一茶発句集(3)・・・春の部(2)

最終補訂2000年8月10日

 

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地理

 

凍解け

    凍どけや茨ちらし置く麦畠          寛政句帖   寛5
    凍解や敷居のうちのよひの月        享和二句記 享2
    凍どけの盛りに果し談義哉          文政句帖   政5
    凍解や山の在家の昼談義            文政句帖   政5
    凍どけやかし下駄もある下向道      文政句帖   政6

 

氷解け

    わり流す氷けぶりや門の川          八番日記   政4
                                    (類)『梅塵八番』(政4)上五中七「せり流す雪のけぶりや」

 

雪解け(雪解、雪汁、残雪、草履道)

    富士ばかり高みで笑ふ雪解哉        辛亥元除   寛3
    里の子が枝川作る雪解哉            寛政句帖   寛5
    垣のもとに残れる雪や一まろげ      発句題苑集 寛11
    雪解て嬉しさう也星の顔            享和句帖   享3
    雪どけや麓の里の山祭              享和句帖   享3
    ゆき汁のかゝる地びたに和尚顔      文化句帖   化1
    雪解にしなのゝ駒のきげん哉        文化句帖   化4
    雪解てさのみ用なき山家哉          文化句帖   化5
      (異)『希杖本』上五下五「雪解や・・・奥山家」、『希杖本』『発句類題集』中七「けふは用なき」
    勝家が白眼し雪の解にけり          文化句帖   化5
    有明のずんづとさして雪げ哉        化五六句記 化6    「づ」→「ず」
    腰骨にしなの風吹雪げ哉            化五六句記 化6
    雪どけや門の雀の十五日            化五六句記 化6    (異)『発句題叢』中七「川は雀の」
               『版本題叢』中七「竹は雀の」、『嘉永版』『希杖本』『発句類題集』中七「門は雀の」
                                『発句鈔追加』中七「竹に雀の」、書簡 中七下五「門は雀の御一日」
    笠程に雪は残りぬ薪をわりぬ        七番日記   化7
                 (異)同日記(化7)下五「家の陰」、『発句集続篇』中七下五「雪の残りぬ家の陰」
    片隅に烏かたまる雪げかな          七番日記   化7
    雁起よ雪がとけるぞ 〜 よ          七番日記   化7
    沙汰なしに雪のとけたる山家哉      七番日記   化7
    長 〜 の雪のとけけり大月夜        七番日記   化7
                                                  (異)『発句鈔追加』真蹟 中七「雪もとけけり」
    雪どけをはやして行や外郎売        七番日記   化7
    雪とけてくり 〜 したる月よ哉      七番日記   化7
    雪どけや順礼衆も朝の声            七番日記   化7
    雪どけや巣鴨辺り[の]うす月夜      七番日記   化7
    雪とける 〜 と鳩の鳴木かな        七番日記   化7
    庵の雪何を見込にとけ残る          七番日記   化10  (異)『浅黄空』『自筆本』上五「藪の雪」
    庵の雪下手な消やうしたりけり      七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』『文政版』
                                 『希杖本』(異)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』上五「門の雪」
    雁鴨に鳴立られて雪げ哉            七番日記   化10    (出)『句稿消息』『発句集続篇』
    子守唄雀が雪もとけにけり          七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』
    しなのぢや雪が消れば蚊がさはぐ    七番日記   化10    「は」→「わ」
    雀来よ四角にとけし門の雪          七番日記   化10
    大切な雪がきへけり朝寝坊          七番日記   化10    「へ」→「え」
    とけ際に立て見る也比良の雪        七番日記   化10
                         (異)『句稿消息』『志多良』『希杖本』『発句集続篇』中七「成て見る也」
    迹じさり 〜 てや残る雪            七番日記   化11
                                             (異)同日記(化11)中七下五「じさりて残る小雪哉」
    今解る雪を流や筑摩川              七番日記   化11    「筑摩」→「千曲」
    門の雪汚れぬ先にとくきへよ        七番日記   化11    「へ」→「え」
    消かけて雪も一寸のがれ哉          七番日記   化11    (出)『浅黄空』『自筆本』
            (異)『発句鈔追加』真蹟 上五「とけかけて」、『希杖本』『発句集続篇』上五「解残る」
    沙太なしに大雪とれし御山哉        七番日記   化11    「太」→「汰」
    順礼の声のはづれを雪げ哉          七番日記   化11
    十ばかり鍋うつむける雪げ哉        七番日記   化11
                         (異)『浅黄空』中七「鍋うつく伏せる」、『自筆本』中七「鍋うつむけて」
    丸い雪四角な雪も流けり            七番日記   化11
                                           (異)同日記(化12)上五中七「けぶりして四角な雪の」
    藪並にとけて[も]しまへ門の雪      七番日記   化11
    藪の雪逃かくれても消る也          七番日記   化11    (出)『浅黄空』『自筆本』
    藪村や雪の解るもむつかしき        七番日記   化11    (異)同日記(化11)上五「うら町や」
                                   『浅黄空』『自筆本』上五「横町や」、『希杖本』上五「下町や」
    雪とけて村一ぱいの子ども哉        七番日記   化11
 (異)同日記(化11)『浅黄空』『希杖本』『発句集続篇』『三韓人』(作者柯尺)中七「町一ぱいの」
                                                       『自筆本』上五中七「雪げして町一ぱいの」
    汚れ雪世間並にはとけぬ也          七番日記   化11
                       (出)『自筆本』『希杖本』(異)『浅黄空』中七下五「世間並にもきえぬ也」
    汚れ雪それも消るがいやじやげな    七番日記   化11    「じ」→「ぢ」
    朝夕にせつてうされて残る雪        七番日記   化12    「てう」→「ちやう」
    庵の餅雪より先に消にけり          七番日記   化12
    おなじくは汚れぬ先にとけよ雪      七番日記   化12
    消よ雪汚ぬ先へとく 〜 と          七番日記   化12
    残る雪雀に迄もなぶらるゝ          七番日記   化12
    世に住ばむりにとかすや門の雪      七番日記   化12    (出)『文政版』『五とせ集』
              (異)『自筆本』上五「世に住で」、『浅黄空』『裏しろ』真蹟 中七「むりに解かすぞ」
                               『希杖本』中七「むりに消やすぞ」、『星の林』中七「無理に解する」
    我門や此界隈の雪捨場              七番日記   化12
    我雪も連に頼むぞ筑摩川            七番日記   化12    「筑摩」→「千曲」
                                                   (異)『浅黄空』『自筆本』中七「連て流れよ」
    門の雪ぢく 〜 しはいとけざまぞ    七番日記   化13    「ぢ」→「じ」「は」→「わ」
    汚雪てきぱきとけもせざりけり      七番日記   化13
    我庵や貧乏がくしの雪とける        七番日記   化13
                                     (出)『自筆本』(異)『句稿消息』『浅黄空』上五「我宿や」
    わかい衆よ雪とかしても遊ぶのか    七番日記   化13
    [大]えどや雪のけぶり[の]流れ込    七番日記   化14
    門口の貧乏雪よとけはぐる          七番日記   化14
    門の雪なぶりどかしにされにけり    七番日記   化14
    居るだけ雪をとかして奉加箱        七番日記   化14
                                                 (出)『自筆本』(異)『浅黄空』下五「奉加鉦」
    旅浴衣雪はくり 〜 とけにけり      七番日記   化14
                     (異)『浅黄空』前書き「門出吉」『自筆本』中七下五「山はくり 〜 雪とける」
    と[く]消よ名所の雪といふうちに    七番日記   化14
    とくとけよ貧乏雪[と]そしらるゝ    七番日記   化14
    とけ残る雪や草履がおもしろい      七番日記   化14
    町並や雪とかすにも銭がいる        七番日記   化14
                                 (異)同日記(化15)『発句鈔追加』『発句集続篇』上五「町住や」
    雪どけや大手ひろげし立榎          七番日記   化14
    雪どけや鷺が三疋立臼に            七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』
    大川に四角な雪も流けり            七番日記   政1
    垣添にしんぼ強さよ残る雪          七番日記   政1
    門の雪四角にされて流けり          七番日記   政1  (異)『発句鈔追加』中七「四角にわれて」
    小庇に薪並おく雪解哉              七番日記   政1(異)『浅黄空』『自筆本』中七「薪並べる」
    小庇の薪と猫と雪解哉              だん袋     政1    (異)『発句鈔追加』中七「薪も猫も」
    里犬の渡て見せる雪げ哉            七番日記   政1
    雀迄かち時作る雪げ哉              七番日記   政1
    大丸の暖簾ふは 〜 雪解哉          七番日記   政1
    雪国の雪もちよぼ 〜 残りけり      七番日記   政1
    雪解や貧乏町の痩子達              七番日記   政1
    六尺の暖簾ひた 〜 雪げ哉          七番日記   政1
                                       (異)『発句鈔追加』前書き「本町通り」中七「紺の暖簾を」
    愛らしく両手の迹の残る雪          八番日記   政2    (異)『梅塵八番』上五「昔なり」
    足迹のあわれいつ迄残る雪          八番日記   政2    「わ」→「は」
    是かれと云内終れ門の雪            八番日記   政2
    鍋の尻ほし並たる雪解哉            八番日記   政2    (出)『嘉永版』
    貧乏雪いつがいつぞととけ残る      八番日記   政2    (異)『梅塵八番』中七「いつがいつ迄」
    門前や子ど[も]の作る雪げ川        八番日記   政2    (異)『文政版』中七「杖でつくりし」
    藪の雪いつかなとけぬ覚悟哉        八番日記   政2    (出)真蹟
    藪の雪ちよつととけるもけむり哉    八番日記   政2    (異)『梅塵八番』下五「けぶり哉」
    雪汁のしの家に曲るかきね哉        八番日記   政2    「家」→「字」
                                                         (異)『梅塵八番』中七「小家に曲る」
    雪どけや大旅籠[屋]のうらの松      八番日記   政2
                                   (出)『浅黄空』『自筆本』(類)『自筆本』上五「かすむ日や」
    雪の道片 〜 とけてやみにけり      八番日記   政2    (異)真蹟 下五「置にけり」
    浅ましや一寸のがれに残る雪        発句題叢   政3  (出)『発句鈔追加』『希杖本』『嘉永版』
    風の子が掴みなくすや窓の雪        八番日記   政3    (出)『自筆本』『発句鈔追加』書簡
    今消る雪のせつてうされにけり      八番日記   政4    「て」→「ちや」
    せり流す雪のけぶりや門の川        梅塵八番   政4
                                       (類)『八番日記』(政4)上五中七「わり流す氷けぶりや」
    とてもならかんじかたまれ草履道    八番日記   政4
    本堂の上に鶏なく雪げ哉            八番日記   政4
    梅の木の連に残る[や]門の雪        文政句帖   政5
    門の雪邪魔がられても消へにけり    文政句帖   政5    「へ」→「え」
    嫌れた雪も一度に消へにけり        文政句帖   政5    「へ」→「え」
    嫌れぬうちに消けり門の雪          文政句帖   政5    (異)『発句鈔追加』上五「汚されぬ」
    邪魔にすなとてもかくても消る雪    文政句帖   政5
    小便の穴だらけ也残り雪            文政句帖   政5
    菜畠やたばこ吹く間の雪げ川        文政句帖   政5
    のら猫の爪とぐ程や残る雪          文政句帖   政5
    人のする形に行く也雪げ水          文政句帖   政5
                                                   (異)『浅黄空』『自筆本』中七「形に曲るや」
    みだ堂にすがりて雪の残りけり      文政句帖   政5
        八十八
    米の字にきへ残りけり門の雪        文政句帖   政6
    一押は紅葉也けり雪げ川            文政句帖   政6
    仏にもならでとけ[けり]門の雪      文政句帖   政7
        二百計にして草水亭にて薙髪
    吉日に老の頭の雪解哉              文政句帖   政8
    鶏のつゝきとかすや門の雪          文政句帖   政8
    大雪を杓子でとかす子ども哉        希杖本
    親犬が瀬踏してけり雪げ川          浅黄空             (出)『自筆本』
    門出吉山もくり 〜 雪とける        自筆本
        素鏡が母八十八才賀
    門畑や米の字なりの雪解水          文政版             (出)書簡
    門畠や棒でほじくる雪解川          浅黄空             (異)『自筆本』中七「足駄で作る」
    雪解のしの字引なり下り坂          発句集続篇

