一茶発句全集(2)・・・春の部(1)

最終補訂 1999年9月15日

春の部

目次へ戻る

時候

 

二月

    二月や天神様の梅の花              七番日記   化8    (出)『我春集』
        対友
    友雀二月八日も吉日よ              七番日記   化9
    二月に元日草の咲にけり            文政句帖   政7

 

三月

    大雨や花の三月ふりつぶす          七番日記   化10

 

春めく

    春めくや京も雀の鳴辺り            享和句帖   享3    (異)『栞集』中七「江戸も」
    相持の橋の春めく月よ哉            文化句帖   化3
    雪車立て少春めく垣ね哉            文化句帖   化3
    春めくや藪ありて雪ありて雪        八番日記   政3    (出)『文政句帖』
    春めくやこがね花咲山の月          梅塵八番   政4    (出)『発句鈔追加』
    春めくやのらはのらとて藪虱        八番日記   政4
    少でも春めきにけりのらの月        文政句帖   政5
    春めかずして仕廻けり門の山        文政句帖   政7    (出)『発句集続篇』
    山 〜 ややつと春めき直暮る        文政句帖   政7

 

春寒(余寒)

        鴻雁
    万よき日牛の山やまだ寒き          享和句帖   享3
    鶯はきかぬ気でなく余寒かな        文政句帖   政6
    彼岸迄とは申せども寒哉            文政句帖   政6

 

冴返る

    三ヶ月はそるぞ寒は冴かへる        七番日記   政1    (出)『自筆本』『文政版』

 

春辺

        水風井
    堀かけし井戸の春辺の一つ哉        享和句帖   享3    「堀」→「掘」
        雷氷解
    待もせぬ木の流よる春辺哉          享和句帖   享3
    やえ 〜 の妹もとつぐ春辺哉        享和句帖   享3    「え」→「へ」
    親里へ水は流るゝ春辺哉            文化句帖   化1
    はんの木のひよゐ 〜 先は春辺哉    二葉草寅巻 化3    「ゐ」→「い」
                                                       (異)『文化句帖』(化2)下五「春日哉」
    鶯の東訛りも春辺哉                文化句帖   化4
    としよりの今を春辺や夜の雨        文化句帖   化5
    月さして一文橋の春辺哉            我春集     化8
     (出)『版本題叢』(異)『発句題叢』『発句鈔追加』『希杖本』『発句集続篇』中七「一文橋も」
    画の馬が草くうと云春辺哉          八番日記   政4    「う」→「ふ」
    大道に雪ほしておく春辺哉          文政句帖   政5
    田と畦の廻りくらする春辺哉        文政句帖   政5
    二里出れば二里出たゞけの春辺哉    文政句帖   政5
    白雪をほしひろげたる春辺哉        文政句帖   政8

 

長閑

    長閑しや隣にはとき洗ひ衣          寛政句帖   寛5
    長閑や雨後の縄ばり庭雀            西国紀行   寛7
    長閑しや雨後の畠の朝煙り          西国紀行   寛7
    長閑さや去年の枕はどの木[の]根    文化句帖   化1    (異)同句帖(化1)上五「長閑しや」
    長閑さに明り過たるうら家哉        文化句帖   化5
    長閑しや酒打かける亦打山          七番日記   化8
    辻だんぎちんぷんかんも長閑哉      七番日記   化9
    長閑やはや三ヶ月の出ておじやる    七番日記   化9    「じ」→「ぢ」
    長閑しや大宮人の裾埃              七番日記   化9
    やみくもに長閑になりし烏哉        七番日記   化9
    大びらな雪のぼた 〜 長閑さよ      七番日記   化10
                                     (異)『句稿消息』(化9)上五中七「大びらの雪のどた 〜 」
    土の鍋土の狗の長門也              七番日記   化11    「門」→「閑」
    長閑さに僧のぢん 〜 ばし折哉      七番日記   化13
    長閑しやぼた餅雪のぼた 〜 と      七番日記   政1
    長閑さや浅間のけぶり昼の月        八番日記   政2    (出)『嘉永版』『発句鈔追加』
    長閑や鼠のなめる角田川            発句題叢   政3    (出)『文政版』(類)『七番日記』
         『志多良』『句稿消息』『発句鈔追加』上五「春風や」、『文政版』『希杖本』上五「春雨や」
    呼あふて長閑に暮す野馬哉          八番日記   政3    「ふ」→「う」
                                         (出)『自筆本』前書き「小金原」、『浅黄空』『嘉永版』
    長閑さや土蒔ちらす雪の上          文政句帖   政6
    長閑さや垣間を覗く山の僧          嘉永版

 

春の日

    嬌女を日 〜 にかぞへる春日哉      寛政句帖   寛5
    春の日や水さへあれば暮残り        文化句帖   化1
    揚土のいかにも春の日也けり        文化句帖   化2
    橋の芥つゝつき流る春日哉          文化句帖   化2    「る」→「す」
    破風からも青空見ゆる春日哉        文化句帖   化2
    春の日[を]背筋にあてることし哉    文化句帖   化2
    春の日を降りくらしたる都哉        文化句帖   化2
    春の日や暮ても見ゆる東山          文化句帖   化2    (出)『文政版』真蹟
    はんの木のひよい 〜 先は春日哉    文化句帖   化2    (異)『二葉草寅巻』下五「春辺哉」
    山 〜 や川の春日を針仕事          文化句帖   化2
    つい 〜 と草に立たる春日哉        文化句帖   化4
    春の日やつい 〜 草に立安き        文化句帖   化4    「安」→「易」
    春の日や雪隠草履の新しき          文化句帖   化5
    春の日のつる 〜 辷る樒かな        七番日記   化7
    じくなんで笠着て眠る春日哉        七番日記   政1
    春の日や[烏]帽子素袍の銭貰ひ      八番日記   政4
    春の日や雨見て居てもくらさるゝ    文政句帖   政7

 

日永(暮遅し)

        舞坂
    永き日や水に画を書鰻掻き          五十三駅   天8
    永き日や余処も無人の返文          寛政句帖   寛5
    暮遅き羅漢鴻や觜たゝく            文化句帖   化2
    さりとては此長い日を田舎哉        文化句帖   化2
    砂を摺大淀舟や暮遅き              文化句帖   化2
    ひよい 〜 と痩菜花咲く日永哉      文化句帖   化2    (異)遺稿 上五「ひよろ 〜 と」
    軒の雨ぽちり 〜 と暮遅し          文化句帖   化3
    浅草へ銭くれに出る日永哉          文化句帖   化4
    岩の亀不断日永と思ふ哉            文化句帖   化4
    うら門のひとりでに明く日永哉      文化句帖   化4
    暮遅き音を立たるたか屋哉          文化句帖   化4
    鶏の人の顔見る日永哉              文化句帖   化4
    木兎は不断日永と思ふ哉            文化句帖   化4
    鶯の咽かはかする日永哉            文化句帖   化5    「は」→「わ」
    草をつく石の凹みや暮遅き          文化句帖   化5
    隣から竹そしらるゝ日永哉          文化句帖   化5
    のべの草蝶の上にも日や長き        文化句帖   化5
    花ちりてげつくり長くなる日哉      文化句帖   化5
    棒梧のあはうに長き日ざし哉        文化句帖   化5
    ぽちや 〜 と鳩の太りて日の長き    文化句帖   化5
    生炭団一つ 〜 の日永哉            化五六句記 化6
    大鶴の身じろぎもせぬ日永哉        化五六句記 化6
    暮遅し 〜 とや風の吹              化五六句記 化6
    永の日に口明通る烏哉              化五六句記 化6
    ひた 〜 と日永の汐の草葉哉        化五六句記 化6    (出)書簡
    一村はかたりともせぬ日永哉        化五六句記 化6
    細けぶりいかさま永き日也けり      化五六句記 化6
    さあさはげ日永になるぞ門の雁      七番日記   化7    「は」→「わ」
    永い日や 〜 とや元結こく          七番日記   化7
    ひよろ 〜 と礒田の鶴も日永哉      七番日記   化7
    永の日を喰やくわずや池の亀        七番日記   化9    「わ」→「は」
      (出)『八番日記』『発句集続篇』前書き「しのぶが池に亀どもの菓子ねだる有様を見るに、此苦
        [の]娑婆に万年の逗留も退屈ならん<さら也>」、『株番』『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』
    片脇に雨のちよぼ 〜 日永哉        七番日記   化10
    小けぶりに小雪かゝりて日の永き    七番日記   化10
    鶏やちんば引 〜 日の永き          七番日記   化10
    金の蔓とりついてから日永哉        七番日記   化11
    菜畠に幣札立る日永哉              七番日記   化11
    茨藪に紙のぶら 〜 日永哉          七番日記   化11
    丸にのゝ字の壁見へて暮遅き        七番日記   化11
    鑓もちて馬にまたがる日永哉        七番日記   化11
    起番の雁のまじ 〜 日永哉          七番日記   化12
    さぼてんののぺつり永くなる木哉    七番日記   化12    「ぺつ」→「つぺ」「木」→「日」
                               (出)同日記(化13)『自筆本』、(異)『浅黄空』下五「咲く日哉」
    鶏の仲間割して日永哉              七番日記   化12
        老懐
    日の長[い] 〜 と[て]涙かな        七番日記   化12
    あまり湯のたらり 〜 と日永哉      七番日記   化13
    有がたや用ない家も日が長い        七番日記   化13
    老の身は日の永いにも涙かな        七番日記   化13    (異)『八番日記』(政3)『浅黄空』
                 『自筆本』『嘉永版』上五「老いぬれば」、『文政句帖』(政5)上五「としよれば」
    順番に火縄を提る日永哉            七番日記   化13
    連のない雁ののら 〜 日永哉        七番日記   化13
    長き日の壁に書たる目鼻哉          七番日記   化13
    永の日をむちやに過しぬ米の飯      七番日記   化13    (出)『句稿消息』『希杖本』
    長の日に心の駒のそばへるぞ        七番日記   化13
    永の日の杖の先なる火縄哉          七番日記   化13
    なぐさみ[に]野屎をたれる日永哉    七番日記   化13
    日が長い 〜 とむだな此世哉        七番日記   化13
    日が長いなんのとのらりくらり哉    七番日記   化13
                                                 (異)『八番日記』(政3)中七「長いとのらり」
    待 〜 し日永となれば田舎哉        七番日記   化13
                                               (異)『句稿消息』『文政版』中七「日永となれど」
    むだな身に勿体なさの日永哉        七番日記   化13
                                             (出)『自筆本』(異)『浅黄空』上五「むだな身は」
    永[き]日に身もだへするぞもつたいな七番日記   政1    「へ」→「え」
        本堂
    長き日や爰にもごろりごろ 〜 寝    だん袋     政1
    永き日や身棒強き藪の雪            七番日記   政1    「身棒」→「辛抱」
    長[き]日や大福帳をかり枕          七番日記   政1
    長き日や野らの仕事の目に見ゆる    だん袋     政1    (出)『発句鈔追加』
        坂本泊
    長き日や胸につかへる臼井山        だん袋     政1    (出)『発句鈔追加』
    ばか長い日やと口明く烏哉          七番日記   政1
    山の湯やだぶり 〜 と日の長き      七番日記   政1
    あたら世や日永の上に花が咲        八番日記   政2
    白犬の眉書れたる日永哉            八番日記   政2
    大道にころ 〜 犬の日永哉          八番日記   政2
    能なしの身を棚へ上て日永哉        八番日記   政2
    もたいなや花の日永を身にこまる    八番日記   政2    (異)『梅塵八番』中七「花の日永に」
    大口を明て烏も日永哉              八番日記   政3
    闇がりの牛を引出す日永哉          八番日記   政3    (出)『嘉永版』
    永[き]日や牛の涎が一里程          八番日記   政3    (異)『嘉永版』中七「牛の涎の」
    念仏の申賃とる日永哉              八番日記   政3
    ぶら 〜 と歩きでのある日あし哉    八番日記   政3    (異)同日記(政3)上五「客先に」
    雇[れ]て大念仏の日永哉            八番日記   政3
    六あみだ歩行でのある日ざし哉      梅塵八番   政3
                                   (異)『浅黄空』上五「奈良七野」、『自筆本』上五「上野浅草」
    永き日[は]只湯に入が仕事哉        八番日記   政4
    日永とて犬と烏の喧嘩哉            八番日記   政4(異)『浅黄空』『自筆本』上五「永き日を」
    禄盗人日永なんどゝほたいけり      八番日記   政4    「い」→「え」
 (異)『浅黄空』『自筆本』中七「日永なんぞと」『文政句帖』(政5)上五中七「日永など禄盗人の」
    歩行よい程に風吹く日永哉          文政句帖   政5
    永き日や遊び仕事に風も吹          文政句帖   政5
    永き日や風の寒もよい位            文政句帖   政5
    永き日やたばこ法度の小金原        文政句帖   政5    (出)『発句集続篇』
    永き日や羽折ながらの坂ぶしん      文政句帖   政5    「折」→「織」
    長ければ長いと小言いふ日かな      文政句帖   政5
    長の日や沈香も焚かず屁もひらず    文政句帖   政5    (異)同句帖(政6)上五「永き日や」
    のらくらや勿体なくも日の長き      文政句帖   政5
    鶏の座敷を歩く日永哉              文政句帖   政6    (出)『浅黄空』『自筆本』
    垢からな世にけつかうな日永哉      文政句帖   政8    「かう」→「こう」
    がたりともせぬや日永の御世の町    文政句帖   政8
    大平の日永に逢ふやかくれ蓑        文政句帖   政8    「大」→「太」
    永き日や嬉し涙がほろ 〜 と        文政句帖   政8
    長[き]日や日やとてのらりくらり哉  文政句帖   政8
    湯に入るも仕事となれば日永哉      文政句帖   政8(出)『発句集続篇』前書き「田中入湯の頃」
    都辺や日永に見ゆる紙草履          柏声舎聞書

