国紀行   寛7
        亡師の石頭を拝して
    塚の花にぬかづけや古郷なつかしや  西国紀行   寛7    (異)『日々草』中七「ぬかづけば古郷」
    遠山と見しは是也花一木            西国紀行   寛7
    遠山や花と見るより道急ぐ          西国紀行   寛7    (異)『このはな』中七「花と見しより」
        三月三日、此里の習ひとて、家々に花をかざるこそ風流なる風情也
    京にもかくありたきよ軒の花        西国紀行   寛7
        入鄙を出て三里、三島のやしろに拝上す。是大山積のやしろ也
    冥加あれや日本の花惣鎮守          西国紀行   寛7
    桃柳庇 〜 の花見かな              西国紀行   寛7
    あの鐘の上野に似たり花の雲        花供養     寛10
    花曇三輪は真黒のくもりかな        さらば笠   寛10
        寛政十年三月、播州皿屋敷の遠忌にて出るとて、人顔の裸虫大坂にて度々見ければ
    さく花の蝶ともならでおきく虫      浅黄空     寛10
                      (出)『自筆本』(異)『八番日記』(政4)上五下五「さて花の・・・おきゝ菊」
    花さくやあれが大和の小口哉        書簡       寛10
                (異)書簡(寛10)上五「花の雲」『享和句帖』(享3)上五下五「花の雲・・・臣下哉」
    活て居る人をかぞへて花見哉        西紀書込   寛中
    ゑにしあれや二度大坂の花の宿      日々草     寛中    「ゑ」→「え」
        水哉のぬし上洛を送る
    比もよし五十三次華見笠            知友録     寛中
    先の世の華見もさぞ親の事          西紀書込   寛中
    似た声の径は聞也華曇り            西紀書込   寛中
    二人ともあらぬ弟を塚の華          西紀書込   寛中    「弟」→「俤」
    ちる花やほつとして居る太郎冠者    享和二句記 享2
    あたら雨の昼ふりにけり花の山      享和句帖   享3
    片脇に息をころして花見哉          享和句帖   享3
    客の沓かくるゝ程の花も哉          享和句帖   享3
    咲く花の日の目を見るも何年目      享和句帖   享3    (出)『七番日記』『浅黄空』前書き
                             「東叡山大赦」『自筆本』(異)『発句鈔追加』中七「日の目を見るは」
    としよりの追従わらひや花の陰      享和句帖   享3
    花の雲あれが大和の臣下哉          享和句帖   享3
                      (異)書簡(寛10)下五「小口哉」書簡(寛10)上五下五「花さくや・・・小口哉」
    又けふも逢ひそこなひぬ花の山      享和句帖   享3
    夕暮や鳥とる鳥の花に来る          享和句帖   享3
    雨の日をよりも撰たり花の山        文化句帖   化1
        いつ 〜 は桜の陰にまからんとて、前の日より打けはひて立出けるも俄に空かきくも
        りて雨はしきなみ打ければ、たのむ木陰もつひにはもりて、或は衣のうら返してかづ
        き、あるは敷ものをかざしつゝ、身重き人々、年に稀なる野遊の本意なくやあらん。
    いづかたの花見なるべし野辺の雨    文化句帖   化1
        月船と登東叡山
    御山はどこ上りても花の咲          文化句帖   化1
    草越に江戸も見へけり花の山        文化句帖   化1    「へ」→「え」
    こつ 〜 と人行過て花のちる        文化句帖   化1
    咲くからに雨に逢けり花の山        文化句帖   化1
    どこからの花のなぐれぞ角田川      文化句帖   化1
    奈良漬を丸でかぢりて花の陰        文化句帖   化1    「ぢ」→「じ」
    初花のあなたおもてや親の里        文化句帖   化1
    初花や山の粟飯なつかしき          文化句帖   化1
        身の軽き我 〜 の気さんじなる、手の奴足の駕に任せて、雨が降うと、やりがふろうと
    花ちるや雨ばかりでも角田川        文化句帖   化1    「ふろう」→「ふらう」
                                     (出)『七番日記』前書き「木母寺に雨やどりして」『自筆本』
    花びらの埃流にふる雨か            文化句帖   化1
    人並に帰りもせでや雨の花          文化句帖   化1
    ふる雨に一人残りし花の陰          文化句帖   化1
    ことの葉も夭々たらん花衣          文化句帖   化2
    素湯売も久しくなるや花の山        文化句帖   化2
    柴の戸や世間並とて花の咲          文化句帖   化2
        達磨賛
    ちる花を屁とも思はぬ御顔哉        文化句帖   化2    (出)真蹟
    ちる花に活過したりとゆふべ哉      文化句帖   化2
    ちる花や土の西行もうかれ顔        文化句帖   化2
    花さけや惟然[が]鼾止るやら        文化句帖   化2
    花ちるやいかにも黒き首筋へ        文化句帖   化2
    花ちるやひだるくなりし顔の先      文化句帖   化2
    花に雨糸楯着たる御顔哉            文化句帖   化2
    花の山飯買家はかすむ也            文化句帖   化2
    花見るもあぶなげのない所哉        文化句帖   化2
    麦の葉のきつぱりとして花の雲      文化句帖   化2
    金の糞しそうな犬ぞ花の陰          文化句帖   化3    「そう」→「さう」
    咲ちるやけふも昔にならんず[る]    文化句帖   化3
    鼻先の上野の花も過にけり          文化句帖   化3
    花咲くや廿の比の鐘もなる          文化句帖   化3
    花の陰此世をさみす人も有          文化句帖   化3
    花の陰隙ぬす人ぞたのもしき        文化句帖   化3    (異)『発句鈔追加』中七「ひま盗人も」
    夕月や花泥坊の迎ひ駕              文化句帖   化3
    傘で来し人をにらむや花の陰        文化句帖   化4
    かつしかの空と覚へて花の雲        文化句帖   化4    「へ」→「え」
    かつしかやふり行迹の花の雲        文化句帖   化4
    咲花やけふをかぎりの江戸住居      文化句帖   化4
    花おの 〜 日本だましひいさましや  文化句帖   化4
    花咲て妹がこんにや[く]はやる也    文化句帖   化4
    花の雨ことしも罪を作りけり        文化句帖   化4
    花の陰よい雷といふも有            文化句帖   化4
    花の雲翌から江戸におらぬ也        文化句帖   化4    「お」→「を」
    花の山仏を倒す人も有              文化句帖   化4
    貧乏人花見ぬ春はなかりけり        文化句帖   化4
    降雨もしすまし顔や花の陰          文化句帖   化4
    いざゝらば死げいこせん花の陰      文化句帖   化5
    乞食も一曲あるか花の陰            文化句帖   化5
    咲花に迹の祭の木陰哉              花見の記   化5
                                       (異)『発句集続篇』前書き「友にはぐれて」上五「散花に」
    咲く花に武張り給はぬ御馬哉        花見の記   化5
    咲花や彼梅若の涙雨                文化句帖   化5
    さく花や深山烏の口果報            文化句帖   化5
    さく花や昔 〜 はどの位            花見の記   化5    (出)『発句鈔追加』前書き「吉野」
    ちる花をざぶ 〜 浴る雀哉          文化句帖   化5
    散る花を脇になしてや江戸贔負      花見の記   化5    (出)『発句鈔追加』
    ちる花にはにかみとけぬ娘哉        文化句帖   化5
    ちる花や鶯もなく我もなく          文化句帖   化5
    花盛必風[邪]のはやりけり          文化句帖   化5
    花さくや足の乗物手の奴            文化句帖   化5
    花さくや目を縫れたる鳥が鳴        文化句帖   化5
                (類)『句稿消息』前書き「小田原町」『七番日記』上五下五「かすむ日や・・・雁が鳴」
    花の雨虎が涙も交るべし            文化句帖   化5
    又しても橋銭かする花見哉          文化句帖   化5
    山盛の花の吹雪や犬の椀            文化句帖   化5
        観音法楽
    たゞ頼め花ははら 〜 あの通        化五六句記 化6    (異)『文政版』前書き「観音奉納」中七
             「花もはら 〜 」『文化三―八年句日記写』(化6)前書き「高蔵寺」中七「桜ぼた 〜 」
    散花に蟻の涙のかゝる哉            化五六句記 化6
    ちる花や仏ぎらひが浮[れ]けり      化五六句記 化6
    初花に女鐘つく御寺哉              化五六句記 化6
    花さくや田舎鶯いなか飴            化五六句記 化6    「い」→「ゐ」
        木母寺の花は青葉にうつりて、念仏の声もなく、ゆきゝの人
        も稀 〜 也。茶店の竈木陰に雨ざれて僅かに春の趣を残せり。
    後れ花其連是にまかり有            化三―八写 化7    (出)『発句集続篇』
    斯う活て居るも不思儀ぞ花の陰      七番日記   化7    「儀」→「議」(出)『文政版』治方刷物
    咲ごろやさな[が]ら花も御膝元      七番日記   化7
    さく花に都てえど気の在所哉        七番日記   化7
    さく花に長逗留の此世哉            七番日記   化7
    さく花にぶつきり棒の翁哉          七番日記   化7
    さく花も空うけ合の野守哉          七番日記   化7
    さく花や此世住居も今少            七番日記   化7
    さく花やはづれながらも御膝元      七番日記   化7
    さゞ波や花に交る古木履            七番日記   化7
        木母寺の花は大かた青葉にうつりて、念仏の声もなく、ゆきゝの人も稀 〜
        なるに、茶店が竈の所 〜 に雨ざれて、僅に暮春のありさまを残せり。
    其連に我もあるぞよすがれ花        七番日記   化7
    散がての花よりもろき涙哉          七番日記   化7
    ちる花や已におのれも下り坂        七番日記   化7
                                 (異)同日記(化7)『発句集続篇』上五中七「花ちるや己が年も」
    ちる花や左勝手の角田川            七番日記   化7
    手の奴足の乗もの花の山            七番日記   化7
    花さくや川のやうすも御膝元        七番日記   化7
       (異)同日記(化7)中七「日のさし様も」『文化三―八年句日記写』(化7)上五「ちる花や」
    花咲や欲のうきよの片すみに        七番日記   化7
    花ちるや権現様の御膝元            七番日記   化7
    花ちるや称名うなる寺の犬          七番日記   化7    (出)『発句鈔追加』真蹟
    花ちれと申はせじな夕念仏          七番日記   化7
    花の雨扇かざゝぬ人もなし          七番日記   化7
    花の陰我は狐に化されし            七番日記   化7
    花の木の入口のいの字寺            七番日記   化7
    花びらがさはつても出る涙哉        七番日記   化7(異)同日記(化7)中七「そとさはつても」
    腹中の鬼も出て見よ花[の]山        七番日記   化7
    木兎の面はらしたる落花哉          七番日記   化7
    夕暮はもとの旅也花の山            七番日記   化7
    汚坊花の表に立りけり              七番日記   化7
    さく花にけぶりの嗅いたばこ哉      七番日記   化8    「い」→「ひ」
    如意輪は御花の陰の寝言哉          七番日記   化8
    花咲て祖師のゆるしの肴哉          七番日記   化8
    花さくや桜所の俗坊主              七番日記   化8
    花の木にさつと隠るゝ忰哉          七番日記   化8
                                                 (出)『我春集』(異)『希杖本』下五「世忰哉」
    花の義はちり候[と]なく雀哉        七番日記   化8    「義」→「儀」
    花の日も精進ものや山の犬          七番日記   化8
        修羅
    穴一のあなかしましや花の陰        株番       化9
    今のめる迄も花さく老木哉          七番日記   化9    (出)『株番』真蹟
        十七日  随斎会
    おくゑぞや仏法わたる花も咲        株番       化9    「ゑ」→「え」
    けふこそは地獄の衆も花見哉        七番日記   化9
                                             (類)『八番日記』(政3)『自筆本』下五「お正月」
    さく花の中にうごめく衆生哉        七番日記   化9  (出)『株番』『浅黄空』前書き「人間界」
                     『自筆本』『文政版』(類)『八番日記』(政2)『発句鈔追加』上五「陽炎の」
    さく花や拾んとすれど翌の事        東西四歌仙 化9
    ちる花につかまりしやうな寒哉      七番日記   化9
    ちる花に仏とも法ともしらぬ哉      七番日記   化9    (出)『株番』『文政版』前書き「畜生」
    ちる花や呑たい水も遠がすみ        七番日記   化9    (異)『株番』前書き「餓鬼」上五中七
                                 「花ちるや呑たき水は」『文政版』上五中七「花ちるや呑たき水を」
    どか 〜 と花の上なる馬ふん哉      七番日記   化9
    とし 〜 の花の罪ぞよ人の皺        七番日記   化9