 

春の山(山青む、山笑ふ)

    かくれ家も人に酔けり春の山        文化句帖   化1
    寝仲間に我をも入よ春[の]山        文化句帖   化1
    降暮し 〜 けり春の山              文化句帖   化1
    老僧のけば 〜 しさよ春の山        文化句帖   化1    (出)『自筆本』
    伏見のや月さゝずとも春の山        文化句帖   化2
    小酒屋の出現したり春の山          七番日記   化9
    小さいもそれ 〜 春の山辺哉        七番日記   化9
    山 〜 は袂にすれて青むぞよ        七番日記   化9    (出)『株番』
    しかの子はとつていくつぞ春の山    書簡       化14(異)『七番日記』(化13)下五「萩[の]花」
    足もとに鳥が立也はるの山          八番日記   政4  (異)『発句鈔追加』中七「鳥のたちけり」
    ずつぷ[り]とぬれた所が春の山      文政句帖   政5
    寝ころぶや手まり程でも春の山      文政句帖   政5
    ゆふさりの呼声す也春の山          文政句帖   政5
    雪国や雪ちりながら春の山          文政句帖   政5
    明るさは雨つゞきでもはるの山      文政句帖   政7
        門賀
    福来たる門や野山の笑顔            文政句帖   政7
                          (異)『自筆本』『文政版』前書き「店開賀」上五下五「福の来る・・・朝笑」
    振袖にすれ 〜 山の青む也          自筆本

 

春の野(春の原)

    髪虱ひねる戸口も春野哉            文化句帖   化1
    皺伸す薬も降らん春の原            文化句帖   化5

 

春の海

    春の海木に害を成す風はあれど      寛政句帖   寛5

 

春の水

    家形に月[の]さしけり春の水        文化句帖   化2
    袖かざす御公家もおはせ春の水      文化句帖   化2

 

水温む

    汲みて知るぬるみに昔なつかしや    西国紀行   寛7
    鷺烏雀が水もぬるみけり            発句題叢   政3
                              (出)『発句鈔追加』『希杖本』(異)『版本題叢』中七「雀の水も」

 

苗代(苗代田)

    魁てうき草浮けり苗代田            西国紀行   寛7
        三月三日
    苗代の雨を見て居る戸口哉          書簡       寛10
    朝靄のかゝれとてしもなはしろ田    享和二句記 享2
    苗代に作り出したる小家哉          七番日記   化9
    苗代や松も加へて夜の雨            七番日記   化11    (出)『希杖本』『発句集続篇』
                   (異)『句稿消息』中七「山をも添て」『浅黄空』『自筆本』中七「松もろともに」
    我庵は苗代守のやしき哉            七番日記   化11
                                              (異)同日記(化11)上五下五「我庵も・・・たそく哉」
    世にそむく庵の苗代青みけり        七番日記   化12    (異)同日記 上五「茶のけぶり」
    生役[や]一つかみでもなはしろ田    七番日記   化13    (出)同日記(政1)上五「かくれ家や」
    苗代や親子して見る宵の雨          七番日記   化13
    むらのない苗代とてもなかりけり    七番日記   化13    (出)『希杖本』
    我こねたのも苗代と成にけり        七番日記   化13    (出)『希杖本』
    苗代も庵のかざりに青みけり        七番日記   政1    (異)『八番日記』(政2)『おらが春』
                                  遺稿 上五「苗代は」、『浅黄空』上五中七「苗代田門のかざりに」
    苗代も五軒もやひや茶のけぶり      七番日記   政1
    苗代や草臥顔の古仏                七番日記   政1
    苗代や田をみ廻りの番太郎          七番日記   政1    (出)『発句集続篇』
    苗代のむら直りけり夜の雨          文政句帖   政6
    辻堂や苗代一枚菜一枚              文政句帖   政7
    寝心や苗代に降る夜の雨            文政句帖   政7
    我門のかざりに青[む]苗代田        自筆本             (異)『自筆本』上五「草庵の」