 

春の宵

    御出肆ながら春宵千金ぞ            西国紀行   寛7

 

春の暮(春暮るる)

    雨がちに都の春も暮る也            文化句帖   化2
    顔染し乙女も春の暮る哉            文化句帖   化2
    下京の窓かぞへけり春の暮          文化句帖   化2
    菅笠の毛ば立もせず春暮る          文化句帖   化2
    松に藤春も暮れぬと夕哉            文化句帖   化2
    木兎の面魂よ春の暮                文化句帖   化2
    石臼のたが見て居ても春は暮るゝ    文化句帖   化3
    角田川どこから春は暮るゝぞよ      文化句帖   化5
    手ばかしく春は暮けり寛永寺        文化句帖   化5
    雉の鳴く拍子に春は暮にけり        七番日記   化10
    鳴鳥のあけべゝきよと春の暮        七番日記   化11
    氏神の凧とり榎春くれぬ            八番日記   政2

 

春の夜

    春の夜や瓢なでゝも人の来る        文化句帖   化1
    春の夜やくらからぬ里の梅嗅ひ      文化句帖   化2
    春の夜や物さはがしくへりて行く    文化句帖   化3    「は」→「わ」
    春の夜や一の宝の火吹竹            文化句帖   化5

 

春深し

        誉田の好々亭に宿
    玉籬や玉のすだれの春深かき        西国紀行   寛7

 

行く春(春の名残、翌なき春、暮の春、春尽る)

    行く春の町やかさ売すだれ売        寛政句帖   寛4
    影板も辺地をさして行春ぞ          寛政句帖   寛5
    霜の花そふだに春のなごり哉        寛政句帖   寛5
    春もはや残りすくなや山の雨        文化句帖   化1
    とても行春ならいそげ草の雨        文化句帖   化2
    舞 〜 や翌なき春を顔を染て        文化句帖   化2    (出)『発句類題集』前書き「三月尽」
                                       (異)『版本題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』下五「笑ひ顔」
                                         『発句題叢』下五「むり笑」、『希杖本』下五「むら笑ひ」
    みよし野ゝ春も一夜と成にけり      文化句帖   化2    「ゝ」→「の」
    大和路や翌なき春をなく烏          文化句帖   化2
    山守や春の行衛を箒して            文化句帖   化3
    行春の空はくらがり峠哉            文化句帖   化3
    草の葉も風癖ついて暮の春          文化句帖   化4
    春永の春も行也のべの山            文化句帖   化4
    翌ぎりの春と成けりぼんの凹        化五六句記 化6
    春の行夜を梟の小言哉              化五六句記 化6
    行かへる暮行春はどふ思ふ          化五六句記 化6    「どふ」→「どう」
    行春にさしてかまはぬ烏哉          化五六句記 化6
        暮春
    門の山春よ 〜 も木がくれぬ        七番日記   化7
    けふぎりの春とは成ぬのべの草      七番日記   化7
    長の春今尽る也角田川              七番日記   化7
    若雀翌なき春をさはぐ也            七番日記   化7    「は」→「わ」
    鳩鳴や大事の春がなくなると        七番日記   化8
    行くよ 〜 ことしの春は六条へ      七番日記   化8
    ゆさ 〜 と春が行ぞよのべの草      七番日記   化8
                   (出)『我春集』『発句題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』『希杖本』『発句集続篇』
        三月尽
    鑓持よ春を逃すな合点か            七番日記   化10
                                           (出)『発句鈔追加』(異)『句稿消息』上五「奴たち」
    春永と伸した山もけふきりぞ        七番日記   化11
    やよ虱這へ 〜 春の行方へ          七番日記   化11    (出)『句稿消息』『文政版』
    山守の箒の先を行春ぞ              七番日記   化13
    春永となまけしもけふ限かな        文政句帖   政5    (出)『発句集続篇』
    鳥どもよだまつて居ても春は行      文政句帖   政8
    春永と延した春も仕廻哉            文政句帖   政8
    散花のぱつぱと春はなくなりぬ      政九十句写 政9    (出)『希杖本』『発句集続篇』
    霜の花それさへ春のなごり哉        遺稿
    行春や我を見たをす古着買          遺稿               「たをす」→「たふす」

 

春惜む

    松そびへ魚をどりて春む情む哉      西国紀行   寛7    「へ」→「え」「む情」→「を惜」
    木兎[の春]をゝしがる目もと哉      七番日記   化7
    白髪同士春をゝしむもばからしや    七番日記   化13    (出)『句稿消息』『希杖本』
    くせ酒の泣程春がおしい哉          文政句帖   政8    「お」→「を」
    木兎のつく 〜 春をおしむやう      希杖本             「お」→「を」

目次へ戻る

 

天文

 

春の雪(淡雪、終り初雪)

    紫の袖にちりけり春の雪            享和句帖   享3
    京人はあきずもあらなん春[の]雪    文化句帖   化1
    淡雪に皆正月の心かな              文化句帖   化4
    春の雪せまき袂にすがりけり        文化句帖   化4
    春の雪地祭り唄にかゝる哉          文化句帖   化4
    古郷や餅につき込春の雪            文化句帖   化4    (出)遺稿
    淡雪[や]野なら藪なら道者達        七番日記   化11
    思出し 〜 てや春の雪              七番日記   化11
    一村は柳の中や春の雪              七番日記   化11
    淡雪や藪のいなりの小豆飯          七番日記   化13    (異)『自筆本』下五「赤の飯」
    今敷た鋸屑を春の雪                七番日記   化13
    春[の]雪あら菰敷て降らせけり      七番日記   化13
    春の雪扇かざゝぬ人もなし          七番日記   化13
                                             (異)『発句集続篇』中七下五「扇かざして通りけり」
    梅どこか二月の雪の二三尺          七番日記   政1
    梅どこかはら 〜 雪のむら雀        七番日記   政1
    雁鴨のきげん直るや春の雪          七番日記   政1    (出)同日記(政1)『自筆本』
    古郷やばかていねいに春の雪        七番日記   政1    (異)同日記(政1)上五「我門や」
    我村や春降雪も二三尺              七番日記   政1
    淡雪や小藪もいなり大明神          八番日記   政2
    淡雪とあなどるまいぞ三四尺        八番日記   政3  (異)『梅塵八番』中七「あなどるまへぞ」
    どぶ板や火かげはら 〜 春の雪      八番日記   政4  (異)『梅塵八番』中七「火かげちら 〜 」
    淡雪にまぶれてさはぐがきら哉      文政句帖   政5    「は」→「わ」
    市人の大肌ぬぐや春の雪            文政句帖   政5
    雪の光る中より春の雪              文政句帖   政5    「雪の」→「雷の」
    客ぶりや終はつ雪 〜 と            文政句帖   政5
    草山のこやしになるや春の雪        文政句帖   政5    (異)『発句集続篇』上五「草畑の」
    なゝ掃な終はつ雪 〜 ぞ            文政句帖   政5
    初鰹漬迄あれ庭の雪                文政句帖   政5
    春の雪遊がてらに降りにけり        文政句帖   政5
    御仏の終はつ雪降りにけり          文政句帖   政5
    淡雪や連出して行く藪の雪          文政句帖   政6    (出)『自筆本』『発句集続篇』
    草道にしては又 〜 春の雪          文政句帖   政6
    紅皿にうはうけにけり春の雪        文政句帖   政6
    藪の雪を連出すや春の雪            文政句帖   政6
    淡雪や人で埋めし江戸の町          発句集続篇