        三人上戸  笑
    とゝ喰た花と指す仏哉              株番       化9    (出)『発句集続篇』
    花さくや榎にはりし火[の]用心      七番日記   化9    (出)『株番』『発句集続篇』
    花さけや仏法わたるえぞが島        七番日記   化9
                           (出)『何袋』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「花咲や」『発句鈔追加』
                      前書き「善光寺如来夷岨のしまへ渡りたまふ」上五下五「花さくや・・・夷岨の島」
    世[の]中は地獄の上の花見哉        七番日記   化9    (出)『株番』
    我らさへ腹のふくれる花も見る      七番日記   化9
    入らば今ぞ草葉の陰も花に花        志多良     化10
                                                   (出)『句稿消息』前書き「未辞世」『終焉記』
    大原や丁[字]に寝たる花見連        七番日記   化10
                                                    (異)遺稿 上五中七「柴門やしもくに寝たる」
    女供はわらん[ぢ]がけの花見哉      七番日記   化10    「供」→「共」
        ナヘノ滝                                         「ヘ」→「ヰ」または「エ」
    滝けぶり側で見へさへ花の雲        七番日記   化10    「見へ」→「見て」(出)『発句鈔追加』
    ちる花を引かぶ[り]たる狗哉        七番日記   化10
    ちる花に息を殺して都鳥            七番日記   化10
    ちる花に花殻たびよ小順礼          七番日記   化10
    ちる花のわらじながらに一寝哉      七番日記   化10    「じ」→「ぢ」
                         (出)『句稿消息』遺稿(異)『志多良』『希杖本』中七「わらぢながらの」
    ちる花や今の小町が尻の迹          七番日記   化10
                                             (出)『句稿消息』(異)『志多良』上五「花ちるや」
    輿の花盗人よぬす人よ              七番日記   化10
                                     (異)『文政句帖』(政8)『浅黄空』『自筆本』上五「駕の」
    花に出て犬のきげんもとりけらし    七番日記   化10    (出)『句稿消息』『志多良』『希杖本』
    花の山心の鬼も出てあそべ          七番日記   化10
                                       (異)『浅黄空』上五「ちる花に」『自筆本』上五「散る桜」
    古垣も花の三月十日哉              七番日記   化10    (出)『句稿消息』
    わらんじのぐあひわろさよ花一日    七番日記   化10    「じ」→「ぢ」
                                               (異)『浅黄空』中七下五「ぐあひ苦になる花見哉」
    天邪鬼踏れたまゝで花見哉          七番日記   化11
    有様は我も花より団子哉            七番日記   化11
                             (出)『文政版』書簡(異)『浅黄空』上五中七「正直はおれも花より」
    妹が家や庵の花にまぎれ込          七番日記   化11
    勘忍をいたしに行や花の陰          七番日記   化11    「勘」→「堪」
                                               (出)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『文政版』
    気[に]入た花の木陰もなかりけり    七番日記   化11
    小泥坊花の中から出たりけり        七番日記   化11    (異)『希杖本』中七「花の中より」
    ちる花に喧嘩買らが通りけり        七番日記   化11
    ちる花に罪も報もしら髪哉          七番日記   化11
    ちる花に鉢をさし出す羅漢哉        七番日記   化11
                                                   (出)『浅黄空』前書き「日ぐらし」『自筆本』
    何のその花が咲うと咲くまいと      七番日記   化11
                         (異)『句稿消息』前書き「こちとらや」中七下五「花が咲うが咲くまいが」
    花見るも役目也けり老にけり        七番日記   化11
    山里やかりの後架も花の陰          七番日記   化11
                                 (出)『希杖本』(異)『浅黄空』『自筆本』中七「後架といふも」
    よりあきてもとへもどるや花の陰    七番日記   化11
    我に似てちり下手なるや門の花      七番日記   化11
    送られし狼鳴や花の雲              七番日記   化12
    君がため不性 〜 に花見哉          七番日記   化12    「性」→「承」
                                                         (類)同日記(化12)下五「おどりけり」
    さく花にしの字嫌ひもさみするな    七番日記   化12
                                           (異)同日記(化12)中七下五「しの字嫌ひの本家かな」
    日 〜 の屎だらけ也花の山          七番日記   化12
    花咲て安房仲間のふへにけり        七番日記   化12    「安」→「阿」「へ」→「え」
        日光祭り御役人付といふもの題に分て二百年忌の真似をしたりし時  東本願寺菩薩
    花さくや弥陀成仏の此かたは        句稿消息   化12
      (異)『七番日記』(化12)前書き「東[本]願寺御門迹」上五「涼しやな」真蹟 前書き「本願寺」
                 『句稿消息』『文化九・十年句帖写』(政10)『文政版』『希杖本』上五「涼しさや」
    花ちるな弥陀が御苦労遊ばさる      七番日記   化12
                                     (出)『浅黄空』前書き「四十八夜をてうもんして」『自筆本』
    花の日を廿日喰へらす鼠哉          七番日記   化12
        送雲水
    藪の花迹見よそわか必よ            七番日記   化12
 (異)『句稿消息』前書き「大和巡りする人に旅の真言といふをさづけて」下五「忘るゝな」『浅黄空』
       『文政版』前書き「旅立に送」上五下五「必よ・・・花の雲」『自筆本』上五下五「必よ・・・花の空」
    世の中の花の盛を忌中札            七番日記   化12    (出)同日記(化13)
    牛の背の花はき下る親子哉          七番日記   化13
    おとろへや見た分にする花の山      七番日記   化13    (出)『発句集続篇』
    小うるさや山のおくにも花の何のと  七番日記   化13    (異)同日記(化13)中七「山も仲々」
    ちる花に御免の加へぎせる哉        七番日記   化13    「加」→「咥」
 (出)『発句集続篇』(異)『浅黄空』『自筆本』前書き「東叡山」「さく花に咥へぎせるの御免かな」
    散花もつかみ込けりばくち銭        七番日記   化13
    花咲て本んのうき世と成にけり      七番日記   化13
    花さくや下手念仏も銭が降る        七番日記   化13
                     (出)『句稿消息』(異)『文政句帖』(政7)上五中七「花の世や下手念仏に」
    花ちる[や]一開帳の集め銭          七番日記   化13
    おとろへや花を折にも口曲る        七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』
    喧嘩買花ふんづけて通りけり        七番日記   化14
               (異)『浅黄空』前書き「上野」中七「花けちらして」『自筆本』中七「花をちらして」
    花さくや旅人のいふ乞食雨          七番日記   化14
    深山木やしなの育[の]花盛          七番日記   化14
    穀つぶし花の陰にて暮しけり        七番日記           (出)『浅黄空』『自筆本』
    駕かきは女也けり花の山            七番日記   政1
    けふは花見まじ未来がおそろしき    七番日記   政1
                    (異)同日記(政1)上五中七「花見まじ 未来の程が」『浅黄空』『自筆本』中七
             「見るや未来が」『文化九・十年句帖写』(政10)『発句集続篇』前書き「耕ずして喰ひ、
             織ずして着る体たらく、今まで罰のあたらぬもふしぎ也」上五中七「花の陰寝まじ未来が」
        上野
    下馬札や是より花の這入口          七番日記   政1
    強情を蒔そこなふ[や]花の山        七番日記   政1
    散花の辰巳へそれる屁玉哉          七番日記   政1
        しんぽ高台寺はしゆろぼきや入らぬお市小袖の裾ではく
    ちる花やお市小袖の裾ではく        七番日記   政1
                         (出)『文化九・十年句帖写』(政9)『発句集続篇』前書き「新保高大寺」
                             『浅黄空』『だん袋』前書き「新保村高台寺」『自筆本』『発句鈔追加』
    散花や長 〜 し日も往生寺          七番日記   政1
    ない袖を振て見せ 〜 花見哉        七番日記   政1
    畠縁りに酒を売也花盛              七番日記   政1    (類)同日記(化14)下五「麦の秋」
    花を折拍子にとれししやくり哉      七番日記   政1    (出)『浅黄空』前書き「病如得医」
             『文政版』前書き「如病得医」『だん袋』前書き「薬王品如得病医」『自筆本』『希杖本』
    花さくや伊達[に]加へし殻ぎせる    七番日記   政1    「加」→「咥」「殻」→「空」
           (出)『だん袋』『発句鈔追加』書簡(異)『自筆本』上五中七「花ちるや伊達にくわへる」
    花ちるやとある木陰も開帳仏        七番日記   政1
 (異)『おらが春』『文政版』前書き「三月十七日保科詣」下五「小開帳」『自筆本』上五「花さくや」
    花ちるや月入かたが往生寺          七番日記   政1    (異)同日記(政1)中七「此日は誰が」
                                 『浅黄空』上五「散花や」『自筆本』中七下五「月入る方は西方寺」
    花の世を笠きて暮す仏哉            七番日記   政1  (異)『発句集続篇』中七「笠着ておはす」
    花の世は仏の身さへおや子哉        七番日記   政1(出)『浅黄空』『だん袋』前書き「刈萱堂」
『希杖本』(異)『自筆本』中七「石の仏も」『文政版』中七「地蔵ぼさつも」書簡 中七「仏の身にも」
        谷中
    日ぐらしや花の中なる喧嘩買        七番日記   政1
    人に花大からくりのうき世哉        七番日記   政1
    本丸やあれも御用の花の雲          七番日記   政1
    我 〜 も目の正月ぞ夜の花          七番日記   政1
        甫外子はいかいの初登山に
    いざのぼれ花のしら雲ふむ迄に      真蹟       政2
    苦の娑婆や花が開けばひらくとて    八番日記   政2    (出)『だん袋』『自筆本』『文政版』
    小伜はちに泣花[の]盛りかな        八番日記   政2    (異)『梅塵八番』中七「七つ法華の」
    茶屋村の一夜に出来し花の山        八番日記   政2
  (異)『浅黄空』『自筆本』中七「一夜に湧くや」『おらが春』真蹟 中七下五「一夜にわきし桜かな」
        念仏踊
    花さくや三味線にのる御念仏        八番日記   政2    (出)『発句集続篇』
    花ちるや曲者やらじと云まゝに      八番日記   政2
    花ちるや末代無智の凡夫衆          八番日記   政2    (出)『発句鈔追加』
    花の陰赤の他人はなかりけり        八番日記   政2    (出)『おらが春』『文政版』書簡 遺稿
    花の世に穴ほしげなる狐哉          八番日記   政2
    山の月花ぬす人をてらし給ふ        八番日記   政2    (出)『おらが春』『文政版』
    赤髪にきせるをさして花見哉        八番日記   政3    (出)同日記(政4)
    あれ花が 〜 と笑ひ仏哉            八番日記   政3
                               (出)『自筆本』(異)『浅黄空』上五中七「花があれあれとて笑ひ」
    今迄は罰もあたらず花の雨          真蹟       政3
                       (類)『おらが春』『希杖本』下五「昼寝蚊屋」『八番日記』(政2)中七下五
                           「罪もあたらぬ昼寝哉」『発句集続篇』中七下五「罪もあたらず昼寝蚊屋」
    親と子がぶん 〜 に行花見哉        梅塵八番   政3
    髪髭も白い仲間や花の陰            八番日記   政3    (異)『梅塵八番』上五「髪結も」
    さく花やこり 〜 したる坂を又      八番日記   政3
    小むしろや花くたびれがどた 〜 寝  八番日記   政3
                                               (異)『梅塵八番』中七下五「花草臥のどさ 〜 と」
        上京を送る
    先繰に花咲山や一日づゝ            八番日記   政3
    草庵に来てはこそ 〜 花見哉        八番日記   政3  (異)『梅塵八番』中七「来てはくつろぐ」
    挑灯ではやし立けり花の雲          八番日記   政3
                               (異)『文政版』前書き「新吉原」上五中七「行灯ではやしたてるや」
    挑灯は花の雲間に入にけり          八番日記   政3