 

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人事

 

涅槃(寝釈迦、涅槃会、涅槃像)

    鬼島の涅槃の桜咲にけり            文化句帖   化4
    釈迦の日と知て出たよ正覚坊        七番日記   化12
    蒲公[英]の天窓そつたるねはん哉    七番日記   化12
    ねはん会やそよとなでしこ女郎花    七番日記   化12
    ねはん像銭見ておはす顔も有        七番日記   化12    (出)『希杖本』『西歌仙』真蹟
    御涅槃やとり分花の十五日          八番日記   政2    (出)『嘉永版』
    小うるさい花が咲とて寝釈迦かな    おらが春   政2
                                 (出)『嘉永版』(異)『発句鈔追加』遺稿 真蹟 上五「眼の毒の」
    珠数かけて山鳩ならぶ涅槃哉        八番日記   政2    「珠数」→「数珠」
    其[脇に]ごろり小僧の寝じやか哉    八番日記   政2
    寝ておわしても仏ぞよ花が降る      八番日記   政2    「わ」→「は」
    涅槃会や鳥も法華経 〜 と          八番日記   政2
    御仏や寝てござつても花と銭        八番日記   政2    (異)『おらが春』遺稿
 中七「寝ておはしても」、『浅黄空』前書き「寝釈迦堂」『自筆本』中七下五「寝ておはしても花が降」
    鶯は本<ん>になきけり涅槃哉        八番日記   政3
    死花をぱつと咲せる仏哉            八番日記   政3
                                             (異)『発句集続篇』上五中七「死花のぱつと咲たる」
    相伴に我らもごろり涅槃哉          八番日記   政3    (出)『発句鈔追加』『だん袋』
       前書き「二月十五日」(異)『文政九・十年句帖写』(政9)『希杖本』中七「小僧もちよつと」
    花ちりて死ぬも上手な仏哉          八番日記   政3
        冥々賀
    兄どのに席をゆづりて涅槃かな      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「兄どのの」
    遊ぶ日や在家の壁の涅槃像          文政句帖   政6
                                           (異)『発句集続篇』上五中七「遊び日や在家もかける」
    花の所へ雪が降る涅槃哉            文政句帖   政6
                                               (出)『文政版』前書き「二月十五日雪降りけるに」
    やしよ馬引て小僧も寝釈迦哉        文政句帖   政6
    藪寺や涅槃過てのねはん像          文政句帖   政6    (異)『発句集続篇』上五「辻堂や」
    死時も至極上手な仏かな            政九十句写 政9
    辻堂や掛つ放しのねはん像          政九十句写 政9    (異)『発句集続篇』中七「涅槃過ての」
    華の世を見すまして死ぬ仏かな      政九十句写 政9
    ぽつくりと死が上手な仏哉          文政句帖   政9
    此通りゆめでくらせと涅槃かな      発句鈔追加         (出)真蹟

 

初午

    初午を後に聞くや上野山            文化句帖   化2
    初午の聞へぬ山や梅の花            文化句帖   化2    「へ」→「え」
    初午や女のざいに淋し好            文化句帖   化2
    初午や山の小すみはどこの里        文化句帖   化2
    はつ午や火をたく畠の夜の雪        八番日記   政2    (異)真蹟 中七「火をたく森の」
    初午に無官の狐鳴にけり            八番日記   政2
                                     (異)『おらが春』『文政版』『発句集続篇』上五「花の世を」
    初午や門へつん出す庭切手          文政句帖   政5
    初午や錠の明たる下屋敷            文政句帖   政5
    一寸とした藪も初午太鼓哉          発句集続篇
    はつ午や御鍵のゆりる浜屋敷        発句鈔追加         「りる」→「るり」

 

彼岸(彼岸団子、彼岸太郎、中日)

    草の葉や彼岸団子にむしらるゝ      文化句帖   化2
    京辺や彼岸太郎の先天気            文化句帖   化2
    我国は何にも咲かぬ彼岸哉          七番日記   化11
    雨に雪しどろもどろのひがん哉      七番日記   政1
    西方は善光寺道のひがん哉          七番日記   政1
    何ふりやかふりやけふはひがん雪    七番日記   政1
    ばくち小屋降つぶしけり彼岸雨      七番日記   政1
                                                (類)『自筆本』上五下五「茶屋小屋を・・・春の雨」
    我村はぼた 〜 雪のひがん哉        七番日記   政1
        壬正月廿八日
    中日と知て虱の出たりな            だん袋     政3
    彼岸とて袖に這する虱かな          八番日記   政3    (出)『嘉永版』
    あゝ寒いあら 〜 寒いひがん哉      文政句帖   政5
    草の家や丁どひがんの団子哉        文政句帖   政5
    小筵にのさ 〜 彼岸虱かな          文政句帖   政5    (出)『だん袋』
    野原にも並ぶ乞食の彼岸かな        文政句帖   政5
    中日と知てのさばる虱かな          文政句帖   政5
    中日をより[に]よりてやひがん雨    文政句帖   政6
    寺町は犬も団子のひがん哉          文政句帖   政6
    改て吹かける也ひがん雪            文政句帖   政8
    ついて来た犬も乗る哉ひがん舟      文政句帖   政8
    御彼岸のぎりに青みしかきね哉      希杖本
        桜咲などの沙汰もなければ
    御ひがんもそしらぬ顔の藪木かな    希杖本
                         (出)『発句集続篇』前書き「我国にあればいまだ桜の咲たる沙汰もきかず」
    袖あたり遊ぶ虱の彼岸哉            希杖本

 

開帳(出開帳)

    帳閉る加勢もせずに旅寝とは        西国紀行   寛7
    五月雨が終ればおはる開帳哉        七番日記   化9    「お」→「を」
        三月廿七日一人花見  往生寺
    さく花の開帳[に]迄逢にけり        七番日記   化13
        平出村彦坂藤兵衛のみだ如来康楽寺に開帳
    花咲くや在家のみだも御開帳        七番日記   化13
                             (出)『浅黄空』前書き「平出村藤兵衛の仏、善光寺にて拝ませけるに」
 『発句鈔追加』前書き「平出村彦坂藤兵衛のもとに祖師聖人の真筆九字の名号有、今広楽寺に於て開帳」
                 『自筆本』(異)『句稿消息』前書き「平出村藤兵衛といふものゝ仏善光寺に弘通有」
           『発句集続篇』前書き「平出村何某のほとけ康楽寺弘通有ける時」『希杖本』下五「出開帳」
        善光寺御堂
    開帳に逢ふや雀もおや子連          だん袋     政3
                     (出)『文政版』奉納句額(異)『自筆本』前書き「善光寺」中七「逢ふや雀の」
    曲り所や花さへあれば開帳小屋      七番日記   政1
    咲花をあてに持出す仏かな          八番日記   政3
    散花に順礼帳も開帳哉              八番日記   政4

 

安楽祭(安楽花)

    尻餅もやすらひ花よ休らひよ        文化句帖   化5    (出)遺稿 前書き「鎮花祭」

 

峰入り

    峰入や小八あらため小先達          寛政句帖   寛4

 

壬生狂言

    出る月や壬生狂言の指の先          七番日記   政1

 

御影供(御影講)