 

春の霜(忘れ霜、別れ霜、名残の霜)

    かくあらば衣売まじを春の霜        西国紀行   寛7
    朝漬けのあさ 〜 しさや春の霜      文化句帖   化3
    雁鳴て霜も名残の夜なるべし        文化句帖   化3
    二葉から蕣淋し春の霜              文化句帖   化3
    彼郷が夢の浮橋春[の]霜            化五六句記 化6
    鶯も元気を直せ忘れ霜              七番日記   化9
    もう是がいとまごひかよ別霜        七番日記   政1
    蓬生やよもやと思へど春の霜        七番日記   政1(異)『発句集続篇』中七「よもやとおもふ」
    安房霜いつが仕廻ぞ 〜 よ          文政句帖   政5    「安」→「阿」
    是きりと見へてどつさり春の霜      文政句帖   政5    「へ」→「え」
    山里や毎日日日わかれじも          文政句帖   政5
    大霜や八十八夜とくに過ぎ          文政句帖   政6

 

春の露

    已に春ちる露見えて松の月          西国紀行   寛7

 

春雨

    忌明の伽に来る日ぞ春の雨          西国紀行   寛7
    起て見れば春雨はれず日も暮れず    西国紀行   寛7
    春雨や独法談二はいかい            西国紀行   寛7
    春の雨倦もはてなで糸車            西国紀行   寛7
    春の雨二世のばせを葉いさぎよや    日々草
    けふ植し槇の春雨聞く夜哉          享和二句記 享2
    北さがや春の雨夜のむかし杵        享和句帖   享3
    膳先に雀なく也春の雨              享和句帖   享3
    春雨や何に餅つく丘の家            享和句帖   享3
    春の雨よ所の社もめづらしき        享和句帖   享3
    焼餅に烏の羽や春の雨              享和句帖   享3
    足癖のあさぢが原や春の雨          文化句帖   化1
    あたら日をふりなくしけり春[の]雨  文化句帖   化1
    垣添にゆで湯けぶりや春の雨        文化句帖   化1
    から下戸の片長家也春[の]雨        文化句帖   化1
    川見ゆる木の間の窓や春の雨        文化句帖   化1
    きのふ寝しさが山見へて春[の]雨    文化句帖   化1    「へ」→「え」
    草山のくり 〜 はれし春[の]雨      文化句帖   化1
    さが山に誰 〜 寝ます春[の]雨      文化句帖   化1
    酒ありと壁に張りけり春の雨        文化句帖   化1    (出)『自筆本』
(異)『七番日記』『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』中七「壁に書けり」、遺稿 中七「壁に書たり」
    白壁のもつと遠かれ春の雨          文化句帖   化1
    捨杵のちよろ 〜 水や春の雨        文化句帖   化1
    袖笠や水見ておはす春の雨          文化句帖   化1
    袖たけの垣根うれしや春の雨        文化句帖   化1
             (異)『発句題叢』『希杖本』中七「垣の嬉しや」、『発句鈔追加』中七「山もうれしき」
    春雨で恋しがらるゝ榎哉            文化句帖   化1
    春雨になれて灯とぼる藪の家        文化句帖   化1
    春雨のいくらもふれよ茶呑橋        文化句帖   化1
    春雨の中に立たる榎哉              文化句帖   化1
    春雨もはやうるさがる榎哉          文化句帖   化1
    春雨やけぶりの脇は妹が門          文化句帖   化1
    春雨や雀口明く膳の先              文化句帖   化1
    春雨やはや灯のとぼる亦打山        文化句帖   化1
    春雨や火もおもしろきなべの尻      文化句帖   化1
    昼過の浦のけぶりや春の雨          文化句帖   化1
    ほうろくをかぶつて行や春[の]雨    文化句帖   化1    「ほ」→「は」
                                                         (異)遺稿 中七「かざして行や」
    山の鐘も一つひゞけ春の雨          文化句帖   化1
    我松もかたじけなさや春の雨        文化句帖   化1
    相杵は女もす也春の雨              文化句帖   化2
    小田の鶴又おりよかし春の雨        文化句帖   化2
    黒門の半分見へて春の雨            文化句帖   化2    「へ」→「え」
    春雨や家鴨うち 〜 門歩き          文化句帖   化2    「う」→「よ」
    春雨や江戸気はなれし寛永寺        文化句帖   化2
    春雨や膳の際迄茶の木原            文化句帖   化2
    春雨や蛤殻の朝の月                文化句帖   化2    (異)『浅黄空』中七「目薬貝の」
    松[の]木も小ばやく暮て春[の]雨    文化句帖   化2
    あさぢふや逆に寝てさへ春の雨      文化句帖   化3    (出)遺稿
    小雀や寝にはせで鳴春の雨          文化句帖   化3
    春雨のめぐみにもれぬ草葉哉        文化句帖   化3
    春雨も横にもて来る浦辺哉          文化句帖   化3
    春雨や千代の古道菜漬け売          文化句帖   化3
        宿山寺
    春雨や窓も一人に一つづゝ          文化句帖   化3
                                      (出)『七番日記』『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』遺稿
    百両の石も倦れし春の雨            文化句帖   化3
    ばさ 〜 と古びし芦を春の雨        文化句帖   化4
    春雨や草菌けぶる竹そよぐ          化三―八写 化4
                                     (異)『文化五・六年句日記』(化6)中七「馬屋肥えけぶる」
    木母寺の夜を見に行春の雨          文化句帖   化4
    山里は常正月や春の雨              化三―八写 化4
                                       (出)『七番日記』(異)『文化六年句日記』上五「古郷や」
    庵崎や古きゆふべを春の雨          花見の記   化5
                         (出)『発句鈔追加』(類)『文化五・六年句日記』(化6)下五「雉の鳴」
    壁の穴幸春の雨夜哉                文化句帖   化5
    春雨の晴所也君が松                花見の記   化5    (出)『発句鈔追加』
    春雨やかまくら雀何となく          文化句帖   化5
    古郷や草の春雨鍬祭                文化句帖   化5    (出)遺稿
    神棚は皆つゝじ也春の雨            化五六句記 化6
    菊苗に流ぐせつく春の雨            化五六句記 化6
    けふも 〜 同じ山見て春の雨        化五六句記 化6
    こと 〜 く柳と成て春の雨          化五六句記 化6
    土焼の姉様うれる春の雨            化五六句記 化6
    春雨に花殻ひろふ烏帽子哉          化五六句記 化6    (出)『玉の春』遺稿
    春雨のたしなく思角田川            化五六句記 化6
    春雨のふり所にせん田にし殻        化五六句記 化6
    春雨や土のだんごも遠土産          化五六句記 化6
    春雨や人の花より我小藪            化五六句記 化6    (出)『蓬莱讃』
    春雨や古びぬ前の茅羽口            化五六句記 化6
    古刀禰や羽口も出来て春の雨        化五六句記 化6
                                     (出)『発句鈔追加』遺稿(異)書簡(化6)上五「刀禰川や」
    棒先のさかき桂よ春[の]雨          化五六句記 化6
    行灯で畠を通る春の雨              七番日記   化7
    春雨に見べりも立ぬかきね哉        七番日記   化7
    春雨や魚追逃す浦の犬              七番日記   化7
        五十崎遊茶屋
    春雨や盃見せて狐よぶ              七番日記   化7
                           (出)『自筆本』前書き「五十崎」、『発句集続篇』前書き「五十崎茶屋」
                        『発句鈔追加』真蹟 前書き「福をよぶといふことはやりけるに」、『希杖本』
    春雨や少古びし刀禰の鶴            七番日記   化7
    春雨や菜の世に有て米の宮          七番日記   化7
    大橋や縄引はりて春の雨            七番日記   化8
        八巣題火防
    門の木や念彼観音の春の雨          化三―八写 化8    (出)『我春集』
    此杭は烏のか也春の雨              化三―八写 化8
    野大根烏のかゞし春の雨            七番日記   化8
    萩の葉に鹿のくれけり春[の]雨      七番日記   化8
                                              (異)真蹟『四海句草紙 第三』中七「鹿のざれけり」
    春雨に大欠する美人哉              七番日記   化8
       (出)『我春集』『発句題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』『希杖本』『発句類題集』『五とせ集』
    春雨や小島も金の咲くやうに        七番日記   化8
    春雨や是は我家の夜の松            七番日記   化8
    春雨[や]つゝじでふきし犬の家      七番日記   化8
    春雨や貧乏樽の梅の花              七番日記   化8    (出)『我春集』
    春雨や夜はこと 〜 くへの字山      七番日記   化8
    人のいふ法ほけ経や春の雨          七番日記   化8
    不性神そこのき給へ春の雨          七番日記   化8    「性」→「精」
                                                       (出)『我春集』『文化三―八年句日記写』
    餅買に箱でうちんや春[の]雨        我春集     化8    (出)『嘉永版』『九日』
    餅欠の石と成りけり春[の]雨        七番日記   化8    (出)『文化三―八年句日記写』
    わら苞やとうふのけぶる春の雨      七番日記   化8
                                 (異)『我春集』『文化三―八年句日記写』中七「とうふも見えて」
    貝殻の山いくつある春の雨          七番日記   化9
    野烏の巧者に辷る春の雨            七番日記   化9  (異)『浅黄空』『自筆本』上五「小烏や」
        甲子
    野鼠も福を鳴ぞよ春[の]雨          七番日記   化9
    春雨や翌は何くふ浦の家            七番日記   化9    (出)『株番』
    春雨やてうちん持の小傾城          七番日記   化9    (出)『株番』
    穴蔵の中で物いふ春の雨            七番日記   化10
                           (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『文政版』『希杖本』
    起 〜 の目に付ける也春の雨        七番日記   化10    (出)『句稿消息』
    挑灯を親に持たせて春の雨          七番日記   化10
    寝たなりや猫も杓子も春[の]雨      七番日記   化10
    春雨や喰れ残りの鴨が鳴            七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』