    遠山の花に明るし東窓              八番日記   政3(異)『文政句帖』(政6)下五「うしろ窓」
   同句帖(政7)中七下五「花の明りやうしろ窓」『浅黄空』『自筆本』中七下五「花の明りや夜の窓」
    花咲や目につかはれて大和迄        八番日記   政3
                             (出)『自筆本』(異)『梅塵八番』中七下五「目につかはるゝ大和道」
    花ちつてどつとくずるゝ御寺哉      八番日記   政3  (異)『梅塵八番』中七「どつとくつろぐ」
    花ちるや日傘の陰の野酒盛          八番日記   政3    (出)『浅黄空』『自筆本』
    若い衆に先越れしよ花の陰          八番日記   政3
        此年寒さ人なやみければ
    風の神ちくらへござれ花が咲        八番日記   政4
                               (出)『浅黄空』前書き「風を送」『自筆本』前書き「風はやりげに」
    風はやり仕廻へば花も仕舞哉        八番日記   政4  (出)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』
    くつろぎて花も咲也御成過          八番日記   政4    (出)『自筆本』
 (異)『梅塵八番』中七「花も咲けり」『浅黄空』前書き「隅田堤」「くつろいで花もさくかよ御成道」
    さく花や袖引雨がけふも降          八番日記   政4
    三絃で親やしなふや花の陰          八番日記   政4    (出)『自筆本』
    高井のや只一本の花の雲            八番日記   政4
    団子など商ひながら花見哉          八番日記   政4
    手をかざす鼬よどこだ花の雲        八番日記   政4
                                                   (異)『浅黄空』『自筆本』中七「鼬よいかに」
    どこそこや点かけておく花見の日    八番日記   政4
    年寄の腰や花花の迷子札            八番日記   政4    「花花」→「花見」
                         (異)『浅黄空』上五中七「花さくや親爺が腰の」『浅黄空』前書き「吉原」
                           上五中七「夜桜や親爺[が]腰の」『自筆本』上五中七「花さくや爺が腰の」
    何事もなくて花見る春も哉          八番日記   政4
    何者[の]花見や脇よれ 〜 と        八番日記   政4
    花咲や牛は牛連馬は馬              八番日記   政4    (出)『浅黄空』『自筆本』
    花寒し犬ものがれぬ嚔哉            八番日記   政4
                                             (異)同日記(政4)上五中七「花咲て犬もくん 〜 」
    花ちりぬ何にやらずの雨七日        八番日記   政4  (異)『梅塵八番』中七「あんにやらずの」
    花ならぬ老木はゆるせお七風        八番日記   政4    「ぬ」→「ば」
         (異)『浅黄空』上五中七「老木をば花も嫌ふか」『自筆本』上五中七「咲花も老木ぞ来るな」
    花の山東西南北の人                八番日記   政4
                                                   (異)『文政句帖』(政5)上五「居ながらや」
    花ふゞき泥わらんじで通りけり      八番日記   政4    「じ」→「ぢ」
    花見んと致せば下に 〜 哉          八番日記   政4
    花は咲也人も風引ぬ                八番日記   政4
    人に風花は申に及ぬぞ              八番日記   政4
    菩薩達御出現あれ花の雲            八番日記   政4
    雨降りて地のかたまりて花盛り      文政句帖   政5
    今の世や花見がてらの小盗人        文政句帖   政5
    いらぬ花折たく成るが手癖哉        文政句帖   政5
    傘持はばくち打也花の陰            文政句帖   政5
    京迄は一筋道ぞ花見笠              文政句帖   政5
    国中は惣びいき也花の雲            文政句帖   政5
    下戸衆はさもいんき也花の陰        文政句帖   政5    (出)同句帖(政8)
    ことしきりなどゝいふ也花見笠      文政句帖   政5
    さそはれてきり一ぺんの花見哉      文政句帖   政5
    散花につけても念仏ぎらひ哉        文政句帖   政5
    散花や人橋かゝるあさか山          文政句帖   政5
    ちる花は鬼の目にさへ涙かな        文政句帖   政5
    妻や子が我を占ふか花もちる        文政句帖   政5
    寺の花はり合もなく散にけり        文政句帖   政5
    長旅や花も痩せ[た]るよしの山      文政句帖   政5
    寝て待や切手をもたぬ花見衆        文政句帖   政5
    花陰も笠ぬげしたに 〜 哉          文政句帖   政5
    花さくや今廿年前ならば            文政句帖   政5
    花咲や大権現の風定                文政句帖   政5
    花さくや日がな一日立仏            文政句帖   政5
    花の香やばせをおなじ仏の日        文政句帖   政5
    花の木の持て生たあいそ哉          文政句帖   政5
                                                  (異)『文政版』『希杖本』真蹟 下五「果報哉」
    花の世に西の望はなかりけり        文政句帖   政5
    花の世や田舎もみだの本願寺        文政句帖   政5    (類)同句帖(政5)上五中七「鹿も角落
   すやみだの」同句帖(政5)上五中七「鬼茨もなびくやみだの」同句帖(政5)上五中七「西へちるさ
    くらやみだの」書簡 前書き「三月廿三日東御門迹下向に」上五中七「木 〜 もめを開らくやみだの」
    花の代や越後下りの本願寺          文政句帖   政5    (類)同句帖(政5)上五「春風や」
    花の世や出家士諸あき人            文政句帖   政5
    花見せん娑婆逗留の其中は          文政句帖   政5
    花は雲人はけぶりと成にけり        文政句帖   政5
    人声や西もひがしも花吹雪          文政句帖   政5
    迷子札爺もさげて花見笠            文政句帖   政5
    みよしのや寝起も花の雲の上        文政句帖   政5  (異)同句帖(政7)中七「寝ころぶ花の」
    焼飯をてんで[に]かぢる花見哉      文政句帖   政5    「ぢ」→「じ」
    わか役に花盗しもむかし哉          文政句帖   政5
    産声に降りつもりけり花と金        文政句帖   政6
    えどを見に上る人哉花の山          文政句帖   政6
    さく花の雲の上にて寝起哉          文政句帖   政6
    空色の傘つゞく也花の雲            文政句帖   政6    (異)『浅黄空』『自筆本』中七下五
                             「傘のつづくや花盛り」『発句集続篇』中七下五「傘続きけり花ぐもり」
    花さくや京の美人の頬かぶり        文政句帖   政6
                   (出)同句帖(政7)(異)『浅黄空』『自筆本』上五中七「花ちるや都の美女が」
    花咲くやそこらは野屎野小便        文政句帖   政6
    花の木をうしろになして江戸びいき  文政句帖   政6
    花の世は親をやしなふ烏哉          文政句帖   政6    (出)同句帖(政7)
    花一つ里のきづ也花盛り            文政句帖   政6    「づ」→「ず」
    花踏んだわらぢながらやどた 〜 寝  文政句帖   政6(異)『浅黄空』『自筆本』上五「花を見た」
    人 〜 [や]笠きて花の雲に入        文政句帖   政6    (出)同句帖(政7)
    二渡し越して[の]先や花の雲        文政句帖   政6
    一銭の茶も江戸ぶりや花の陰        文政句帖   政7
    犬どもやはねくり返す花吹雪        文政句帖   政7    (出)同句帖(政8)
    馬乗や花見の中を一文字            文政句帖   政7    (異)『あつくさ』上五「馬乗が」
    江戸声やあたり八間花の山          文政句帖   政7
    江戸声や花見の果のけん花かひ      文政句帖   政7    「けん花」→「けん嘩」
    大猫が尿かくす也花の雪            文政句帖   政7
    おしなべて花にしなのゝ神路山      文政句帖   政7  (異)同句帖(政7)上五「人の気も」
    御山や人よばるにも花礫            文政句帖   政7
    上下の酔倒あり花の陰              文政句帖   政7
    小言いふ相手もあらば花莚          文政句帖   政7    (類)『だん袋』下五「菊の酒」
                   『文政版』前書き「やかましかりし老妻ことしなく」『文政句帖』下五「けふの月」
    十人の目利はづれて花の雨          文政句帖   政7  (異)同句帖(政8)中七「目利ちがふや」
    第一に気の薬也花の山              文政句帖   政7
    大名の花が散る也家根の窓          文政句帖   政7
    只の木もあいそに立やよしの山      文政句帖   政7
    散花の降りつもりけり馬屎塚        文政句帖   政7
    としまかりよれば花より団子哉      文政句帖   政7(異)書簡「としよりの身には花より玉子哉」
    名をしらぬ古ちかづきや花の山      文政句帖   政7
    二度目[には]病気をつかふ花見哉    文政句帖   政7
                                 (異)同句帖(政8)上五「次の日は」『嘉永版』上五「さる人は」
    二仏の中間に生れて花見哉          文政句帖   政7    (異)同句帖(政6)下五「桜哉」
    花咲や道の曲りに立地蔵            文政句帖   政7    (出)『浅黄空』『自筆本』
    花の陰誰隙くれしうす草履          文政句帖   政7
    花の雲の上にて寝物がたり哉        文政句帖   政7
    花[の]山命のせんたく所哉          文政句帖   政7
    花見るも銭をとらるゝ都哉          文政句帖   政7
    ぶら 〜 と不断の形で花見哉        文政句帖   政7
    宮人は歯に絹きせる花見哉          文政句帖   政7    「絹」→「衣」
                                                       (異)同句帖(政8)中七「歯に衣きせて」
    あつさりとあさぎ頭巾の花見哉      文政句帖   政8    (類)『七番日記』(化12)下五「交ぞ」
        指月上人の位階上りけるを祝して
    いたれりや仏の方より花衣          真蹟       政8
    笠程の花が咲けり手杵哉            文政句帖   政8
             (類)同句帖(政8)下五「木下闇」『七番日記』(化7)中七下五「花が咲たぞとぶ蛍」
    角力場や本んとの花も木から降る    文政句帖   政8
    猫盗まれてからちかづきや花の宿    文政句帖   政8
    花咲て娑婆則寂光浄土哉            文政句帖   政8    「則」→「即」
    花咲や散や天狗の留主事に          文政句帖   政8    「事」→「毎」
    花に浦汲や袖引雨などゝ            文政句帖   政8
    花の木に鶏寝るや浅草寺            文政句帖   政8    (出)『文政版』
    人撰して一人也花の陰              文政句帖   政8    (出)『文政版』
    人来ればひとりの連や花の山        文政句帖   政8
    今の世や猫も杓子も花見笠          政九十句写 政9
               (出)『ほまち畑』前書き「花見笠  文政八酉年」『文政版』『希杖本』『発句鈔追加』
    おどされた犬のまねして花見哉      政九十句写 政9    (異)『羅浮清和』中七「犬の真似する」
    ぢゝ犬におどされて散る花見哉      政九十句写 政9    (出)『希杖本』
    まゝ子花いぢけ仕廻もせざりけり    政九十句写 政9    (出)『希杖本』
    山寺や寝そべる下の花の雲          政九十句写 政9    (出)『希杖本』『発句集続篇』
    気をかえて東のそらを花見笠        あつくさ
    御印文の頭に花のちりにけり        自筆本
        修羅
    声 〜 に花の木陰のばくち哉        文政版
    さすが花ちるにみれんはなかりけり  発句鈔追加
        十王堂
    散花に目をむき出す閻魔哉          遺稿
            木母寺堤
    寝ころぶや御本丸御用の花の陰      浅黄空             (異)『自筆本』上五「寝てくふ」
    花衣よごれ去来と見ゆる也          真蹟
        白眼者他世上人
    花咲や自慢をきゝにくるすゞめ      発句鈔追加
    花の陰なむさん火打なかりけり      浅黄空             (出)『自筆本』『文政版』
    花の陰に寝なばみやうりをおもふべし真蹟
    花のなんのと[ん]ちんかんで五十年  随斎筆紀
    花掘し跡をおぼへて風の吹く        真蹟               「へ」→「え」
    花見笠一日わらぢのぐはひ哉        自筆本
    髭殿に先んこされけり花の陰        浅黄空
                                     (出)『自筆本』(類)『七番日記』(化9)下五「はつ松魚」
        菫蒲公[英]などおのがさま 〜 咲ほこる中を日影長閑に
        隅田川流れてしづ心なく花のほろ 〜 散る春色なるべし
    吹消したやうに日暮る花野哉        真蹟
    蕗の葉に煮〆配りて花の陰          浅黄空
                                         (出)『自筆本』(異)『七番日記』(化13)下五「山桜」
    ほく 〜 と花見に来るはどなた哉    真蹟