    飴売[も]花かざりけり御影講        七番日記   化12
    こんにやくも拝まれにけり御影講    七番日記   化12
    御影講や泥坊猫も花の陰            七番日記   化12
    島原やどつと御影供のこぼれ人      八番日記   政4
        廿一日
    南無大師昔も花の降りしよな        八番日記   政4
    花降や入定の日はケ様にて          八番日記   政4
    はらばりたやうんと登れば桜哉      八番日記   政4
    御影供にも御覧に入るさくら哉      八番日記   政4

 

出代り

         掛川
    出代りや蛙も雁も啼別れ            五十三駅   天8
    出代の己が一番烏かな              化五六句記 化6
    梅の木に何か申て出替りぬ          七番日記   化七
       (異)同日記(化7)中七「忘るゝなとて」『発句集続篇』上五中七「さくんめに何かいひ 〜 」
    けふぎりや出代隙の凧              七番日記   化10
    出代やいづくも同じ梅の花          七番日記   化10
 (出)『志多良』『発句題叢』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『文政版』『希杖本』『発句類題集』
    大原に出代駕の通りけり            七番日記   化11
    出代やうらからおがむ日枝の山      七番日記   化11    「お」→「を」
                    (出)『句稿消息』『希杖本』(類)同日記(化10)上五下五「藪入や・・・亦土山」
    越後衆が歌で出代こざとかな        七番日記   化12    (異)『自筆本』上五「越後衆は」
    扨も 〜 六十顔の出代りよ          七番日記   化12    (異)同日記(化11)下五「せ[つ]き候」
    出代が駕にめしたる都哉            七番日記   化12
    ほろつくや誰出代の涙雨            七番日記   化14
    出代の市にさらすや五十顔          八番日記   政2    (出)『嘉永版』『発句鈔追加』
    出代のふりさけ見たる三笠山        八番日記   政2    (出)真蹟
    出代や三笠の山に出し月            八番日記   政2
    出代や山越て見る今日の空          八番日記   政2    (出)『発句鈔追加』
    はら 〜 と誰出代つなみだ雨        八番日記   政2    「つ」→「の」(出)『発句鈔追加』
    鋲打の駕で出代る都哉              八番日記   政2
    江戸口やまめで出代る小諸節        文政句帖   政5
    門雀なくやいつ迄出代ると          文政句帖   政5
    出代てなりし白髪やことし又        文政句帖   政5
    出代の諷ふや野らは野となれと      文政句帖   政5
    出代のまめなばかりを手がら哉      文政句帖   政5
    出代もやめにせよとや鳴く雀        文政句帖   政5
    出代や迹を濁さぬ一手桶            文政句帖   政5
    出代や江戸をも見ずにさらば笠      文政句帖   政5
    出代や江戸見物もしなの空          文政句帖   政5
    出代や帯ば[つ]かりを江戸むすび    文政句帖   政5
    出代やぶつ 〜 江戸にこりと蓙      文政句帖   政5
    出代やまめなばかりを江戸みやげ    文政句帖   政5
    出代や両方ともに空涙              文政句帖   政5
    としより[も]あれ出代るぞことし又  文政句帖   政5
    鳩鳴や爺いつ迄出代ると            文政句帖   政5
    夜巨燵や出代りどもがお正月        文政句帖   政5    「巨」→「炬」
                                                         (異)『発句集続篇』中七「出代どもの」
    より嫌して出代も杉菜哉            文政句帖   政5
    あんな子や出代にやるおやもおや    文政句帖   政6
    男なればぞ出代るやちいさい子      文政句帖   政6    「ちい」→「ちひ」
    口故に又出代のおばゝ哉            文政句帖   政6
    五十里の江戸[を]出代る子ども哉    文政句帖   政6
    三介よ最う出代は止まいか          文政句帖   政6
    旅笠や唄で出代るえど見坂          文政句帖   政6    (異)『発句集続篇』上五「越後衆や」
    出代のよりからしさへなかりけり    文政句帖   政6
    出代のより屑ちらりほらり哉        文政句帖   政6
    出代や迹の汁の実蒔ておく          文政句帖   政6
               (異)『文政版』前書き「一年を売て親を養ふは孝行云ん方なし」中七「汁の実などを」
    出代や江戸を見おろす碓井山        文政句帖   政6
    出代や十ばかりでもおとこ山        文政句帖   政6    「お」→「を」
             (出)『浅黄空』(異)同句帖(政6)中七「十役者画の」『発句集続篇』下五「男の子」
    出代や直ぶみをさるゝ上りばな      文政句帖   政6    「直」→「値」
    出代や閨から乳を呼こ鳥            文政句帖   政6
    出代やねらひ過してぬけ参          文政句帖   政6
    今の世やどの出代の涙雨            文政句帖   政7
    越後衆や唄で出代る中仙道          文政句帖   政7    (異)『発句集続篇』下五「江戸見坂」
    江戸口や唄で出代る越後笠          文政句帖   政7
    大連や唄で出代る本通り            文政句帖   政7
    出代りの誰まことより涙雨          文政句帖   政7
    出代ればこそ新なれ門の月          文政句帖   政7
    出代や六十顔をさげながら          自筆本

 

二日灸

    かくれ屋や猫にもすへる二日灸      八番日記   政2    「へ」→「ゑ」
                           (出)『おらが春』書簡(異)『自筆本』『文政版』中七「猫にもいはふ」
    褒美の画先[へ]掴んで二日灸        八番日記   政4    (異)『自筆本』中七「先へ握て」

 

桃の節句(桃の日、雛の日)

    山陰も桃の日あるか砂糖売          文化句帖   化2
    雛の日もろくな桜はなかりけり      文化句帖   化5
    雛の日や太山烏もうかれ鳴          七番日記   化9
    苔桃も節句に逢ふや赤い花          七番日記   政1
    桃の日や深草焼のかぐや姫          七番日記   政1

 

雛(雛祭、土雛、雛市、雛棚、雛の客)