                               『嘉永版』『希杖本』『発句集続篇』(異)『自筆本』下五「鴨の声」
    春雨や手のうら返すたびら雪        七番日記   化10
                   (出)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』(異)『希杖本』中七「手のひらかへす」
    春雨や鼠のなめる角田川            句稿消息   化10    (出)『文政版』『希杖本』
                           (類)『七番日記』『志多良』『句稿消息』『発句鈔追加』上五「春風や」
                                                           『発句題叢』『希杖本』上五「長閑や」
    一つ舟に馬も乗りけり春の雨        七番日記   化10
    見給へや土の西行も春の雨          七番日記   化10
    梅鉢や竹に雀や春の雨              七番日記   化11(異)『希杖本』上五中七「梅鉢よ竹に雀よ」
    かゞしどのこち向給へ春の雨        七番日記   化11
    客ぶりや犬も並んで春の雨          七番日記   化11    (出)『希杖本』
    春雨や祇園清水東福寺              七番日記   化11
    春雨や夜さりも参る亦打山          七番日記   化11    (異)『自筆本』中七「夜さりも上る」
    春の雨草を喰てもあそばるゝ        七番日記   化11
    梟も面癖直せ春の雨                七番日記   化11    (出)『浅黄空』『自筆本』
 (異)同日記(化12)『文政版』書簡 真蹟 前書き「鳩いけんしていはく」、『句稿消息』上五「梟よ」
        飼犬に手を喰はるゝ
    負弓が藪にかゝりて春の雨          七番日記   化11    (出)『句稿消息』『文政版』
    藪尻の賽銭箱や春の雨              七番日記   化11    (出)『浅黄空』前書き「隅田堤」
   『自筆本』前書き「宿山寺」『句稿消息』『発句鈔追加』(類)『八番日記』(政2)下五「梅の花」
    藪といふ藪がそれ 〜 春の雨        七番日記   化11
    湯けぶりや草のはづれの春の雨      七番日記   化11
    行灯で菜をつみにけり春の雨        七番日記   化12    (出)『浅黄空』
    草屋根や引張たらぬ春の雨          七番日記   化12    (出)『発句集続篇』
        善光寺
    しん 〜 としんらん松の春の雨      七番日記   化12
    春雨や菜をつみに行小行灯          七番日記   化12
    鋤鍬を先拝む也春の雨              七番日記   化13    (出)『発句集続篇』
    猫洗ふざぶ 〜 川や春の雨          七番日記   化13
    春雨や欠をうつる門の犬            七番日記   化13    (出)『浅黄空』『自筆本』
        賀新婚
    松と松わかい同士や春の雨          七番日記   化13
    春雨や藪に吹るゝ捨手紙            七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』
    きのふ寝し嵯峨山見ゆる春[の]雨    七番日記
                              (出)『発句題叢』『浅黄空』『自筆本』『希杖本』『はたけ芹』遺稿
    餅の出る槌のほしさよ春[の]雨      七番日記           (出)遺稿
    明六を鳩も諷ふや春の雨            七番日記   政1
                                               (異)同日記(政1)上五中七「明六の時を諷ふや」
    有明や石の凹みの春の雨            七番日記   政1
                                               (出)『自筆本』(異)『浅黄空』上五「三ヶ月や」
    傘さして箱根越也春の雨            七番日記   政1    (出)『浅黄空』『文政版』
    小社の餅こそ見ゆれ春[の]雨        七番日記   政1
    酒法度たばこ法度や春の雨          七番日記   政1
    笹つ葉の春雨なめる鼠哉            七番日記   政1(異)『浅黄空』『自筆本』上五「笹の葉の」
    山門の長雨だれの春雨哉            七番日記   政1
    釣り棚のつつじ咲けり春の雨        七番日記   政1
        初午
    幣振てとうふ下るや春[の]雨        七番日記   政1    (出)『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
    春雨や海見るのみの窓年貢          七番日記   政1
           (出)『浅黄空』前書き「小松」、『自筆本』、(異)同日記(政1)中七「松見るのみの」
    春雨やしたゝか銭の出た窓へ        七番日記   政1
    春雨やばくち崩と夜談義と          七番日記   政1
    春雨や髭を並べるせうじ紙          七番日記   政1    「せ」→「しや」
                                                     (異)『浅黄空』『自筆本』下七「窓せうじ」
    春雨や窓から値ぎる肴肴            七番日記   政1    「肴肴」→「芝肴」
                                                         (出)『浅黄空』『自筆本』
                   (異)同日記(政1)前書き「武家町」下五「肴売」、『発句集続篇』下七「生肴」
    朝市の大肌ぬぎや春の雨            八番日記   政2    (出)『嘉永版』
    石川の尻凝とれるや春の雨          八番日記   政2    (異)『梅塵八番』上五「在川の」
    馬までもはたご泊りや春の雨        八番日記   政2
                   (出)『おらが春』(異)『浅黄空』上五「じやゝ馬も」『自筆本』上五「供馬も」
    芝居へと人はいふ也春の雨          八番日記   政2    (異)『発句集続篇』前書き「江戸」
           上五「芝居日と」『文政句帖』(政8)、同句帖(政8)上五中七「芝居日と家内は出たり」
    十が十ながら小家ぞ春の雨          八番日記   政2
    掃溜の赤元結や春の雨              八番日記   政2    (出)『嘉永版』
    福狐出給ふぞよ春の雨              八番日記   政2    (異)『梅塵八番』上五「福鼠」
    ほんのりと麹の花や春の雨          八番日記   政2
    起 〜 やおがむ手に降る春の雨      八番日記   政3    「お」→「を」
    をく山もばくちの世也春の雨        八番日記   政3    「を」→「お」
        ひもや
    御守のわらぢ備や春の雨            八番日記   政3  (異)『梅塵八番』中七「わらぢかざるや」
    桟を唄でわたるや春の雨            八番日記   政3  (異)『梅塵八番』中七「唄でわたるなり」
    此人やえぞが島まで春の雨          梅塵八番   政3  (類)『八番日記』(政3)下五「秋の暮」
    三介がはつせ詣や春の雨            八番日記   政3    (出)『嘉永版』
    線香や平内堂の春の雨              八番日記   政3
    袖たけの垣のうれしや春の雨        版本題叢   政3
    春雨や妹が袂に銭の音              八番日記   政3
    春雨やさゝりと抜し正月気          八番日記   政3    「ゝ」→「ら」
    春雨や鯲ののぼる程の滝            八番日記   政3
    春雨や猫におどり[を]をしへる子    八番日記   政3    「おどり」→「をどり」
                                                         (出)『浅黄空』『自筆本』
    春雨やむだに渡りし二文橋          八番日記   政3    (異)『希杖本』中七「むだに行て来る」
    日帰りの湯治もす也春の雨          八番日記   政3
                 (出)『発句集続篇』(異)同日記(政4)『浅黄空』『自筆本』中七「湯治道者や」
    人の世や直には降らぬ春の雨        八番日記   政3
    宿引に女も出たりはるの雨          梅塵八番   政3
                 (類)『八番日記』(政3)下五「春の風」『嘉永版』中七下五「女が出たり春の風」
    狗が鼠とる也春の雨                八番日記   政4
                       (出)『発句鈔追加』(類)『八番日記』(政3)『文政版』下五「はるの風」
    菜の煮る湯[の]湧口や春の雨        八番日記   政4
                     (出)『発句鈔追加』前書き「野沢温泉」(異)『梅塵八番』上五「菜のゆだる」
    人別の判とられけり春の雨          八番日記   政4
    片 〜 は雪の降也春の雨            文政句帖   政5    「 〜 」→「方」
    出た人を梓に寄る春の雨            文政句帖   政5
    春雨と半分交やたびら雪            文政句帖   政5
                                                  (異)『希杖本』上五下五「たびら雪・・・春の雨」
    白妙の雪の上也春の雨              文政句帖   政6
    春雨やし[や]あ 〜 として雪の山    文政句帖   政6    (異)同句帖(政7)下五「山の雪」
    山里も銭湯わいて春の雪            文政句帖   政6
    大寺のたばこ法度や春の雨          文政句帖   政7
    小食小屋富のおちけり春の雨        文政句帖   政7    「小食」→「乞食」
    水仙は花と成りけり春の雨          文政句帖   政7
    大道や際付て晴るゝ春の雨          文政句帖   政7
    旅待のうどん打也春の雨            文政句帖   政7
    茶の煮た鳴子引也春の雨            文政句帖   政7
    鳩の恋烏の恋や春の雨              文政句帖   政7
    春雨や御殿女中の買ぐらひ          文政句帖   政7
    春雨や八兵衛どのゝ何かよむ        文政句帖   政7
    春雨や腹をへらしに湯につかる      文政句帖   政8
    めくり日と俳諧日也春の雨          文政句帖   政8
    湯桁迄菜を呼込や春の雨            文政句帖   政8
                       (異)『発句集続篇』前書き「渋湯入湯の頃」上五中七「湯桁から茶売を呼や」
        春甫新宅賀
    安堵して鼠も寝るよ春の雨          文政版  (異)真蹟 前書き「わたまし賀」中七「鼠も寝しよ」
        深川
    貝殻の不二がちよぼ 〜 春の雨      浅黄空             (出)『自筆本』
    茶屋小屋を降つぶ[し]けり春の雨    自筆本
                                      (類)『七番日記』(政1)上五下五「ばくち小屋・・・彼岸雨」
    入道が綻ぬふや春の雨              浅黄空             (出)『自筆本』
        新婚賀
    春雨や相に相生の松の声            浅黄空             (出)『自筆本』『文政版』『希杖本』
    春雨やあさぢが原の団子客          希杖本
    春雨や犬にとらるゝのら鼠          自筆本       (類)『浅黄空』上五中七「陽炎や犬に追るゝ」
    春雨や夜も愛[す]るまつち山        浅黄空             (出)『自筆本』
    夜談義やばくちくづれや春の雨      浅黄空             (出)『自筆本』

 