 

桜(桜花、初桜、夜桜、山桜、八重桜、浅黄桜、姥桜、遅桜、夕桜、若桜、江戸桜、糸桜、薄花桜、桜狩り)

    騒しき世をおし祓て遅桜            千題集     寛1
    酔てから咄も八重の桜哉            花勧進     寛1
    山下て桜見る気に成にけり          寛政三紀行 寛3
        述懐
    おもひきや果はさくらも藻屑とは    寛政句帖   寛4
    白雲の桜をくゞる外山哉            寛政句帖   寛4
        三角寺に詣
    是でこそ登かひあり山桜            西国紀行   寛7
    並桜遥拝す人をてらす哉            西国紀行   寛7
        巣日庵に遊ぶ、雨の日
    軒の雨鉢うつさくら閑しや          西国紀行   寛7
        石宝殿より一里、野渡をわたりて高砂、布舟に泊る
    先しるき前の池哉さくら哉          西国紀行   寛7
        野辺を逍遥す。折から住吉の宮に詣て
    落書の一句拙し山ざくら            西国紀行   寛7
    鳥と共に人間くゞる桜哉            花供養     寛8
    親ありとこたへてもどる桜哉        月の会     寛9    (出)『霜のはな』
    親負て子の手を引てさくら哉        西紀書込   寛中
    軍勢甲乙入べ[か]らずとさくら哉    西紀書込   寛中
    菅笠に顔あをぎつゝさくら哉        西紀書込   寛中    「を」→「ふ」
    花桜是にさへ人の倦日[哉]          西紀書込   寛中
    山桜今一本はなくも哉              享和二句記 享2    (異)同句日記 中七「あの一本は」
    我見ても二度立寺や山ざくら        享和二句記 享2
    翌の分に一山残す桜哉              享和句帖   享3
    安元の比の桜哉夕の鐘              享和句帖   享3
    暖国の麦も見えけり山桜            享和句帖   享3
    一足も踏せぬ山の桜哉              享和句帖   享3
    人に喰れし桜咲也みよしの山        享和句帖   享3
    見かぎりし古郷の山の桜哉          享和句帖   享3
         (異)『七番日記』前書き「三月廿日柏原に入」『文化句帖』(化1)『文政九・十年句帖写』
                       『浅黄空』『自筆本』『希杖本』『発句鈔追加』中七下五「古郷の桜咲にけり」
    山桜きのふちりけり江戸[の]客      享和句帖   享3
    山桜日毎ふく日にちりにけり        享和句帖   享3
    夕桜家ある人はとくかへる          享和句帖   享3
    息杖の穴こと 〜 し初桜            文化句帖   化1
    今にちるものと思へど桜哉          文化句帖   化1
    江戸衆に見枯らされたる桜哉        文化句帖   化1
    大川へ吹なぐられし桜哉            文化句帖   化1
    大降りや桜の陰に居過して          文化句帖   化1
    京人にせつち[や]うされし桜哉      文化句帖   化1
    国々は桜人には添ふて見よ          文化句帖   化1    「ふ」→「う」
        三月七日、七々叟と富岡八幡の開帳に詣、おく山にて
    咲からに縄を張れし桜哉            文化句帖   化1
    四十九年見ても初花ざくら哉        文化句帖   化1
        篤音あざりは(中略)二月の比より又濁世の衆生度んとて下山ありけ    「篤音」→「徳本」
        る。彼土の鳥けだものゝ名ごりおしくやあらん、別おしくやあらん。    「お」→「を」
    聖人に見放されたる桜哉            文化句帖   化1
    袖たけのはつ花桜咲にけり          文化句帖   化1
                             (出)『発句題叢』『嘉永版』『希杖本』『発句鈔追加』『発句集続篇』
    土舟にちれど芳野の桜哉            文化句帖   化1
    寝る隙の今更おしやちる桜          文化句帖   化1    「お」→「を」
    初桜はやちりかゝる人の顔          文化句帖   化1
        両国中村屋平吉方に十歌仙有披露
    花桜一木 〜 のいさほしや          文化句帖   化1    「ほ」→「を」
    人顔は下り闇也はつ桜              文化句帖   化1
    人事に志賀山越せばはつ桜          文化句帖   化1
    日の本の山のかひある桜哉          文化句帖   化1
    吹けばとぶ住居も春は桜哉          文化句帖   化1
                     (出)『七番日記』遺稿(異)『浅黄空』『自筆本』中七下五「家も桜の盛り哉」
        月船と登東叡山
    棒突も餅をうりけり山桜            文化句帖   化1
    本降りのゆふべとなりし桜哉        文化句帖   化1
    又人の立ふさがるや初桜            文化句帖   化1
    むら雨に半かくれし桜哉            文化句帖   化1
    夕暮や池なき方もさくらちる        文化句帖   化1
    来年はなきものゝやうに桜哉        文化句帖   化1
    後から吹来る桜 〜 哉              文化句帖   化2
    御迎ひの雲を待身も桜哉            文化句帖   化2
    かいはいの口すぎになる桜哉        文化句帖   化2
    かへる気になれば風止桜哉          文化句帖   化2
    米袋空しくなれど桜哉              文化句帖   化2
    桜咲く春の山辺や別の素湯          文化句帖   化2
    何桜かざくら銭の世也けり          文化句帖   化2    (異)『七番日記』(化11)『浅黄空』
       『自筆本』中七下五「かざくら花もむつかしや」『希杖本』中七下五「か桜しやばのいそがしき」
    一里の身すぎの桜咲にけり          文化句帖   化2
        翠兄母悼
    今からは桜一人よ窓の前            文化句帖   化3
    姥捨し片山桜咲にけり              文化句帖   化3
    大かたは泥にひつゝく桜哉          文化句帖   化3
    大桜さらに風まけなかりけり        文化句帖   化3
    穀つぶし桜の下にくらしけり        文化句帖   化3
    土鳩が寝に来ても鳴く桜哉          文化句帖   化3
    長らへて益なき門も桜哉            文化句帖   化3
    初桜花ともいはぬ伏家哉            文化句帖   化3
    人寄せぬ桜咲けり城の山            文化句帖   化3
        竹阿十七忌、長応院に参る
    古き日を忘るゝなとや桜咲          文化句帖   化3
    夕過や桜の下に小言いふ            文化句帖   化3
    石垣の武ばつたなりに桜哉          文化句帖   化4
    うしろから犬のあやしむ桜哉        文化句帖   化4
    鉦大鼓敲止ば桜哉                  文化句帖   化4    「大」→「太」
                                                         (異)同句帖(化4)下五「桜ちる」
    閑古鳥ひだるさう也おそ桜          文化句帖   化4
    けふぎりの江戸のお食を桜哉        文化句帖   化4
    桜狩り仏の気にはそむくべし        文化句帖   化4
        神齢山護国寺、観音開帳山開き
    桜花是も卅三所哉                  文化句帖   化4
    桜花どつちへ寝ても手[の]とゞく    文化句帖   化4
    たゞ頼 〜 とや桜咲                文化句帖   化4
                                                    (異)遺稿 中七下五「たのめと桜ちりにけり」
    菜畠もたしに見らるゝ桜哉          文化句帖   化4
    ばゝが餅爺が桜咲にけり            文化句帖   化4    (異)『発句鈔追加』中七「とゝが桜も」
    よる<は>としや野べは鳥鳴桜咲      文化句帖   化4
    青くさきたばこ吹かける桜哉        花見の記   化5  (類)『七番日記』(化14)下五「秋の風」
    蕣のからみしまゝの桜哉            文化句帖   化5
    翌あらば 〜 と思ふ桜哉            文化句帖   化5
    大汗に拭ひ込だる桜哉              文化句帖   化5
                        (異)『希杖本』遺稿 中七「拭ひ込るゝ」『雉啄日々稿』中七「拭こまれし」
    小坊主や親の供して山桜            花見の記   化5    (出)『文政版』
    米踏みも唄をば止よ桜ちる          文化句帖   化5    (異)遺稿 上五「米へきも」
        角田堤
    桜木や花の威をかる里の人          花見の記   化5
                            (出)『発句集続篇』(異)『発句鈔追加』上五下五「里人の・・・桜かな」
    桜花賤しき袖にかゝりけり          花見の記   化5
    死下手と又も見られん桜花          化五六句記 化5
    煤臭い笠も桜の咲日哉              文化句帖   化5
                         (異)『花見の記』『文政版』『発句集続篇』前書き「東西の花に散立られて
                        心も山にうつり行といふ日は三月廿日也けり」上五下五「煤くさき・・・降日哉」
        柵ゆひ廻して人を禁ずる老木有、夜 〜 天狗の踊る所といふ。
    祟りなす杉はふとりてちる桜        花見の記   化5
        花頂山
    散事の沙汰しおかれし桜哉          化五六句記 化5
    ちる桜けふもむちやくちやくらしけり文化句帖   化5
    つか 〜 とちり恥かゝぬ桜哉        文化句帖   化5    (出)遺稿
    鳥の巣に作り込れし桜哉            化五六句記 化5
    花咲くや桜が下のばくち小屋        文化句帖   化5
    ひだるさを桜のとがにしたりけり    文化句帖   化5    (出)『希杖本』
    ぼた餅や迹の祭りに桜ちる          花見の記   化5    (出)『発句鈔追加』
    御仏もこち向給ふ桜哉              文化句帖   化5
    山桜髪なき人にかざ[ゝ]るゝ        文化句帖   化5
    山桜松は武張て立にけり            花見の記   化5
    一本は桜もちけり娑婆[の]役        化五六句記 化6    (出)『文政版』『希杖本』『八十の画』
   (異)『文化三―八年句日記写』(化6)『文政九・十年句帖写』(政9)『菫江湖』上五「一本の」
    老ぬれば桜も寒いばかり哉          化三―八写 化6    (出)『七番日記』『発句集続篇』
    隠家や遅山桜おそ鰹                化五六句記 化6
    風所の一本桜咲にけり              化五六句記 化6
    五十年見れども 〜 桜哉            化五六句記 化6
    死下手の此身にかゝる桜哉          化五六句記 化6
                                           (出)『文化三―八年句日記写』(化6)『発句鈔追加』
    住吉の隅の小すみの桜哉            化五六句記 化6    (出)『句稿消息』
        高蔵寺
    たゞ頼め桜ぼた 〜 あの通          化三―八写 化6    (異)『文化五〜六年句日記』(化6)
         前書き「観音法楽」中七「花ははら 〜 」『文政版』前書き「観音奉納」中七「花もはら 〜 」
    つく 〜 と蛙が目にも桜哉          化五六句記 化6
    にくい程桜咲たる小家哉            化三―八写 化6
                 (出)『七番日記』(化7)(異)『七番日記』(化7)中七下五「桜咲せる屑家哉」
    古桜倒るゝ迄と咲にけり            化五六句記 化6    (異)『花見の記』中七「花の役とて」
    山桜さくや八十八所                化五六句記 化6
    天の邪鬼踏れながらもさくら哉      七番日記   化7
                                                 (異)『八番日記』(政3)中七「踏れながらに」
    活てあふけふも桜の御陰哉          七番日記   化7
    えた寺の桜まじ 〜 咲にけり        七番日記   化7    「え」→「ゑ」
    狗が供して参る桜かな              七番日記   化7
    鬼の角ぽつきり折るゝ桜哉          七番日記   化7