    雛祭外から見よと火のとぼる        斗入句帖   寛中    (出)書簡
    かつしかや昔のまゝの雛哉          文化句帖   化1
    妹が家も田舎雛ではなかりけり      文化句帖   化3
    古郷は雛の顔も葎哉                文化句帖   化3
    式雛は木がくれてのみおはす也      文化句帖   化4
    角力取も雛祭に遊びけり            文化句帖   化4
    あ[さ]ぢふの雛も長閑きお顔哉      文化句帖   化5
    煙たいとおぼしめすかよ雛顔        文化句帖   化5
    曽我殿にまけじ 〜 と雛哉          文化句帖   化5
    雛市やかまくらめきし薄被          文化句帖   化5
    雛祭り娘が桐も伸にけり            文化句帖   化5
    又雛に見[せ]申けり藪の月          文化句帖   化5
    おぼろげや同じ夕をよその雛        七番日記   化7
    鞍壺にくゝし付たる雛哉            七番日記   化7
    乞食子がおろ 〜 拝む雛哉          七番日記   化7
    東風吹けよはにふの小屋も同じ雛    七番日記   化7
    古葎雛の御顔にかゝるかな          七番日記   化7
    み肴に桜やよけん雛の前            七番日記   化7
    むさい家との給ふやうな雛哉        七番日記   化7
    けふの日もがらくた店の雛哉        七番日記   化9
    雛達そこで見やしやれ吉の山        七番日記   化9    (出)『株番』
    雛達花うつくしくおぼしめさん      七番日記   化9
    雛市や見たてしとのもうんか程      七番日記   化9
    後家雛も一つ桜の木の間哉          七番日記   化10
                                     (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
    はんの木と同じ並びの雛哉          七番日記   化10
                                             (出)『希杖本』(異)『志多良』中七「同じ並びや」
    家並や土の雛も祭らるゝ            七番日記   化11
    御雛をしやぶりたがりて這子哉      七番日記   化11  (異)『浅黄空』『自筆本』上五「雛の顔」
    笹の家や雛の顔へ草の雨            七番日記   化11
    雛達ものんきに見ゆる[田]舎哉      七番日記   化11    (出)『句稿消息』『希杖本』
    灯ともして小笹がくれの雛哉        七番日記   化11    (出)『希杖本』
    雛棚やたばこけぶりも一気色        七番日記   化11
    雛棚や花に顔出す娵が君            七番日記   化11
    雛棚や雇たやうにとぶ小蝶          七番日記   化11
                                             (出)『希杖本』(異)『発句集続篇』下五「舞胡蝶」
    雨漏を何とおぼすぞ雛達            七番日記   化12
    ちる花に御目を塞ぐ雛哉            七番日記   化12
    土人形もけふの祭に逢にけり        七番日記   化12
                                               (異)同日記(化12)上五中七「土人形同じ祭りに」
        平安春色
    花もちれ活た雛おがむ東山          七番日記   化12    「お」→「を」
                                (出)『発句鈔追加』(異)真蹟 上五中七「生きた雛おがめや拝め」
    いとこ雛孫雛と名の付給ふ          七番日記   政1
    へな土でおつゝくねても雛かな      七番日記   政1    (出)『浅黄空』『自筆本』
    浦風に御色の黒い雛哉              八番日記   政2    (出)『嘉永版』前書き「上巳之部」
    同と雛にすゝめる寝酒哉            八番日記   政2    (異)『梅塵八番』上五「御ひとつと」
    片すみに煤[け]雛も夫婦哉          八番日記   政2
    煤け雛しかも上座をめされけり      八番日記   政2    (異)『嘉永版』中七「いつち上座を」
               同日記(政3)中七下五「いつち上座におはしけり」『発句集続篇』下五「したりけり」
    土雛は花の木かげに隠居哉          八番日記   政2
    土雛も祭の花はありにけり          八番日記   政2
    花さかぬ片山かげもひな祭り        八番日記   政2    (出)『発句鈔追加』『嘉永版』
    花の世や寺もさくらの雛祭          八番日記   政2
    ひな棚にちよんと直りし小猫哉      八番日記   政2
    へな土の雛も同じ祭り哉            八番日記   政2
                             (異)『発句鈔追加』『梅塵抄録本』上五中七「へな土でつくねた雛も」
    我こねた土のひなでも祭り哉        八番日記   政2    (異)『梅塵八番』中七「土の雛も」
    今一つ雛の目をせよよい娘          八番日記   政3
    桜木や花の小隅に隠居雛            八番日記   政3
    とつゝきに一わにわにて雛の客      八番日記   政3    (出)同日記(政4)
    大寒と云顔もあり雛たち            八番日記   政4
    かく[れ]家や子どもけのない雛祭    八番日記   政4
        いまだ花あらざりければ
    雛達に寒い計を馳走かな            八番日記   政4
                             (出)『発句集続篇』前書き「いまだ花なき国の上巳は」『発句鈔追加』
    雛棚に裸人形のきげん哉            八番日記   政4
    へろ 〜 の神が雛につんむきぬ      八番日記   政4
                                       (異)『浅黄空』『自筆本』中七下五「神や雛についとむく」
    目じりを立て踊も雛かな            八番日記   政4
    目番目屁鬮出しけり雛の声          八番日記   政4
    居並んで達磨も雛の仲間哉          文政句帖   政5
    雛達に咄しかける子どもかな        文政句帖   政5
    持たすれば雛をなめる子ども哉      文政句帖   政5
    世が世なら世ならと雛かざりけり    文政句帖   政5
    雛棚に糞をして行く雀哉            文政句帖   政6    (出)同句帖(政7)
    明り火や市の雛の夜目遠目          文政句帖   政7
    うら店も江戸はえど也雛祭り        文政句帖   政7
    大猫も同座して寝る雛哉            文政句帖   政7
    吉日の御顔也けり雛達              文政句帖   政7
    後家雛も直にありつくお江戸哉      文政句帖   政7
    掌に飾て見るや雛の市              文政句帖   政7
                                  (出)『浅黄空』『自筆本』(異)『文政版』真蹟 下五「市の雛」
    生酔の張り番なさる雛かな          文政句帖   政7
    雛棚や隣づからの屁のひゞき        文政句帖   政7
    古い雛いつち上座にまし 〜 ける    文政句帖   政7
    古雛やがらくた店の日向ぼこ        文政句帖   政7  (異)『浅黄空』『自筆本』上五「紙雛や」
    雛達木がくれてのみおはす也        希杖本

 

菱餅(雛の餅)

        采*(「*」は草冠に「繁」)
    菱餅や雛なき宿もなつかしき        享和句帖   享3
    けふの日や山の庵も雛の餅          七番日記   化11
    藪村の雛の餅つくさはぎ哉          七番日記   化11    「は」→「わ」

 

草餅(蓬餅、餅草)

    浅ぢふの名所がましや草の餅        享和二句記 享2
        兌為沢  和兌吉
    草の餅暮待人の又ふゆる            享和句帖   享3
    狙も来よ桃太郎来よ草の餅          文化句帖   化2
    我宿の餅さへ青き夜也けり          文化句帖   化2
    草餅を先吹にけり筑波東風          七番日記   化7
    ふや 〜 の餅につかるゝ草葉哉      七番日記   化7
    蓬餅そのゝ鶯是ほしき              七番日記   化7
    けふの日や庵の小草も餅につく      七番日記   化8
    草餅にいつか来て居る小蝶哉        七番日記   化9
    とてもなら餅につかれよ庵の草      七番日記   化9
    おらが世やそこらの草も餅になる    七番日記   化12
                   (出)『浅黄空』『希杖本』前書き「月をめで花にかなしむは雲の上人の事にして」
                  真蹟 前書き「花をめで月にかなしむは雲の上人のことにして」『自筆本』『文政版』
    草餅や臼の中から蛙鳴              七番日記   化12
    草餅の桜の花にまぶれけり          七番日記   化13
    草もちや臼にぼた 〜 梅の花        七番日記   化13
    蝶とまれも一度留れ草もちに        七番日記   化13
                                             (出)『句稿消息』(異)同日記(化13)下五「盃に」
    草もちの草より青しつや 〜 し      七番日記   政1
                                               (異)『発句集続篇』中七下五「草より青き都かな」
    小筵や畠の中の蓬餅                七番日記   政1
    箕の中にいくたり寝たぞ蓬餅        七番日記   政1
                                                 (異)『浅黄空』『自筆本』中七「いくたり居る」
    蓬生もけさめづらしや蓬餅          七番日記   政1
    草餅を鍋でこねてもいはひ哉        八番日記   政2    (異)『梅塵八番』下五「祝ひけり」
    子ありてや蓬が門の蓬餅            八番日記   政3
    立屑は先へ売けり草の餅            八番日記   政4    「立」→「断」
    人形の口へつけるや草の餅          文政句帖   政5
    草餅や片手は犬を撫ながら          文政句帖   政7    (出)『浅黄空』
    草餅や地蔵の膝においてくふ        文政句帖   政7
    草餅や芝に居つて犬を友            文政句帖   政7
    胡左を吹口へ投込め蓬餅            自筆本             (異)『浅黄空』下五「土団子」

 

曲水

    盃よ先流るゝな三ヶの月            七番日記   化11
                                          (出)『発句題叢』『発句鈔追加』『嘉永版』『希杖本』
    川下や果は鬮とりの小盃            八番日記   政3    (出)『嘉永版』
    曲水やどたり寝ころぶ其角組        八番日記   政3
    ふで添て思ふ盃流しけり            八番日記   政3    (出)『嘉永版』

 

山吹衣

    橋守も山吹衣着たりけり            文化句帖   化4
                                                    (異)『七番日記』(化8)上五「爺どのも」

 

鶏合せ

        布施弁天
    米蒔くも罪ぞよ鶏がけあふぞよ      七番日記   化9    (出)『株番』
    勝鶏が公家に抱かれて鳴にけり      八番日記   政4

 

汐干(汐干潟、汐干狩)