春風

    春風や礎しめる朝な 〜             寛政句帖   寛4
    春風や尾上の松に音はあれど        寛政句帖   寛4
    春風や順礼共がねり供養            西国紀行   寛7
        十畝
    春の風草深くても古郷也            享和句帖   享3
    揚土を吹かたむらん春の風          文化句帖   化1
    口ばたに春風吹ぬ田舎飴            文化句帖   化1
    小盥の貫簀は青し春の風            文化句帖   化1
    春風の国にあやかれおろしや船      文化句帖   化1
    春風の吹かぬ草なし田舎飴          文化句帖   化1
    春風の夜水かゝりし山田哉          文化句帖   化1
    春風や翌行伊駒檜原山              文化句帖   化1
    春風や黄金花咲むつの山            文化句帖   化1
    二荒嶺も黄金花さけ春[の]風        文化句帖   化1
    松苗も肩過にけり春の風            文化句帖   化1
    春風の闇にも吹や浦の家            文化句帖   化2
    春風や土人形をゑどる也            文化句帖   化2
    棒先の茶笊かはくや春の風          文化句帖   化2    「は」→「わ」
    笠程の窓持て候春の風              文化句帖   化3
    春風に得しれぬ藪も祭哉            文化句帖   化3
    春の風垣の雑巾かはく也            文化句帖   化3    「は」→「わ」
    春の風草にも酒を呑すべし          文化句帖   化3
    立際に春風ふくや京の山            木啄集     化4
                            (出)『発句題叢』『希杖本』『苔むしろ』(異)真蹟 中七「春風吹ぬ」
    春風がならして行ぞ田にし殻        文化句帖   化4
    春風に箸を掴で寝る子哉            文化句帖   化4
    ぼた餅に宵の春風吹にけり          文化句帖   化4
    膳先に夜の春風吹にけり            文化句帖   化5
    画馬書る擢小木に吹春の風          化五六句記 化6    「擢小」→「摺子」
    草植て春風の吹所也                化五六句記 化6
        文化六年二月八日於葛斎
    正月はくやしく過ぬ春[の]風        梅塵抄録本 化6    (出)『発句鈔追加』書簡
    春風に吹れ入けりいの字寺          化五六句記 化6
    春風の夜も吹也東山                化五六句記 化6
    春風のろくには吹かぬかきね哉      化五六句記 化6
        本所番所にて
    春風や草よりかはく犬張子          化五六句記 化6    「は」→「わ」
    春風や柱の穴も花の塵              化五六句記 化6
    春風や夜にして見たき東山          化五六句記 化6
    春風や夜も市立なにはがた          化五六句記 化6
    仁平次が東下りや春の風            七番日記   化7
    春風の夜にして見たる我家哉        七番日記   化7    (異)『発句集続篇』下五「わら家哉」
    春風や残らず晴しらかん達          七番日記   化7
    春風やはや陰作るかきつばた        七番日記   化7    (出)『発句集続篇』
    春風や東下りの角力取              七番日記   化8    (異)『文政句帖』(政8)下五「京虱」
    春風や牛に引かれて善光寺          七番日記   化8    (出)『文化三―八年句日記写』
                          『我春集』前書き「二月廿五日より開帳」、『文政版』『希杖本』奉納句額
     (異)『ひさごものがたり』中七「蝶にひかれて」(類)『享和句帖』(享3)上五「しぐるゝや」
    はちの木や我春風のけふも吹        七番日記   化9
    春風や傾城丁の夜の体              七番日記   化9
    春風や十づゝ十の石なごに          七番日記   化9
    春風やひらたく成て屋根をふく      句稿消息   化9    (出)『志多良』『希杖本』
    春の風足むく方へいざさらば        七番日記   化9
    春の風いつか出てある昼の月        七番日記   化9
    細長い春風吹や女坂                七番日記   化9    (出)『浅黄空』前書き「あたご山」
                                   (異)同日記(化14)上五「細長う」、『自筆本』上五「細長く」
    草山の雨だらけ也春の風            七番日記   化10
    てうちんでたばこ吹也春の風        七番日記   化10
    春風に尻を吹るゝ屋根屋哉          七番日記   化10    (出)『浅黄空』『自筆本』
    春風や御祓うけて帰る犬            七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』書簡
 (異)『自筆本』『希杖本』『発句集続篇』下五「戻る犬」『浅黄空』前書き「道中」下五「もどり犬」
        矢立
    春風や壁に書ても梅の花            七番日記   化10
    春風や鼠のなめる角田川            七番日記   化10(出)『志多良』『句稿消息』『発句鈔追加』
       (類)『句稿消息』『文政版』『希杖本』上五「春雨や」『発句題叢』『希杖本』上五「長閑や」
        高い山から谷そこ見れば
    春の風おまんが布のなりに吹        句稿消息   化10
                                            (出)『志多良』『浅黄空』『文政版』『希杖本』真蹟
    春の風垣の茶笊を吹にけり          七番日記   化10    (出)遺稿
    馬の背の幣に先吹春の風            七番日記   化11
 (異)同日記(政1)中七「幣のひら 〜 」『浅黄空』『自筆本』前書き「浅草寺」中七「幣を吹く也」
    春風にお江戸の春も柳かな          七番日記   化11    (異)同日記(化11)中七「本町すぢの」
    春風に二番たばこのけぶり哉        七番日記   化11    (出)同日記(化13)
    春風や大宮人の野雪隠              七番日記   化11  (出)同日記(化12)『浅黄空』『自筆本』
    春風や小藪小祭小順礼              七番日記   化11  (出)『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』
    春風や地蔵の口の御飯粒            七番日記   化11    (異)『浅黄空』前書き「立田」
                             中七下五「地蔵の膝の赤の飯」『自筆本』中七下五「地蔵の膝の小豆飯」
    春風や人でつくねし寺の山          七番日記   化11    (出)『浅黄空』『自筆本』
    ぼた餅や地蔵のひざも春の風        七番日記   化11
                     (異)『おらが春』『発句鈔追加』中七「藪の仏も」『希杖本』中七「辻の仏も」
    京辺やあたら春風夜さり吹          七番日記   化11
                                           『浅黄空』『自筆本』前書き「東逗留」上五「山 〜 や」
    春風や今つくねたる山の月          七番日記   化12    (出)『栗本雑記五』
    春風や畠掘て[も]湧く油            七番日記   化12
                                         (出)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』前書き「越後」
    春風やしかうしてから柳から        七番日記   化13
    春風や袂にすれる亦打山            句稿消息   化13
    春風や筆のころげる草の原          七番日記   化13    (異)『自筆本』下五「青つ原」
    春風に折戸が合点 〜 哉            七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』
    春風や犬の寝聳るわたし舟          七番日記   化14
                                       (出)『浅黄空』書簡(異)『自筆本』中七「犬の寝ころぶ」
    春風や八文芝居だんご茶屋          七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』
    春風やおばゝ四十九でしなの道      七番日記   化14
    雨だれの中から吹や春の風          七番日記   政1
                           (異)同日記(政1)中七「中からも吹く」『浅黄空』中七「中より吹や」
    春風にぞろ 〜 うかれ参哉          七番日記   政1
                           (出)『浅黄空』前書き「文化七年二月廿二日太子堂詣」「廿三日太子堂」
                         『自筆本』前書き「廿二日太子堂」『発句集続篇』前書き「二月廿二日太子」
    春風や馬をほしたる門の原          七番日記   政1
    春風や逢坂越る女構                七番日記   政1  「構」→「講」(出)『浅黄空』『自筆本』
    春風や女も越る箱根山              七番日記   政1
                                 (出)『浅黄空』『自筆本』(異)同日記(政1)下五「すゞか山」
    春風やからりとかはく流し元        七番日記   政1  「は」→「わ」(出)『浅黄空』『自筆本』
    春風や供の娘の小脇差              七番日記   政1(異)『浅黄空』『自筆本』中七「供の女の」
    春風や古いばくちも芽を出して      七番日記   政1
    春風や曲 〜 の奉加橋              七番日記   政1    (出)『浅黄空』『自筆本』書簡
    降雪の中も春風吹にけり            七番日記   政1
                                                 (異)同日記(政1)上五中七「降雨の中に春風」
    春風に御用の雁のしぶとさよ        八番日記   政2    (異)『梅塵八番』上五「春の風」
    狗が鼠とる也はるの風              八番日記   政3
                          (出)『文政版』(類)『八番日記』(政4)『発句鈔追加』下五「春の雨」
    春風のそこ意地寒ししなの山        八番日記   政3
                         (出)『浅黄空』『自筆本』書簡(異)『発句鈔追加』中七「そこ意地寒き」
    春風や侍二人犬の供                八番日記   政3
                                                   (出)『浅黄空』前書き「大名小路」『自筆本』
    春風やとある垣根の赤草履          八番日記   政3    (出)『嘉永版』
    宿引に女も出たり春の風            八番日記   政3
                   (異)『嘉永版』中七「女が出たり」(類)『梅塵八番』(政3)下五「はるの雨」
    春風や犬にとらるゝ藪鼠            八番日記   政4
    春風や袴羽折のいせ乞食            八番日記   政4    「折」→「織」
                                                         (異)『梅塵八番』下五「江戸乞食」
    灸すんで馬も立也春の風            文政句帖   政5
    春風に肩衣かけて御供かな          文政句帖   政5
        山田猿湯
    春風に猿も親子の湯治哉            文政句帖   政5
    春風に吹出されたる道者かな        文政句帖   政5
    春風の女見に出る女かな            文政句帖   政5    (出)『発句集続篇』
    春風や越後下りの本願寺            文政句帖   政5    (類)同句帖(政5)上五「花の代や」
    春風や片衣かけて長の供            文政句帖   政5    「片」→「肩」
    春風や武士も吹るゝ女坂            文政句帖   政6
    春風や三人乗りのもどり馬          文政句帖   政7
    一馬に三人乗りや春の風            文政句帖   政7
    春[の]風子どもも一箕二み哉        文政句帖   政8
    春風や野道につゞく浅黄傘          政九十句写 政9    (出)『希杖本』
    鬼の面狐の面や春の風              発句鈔追加
    笠うらの大神宮や春の風            希杖本
        庭の小隅に芽を出しやをら二三尺ばかりに伸び隣の背戸へわたりて花咲けるを誰やらぽきりと
        切りければ実入る力もなくなりて不便也けり
    茨藪も添て見よ見よ春の風          遺稿
    春風に吹れた形や女坂              希杖本
        田中河原
    春風に吹れ序の湯治哉              浅黄空             (出)『自筆本』
        橋本町上人
    春風や歩行ながらの御法談          浅黄空
               (出)『自筆本』(類)『七番日記』『八番日記』『浅黄空』『文政版』上五「陽炎や」
    はるかぜや鳴出しさうな飴の鳥      発句集続篇
    一つ葉の中より吹や春の風          自筆本

 

東風(夕東風)

    夕東風に臼の濡色吹れけり          文化句帖   化4
    土間洗ふ箒の先や東風の吹          文化句帖   化5
    東風吹や飯の小けぶり夕筑波        七番日記   化7
    亀の甲並べて東風に吹れけり        七番日記   化9
        忿
    東風吹や今ほふ[つ]たる陶から      株番       化9    「ほ」→「は」
    ぬり立の看板餅や東風が吹          七番日記   化12
    東風吹や堤に乗たる犬の腮          八番日記   政3
    夕東風に吹れ下るや女坂            文政句帖   政5
    夕東風や埒にもたする犬の腮        文政句帖   政5
    こちへこちとや東風の吹女坂        文政句帖   政6
    東[風]の吹く形りになぞへや女坂    文政句帖   政6
    東[風]吹くやこちへ 〜 と女坂      文政句帖   政6