    風よけの襦半[を]引ば桜哉          七番日記   化7
    観音のあらんかぎりは桜かな        七番日記   化7
    咲くからに罪作らする桜哉          七番日記   化7
    桜木や同じ盛も御膝元              七番日記   化7
   (出)『文化三―八年句日記写』(化7)(異)『七番日記』(化7)上五中七「世の中や同じ桜も」
    桜 〜 花も三月卅日哉              七番日記   化7
    桜花何が不足でちりいそぐ          七番日記   化7    (出)『希杖本』
    さゞ波やさもなき桜咲にけり        七番日記   化7
    死支度致せ 〜 と桜哉              七番日記   化7
        美人賛
    上人は菩薩と見たる桜哉            七番日記   化7
    散桜肌着の汗を吹せけり            七番日記   化7
    散桜よしなき口を降埋よ            七番日記   化7
    卅日か 〜 とやちるさくら          七番日記   化7
    年よりの目にさへ桜 〜 哉          七番日記   化7
    とん欲も連てちれ 〜 山桜          七番日記   化7
    なんのその西方よりもさくら花      七番日記   化7
    三足程江戸を出れば桜哉            七番日記   化7
    山桜咲にけらしな御膝元            七番日記   化7
    山桜 〜 も廿九日かな              七番日記   化7
    山桜中 〜 花が病かな              七番日記   化7
    山桜花をしみれば歯のほしき        七番日記   化7
    山桜人をば鬼と思ふべし            七番日記   化7
    夕桜鬼の涙のかゝるべし            七番日記   化7
    夕ざくらけふも昔に成にけり        七番日記   化7    (出)『発句集続篇』
    夜桜[や]大門出れば翌の事          七番日記   化7
    よるとしや桜のさくも小うるさき    七番日記   化7
    売ものゝ札を張られし桜哉          七番日記   化8
    大桜さらに買手はなかりけり        七番日記   化8
    から 〜 と下駄をならして桜哉      七番日記   化8
    咲からになでへらさるゝ桜哉        七番日記   化8
    桜見て歩く間も小言哉              七番日記   化8
    下々に生れて夜もさくら哉          七番日記   化8
                         (出)『発句題叢』『文政版』『希杖本』(異)『我春集』中七「生れて桜」
    誰も居ぬうしろ座敷の桜哉          七番日記   化8
    花守や夜は汝が山桜                七番日記   化8
             (出)『発句鈔追加』(異)『我春集』『希杖本』『嘉永版』『発句題叢』下五「八重桜」
    懐の子が喰たがる桜哉              七番日記   化8
    家根をはく人の立けり夕桜          七番日記   化8
    山桜咲や附たり仏の事              化三―八写 化8
        暮春
    山ざくらそなたの空も卅日哉        我春集     化8    (出)『星づくり』『麻殻集』
    山桜それが上にも卅日有            七番日記   化8
    夕桜蟻も寝所は持にけり            七番日記   化8
        いまだ時ならざる満花を植木屋おこしたるに別世界[に]入心ちして
    あのくたら三百文の桜哉            七番日記   化9
                                         (出)『株番』前書き「西林寺に今日到来の一木、満花也」
    市に出て二日ほさるゝ桜哉          七番日記   化9
    咲からに桜の風をうつしけり        七番日記   化9
        芥子之介
    銭降れとをがむ手元へ桜哉          株番       化9
     (出)『発句集続篇』(異)『浅黄空』前書き「浅草寺おく山豆蔵」『自筆本』中七「おがむ拳へ」
    天からでも降たるやうに桜哉        株番       化9
                         (出)『文政句帖』(政5)『希杖本』『嘉永版』『玉笹集』『発句集続篇』
                           (異)『文政九・十年句帖写』(政9)上五中七「天からも降たるやうな」
        上野にて
    十日様九日さまのさくらかな        名なし草紙 化9    (出)『発句鈔追加』
    山桜花きちがひの爺哉              七番日記   化9
    笠きるや桜さく日を吉日と          七番日記   化10
                               (出)『志多良』前書き「三月十五日庵出なんとして」『発句鈔追加』
    傘にべたり 〜 と桜哉              七番日記   化10
                                       (異)『句稿消息』(化10)『嘉永版』中七「べたりと付し」
    塵箱にへばり付たる桜哉            句稿消息   化10
    ちる桜犬に佗して通りけり          七番日記   化10    (出)『志多良』『希杖本』
    時に范蠡なきにしもあらずさく桜    七番日記   化10
    待 〜 し桜と成れどひとり哉        七番日記   化10  (異)『志多良』『希杖本』下五「田舎哉」
        吉原
    目の毒としらぬうち[こ]そ桜かな    七番日記   化10    (出)『発句集続篇』前書き「題吉原花」
                                     『志多良』『句稿消息』『発句題叢』『発句鈔追加』『希杖本』
    山桜序に願をかける也              七番日記   化10
    夕桜鉦としもくの間にちる          七番日記   化10
    うしろから冷 〜 したる桜哉        七番日記   化11
    うとましの刃物三昧やちる桜        七番日記   化11
    売わらじぶらり[と]下る桜哉        七番日記   化11    「じ」→「ぢ」
    大江戸の隅の小すみの桜哉          七番日記   化11    (出)『句稿消息』
        三月十日此辺の山ぶみして
    気に入た桜の蔭もなかりけり        三韓人     化11    (出)『句稿消息』『希杖本』『文政版』
                                   『発句題叢』『発句鈔追加』(異)『希杖本』上五「思ふやうな」
    ことしきり 〜 とや古ざくら        七番日記   化11    (出)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』
    此やうな末世を桜だらけ哉          七番日記   化11
        (出)『株番』『随斎筆紀』『自筆本』『文政版』書簡 真蹟(異)『希杖本』上五「此やうに」
    咲かけて桜は皮を剥れけり          七番日記   化11
                                                   (異)『自筆本』上五中七「花の咲く桜の皮を」
    桜さく大日本ぞ 〜                 七番日記   化11
    三尺に足らぬも花の桜哉            七番日記   化11
                                     (出)『句稿消息』(異)『八番日記』(政4)上五「一尺に」
    大の字に踏んぞり返て桜哉          七番日記   化11
    花ながら籬に曲るさくら哉          七番日記   化11    (異)『自筆本』中七「垣根に曲る」
    髭どのゝ鍬かけ桜咲にけり          七番日記   化11  (出)『希杖本』『文政版』前書き「群つゝ
 人の来るのみぞと西上人叱り給ひぬ」『自筆本』(異)『浅黄空』前書き「木母寺夕暮」下五「ちる桜」
    隙あれや桜かざして喧嘩買          七番日記   化11
    迷子のしつかり掴むさくら哉        七番日記   化11
    皆散て隙が明たか山桜              七番日記   化11
    みちのくの鬼住里も桜かな          七番日記   化11
    桃柳桜の風を引にけり              七番日記   化11
    山桜皮を剥れて咲にけり            句稿消息   化11    (出)『嘉永版』
    山桜ちれ 〜 腹にたまる程          七番日記   化11
                                             (異)『浅黄空』『自筆本』『句稿消息』上五「桜花」
    山桜花にけかちはなかりけり        七番日記   化11    (出)『自筆本』『句稿消息』『希杖本』
                             (類)同日記(政1)上五「蕣の」『文政句帖』(政8)上五「苦桃の」
        原村の桜は小百年前カンテイといふ僧植へけると     「へ」→「ゑ」
        かや。此僧筧に胡椒をかけて死き[と]なん。其塚     「筧」→「〓」(〓は草冠に「見」)
    山桜花の主や石仏                  七番日記   化11    (出)『浅黄空』『自筆本』
    山祭桜の神もいはふべし            七番日記   化11
    夕暮や下手念仏も桜ちる            七番日記   化11
    閻魔王も目をむき出して桜哉        七番日記   化12
    おそれながら申上まする桜哉        七番日記   化12    (異)『発句鈔追加』中七「申上ます」
    門桜はらり 〜 とかきま哉          七番日記   化12
    桜から霧立宿も寝楽哉              七番日記   化12
    散花の桜きげんや小犬ども          七番日記   化12    (異)遺稿 下五「狗ども」
    つき合に見にまかりたる桜哉        七番日記   化12
    とか[く]して桜もさかりほざく哉    七番日記   化12
    としよりも嫌ひ給はぬ桜哉          七番日記   化12
    日本は這入口からさくらかな        七番日記   化12    (出)『発句集続篇』
    夕桜箱でうちんで見たりけり        七番日記   化12
    よしの山変桜もなかりけり          七番日記   化12
                                   (異)『浅黄空』『自筆本』上五中七「みよしのに変なさくらも」
        徳本
    居直るも銭の上也南む桜            七番日記   化13
                           (出)『浅黄空』前書き「寛慶寺徳本法師十念仏をさづかりて」『自筆本』
    起臥も桜明りや念仏坊              七番日記   化13
    けんどんなつむりにざぶと桜哉      七番日記   化13
    小うるさや山の桜も評判記          七番日記   化13
    是程にけちな桜も都哉              七番日記   化13
    財布から焼飯出して桜哉            七番日記   化13
    さればこそ大評判のさくら哉        七番日記   化13(出)『句稿消息』『希杖本』『発句鈔追加』
    尿をやる子にあれ 〜 と桜哉        七番日記   化13
        吉原
    としよりの目[の]正月ぞさくら花    七番日記   化13    (異)『八番日記』(政3)『だん袋』
                         上五「こちとらも」『浅黄空』『自筆本』上五中七「としよりも目の正月や」
    なむ 〜 と桜明りに寝たりけり      七番日記   化13
    日本はばくちの銭もさくら哉        七番日記   化13
    花に行門の口より桜哉              七番日記   化13
                             (出)『句稿消息』『希杖本』(異)『発句集続篇』中七「門の口から」
    蕗の葉に煮〆配りて山桜            七番日記   化13  (異)『浅黄空』『自筆本』下五「花の陰」
    山桜人に見よとて散りやせん        七番日記   化13
    湯も浴て仏おがんで桜かな          七番日記   化13    「お」→「を」
    留主寺にせい出してさく桜哉        七番日記   化13    (出)『浅黄空』『自筆本』(異)同日記
         (化13)上五下五「留主寺や・・・山桜」『句稿消息』(化13)上五下五「留主寺や・・・桃さくら」
    今の代や行儀に並ぶ山ざくら        七番日記   化14    「代」→「世」
    窮屈に並られけり山桜              七番日記   化14
    三文が桜植けり吉野山              七番日記   化14
    素人の念仏にさへ桜ちる            七番日記   化14