    朝漬を働ぶりの汐干哉              文化句帖   化1
    女から先へかすむぞ汐干がた        文化句帖   化1
    淋しさや汐の干る日も角田川        文化句帖   化1
    汐干潟雨しと 〜 と暮かゝる        文化句帖   化1
    汐干潟女のざいに遠走り            文化句帖   化1
    汐干潟しかも霞むは女也            文化句帖   化1
    汐干潟松がなくても淋しいぞ        文化句帖   化1
    すげ笠の霞まずとても汐干哉        文化句帖   化1
    住吉や汐干過ても松の月            文化句帖   化1
    折角の汐の干潟をざんざ雨          文化句帖   化1
    どの木でも汐干の見ゆる箱根山      文化句帖   化1
    どの松で汐干見ようぞ筥根山        文化句帖   化1    (出)『発句題叢』『希杖本』
    鶏のなく家も見へたる汐干哉        文化句帖   化1    「へ」→「え」
    はれ 〜 と御八つ聞る汐干哉        文化句帖   化1
    降雨や汐干も終に暮の鐘            文化句帖   化1
    御寺から直に行るゝ汐干哉          文化句帖   化1
    染色の傘のちら 〜 汐干哉          文化句帖   化3
    腰窓もすべて汐干の明り哉          文化句帖   化4
    汐干とも云ずに暮るゝ伏家哉        文化句帖   化4
    人一人二人干潟の小すみ哉          文化句帖   化4
    深川や桃の中より汐干狩            文化句帖   化4  (異)『浅黄空』中七「庭にいく群」
                   『七番日記』(化8)中七「五尺の庭も」『八番日記』(政3)中七「御庭の中の」
                        『自筆本』中七「庭の小隅の」 『発句集続篇』中七下五「御庭の中の汐干潟」
    御つゝじ汐干 〜 に古びけり        文化句帖   化5
    そろ 〜 と蝶も雀も汐干哉          文化句帖   化5
    麦の葉に汐干なぐれの烏哉          文化句帖   化5    (異)遺稿 上五「青の葉は」
    我麦もわるくは見へぬ汐干哉        文化句帖   化5
    鶯の觜の先より汐干哉              七番日記   化7
        深川
    雀鳴庭の小隅も汐干哉              七番日記   化7    (異)『発句集続篇』中七「庵の小隅も」
    難波づの楽天出よ汐干潟            七番日記   化7
    古めかし汐の干日も須磨簾          七番日記   化7
    妹が子やけふの汐干の小先達        七番日記   化8
    青天の又青天の汐干哉              七番日記   化9
    はこねぢや麦もそよ 〜 遠干潟      七番日記   化9
    のさ 〜 と汐干案内や里の犬        七番日記   化13
    松の木に笠をならべる汐干哉        七番日記   化13  (異)『発句集続篇』中七「笠をならせる」
    松の葉に足拭ふたる汐干哉          七番日記   化13
    青天のとつぱ[づ]れ也汐干がた      八番日記   政3
                 (出)『発句集続篇』(異)『浅黄空』『自筆本』中七下五「とつぱづれより汐干哉」
    どら犬の案内がましき汐干哉        八番日記   政3    (異)『梅塵八番』上五「飛犬の」
    人まねに鳩も雀も汐干かな          発句題叢   政3
              (出)『嘉永版』『希杖本』(異)『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』上五「人並に」

 

炉塞ぎ

    臑とものいひ 〜 ふさぐいろり哉    七番日記   化11
        炉塞
    ろの蓋にはや蝶どもが寝たりけり    七番日記   化11
                           (出)『句稿消息』(異)『句稿消息』「炉の蓋をはや雀等がふみにけり」
    鶏が先踏んでみる炉蓋哉            七番日記   化11
    ぬり塞ぐ炉にも吉日さはぎ哉        文政句帖   政8    「は」→「わ」
    閑人が炉を塞ぐとて披露哉          文政句帖   政8

 

ふらんど

    狗をふらんどすなり花の陰          文政句帖   政7
    ふらんどにすり違ひけりむら乙鳥    文政句帖   政7    「すり」→「すれ」
    ふらんどや桜の花をもちながら      文政句帖   政7    (出)『文政版』『たねおろし』

 

野遊び

    食過てなま一日ぞ野辺の山          七番日記   化7    (異)同日記(化7)上五「市過て」

 

摘み草(草摘み)

    草摘や妹を待せて継きせる          寛政句帖   寛5
    草つみのこぶしの前の入日哉        文化句帖   化2
    草摘やうれしく見ゆる土の鈴        文化句帖   化2
    草つみや狐の穴に礼をいふ          七番日記   化9
    里の子や草つんで出る狐穴          七番日記   化9
    草つみや羽折の上になく蛙          七番日記   化10    「折」→「織」
    むさしのゝ草をつむとてはれ着哉    文政句帖   政5
    今の世は草をつむにも晴着哉        文政句帖   政7
                                                   (異)『浅黄空』『自筆本』上五「わかい衆は」
    つみ草を母は駕から目利哉          文政句帖   政8

 

芹摘み

    芹つみや笠の羽折に鳴蛙            句稿消息   化10    (出)『浅黄空』

 

茶摘み(二番茶、扱き茶、茶摘み唄)

    我庵は人も目かけぬ茶[の]木哉      文化句帖   化1
    大和路は男もす也茶つみ歌          文化句帖   化2
    こく段になれば藪にも茶の木哉      文化句帖   化4
    茶をこくやふくら雀の顔へ迄        文化句帖   化4
    寺山の茶つみもすむや二番迄        文化句帖   化4
    うぐひすもうかれ鳴する茶つみ哉    文化句帖   化5
    菜の花もはらり 〜 とこき茶哉      文化句帖   化5
    夕暮の笠も小褄もこき茶哉          化三―八写 化6(異)同句日記写(化6)中七「笠に小褄に」
    折ふしは鹿も立添茶つみ哉          七番日記   化7
    木曽山やしごき棄も茶つみ唄        七番日記   化8
    茶をつんで又つみ給ふしきみ哉      七番日記   化8
    なむあみだ 〜 と[て]こき茶哉      七番日記   化8
    二番茶に[こ]き交られしつゝじ哉    七番日記   化8
    古笠へざくり 〜 とこき茶哉        七番日記   化10  (出)『志多良』『希杖本』『さざなみ集』
    欠にも節の付たる茶つみ哉          七番日記   化11    (出)『発句集続篇』
    しがらきや大僧正も茶つみ唄        七番日記   化11
                                   (出)『句稿消息』(異)『浅黄空』『自筆本』中七「大僧正の」
    だまつてもつまぬや尼の茶の木藪    七番日記   化11
    野畠へばらり 〜 と扱茶哉          七番日記   化11(異)『文政句帖』(政5)上五「ぬり笠へ」
    山しろ[や]手まひづかひも茶つみ唄  七番日記   化11    「まひ」→「まへ」
                       (異)『希杖本』上五「山鳩や」『発句集続篇』上五中七「山畑や手前遣ひの」
    負た子が花ではやす[や]茶つみ唄    七番日記   化12
    ぶつ 〜 と大念仏でつむ茶哉        七番日記   化12    「大」→「口」
    後 〜 は扱ちらさるゝ茶[の]木哉    七番日記   化13
   (異)同日記(化13)中七「爺に扱る」『浅黄空』中七「婆々に扱る」『自筆本』中七「婆々に扱て」
    川霧のまくしかけたり茶つみ唄      七番日記   化13
    正面はおばゝ組也茶つみ唄          七番日記   化13
    近づけば御僧達也茶つみ唄          七番日記   化13
    隙明やばゝがばさ茶も一莚          七番日記   化13
    御仏の茶でもつまうかあゝまゝよ    七番日記   化13
    二番芽も淋しからざる茶の木哉      七番日記     (出)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』遺稿
    一対に並ぶ茶つみの義式哉          七番日記   政1    「義」→「儀」
    折 〜 は腰たゝきつゝつむ茶哉      七番日記   政1
    木曽の茶も今やつむらんはやり笠    七番日記   政1
        貧僧
    小袋に米も少々扱茶哉              七番日記   政1
    ごろり寝や先は扱茶も一莚          七番日記   政1
    僧正が音頭とる也茶つみ唄          七番日記   政1
                             (出)『発句集続篇』(異)『文政句帖』(政5)中七「音頭とりつゝ」
    二番目[も]ばかにはされぬ茶藪哉    七番日記   政1
    茶もつみぬ松もつくりぬ丘の家      発句題叢   政3
                                               (出)『嘉永版』『希杖本』『発句鈔追加』『吹寄』
    母の分摘めば用なき茶山哉          八番日記   政3
    上人はだまりこくつて茶つみ哉      文政句帖   政5
    つむ程は手前づかひの藪茶哉        文政句帖   政5
    婆ゝどのゝ目がねをかけて茶つみ哉  文政句帖   政5
    御仏の茶も一莚ひろげけり          文政句帖   政7