 

春の月

    文七が下駄の白さよ春の月          享和二句記 享2
    茹汁の川にけぶるや春の月          享和二句記 享2
    浅川や鍋すゝぐ手も春の月          文化句帖   化2
    草の月手ばやく過て春の月          文化句帖   化2
    沓持は松に立添ふ春の月            文化句帖   化2
    春の月さはらば雫たりぬべし        文化句帖   化2
    春の月斬の雫の又おちよ            文化句帖   化2    「斬」→「軒」
    ついそこに狐火も[え]て春の月      文化句帖   化3
    寺山や春の月夜の連歌道            文化句帖   化3
    宵 〜 や軒の雫も春の月            文化句帖   化3
    御門主の籠松明や春の月            文化句帖   化5
    御祭りの春中にない月よ哉          七番日記   化8
    ついそこの二文渡しや春の月        七番日記   化9    (出)『株番』『文政版』
    白水の畠へ流て春の月              七番日記   化11    (出)『発句集続篇』
    長兵衛が向ふを通る春の月          七番日記   化11
    土橋の御酒徳利や春の雨            七番日記   化11
                                     (出)『句稿消息』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「新橋の」
    湯けぶりも月夜の春と成りにけり    七番日記   化11
    すつぽんも時や作らん春の月        七番日記   政1    (出)『おらが春』『文政版』書簡 
            前書き「水江春色」、『浅黄空』真蹟 前書き「大沼春色」、『自筆本』『椿所』『不踰矩』
    海柳節はわかくも春の月            文政句帖   政5
    大道はふみかげん也春の月          文政句帖   政5
    わら苞のとうふも見えて春の月      発句集続篇
                         (類)『我春集』『文化三―八年句日記写』上五下五「わら苞や・・・春の雨」

 

朧(朧月、朧夜、朧月夜)

    朧 〜 ふめば水也まよひ道          西国紀行   寛7
    月朧よき門探り当たるぞ            西国紀行   寛7
    夜明ても朧也けり角田川            文化句帖   化2
    段 〜 に朧よ月よこもり堂          文化句帖   化3
    人立てはや朧づく川辺哉            文化句帖   化4
    朧月夜はあつけなく成にけり        文化句帖   化5
    門口のいぢくれ松もおぼろ哉        七番日記   化8    (出)『我春集』
    芦の鶴宵の朧を拵ぬ                七番日記   化10
    おぼろ夜や餅腹こなす東山          七番日記   化10    (出)『発句集続篇』
    むさしのにおれが立ても朧也        七番日記   化10
                                                 (異)同日記(化11)『希杖本』上五「木の端の」
    雨だれ[の]ぽち 〜 朧月夜哉        七番日記   化11    (出)『発句集続篇』
    夕されば朧作るぞ小藪から          七番日記   化11
    我立た畑の棒もおぼろ月            七番日記   化11
    石山は弓手に高し朧月              南山春事帖 化12
    おぼろ月名古屋風なら吹れたい      七番日記   化12
    泥坊や其身そのまゝ朧月            七番日記   化13
    夕さればけちな藪でもおぼろ也      七番日記   化13    (出)『浅黄空』『自筆本』
        養老滝
    朧夜や酒の流し滝の月              七番日記   政1
                                       (出)『浅黄空』『自筆本』前書き「美濃」、『発句集続篇』
    おぼろ夜にしやつきり張りて立木哉  八番日記   政2
    朧夜や天の音楽聞し人              梅塵八番   政2
    川霧の手伝ふ朧月夜かな            文政句帖   政5
    錦着て夜行く人やおぼろ月          文政句帖   政6    (出)『浅黄空』『自筆本』
    おぼろ夜やほつそり人の立田山      文政句帖   政7  (異)同句帖(政8)中七「うつとり人の」
    里山はまだ日のさして朧月          政七草稿   政7
    すみだ川くれぬうちより朧也        墨多川集   政9
        程々庵夜泊
    おぼろ夜や寝るたしになる庭の滝    発句集続篇
    菰だれの厠も朧支度かな            希杖本
    福狐啼たまふぞよおぼろ月          発句鈔追加         (出)真蹟

 

春の虹(初虹)

    青苔や膝の上迄春の虹              七番日記   化11
    初虹に草も壬の畠哉                文政句帖   政5    「壬」→「閏」
    初虹もわかば盛りやしなの山        文政句帖   政5
    初虹や左り麦西雪の山              文政句帖   政7
    昼寝るによしといふ日や虹はじめ    文政句帖   政7

 

春の雷(初雷)

    初雷やえぞの果迄御代の鐘          享和句帖   享3
    手始は小雷にてすます哉            八番日記   政3
    春もまた雪雷やしなの山            文政句帖   政5
    初ものや大雷の光りさへ            文政句帖   政7    (出)『発句集続篇』

 

霞(春霞、薄霞、遠霞、横霞、朝霞、夕霞、霞む)