                     (異)『浅黄空』『自筆本』前書き「木母寺」中七下五「念仏も花はちりにけり」
    銭の出ぬ所も中 〜 さくら哉        七番日記   化14
    釣人の邪魔を折 〜 桜哉            七番日記   化14
    釣人やいま 〜 しいと夕桜          七番日記   化14
    天下泰平とうに咲桜哉              七番日記   化14
    楽 〜 と御成がはらの桜哉          七番日記   化14
        御所三月三日
    棒突が腮でをしゆる桜哉            七番日記
                                       (異)『浅黄空』『自筆本』『文政版』中七「腮でおしへる」
        吉野
    百尋の雨だれかぶる桜哉            七番日記
                          (出)『発句集続篇』(異)『浅黄空』『自筆本』遺稿 中七「雨だれ溢る」
    家陰にしんぼしてさけ若桜          七番日記   政1
    一番の弥陀からぱつと桜哉          七番日記   政1
    大馬に尻こするらゝ桜哉            七番日記   政1    「るら」→「らる」
                                   (出)『浅黄空』(異)『自筆本』上五中七「大馬の尻引こする」
    殻ぎせる伊達に加て桜哉            七番日記   政1    「殻」→「空」「加」→「咥」
    君が代は紺のうれんも桜哉          七番日記   政1
    小座敷や端折おろせばちる桜        七番日記   政1
    御報謝と出した柄杓へ桜哉          七番日記   政1
    御本丸御用の外の桜哉              七番日記   政1
    桜へと見へてじん 〜 ばしより哉    七番日記   政1    「見へ」→「見え」「じ」→「ぢ」
                                 (出)『おらが春』『八番日記』(政2)『自筆本』『文政版』真蹟
    小莚にざぶとまぶせる桜哉          七番日記   政1
    銭なしが音骨高き桜哉              七番日記   政1
    釣針に引上て見る桜哉              七番日記   政1
    堂守が人に酔たる桜哉              七番日記   政1    (出)『浅黄空』『自筆本』
    なまけるないろはにほへと散桜      七番日記   政1
    塗下駄の音やかんじてちる桜        七番日記   政1
    塗下駄の方へと桜ちりにけり        七番日記   政1
    寝て起て大欠して桜哉              七番日記   政1
    畠打の飯にまぶれる桜哉            七番日記   政1
    はら 〜 と畠のこやしや桜花        七番日記   政1
    評判の八重山桜あゝ老ぬ            七番日記   政1
    先明た口へぼつたり桜哉            七番日記   政1
    大雪やしなめ育も桜哉              八番日記   政2    「め」→「の」
                                                         (異)『浅黄空』上五「山おくの」
    苦の娑婆や桜が咲ば咲いたとて      梅塵八番   政2    (出)『浅黄空』前書き「大悲奉納」真蹟
    さくら 〜 と唄れし老木哉          八番日記   政2    (出)『おらが春』『文政版』書簡
    茶屋村[の]出現したるさくらかな    八番日記   政2
                                                    (異)『おらが春』真蹟 中七「一夜にわきし」
    弥陀仏の見ておはす也ちる桜        八番日記   政2
    山畠やこやしのたしにちる桜        八番日記   政2    (出)『浅黄空』『自筆本』
    慾垢のぼんの凹へも桜かな          八番日記   政2
                                         (出)『自筆本』(異)『浅黄空』中七「ぼんのくぼへと」
    夜桜や天の音楽聞し人              八番日記   政2
    石仏風よけにして桜哉              八番日記   政3
    植桜花も苦界はのがれざる          八番日記   政3    (異)『梅塵八番』下五「のがれけり」
    うつるとも桜の風ぞ花の蔭          八番日記   政3
    江戸桜花も銭だけ光る哉            八番日記   政3    (異)『梅塵八番』下五「光るなり」
    鬼の住むさたもなくなる桜哉        八番日記   政3
    開帳の目当に立し桜哉              八番日記   政3
    けふもまたさくら 〜 の噂かな      真蹟       政3
    さい銭にあおり出さるゝ桜哉        八番日記   政3  「お」→「ふ」(出)『発句集続篇』前書き
 「上野」(異)『浅黄空』前書き「開帳場」中七「ふるひ出さるゝ」『自筆本』中七「あをり出さるゝ」
    善の綱悪のさくらの咲にけり        八番日記   政3
    袖たけの初花ざくら咲にけり        発句題叢   政3
    苗代にすくひださるゝ桜哉          八番日記   政3
    廿五の暁植しさくら哉              八番日記   政3
    寝むしろや桜にさます足のうら      八番日記   政3
    花ながらさくらといふが恥しき      真蹟       政3
    一雫天窓なでけり桜から            真蹟       政3    (類)『おらが春』下五「引がへる」
    山桜花から風をうつりけり          八番日記   政3    「うつり」→「うつし」
    夜ざくらや美人天から下るとも      八番日記   政3
    馬は馬連とて歩く桜哉              八番日記   政4    (異)『梅塵八番』中七「連にて歩く」
    老いたりな大評判のさくら花        八番日記   政4
    喰ひ共味ひしらぬ桜哉              八番日記   政4    「喰ひ」→「喰へ」
    香煎の足しにちら 〜 桜哉          八番日記   政4
    こつそりとあれは浅黄の桜哉        八番日記   政4
    さくら迄風[邪]引けりなかぢけ花    八番日記   政4    「ぢ」→「じ」
    それそこは犬の雪隠ぞ山桜          八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「それそこが」
    田楽のみそにくつゝく桜哉          八番日記   政4
    一日は人留のあるさくら哉          文政句帖   政5
    大象もつなぐけぶりや糸ざくら      文政句帖   政5
    御庭に立はだかつて山桜            文政句帖   政5
    桜花見るも義理也京住居            文政句帖   政5
    さばの縁うす桜とはしらざりき      文政句帖   政5
                     (異)『浅黄空』『自筆本』前書き「悼士英妻」中七下五「うす花桜あゝさくら」
    菅笠に日傘に散しさくら哉          文政句帖   政5
    寺 〜 や拍子抜してちる桜          文政句帖   政5
    中 〜 にもたぬがましぞちる桜      文政句帖   政5
    西へちるさくらやみだの本願寺      文政句帖   政5(類)書簡(政6)前書き「三月廿三日東御門
   迹下向に」上五中七「木 〜 もめを開らくやみだの」同句帖(政5)上五中七「鹿も角落すやみだの」
   同句帖(政5)上五中七「花の世や田舎もみだの」同句帖(政5)上五中七「鬼茨もなびくやみだの」
    婆ゝどのも牛に引かれて桜かな      文政句帖   政5    (出)『浅黄空』『自筆本』
    拍子抜して散りかゝる桜哉          文政句帖   政5
    古郷は我を占ふか桜ちる            文政句帖   政5
    未練なく散も桜はさくら哉          文政句帖   政5
    こちとらも目の正月ぞさくら花      だん袋     政6
                           (出)『発句鈔追加』(異)『浅黄空』上五中七「としよりも目の正月や」
    二仏の中間に生れて桜哉            文政句帖   政6    (異)同句帖(政7)下五「花見哉」
    世[の]中をあさりとあさぎざくら哉  文政句帖   政6
       (異)同句帖(政8)中七「あつさりあさぎ」『発句集続篇』上五中七「世の中はあつさり浅黄」
    飴ん棒にべつたり付し桜哉          文政句帖   政7
    神風や魔所も和らぐ山ざくら        文政句帖   政7
    さくら花晋子の落書まがひなし      文政句帖   政7    (異)『俳諧寺抄録』下五「相違なし」
    小莚や銭と小蝶とちる桜            文政句帖   政7
        上野
    大名を馬からおろす桜哉            文政句帖   政7    (出)『発句鈔追加』『梅塵抄録本』
    近よれば団左衛門が桜哉            文政句帖   政7
    人足のほこりを浴るさくら哉        文政句帖   政7    (出)『発句集続篇』
    山猿と呼ばるゝ里のさくら哉        文政句帖   政7
   (出)『浅黄空』『自筆本』(異)同句帖(政7)中七「呼るゝ宿の」『自筆本』中七「呼るゝ程の」
        吉原
    夜目遠目にておくまいか桜花        文政句帖   政7
    あれ 〜 といふ口へちるさくら哉    文政句帖   政8
    垣添やことし花もつわか桜          文政句帖   政8    「添」→「沿」
    垣に成てもにう和也山桜            文政句帖   政8
    つき合はむりにうかるゝ桜哉        文政句帖   政8
    出切手を指にむすぶや庭桜          文政句帖   政8
    天狗衆の留主[の]うち咲く山ざくら  文政句帖   政8
    一雨のつけあいけうや姥桜          文政句帖   政8    「け」→「きや」(出)『発句集続篇』
        暮景楼の旧迹
    凡年三百年のさくら哉              一茶園月並裏書     (類)『花見の記』(化5)前書き「本行
 寺道くわん物見塚」『発句鈔追加』前書き「本行寺物見坂」『自筆本』遺稿 上五下五「凡に・・・菫かな」
    門桜ちら 〜 散るが仕事哉          浅黄空             (異)『自筆本』中七「はら 〜 散るが」
    君が代の大飯喰ふてさくら哉        文政版             (出)遺稿
    君なくて誠に多太の桜哉            自筆本             「太」→「田」
                                                       (類)『七番日記』(化14)下五「木立哉」
    さくらさく哉と巨燵で花見哉        書簡               「巨」→「炬」
                                     (異)『発句集続篇』前書き「有明庵にて」上五「桜かな哉と」
        多太森にて成美追善会
    先生なくなりてはたゞの桜哉        浅黄空
    散る桜心の鬼も出て遊べ            自筆本
                             (異)『七番日記』(化10)上五「花の山」『浅黄空』上五「ちる花に」
    ちる桜鹿はぽつきり角[を]折る      自筆本
    散桜称名うなる寺の犬              希杖本
                                  (異)『七番日記』(化7)『発句鈔追加』真蹟 上五「花ちるや」
        上野の花いまだなるに
    出直して来ても旅也山桜            遺稿
    隣から気[の]毒がるや遅ざくら      遺稿
        後醍醐帝御廟前
    どれ 〜 が御目にとまりし桜かよ    浅黄空             (異)『自筆本』下五「桜哉」
    南むだいひ大悲 〜 の桜哉          遺稿             (類)『句稿消息』(化9)下五「清水哉」
    寝並んで遠見ざくらの評義哉        真蹟               「義」→「議」
    はづかしや見た分んにする山桜      浅黄空             (出)『自筆本』
    花咲と直に掘らるゝ桜哉            真蹟
        夜来風雨声
    一夜さにさくらはさゝらほさら哉    浅黄空             (出)『自筆本』『文政版』
    末世末代でもさくら 〜 哉          浅黄空
    深山木のしなの五月も桜哉          自筆本
        兎園仏遠忌
    目覚しの庭ざくらにてありしよな    真蹟
    欲面へ浴せかけたる桜哉            遺稿
        吉原
    夜桜や親爺[が]腰の迷子札          浅黄空
                        (異)『浅黄空』上五「花さくや」『自筆本』上五中七「花さくや爺が腰の」