 

山焼き(山火)

    山やく山火と成りて日の暮るゝ哉    西国紀行   寛7
    夕雨に賑はしき野火山火かな        みつのとも 寛10
        火山旅
    焚残る巣をくわへ行烏哉            享和句帖   享3    「わ」→「は」
    鳥の巣を見し辺りぞや山を焼        文化句帖   化1
    うつくしい鳥見し当よ山をやく      文化句帖   化2
    又一つ山をやく也おぼろ也          文化句帖   化2
    山やくや眉にはら 〜 夜の雨        文化句帖   化2
    鳥をとる鳥の栖も焼れけり          文化句帖   化5
    暮ぬ間の一重霞や山をやく          七番日記   化7
    山焼やひそかに見ゆる犬桜          七番日記   化7
    凡に廿里先や山をやく              七番日記   化9
    山焼やあなたの先が善光寺          七番日記   化9
    山烏手伝ふてやく小藪哉            七番日記   化10    「ふ」→「う」
    山やけや畠の中の水風呂へ          七番日記   化10
    人並に蛙もはやす山火哉            七番日記   化11    (出)『句稿消息』
    寝がてらや咄がてらや山をやく      七番日記   化13
                               (出)『句稿消息』前書き「山人の昼休」、『自筆本』前書き「昼休」
    豊年のほの字にやけよしなの山      七番日記   政1    (出)『発句集続篇』
    山焼の明りに下る夜舟哉            七番日記   政1    (出)『だん袋』『自筆本』
     『発句鈔追加』『茶すり小木』(異)『嘉永版』下五「夜舟の火」『発句集続篇』下五「小舟かな」
    山焼や仏体と見へ鬼と見へ          七番日記   政1    「へ」→「え」(出)『自筆本』
    山焼や夜はうつくしきしなの川      七番日記   政1
    我里は山火の少あちら哉            七番日記   政1
    くつ付た人も詠る山火哉            八番日記   政3
    裸山やけを起してもゆる哉          文政句帖   政7

 

野焼き(野火、焼け野)

    命也焼く野の虫を拾ふ鳥            寛政句帖   寛5
    何を見て焼野の野駒子[を]呼ぶぞ    寛政句帖   寛5
    つや 〜 と露のおりたるやけ野哉    享和二句記 享2
    野火つけてはらばふて見る男哉      文化句帖   化4    「ふ」→「う」
    寝蝶や焼野の烟かゝる迄            文化句帖   化5
    百両の松もころりとやけの哉        化三―八写 化8
    猿が狙に負れて見たるやけの哉      七番日記   化9
    子どもらが遊ぶ程づゝやくの哉      七番日記   化10
                                           (出)『発句集続篇』(異)『句稿消息』上五「鶴亀の」
    里人のねまる程づゝやく野哉        志多良     化10    (出)『希杖本』
    野火山火夜も世[の]中よいとやな    七番日記   化10
    馬形りに瓢たんなりにやけの哉      七番日記   化11
    烏等も恋をせよとてやく野哉        七番日記   化11
    野火山や御代はか程に賑ひぬ        七番日記   化11
    わらんべも蛙もはやす焼[野]哉      七番日記   化11
    おれがのは野火にもならで仕廻けり  七番日記   政1
    山人はいらざる世話をやく野哉      文政句帖   政7
    風雲ややけ野の火より日の暮るゝ    書簡

 

麦田植え

    空留主も御尤也麦田植              享和句帖   享3

 

田打ち(田起し、田返す)

    空錠と人には告よ田打人            其日庵歳旦 享1  (類)『文化句帖』(化2)下五「磯菜畑」
    二代目の漸おこす沢べ哉            享和句帖   享3
    二代目に田とはなれども沢辺哉      享和句帖   享3
    田を打てば露もおりけり門の口      文化句帖   化3
    から崎や田も打上て夜の雨          七番日記   化8  (出)『我春集』『文化三―八年句日記写』
    田を打て弥 〜 空の浅黄哉          七番日記   化8
    高砂の松を友なる田打哉            七番日記   政1
    姨捨の雪かき分て田打哉            八番日記   政2
    雁どもゝもつと遊びよ打門田        八番日記   政2    「び」→「べ」
    ざく 〜 と雪かき交ぜて田打哉      八番日記   政2
    田を打や田鶴鳴渡る辺り迄          八番日記   政2    (異)『嘉永版』上五「畑打や」
    一鍬に雪迄返す山田哉              八番日記   政4
    松を友鶴を友なる田打哉            八番日記   政4
    ざく 〜 と雪切交る山田哉          文政句帖   政5
    雪ともに引くり返す山田かな        文政句帖   政5
    人通る道を残して田打哉            文政句帖   政6    (異)『発句集続篇』上五「馬帰る」
    二渡し越へて田を打ひとり哉        文政句帖   政6    「へ」→「え」
                                                         (出)『だん袋』『発句鈔追加』
    門の田もうつぞいざいざ雁遊べ      真蹟

 

畑打ち(畑起す)