    三文が霞見にけり遠眼鏡            霞の碑     寛2
                                                 (出)『寛政句帖』(寛4)前書き「白日登湯台」
    破鐘もけふばかりとてかすむ哉      寛政三紀行 寛3
        草枕せんと人々留別
    いつ逢ん身はしらぬひの遠がすみ    寛政句帖   寛4
    白雲のかすみ吹抜く外山哉          寛政句帖   寛4
    しら浪に夜はもどるか遠がすみ      寛政句帖   寛4
    山本やかすみにとゞく朝煙り        寛政句帖   寛4
        別恋
    きぬ 〜 やかすむ迄見る妹が家      寛政句帖   寛6
    行人や我休む間に遠がすみ          寛政句帖   寛6
    朝がすみ天守の雨戸聞へけり        西国紀行   寛7    「へ」→「え」(出)『与播雑詠』
    雨かすむ貴地のあの山めづらしや    西国紀行   寛7    「貴」→「木」
    里かすみぬ里人は我を霞と見なん哉  西国紀行   寛7
    門前や何万石の遠がすみ            西国紀行   寛7
    旅笠を小さく見せる霞かな          元除春遊   寛8
    から崎に我もかすみのひとつ哉      真蹟       寛10
        首尾吟
    むく起の鼻の先よりかすみ哉        さらば笠   寛10
    今さらに別ともなし春がすみ        真蹟       寛11
    よい程の道のしめりや朝霞          庚申元除楽 寛12
    昼風呂の寺に立也春がすみ          享和二句記 享2
        明夷
    京見えて臑をもむ也春がすみ        享和句帖   享3
        還
    馬上から黙礼するや薄霞            享和句帖   享3
    霞とてゑりはり出れば鳥部山        文化句帖   化1    「ゑりはり」→「えりわり」
    霞み行や二親持し小すげ笠          文化句帖   化1
    春がすみ江戸めかぬ家二三軒        幽居集     化1
    家もはや捨たくなりぬ春霞          文化句帖   化2
    鰯焼片山畠や薄がすみ              文化句帖   化2
    薄霞む夕 〜 の菜汁哉              文化句帖   化2
    うら窓にいつも[の]人が霞む也      文化句帖   化2
    江戸めかぬ家も見へけり春霞        乙丑句集   化2
    かすむ日もうしろ見せたる伏家哉    文化句帖   化2
    かすむ日や夕山かげの飴の笛        文化句帖   化2
                        (出)『発句題叢』『発句鈔追加』『嘉永版』『希杖本』『発句集続篇』遺稿
                       (異)『自筆本』上五「霞けり」『七番日記』(化12)下五「笛の飯」(誤記)
    壁画どる伏見の里や薄霞            文化句帖   化2
    かりそめに出て霞むやつくば山      文化句帖   化2
    太郎槌うつの山辺や先霞む          文化句帖   化2
    とにかくにかすみかねたる卒塔婆哉  文化句帖   化2
    盗する烏よそれも春がすみ          文化句帖   化2
    柱をも拭じまひけり春霞            文化句帖   化2
    我袖も一つに霞むゆふべ哉          文化句帖   化2
    かすむ日に窓さへ見へぬ獄屋哉      文化句帖   化3
    霞む日や門の草葉は昼時分          文化句帖   化3
    かすむ日や山夕泥かふ小梅筋        文化句帖   化3
    片袖はば[ら] 〜 雨や春がすみ      文化句帖   化3
    草生て三尺店もかすむ也            文化句帖   化3
    菜畠のふくら雀もかすみ哉          文化句帖   化3
    春がすみ鍬とらぬ身のもつたいな    文化句帖   化3
    みちのくや鬼住原も春がすみ        文化句帖   化3
    むさしのや我等が宿も一かすみ      文化句帖   化3
    山里の寝顔にかゝるかすみ哉        文化句帖   化3
    霞日や花のお江戸も寝あく時        文化句帖   化4
    かすむ[日]や麓の飯のめづらしき    文化句帖   化4
    霞日や大宮人の髪の砂              文化句帖   化5
    玉琴も乞食の笛もかすみけり        文化句帖   化5    (出)遺稿
    吹下手の笛もほの 〜 かすみ哉      文化句帖   化5
    山人のお飯にも引かすみ哉          文化句帖   化5
    愚さを松にかづけて夕がすみ        化五六句記 化6
    かすむ日や荒神松の古び様          化五六句記 化6
    鍋釜もかすめと明る山家哉          化五六句記 化6
    窓先や常来る人の薄霞              化五六句記 化6
    夕風呂のだぶり 〜 とかすみ哉      化五六句記 化6
    親にらむ平目もかすむ一つ哉        七番日記   化7
    かすむぞよ松が三本夫婦鶴          七番日記   化7
    此門の霞むたそくや隅田の鶴        老が染飯   化7    (出)『文政版』
        巣兆五十賀
    柴の戸やかすむたそくの角田鶴      七番日記   化7
    手ばしかくかすめよ霞め放し鳥      菊苗集     化7
    とくかすめとく 〜 かすめ放ち鳥    七番日記   化7    (出)『おらが春』『発句鈔追加』
    梟の己はかすまぬつもり哉          七番日記   化7
    夕暮や霞中より無常鐘              七番日記   化7
    霞む[日]や鹿の出て行さらし臼      七番日記   化8
                             (異)同日記(化9)中七「鹿の顔出す」、『株番』中七「鹿の寝て行」
    片里や鐘の霞もむつかしみ          七番日記   化8
    彼[の]桃が流れ来よ 〜 春がすみ    七番日記   化8
    (出)『発句題叢』『希杖本』『杖の竹』(異)真蹟 前書き「老婆せんたくの図」上五「彼ももも」
                               『文政版』前書き「老婆洗衣画」、『随斎筆紀』中七「流れ来るかよ」
    死鐘と聞さへのらのかすみ哉        七番日記   化8
    ちとの間にかすみ直すや山の家      七番日記   化8
    古郷やかすみ一すじこやし舟        七番日記   化8    「じ」→「ぢ」
    古郷や下手念仏も春がすみ          七番日記   化8
    湖を風呂にわかして夕がすみ        七番日記   化8    (出)『発句集続篇』
    いたぶりし今の乞食よつゝかすむ    株番       化9
    大声の乞食どのよつゝかすむ        七番日記   化9
    かすむぞよ金のなる木の植所        七番日記   化9    (出)『株番』前書き「題東都」
    かすむ日の咄するやらのべの馬      七番日記   化9
                                     (出)『株番』前書き「文化九年正月廿四日」、『発句集続篇』
    霞日や 〜 とてついやしぬ          七番日記   化9    「い」→「ひ」
                                                         (異)同日記(化11)下五「むだぐらし」
        天上
    かすむ日やさぞ天人の御退屈        株番       化9    (出)『文政版』
    霞む日やとばかりけふもむだ仕事    七番日記   化9
    じやゝうまのつくねんとしてかすむ也七番日記   化9
    只居が勿体な[し]や春がすみ        七番日記   化9
    一並雁の欠びやうすがすみ          七番日記   化9
    古鐘やかすめる声もむつかしき      七番日記   化9
                              (出)『株番』(異)同日記(化10)上五下五「破鐘や・・・おとなしき」
                            『版本題叢』『発句鈔追加』『希杖本』上五下五「破鐘の・・・むつかしや」
    古椀がはやかすむぞよ角田川        七番日記   化9
    麦の葉も朝きげんぞよ青霞          七番日記   化9    (出)『株番』
    行先や銭よる縄も春がすみ          七番日記   化9
    我にゝた能なし山もかすみ哉        七番日記   化9
    かすむ日も雪の上なる住居哉        七番日記   化10    (出)『浅黄空』前書き「中山道宿柏原」
             『発句集続篇』前書き「在柏原」、『句稿消息』前書き「戸隠山」、『志多良』『自筆本』
    かすむ日や飴屋がうらのばせを塚    七番日記   化10
                           (異)『志多良』中七「問屋がうらの」、『浅黄空』中七「問屋のうらの」
    かすむ日や目を縫たる雁が鳴        七番日記   化10    (出)『句稿消息』前書き「小田原町」
                               (異)『句稿消息』前書き「安針町」中七下五「目を縫れつゝ鴨の鳴」
    かすむやら目が霞やらことしから    七番日記   化10
    すりこ木の音に始るかすみ哉        七番日記   化10
             (出)『浅黄空』前書き「木頭をすること一日三千本などゝだみそを上たる毛唐人に、今此
               大御代の豊饒を見せたらんには、目や廻しなん、腰やぬけなん  江戸坂暁」、『志多良』
               『句稿消息』『自筆本』『発句鈔追加』『希杖本』(異)『発句集続篇』上五「摺鉢の」
    泣な子供赤いかすみがなくなるぞ    七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』
             『発句鈔追加』『希杖本』(異)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』上五「なくな子ら」
    西山やおのれがのるはどのかすみ    七番日記   化10
               (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『文政版』『希杖本』『柳くやう』
    婆ゝどの[の]舌切雀それかすむ      七番日記   化10
    古郷やいびつな家も一かすみ        七番日記   化10
    古鳶や肴つかんでつゝかすむ        七番日記   化10
    ほく 〜 とかすみ給ふはどなた哉    七番日記   化10    (出)『志多良』
                (異)『浅黄空』前書き「窓前」、『句稿消息』『希杖本』書簡 中七「霞んで来るは」
    御仏の手桶の月もかすむ也          七番日記   化10
    かすみ捨 〜 つゝ黒日哉            七番日記   化10
    かすむとてよろこび烏ばかり哉      七番日記   化10
                                   (出)『希杖本』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「かすむ日は」
    かすむ日や日やとてむちやにくらしけり七番日記 化11    (出)『浅黄空』『自筆本』
    かすむ夜やうらから見ても吉原ぞ    七番日記   化11
    坂口や丸にのゝ字が先かすむ        句稿消息   化11
    折角にかすんでくれし榎哉          七番日記   化11
    茶を呑めと鳴子引也朝がすみ        七番日記   化11
    茶鳴子のやたらに鳴るや春がすみ    句稿消息   化11    (出)『嘉永版』
    野ばくちや藪の談義も一かすみ      七番日記   化11
    一聳かすみ放しの榎哉              七番日記   化11    (異)同日記(化11)上五「けふも 〜 」
    ぼた餅をつかんでかすむ烏哉        句稿消息   化11
             (異)『八番日記』(政4)中七「見せ 〜 かすむ」、『嘉永版』中七「喰はへてかすむ」
    我里はどうかすんでもいびつ也      七番日記   化11
                                         (出)『句稿消息』(異)同日記(政1)上五「我家[は]」
        廿五日あざり荒
    我をよぶ人[の]顔よりかすみ哉      七番日記   化11
    飴店のひら 〜 紙や先かすむ        七番日記   化12
    霞から人さす虫が出たりけり        七番日記   化12
                                      (異)『発句鈔追加』真蹟 上五中七「かすむとて人さす虫も」
    かすむぞよあれ干菜山十連子        七番日記   化12
    土橋や立小便も先かすむ            七番日記   化12
    菜も蒔てかすんで暮らす小家哉      七番日記   化12
             (異)『句稿消息』『文政版』上五「けふも 〜 」、『浅黄空』『自筆本』下五「山家哉」
    野菜つみちよつとかすんでみせにけり七番日記   化12
    横がすみ足らぬ所が我家ぞ          七番日記   化12
    かすむぞよよけて通せし今の人      七番日記   化13
    けふの日も喰つぶしけり春がすみ    七番日記   化13    (出)『浅黄空』『自筆本』
    ざんざ雨霞のうらを通りけり        七番日記   化13    (出)『浅黄空』『自筆本』
    妻なしやありやかすんで居る小家    七番日記   化13
    寺の茶の二番鳴子や朝霞            七番日記   化13    (出)書簡 前書き「春」
    松苗のかすむころには誰がみる      七番日記   化13
        軽井沢春色
    笠でするさらば 〜 や薄がすみ      七番日記   化14  (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』真蹟
    かすむなら斯うかすめとやばさら笠  七番日記   化14
    かすむ夜やはたして人の立田山      七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』
    呉服やの朝声かすみかゝりけり      七番日記   化14(異)『浅黄空』『自筆本』下五「かかる也」
    春がすみいつちちさいぞおれが家    七番日記   化14
    吼る犬かすみの衣き[た]りけり      七番日記   化14
    かすむ日に古くもならぬ卒土婆哉    七番日記           「土」→「塔」(出)遺稿
        加賀守
    梅ばちの大挑灯やかすみから        七番日記   政1
        如得病者医
    かすむ野にいざや命のせんだくに    七番日記   政1
        柏原遠望
    霞やら雪の降やら古郷山            七番日記   政1    (異)同日記(政1)中七「雪が降やら」
    さらし布かすみの足に聳へけり      七番日記   政1    「へ」→「え」
 (出)『おらが春』『発句題叢』『八番日記』『発句鈔追加』『希杖本』『発句集続篇』前書き「玉川」
                                                         『浅黄空』前書き「南都」、『自筆本』
    芝風に笠追なくすかすみ哉          七番日記   政1
    玉川に布も聳へてかすみけり        七番日記   政1    「へ」→「え」
    月霞旦や江戸気のはなれ際          七番日記   政1    (出)同日記(政1)
    古郷はかすんで雪の降りにけり      七番日記   政1
        首途
    あとの家もかすんで音逆 〜 哉      八番日記   政2
    家舟の音逆 〜 もかすみけり        八番日記   政2    (異)『梅塵八番』下五「霞かな」
    おのが門見るやかすめばかすむとて  八番日記   政2    (異)同日記(政2)上五「迹の家」
    思ふまじ見まじかすめよおれが家    八番日記   政2
                               (類)『おらが春』『発句鈔追加』中七下五「見まじとすれど我家哉」
    かすみけりにくいやど屋も迹の村    八番日記   政2
                                               (出)『浅黄空』『自筆本』『嘉永版』前書き「旅」
    かすむぞや見まじと思ひど古郷は    八番日記   政2    「ひ」→「へ」
    かすむならかすめと捨し庵哉        八番日記   政2
    かすむ日やしんかんとして大座敷    八番日記   政2(出)『おらが春』『発句鈔追加』『嘉永版』
    かすむ日や竹林麦の小かんばん      八番日記   政2
        上野
    白壁のそしられつゝもかすみけり    八番日記   政2 (異)『おらが春』書簡 前書き「上野遠望」
                                        遺稿 中七「そしられながら」、『梅塵八番』下五「霞かな」
        上野
    白壁のひいきしてゐるかすみ哉      八番日記   政2    (出)『発句集続篇』
    一引も下手なかすみやおれが家      八番日記   政2    (異)『梅塵八番』上五「一引や」
    古郷や朝[茶]なる子も春がすみ      八番日記   政2    (異)『梅塵八番』中七「朝茶呑子も」
    横乗の馬のつゞくや夕がすみ        八番日記   政2
                       (出)『発句鈔追加』『嘉永版』(類)『おらが春』『文政版』下五「夕雲雀」
    迹供はかすみ引けり加賀の守        八番日記   政3
                     (異)『浅黄空』中七「かすみのおくや」、『自筆本』中七「かすみのかゝるや」
    雉の尾に引ずりて行かすみ哉        八番日記   政3
        上野
    拍[子]木や供のかけする霞から      八番日記   政3    「す」→「よ」
    舟人の引て上るや夕がすみ          八番日記   政3    (出)『発句集続篇』
    身の上の鐘としりつゝ夕がすみ      発句類題集 政3
                       (類)『文化五〜六年句日記』『発句題叢』『随斎筆紀』『嘉永版』『希杖本』
              『其あかつき』『木公集』『流行七部集』『あさがほ集』『物見塚記』真蹟 下五「夕涼」
    かすむ日や宗判[押]に三里程        八番日記   政4
    灯火やかすみながらに夜が明る      八番日記   政4
    御仏と一所に霞む天窓かな          梅塵八番   政4
    霞けり百の御丈のあみだ松          文政句帖   政5    「御」→「身」
    霞して百の御丈の立木哉            文政句帖   政5    「御」→「身」
    傘の雫ながらにかすみかな          文政句帖   政5
    傘の雫もかすむ都哉                文政句帖   政5
    誰それとしれてかすむや門の原      文政句帖   政5    (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』
    盗人のかすんでけゝら笑ひかな      文政句帖   政5
    古郷やあれ霞あれ雪が降る          文政句帖   政5    (異)『文政九・十年句帖写』(政9)
                     『希杖本』上五「しなの路や」同句帖(政6)中七下五「しなの路やそれ霞それ」
    古郷は我を見る也うすがすみ        文政句帖   政5
    法談の手つきもかすむ御堂かな      文政句帖   政5
        丹波島より
    真直にかすみ給ふや善光寺          文政句帖   政5
    我を見る姿も見へてうすがすみ      文政句帖   政5    「へ」→「え」
    かすみから水を降らする放下かな    文政句帖   政6
    霞つゝ日傘も聳ゆ女坂              文政句帖   政6
    かすむ火や小一里杉のおくの院      文政句帖   政6
                                                   (異)『浅黄空』『自筆本』中七「四五丁松の」
    下通るせんざい舟や遠がすみ        文政句帖   政6
        茶ひん炭
    しなのぢやひんよくしたる春がすみ  文政句帖   政6
    空色の傘もかすむや女坂            文政句帖   政6
    大仏は赤いかすみの衣かな          文政句帖   政6
    法談の二番板木やうすがすみ        文政句帖   政6
    霞より引つゞく也諸大名            文政句帖   政7
    かるかきの七五三やむかすみ哉      文政句帖   政7
    ばゝがつく鐘もどこぞ夕霞          文政句帖   政7  (異)同句帖(政8)中七「鐘もうす 〜 」
        年賀
    老松や改て又幾かすみ              文政句帖   政7
   (出)『発句鈔追加』『希杖本』前書き「文政九年梅堂六十一の賀」、『嘉永版』前書き「還暦の賀」
                                 『梅塵抄録本』前書き「文政九年三月三日梅堂老人の六十一を賀す」
    霞から人のつゞくや寛永寺          政九十句写 政9    (出)『希杖本』
    夕客の行灯霞む野寺哉              政九十句写 政9    (出)『希杖本』
    うす霞丸にやの字の壁見ゆる        自筆本
    かすみてもとうにかくれぬ卒土婆哉  自筆本             「とう」→「たふ」「土」→「塔」
    霞とやあさからさはぐ馬鹿烏        希杖本             「は」→「わ」
    かすむ日や大旅籠屋のうらの松      自筆本
                                 (類)『八番日記』(政2)『浅黄空』『自筆本』上五「雪どけや」
    今朝程や三文程の遠がすみ          発句鈔追加         (出)真蹟 前書き「立春」
    さらば 〜 の手にかゝる霞かな      希杖本
    直道のひら 〜 紙や春がすみ        浅黄空             (出)『自筆本』
    たつぷりと霞と隠れぬ卒土婆哉      浅黄空             「土」→「塔」
        五月雨の晴鹿野山におもむく老足のおぼつかなくも
    杖先の一里 〜 とかすみけり        発句鈔追加
    筑波根と一所にかすむ御船かな      発句鈔追加
    伏見のやぞろりと霞む夕旅籠        希杖本
        栗之六十賀
    古松や又あらためていく霞          文政版
    丸にやの字の壁見へて夕霞          浅黄空             「へ」→「え」