 

桃の花

    桃咲やおくれ年始のとまり客        寛政句帖   寛6
    桃ところ 〜 何思出て餅の音        西国紀行   寛7
    桃の明すさ切男眠気也              西国紀行   寛7
    祈[りし]はしらぬ里也桃の花        享和句帖   享3
    半蔀におつかぶさるや桃の花        享和句帖   享3
    不相応の娘もちけり桃の花          享和句帖   享3
    福蟾ものさばり出たり桃[の]花      文化句帖   化1
    伏水のや桃なき家もな[つ]かしき    文化句帖   化1    「水」→「見」
    桃の門猫を秤にかける也            文化句帖   化2
    桃苗は花を持けり数珠嫌            文化句帖   化5
    苦桃の花のほちや 〜 咲にけり      化三―八写 化6
     (出)『文化六年句日記』『発句鈔追加』『万里歳旦』(異)『発句集続篇』中七「花のごて 〜 」
    桃さくや先祝るゝ麦の露            化五六句記 化6
    老が世に桃太郎も出よ桃の花        七番日記   化13
                                             (出)『句稿消息』(類)同日記(化13)下五「捨瓢」
    なぐさみに馬のくはへる桃の花      七番日記   化13    (出)『浅黄空』『自筆本』
    留主寺にせい出してさく桃さくら    句稿消息   化13    (異)『七番日記』(化13)『浅黄空』
                          『自筆本』下五「桜哉」『七番日記』(化13)上五下五「留主寺や・・・山桜」
    大藪の入りの入りなる桃の花        七番日記   政1
    苦桃とさらに見へぬぞ花盛り        八番日記   政3    「へ」→「え」
    迹次の桃の生へけりことし塚        文政句帖   政8    「へ」→「え」
    門の犬なぐさみ吼や桃の花          文政句帖   政8
    立午の尻こする也桃の花            文政句帖   政8    「午」→「馬」
    苦桃の花にけかちはなかりけり      文政句帖   政8
                         (類)『七番日記』(化11)上五「山桜」『七番日記』(政1)上五「蕣の」
    苦桃の花はだしさの盛哉            文政句帖   政8
    麦などもほちや 〜 肥て桃の花      文政句帖   政8
    桃咲くやぽつぽとけぶることし塚    文政句帖   政8
    桃咲くや犬にまたがる悪太郎        浅黄空             (異)『自筆本』下五「桃太郎」

 

海棠

    海棠[の]日陰育も赤きかな          八番日記   政4

 

小米花

        小田原
    白水の流れた跡や小米花            五十三駅   天8

 

山吹(八重山吹)

    山吹や神主どのゝ刀持              文化句帖   化3
    山吹に大宮人の薄着哉              文化句帖   化4
    山吹や蠣むく人に古さるゝ          文化句帖   化4    (異)遺稿 下五「起さるゝ」
    山吹や馬柄杓提し御姿              文化句帖   化4
    山吹や柳の雨は古りたれど          文化句帖   化4
    蚊所の八重山吹の咲にけり          文化句帖   化5    (異)遺稿 中七「八重山吹は」
    咲たりな山々吹の日陰花            文化句帖   化5
    山吹や家近き松は果報焼            文化句帖   化5    (異)同句帖(化5)下五「日和負」
    山吹や培ふ草は日まけして          文化句帖   化5
    山吹は時鳥待つもり哉              文化句帖   化5
    まじ 〜 と竹のうしろや小山吹      化五六句記 化6
    山吹や草にかくれて又そよぐ        七番日記   化7    (出)『文化三―八年句日記写』(化7)
        根岸
    山吹をさし出し顔の垣ね哉          七番日記   化8    (出)『発句集続篇』
               (異)『我春集』『文政版』『とりのみち』前書き「根岸にて」中七「さし出しさうな」
    山吹ややがてさしたる五日汐        七番日記   化8
    鍬かぢの山吹咲ぬそれさきぬ        七番日記   化9
    山吹や午つながるゝ古地蔵          七番日記   化9    「午」→「馬」
    山吹にぶらりと牛のふぐり哉        七番日記   化9
    とりとめた盛もなしや小山吹        七番日記   政1
        八功徳水
    山吹の花のはだへの蛙哉            七番日記   政1    (出)『自筆本』
    山吹や四月の春もなくなるに        七番日記   政1
    山吹よちるな蛍の夕迄              七番日記   政1    (出)『発句集続篇』
    川は又山吹咲ぬよしの山            八番日記   政3
    山吹に手をかざしたる鼬哉          八番日記   政4
                                       (出)『発句集続篇』(異)『自筆本』中七「手をかけて立」
    山吹や出湯のけぶりに馴れて咲      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』中七「出湯のけぶり」
    山吹や茶椀の欠も乗せて咲          八番日記   政4
    我門は山吹のすこしあちらかな      発句集続篇

 

辛夷

    さほ姫の御目の上のこぶし哉        七番日記   化9

 

樒の花

    古桶や二文樒も花の咲              発句題叢   政3
                            (出)『希杖本』『発句類題集』(異)『発句鈔追加』下五「花が咲く」

榛の木の花

    はんの木のそれでも花のつもり哉    七番日記   化9    (出)『株番』

 

柳(青柳、挿し柳、柳陰)