        浅間山の麓過る時
    畠打が焼石積る夕べかな            寛政句帖   寛4
    畠打が近道教ゆ夕べ哉              寛政句帖   寛5
    畠打や祭 〜 もいく所              文化句帖   化3
    柴の戸やもとの畠に起す迄          文化句帖   化5
    畠打やかざしにしたる梅の花        文化句帖   化5
    畠打の顔から暮るつくば山          化五六句記 化6
    畠打の髪にさしたる梅[の]花        化五六句記 化6
    畑打やおくれ入相いく所            化五六句記 化6
    畑打や太山烏も友かせぎ            化五六句記 化6
    軒下も畠になして月よ哉            七番日記   化8
    畠打や手涕をねぢる梅の花          我春集     化8    「涕」→「洟」
                                                   (出)『浅黄空』『自筆本』『うさぎむま』真蹟
    棒切でつゝいておくや庵の畠        七番日記   化10
    (出)『句稿消息』(異)『志多良』遺稿 中七「ほじつておくや」『希杖本』中七「ほぢてをく也」
    雲に似て山の腰起す畠哉            七番日記   化11
    畠打の真似して歩く烏哉            七番日記   化11
    畠打や肱の先の鳰の海              七番日記   化11    (出)『希杖本』
    畠打やざぶりと浴る山桜            七番日記   化11    (出)『希杖本』
    門先や汁の実畠拵へる              七番日記   化12
    君が代は女も畠打にけり            七番日記   化12
    竹切ですやくつておく畠哉          七番日記   化12
    畠打や尾上の松を友として          七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』
    今の世や畠にしたる地獄谷          『浅黄空』『自筆本』
                                 (異)『文政句帖』(政7)『浅黄空』『自筆本』中七「畠に起す」
    打畠や世を立山の横つらに          七番日記   政1
    畠打を沢庵振てまねく哉            七番日記   政1
    畠打や足にてなぶる梅[の]花        七番日記   政1
                   (出)『自筆本』『発句鈔追加』(異)『文政句帖』(政7)中七「足でなぶれる」
    畠うてや虫も蓑きて暮す世に        七番日記   政1
    皆打も只一枚の畠哉                七番日記   政1
    門前や半分打ておく畠              七番日記   政1
    山畠や人に打たせてねまる鹿        七番日記   政1    (異)『自筆本』下五「鹿ねまる」
    浅間根のけぶる側迄畠かな          八番日記   政2
    畠打や子が這ひ歩くつくし原        八番日記   政2    (出)『嘉永版』
    朝顔の畠起して朝茶哉              八番日記   政4
    羽折きて畠打花の大和哉            八番日記   政4    「折」→「織」
    春畠を打や王子の狐番              八番日記   政4
    畠打に留主を頼むや草の庵          文政句帖   政5
    草花の咲 〜 畠に打れけり          だん袋     政6    (異)『発句鈔追加』上五「草花や」
    杖先で打て仕廻ふや野菜畠          だん袋     政6
                                     (出)『発句鈔追加』(異)『浅黄空』中七「つつついておく」
    何草ぞ咲 〜 畠に起さるゝ          文政句帖   政6
    菜[の]畠打や談義を聞ながら        文政句帖   政6
    畠打や通してくれる寺参            文政句帖   政6
                                                   (出)同句帖(政7)『だん袋』『発句鈔追加』
    山人や畠打[に]出る二里三里        文政句帖   政6
    門畠や一鍬づゝに腰たゝく          文政句帖   政7
    菊畠や一打ごとに酒五盃            文政句帖   政7
    立板の岨や畠に拵へる              文政句帖   政7    (出)同句帖(政8)
    畠打や後は赤兀千丈谷              文政句帖   政7
                                       (出)同句帖(政8)(異)同句帖(政7)中七「後は立板」
    畠打や鍬でをしへる寺の松          文政句帖   政7    (出)『発句集続篇』
    畠打や寝聳て見る加賀の守          文政句帖   政7    (出)『発句集続篇』
    畠打ていよ 〜 赤しいなり宮        文政句帖   政7
    山人や畠打かけて道案内            文政句帖   政7
    杖先[で]すやくつてすむ畠哉        自筆本
    畑打や田鶴啼わたる辺り迄          嘉永版        (異)『八番日記』(政2)上五「田を打や」

 

種俵(種井)

    一升で種俵ぞよ門の川              七番日記   政1
    福俵程浸しても種井哉              文政句帖   政7

 

種蒔く(朝顔蒔く、草種蒔く)

    草蒔や肴焼香も小昼過              文化句帖   化2
    うら道や草の上迄種を蒔く          文化句帖   化3
    山畠や種蒔よしと鳥のなく          文化句帖   化3
    草蒔や蝶なら一つ遊ぶ程            文化句帖   化4
    鍋ずみに一際蒔る草葉哉            文化句帖   化4    (出)同日記(化5)
    せめてもとお花の草を蒔にけり      文化句帖   化5
    はや淋し朝顔まくといふ畠          株番       化9    (出)『発句集続篇』『嘉永版』
        廿六日相我とおなじく村山に入 老婆追善
    汁の実も蒔ておかれし畠ぞよ        七番日記   化10
               (出)『発句鈔追加』前書き「文化十年三月二十六日相我と同じく村山に入老婆の追善」
    我蒔[た]種をやれ 〜 けさの露      七番日記   化10
                                               (出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』『文政版』
    世にあれば蕣もまくばかり也        七番日記   化11
    菜も蒔てかすんで暮らす小家哉      七番日記   化12
    蒔てある汁の実などを見るにさへ    文政句帖   政5

 

苗木植う

    苗松や果はいづくの餅の臼          七番日記   化9    (出)『株番』
    松苗と見し間にづらり切られけり    七番日記   化9
    松苗の其陰たのむ心かな            七番日記   化9
    松苗や一つ植ては孫の顔            七番日記   化9
    松苗の花咲くころは誰かある        自筆本

 

接ぎ木(接ぎ穂)

        沢水困
    三とせ不覿つぎほは花も老にけり    享和句帖   享3
    翌ありと思はぬ人のつぎほ哉        文化句帖   化4
    うとましのつぎ木と鳥や思ふらん    文化句帖   化4
    御僧[の]其後見へぬつぎ木哉        文化句帖   化4    「へ」→「え」
    かい曲り鶏の立添ふつぎ木哉        文化句帖   化4
    つぎゝさへせまじとけふは思ひけり  文化句帖   化4
    なく烏門のつぎ穂を笑ふらん        文化句帖   化4
    紫の雲もかゝれとつぎ穂哉          文化句帖   化4
    鶯の鳴とばかりにつぎ穂哉          文化句帖   化5
    鶯の寝所になれとつぎ穂哉          文化句帖   化5
    はんの木のうかりと立しつぎ穂哉    文化句帖   化5
    よき杖やつぎ穂の迹のおもひつき    文化句帖   化5
    夜に入れば直したくなくつぎ穂哉    文化句帖   化5    「なく」→「なる」
  (出)『版本題叢』『発句鈔追加』『嘉永版』(異)『発句題叢』『希杖本』遺稿 上五「夜に入りて」
    雑巾をはやかけ[ら]るゝつぎ木哉    七番日記   化8
    へら鷺がさしつかましてつぎ木哉    七番日記   化9
    山烏おれがつぎ木を笑ふ哉          七番日記   化9
                   (異)『株番』中七「おれがさし木を」『自筆本』上五中七「門烏おれがつぎ穂を」
    鶏の番をしているつぎ木哉          七番日記   化10    「い」→「ゐ」
    赤髭の爺がつぎほも[ほ]け立ぬ      七番日記   化11
    むだ草に伸勝たれたるつぎ木哉      七番日記   化11
                               (出)『句稿消息』(異)『自筆本』『発句集続篇』下五「つぎ穂哉」
    四海浪しづかなつぎ木さし木哉      七番日記   化12
    梅持て接木の弟子が御時宜哉        七番日記   政1    「時宜」→「辞儀」
    接木する我や仏に翌ならん          七番日記   政1
    庭先や接木の弟子が茶をはこぶ      七番日記   政1
    のらくらが三人よれば接木哉        七番日記   政1
    餅腹をこなしがてらのつぎほ哉      七番日記   政1    (出)『おらが春』
    石の上に蝋燭立てつぎ穂かな        八番日記   政3
               (異)『自筆本』上五「石角に」『七番日記』(政1)上五下五「石角に・・・さし木哉」
    歯ももたぬ口に加へてつぎ穂哉      八番日記   政3    「加」→「咥」
                                                         (出)『だん袋』『自筆本』『文政版』
    店先に番子が作のつぎ木哉          文政句帖   政7

 

挿し木

    山烏おれがさし木を笑ふ哉          株番       化9
       (異)『七番日記』(化9)中七「おれがつぎ木を」『自筆本』上五中七「門烏おれがつぎ穂を」
    揚土にしばしのうちのさし木哉      七番日記   政1
    石角に蝋燭立てさし木哉            七番日記   政1
          (異)『自筆本』下五「つぎ穂哉」『八番日記』(政3)上五下五「石の上に・・・つぎ穂かな」
    謹で犬がつくばふさし木哉          七番日記   政1
    へた 〜 と蛙が笑ふさし木哉        七番日記   政1
    仮の世のかりにさしてもつく木哉    梅塵八番   政3
    かりの世のかり家の門にさし木哉    八番日記   政3
    たのみなきおれがさしてもつく木哉  八番日記   政3
    さし木して春長かれと思ふ哉        希杖本             (出)『発句集続篇』

 

菊根分け(菊植う)

    根分して菊に拙き木札哉            西国紀行   寛7
    菊植る握りこぶしを春の雨          七番日記   化7
    菊植て孫に書する木札かな          文政句帖   政5    (出)『発句集続篇』

 

 

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