    振り替る柳の色や雨あがり          柳の友     寛1
    掃留に青むねりその柳哉            寛政句帖   寛5    「留」→「溜」
    茶の煙柳と共にそよぐ也            寛政句帖   寛6
    振向ばはや美女過る柳哉            西国紀行   寛7
    雨あがり朝飯過のやなぎ哉          花見二郎   寛12    (出)『題葉集』
    薄月の礎しめる柳哉                享和二句記 享2
    青柳と慥に見たる夜明哉            享和句帖   享3    (異)『文化句帖』(化1)上五中七
                       「青柳の慥にみゆる」『文化句帖』(化1)上五中七「青柳のづゝくりみゆる」
    青柳の先見ゆ[る]ぞや角田川        享和句帖   享3    (出)『文化句帖』(化1)
    油火に宵雨かゝる柳哉              享和句帖   享3    (出)『文化句帖』(化1)
    看板の団子淋しき柳哉              享和句帖   享3
    是からは大日本と柳哉              享和句帖   享3    (出)『文化句帖』(化1)
    青柳や蛍よぶ[夜]の思はるゝ        文化句帖   化1
    青柳ややがて蛍をよぶとこる        文化句帖   化1
    青柳や世を臼の目と〓かけと        文化句帖   化1    〓は竹冠に「輪」
    行灯におつかぶさりし柳哉          文化句帖   化1
    石臼に月さしかゝる柳哉            文化句帖   化1
    笠からん柳も見なん妹が家          文化句帖   化1
    しるよしの郷の鐘なる柳哉          文化句帖   化1
    鳥どもに糞かけられし柳哉          文化句帖   化1
    独寝るつもりの家か柳陰            文化句帖   化1
    無細工の西行立り柳かげ            文化句帖   化1
    蛍よぶ夜のれうとやさし柳          文化句帖   化1
                                                   (異)『嘉永版』上五中七「蛍飛ぶ夕をあてや」
    身じろぎもならぬ塀より柳哉        文化句帖   化1
    三筋程松にかくれし柳哉            文化句帖   化1
    柳見へ東寺も見へて昔也            文化句帖   化1    「へ」→「え」
    六月の月のさせとてさし柳          文化句帖   化1(異)同句帖(化1)中七「ゆふべをあてや」
    青柳や二軒もやひの茶呑橋          文化句帖   化2
    青柳や柱の苔も時めきて            文化句帖   化2
    朝やけも又めづらしき柳哉          文化句帖   化2
    入相を待遠しがる柳哉              文化句帖   化2
    入口に柳の立し都哉                文化句帖   化2
    うとましき片壁かくす柳哉          文化句帖   化2
    さし柳翌は出て行庵也              文化句帖   化2
    土染もうれしく見へて柳哉          文化句帖   化2    「へ」→「え」
    願ひ有る身となとがめそさし柳      文化句帖   化2
    売家にきのふさしたる柳哉          文化句帖   化3
    日本は柳の空となる夜哉            文化句帖   化3
    柳さすうしろを終のけぶり哉        文化句帖   化3
    夕山に肩を並ぶる柳哉              文化句帖   化3
    里の子が柳掴で寝たりけり          文化句帖   化4
    垂柳其くらいにてあれかしな        文化句帖   化4    「い」→「ゐ」
    青柳のかゝる小隅も都哉            文化句帖   化5
    鶏〆る門の柳の青みけり            文化句帖   化5
    柳さす我をさみする烏哉            文化句帖   化5
    青柳や荒神松に日のさして          化五六句記 化6
    青柳や十づゝ十の穴一に            化五六句記 化6
    かりそめにさし申されし柳哉        化五六句記 化6
    観音の心をそよぐ柳哉              化五六句記 化6
    気に入ぬ人もかすむぞさし柳        化五六句記 化6
    さし柳涼む夕は誰か有              化五六句記 化6
    又六が門の外なる柳哉              化五六句記 化6
    雁鴨のづう 〜 しさよ門柳          七番日記   化8
    けろりくわんとして雁と柳哉        七番日記   化8
                                   (出)『我春集』(異)『文政版』『希杖本』中七「として烏と」
    下総へ一すじかゝる柳かな          我春集     化8    「じ」→「ぢ」
                                                         (異)『発句集続篇』中七「半分たるゝ」
    柳さし 〜 ては念仏哉              七番日記   化8    (出)『我春集』
    楽々と家鴨の留主の柳哉            七番日記   化8
    蝶来るや門に柳をさすやいな        七番日記   化10
    苗代にかくておきたしさし柳        七番日記   化10
    柳から梅から御出狐哉              七番日記   化10    (出)『句稿消息』前書き「題五百崎」
    柳からもゝんぐわとて出る子哉      七番日記   化10
                 (出)『おらが春』(異)『自筆本』中七「もゝんぐわあゝと」『発句鈔追加』前書き
                 「よりよりの思ひよせる小児をも娘の遊び連にもと爰に集ぬ」中七「もゝつくはとて」
    青柳や梅若どのゝお茶の水          七番日記   化11
    犬の子の加へて寝たる柳哉          七番日記   化11    「加」→「咥」
                                               (異)『句稿消息』『文政版』中七「踏まへて眠る」
    大坂の人にすれたる柳かな          七番日記   化11
    門柳仏頂面をさする也              七番日記   化11    (出)『自筆本』
    観音のやうに人眠る柳哉            七番日記   化11    (出)『希杖本』
    さし捨し柳の陰の住居哉            七番日記   化11
    ちよんぼりと不二の小脇の柳哉      七番日記   化11
    縄[に]すれ人にすれたる柳かな      七番日記   化11    (出)『発句集続篇』
    寝る隙にふいとさしても柳哉        七番日記   化11    (異)『句稿消息』中七「さし並たる」
    畠打の内股くぐる柳かな            七番日記   化11    (出)『発句集続篇』
    引かぬ気のお江戸育も柳哉          七番日記   化11
    柳からなびきつゞくや上総山        七番日記   化11
    我前のかぢけ柳も青柳ぬ            七番日記   化11    「ぢ」→「じ」「ぬ」→「ぞ」
    青柳弥勒十年の小家哉              七番日記   化12
    蛇に成るけいこにくねる柳かな      七番日記   化12
    目に這[入]るやうな門でも青柳ぞ    七番日記   化12
    我門にしやつきり張りし柳哉        七番日記   化12
    石下戸の門も青柳と成り[に]けり    七番日記   化13
    大犬をこそぐり起す柳哉            七番日記   化13
    汚坊が門もそよ 〜 青柳ぞ          七番日記   化13    「汚」→「悴」
    かぢけ坊が門もはらりと青柳ぞ      七番日記   化13    「ぢ」→「じ」
    きかぬ気の江戸の門にも柳哉        七番日記   化13
    加へぎせる無用でもなし門柳        七番日記   化13    「加」→「咥」
    倒れ家といほ相もちの柳哉          七番日記   化13
    垂柳門の曲りはかくれぬぞ          七番日記   化13
    青柳のあいそう付る我家哉          七番日記   政1
    穴一の穴十ばかり柳哉              七番日記   政1
    ぢゝむさい庵も今は青柳ぞ          七番日記   政1
    通りぬけせよと柳から柳哉          七番日記   政1    (異)『おらが春』中七「せよと垣から」
    ひよい 〜 とぶつ切棒の柳哉        七番日記   政1    (出)『発句鈔追加』
    我柳しだるゝ芸はなかりけり        七番日記   政1
    青柳に金平娘立にけり              八番日記   政2
        京島原
    入口のあいそになびく柳かな        おらが春   政2    (出)『文政版』『発句集続篇』
    江戸もえど 〜 真中の柳哉          八番日記   政2    (出)『自筆本』
     (異)『文政句帖』(政7)中七「江戸生えぬきの」(類)『八番日記』(政2)下五「冬ごもり」
    門柳天窓で分て這入けり            八番日記   政2    (出)『嘉永版』
        善光寺堂前
    白猫のやうな柳もお花哉            八番日記   政2
                                               (出)『嘉永版』(異)『おらが春』上五「灰猫の」
    たつた今つゝさしたれど柳哉        八番日記   政2
    野雪隠のうしろをかこふ柳哉        八番日記   政2    (出)『発句鈔追加』真蹟
    人声にもまれて青む柳かな          八番日記   政2    (出)『嘉永版』『発句集続篇』
    一吹にほんの柳と成にけり          八番日記   政2
    我門はしだれ嫌ひの柳哉            八番日記   政2
                                     (出)『発句鈔追加』真蹟(異)『発句集続篇』上五「我門に」
    庵の錠いらぬ事とや柳吹            八番日記   政3
    馬の子が柳潜りをしたりけり        八番日記   政3
    皮剥が腰かけ柳青みけり            発句題叢   政3    (出)『発句鈔追加』『嘉永版』
    ちり込や柳が糸にねまる程          八番日記   政3
    蛍とぶ夕をあてやさし柳            発句題叢   政3
                                                   (出)『嘉永版』『発句類題集』『発句集続篇』
    頬杖は観音顔や柳かげ              八番日記   政3
    青柳やよらずさはらず門に立        八番日記   政4
    入水した僧が菰かけ柳哉            八番日記   政4
    灯や柳がくれのわかい声            文政句帖   政5
    目ざはりになれど隣[の]柳哉        文政句帖   政5
    柳は緑花は紅のうき[世]かな        文政句帖   政5
    浅緑柳のあいそこぼれけり          文政句帖   政6
    大柳村の印と成りにけり            文政句帖   政6
    どのやうな下手がさしても柳哉      文政句帖   政6
    よい所の片膝瘤や垂れ柳            文政句帖   政6
    夜に入れば遊女袖引く柳哉          文政句帖   政6
    御花の代りをつとむ柳哉            文政句帖   政7    (異)同句帖(政8)中七「名代つとむ」
    切れても 〜 さて柳哉              文政句帖   政7
    沢添や柳たのみに川をとぶ          文政句帖   政7    「添」→「沿」
    づぶさしの馬除柳青みけり          文政句帖   政7
    ずん切際より一すじ柳哉            文政句帖   政7    「じ」→「ぢ」
    そよ 〜 と江戸気に染ぬ柳哉        文政句帖   政7
    田のくろや馬除柳馬がくふ          文政句帖   政7
    流れ来て門の柳と成にけり          文政句帖   政7    (出)『自筆本』
    陶になる下地をくねる柳哉          文政句帖   政8
    門柳しだるゝ世事はなかりけり      発句鈔追加
    先たくの婆々へ柳の夕なびき        希杖本
    水まして蝦這のぼる柳哉            遺稿
    柳からまね 〜 出たり狐面          希杖本 

 

松の花(十返りの花)

    是からも未だ幾かへりまつの花      真左古     天7
        石宝殿に参るに、高二丈六尺、方三間半ありとなん。是
        や大己貴の石屑投給ふ石と也。上に松の二三本生たり。
    十がへりの花いくかへりの石室かよ  西国紀行   寛7
        鹿島
    大なへにびくともせぬや松の花      八番日記   政4    「へ」→「ゐ」

 

松の緑

    江北に植ても松のみどり哉          七番日記   化9

 

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