 

陽炎

    陽炎やむつましげなるつかと塚      寛政三紀行 寛3
    雨後の石井陽炎とのみ消にけり      寛政句帖   寛5
    陽炎に敷居を越る朝日哉            寛政句帖   寛5
    陽炎や小藪は雪のまじ 〜 と        享和二句記 享2
    陽炎によしある人の素足哉          文化句帖   化1
    かげろふに任せておくや餌すりこ木  文化句帖   化2
    陽炎の内からも立葎哉              文化句帖   化2(異)『発句題叢』『希杖本』下五「在郷哉」
                             『版本題叢』『発句鈔追加』『嘉永版』中七下五「中からもたつ浅生哉」
    陽炎やいとしき人の杖の跡          文化句帖   化2    (異)『ときは草』下五「杖の穴」
    陽炎や笠の手垢も春のさま          文化句帖   化2
    陽炎の草にかぶさる敷居哉          文化句帖   化3
    陽炎の立草もなき住居哉            文化句帖   化3
    陽炎の立にもたらぬ戸口哉          文化句帖   化3
    陽炎や浅茅原を薄草履              文化句帖   化3
    陽炎や蚊のわく藪もうつくしき      文化句帖   化3
    陽炎や子をなくされし鳥の顔        文化句帖   化3
                                               (異)『嘉永版』中七下五「子をかくされし親の顔」
    陽炎や菅田も水の行とゞく          文化句帖   化3
    陽炎や寝たい程寝し昼の鐘          文化句帖   化3
    陽炎にさら 〜 雨のかゝりけり      文化句帖   化4
    陽炎の便ともなる柱哉              文化句帖   化4
    陽炎やあの穴たしか蛬              化三―八写 化4    (出)『文化五〜六年句日記』
    陽炎に門松の穴吹れけり            文化句帖   化5
    陽炎のづんづと伸る葎哉            文化句帖   化5    「づんづと」→「ずんずと」
    陽炎の手の皺からも立にけり        文化句帖   化5
    陽炎や翌の酒価の小柴垣            文化句帖   化5
    陽炎やきのふ鳴たる田にし殻        文化句帖   化5
    陽炎や人に聞れし虫の殻            文化句帖   化5    (出)遺稿
    陽炎ににくまれ蔓の見事也          化五六句記 化六
    陽炎の別に立けり船の欠            化五六句記 化六
    陽炎やきのふは見へぬだんご茶屋    化五六句記 化六    「へ」→「え」
    陽炎やあさぢがくれの埋れ銭        七番日記   化8
    陽炎[や]道灌どのゝ物見塚          七番日記   化8
                                                 (出)『我春集』前書き「正月廿九日於本行寺会」
    陽炎に何やら猫の寝言哉            七番日記   化9
    陽炎にめしを埋る烏哉              七番日記   化9
    陽炎や貝むく奴がうしろから        七番日記   化9    (出)『株番』前書き「十八日本行寺」
    陽炎に成ても仕廻へ草の家          七番日記   化10
    陽炎に引からまりし小亀哉          七番日記   化10
    陽炎や臼の中からま一すじ          七番日記   化10    「じ」→「ぢ」
                                               (出)『志多良』『句稿消息』『文政版』『希杖本』
    陽炎や鍬で追やる村烏              七番日記   化10
                                           (出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』『発句集続篇』
    陽炎や子に迷ふ鶏の遠歩き          七番日記   化10    (出)『希杖本』『発句集続篇』
    陽炎や芒かるかや女郎花            七番日記   化10    (類)同日記(化8)「夕立や」
    陽炎や草履のうらも梅の花          七番日記   化10    (類)『我春集』上五「黒土や」
    陽炎にぐい 〜 猫の鼾かな          七番日記   化11    (異)『希杖本』中七「すい 〜 猫の」
    陽炎にずつぷりぬ[れ]し仏哉        七番日記   化11  (異)『発句集続篇』中七「すつぽり濡し」
    陽炎や縁からころり寝ぼけ猫        七番日記   化11
                                               (出)『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
    陽炎や雫ながらの肴銭              七番日記   化11
    陽炎や土の姉さま土僧都            七番日記   化11    (出)『句稿消息』『希杖本』
    陽炎や餅つく門のばからしい        七番日記   化11
    陽炎やわらで足ふく這入口          七番日記   化11
 (出)同日記(化13)(異)『自筆本』中七「草で足拭く」、『浅黄空』中七下五「草で足拭く上り口」
    陽炎に扇を敷て寝たりけり          七番日記   化12
    陽炎に子を返せとや鳴雀            七番日記   化12
    陽炎や馬をほしたる小松原          七番日記   化12
                                       (異)『浅黄空』『自筆本』中七下五「馬ほしておく草の原」
    陽炎や笠へそりおとす月代に        七番日記   化12
    陽炎や狐の穴の赤の飯              七番日記   化12
 (類)『浅黄空』前書き「王子」上五中七「梅がゝや狐の穴に」『自筆本』上五中七「梅咲や狐の穴に」
    陽炎や切欠てうるしなの<ゝ>山      七番日記   化12  (異)『浅黄空』『自筆本』下五「砥石山」
    陽炎や敷居でつぶす髪虱            七番日記   化12(異)『浅黄空』『自筆本』中七「敷居枕に」
    陽炎や猫にもたかる歩行神          七番日記   化12
    陽炎や馬糞も銭に成にけり          七番日記   化12
                                           (異)『発句集続篇』中七下五「馬糞も銭となるからに」
    陽炎や薪としめしと梅の花          七番日記   化12
        浅草寺
    さむしろや銭と樒と陽炎と          七番日記   化12    (出)『発句集続篇』
    山藪のひら 〜 紙も陽炎ぞ          七番日記   化12
    陽炎にまぎれ込だる伏家哉          七番日記   化13    (出)『発句集続篇』
    陽炎や大の字形に残る雪            七番日記   化13
    陽炎のとり付て立草家哉            七番日記   政1
    陽炎や丹すりこ木の天窓から        七番日記   政1
    陽炎や有明りんと藪先に            七番日記   政1
                                                   (異)『浅黄空』『自筆本』中七「有明つんと」
        題橋元町聖人
    陽炎や歩行ながらの御法談          七番日記   政1    (出)『浅黄空』前書き「橋本町住僧」
             『八番日記』『文政版』(類)『浅黄空』前書き「橋本町上人」『自筆本』上五「春風や」
    陽炎や大からくりの千軒家          七番日記   政1
                                 (異)同日記(政1)『浅黄空』『自筆本』中七「やんさぐらしの」
    陽炎や下駄屋が桐の青葉吹          七番日記   政1
    陽炎や新吉原の昼の体              七番日記   政1
                                   (出)『だん袋』『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』『希杖本』
    陽炎や庇の草も花の咲く            七番日記   政1
    陽炎の中にうごめく衆生かな        八番日記   政2    (出)『発句鈔追加』
       (類)『株番』『浅黄空』前書き「人間界」『七番日記』『自筆本』『文政版』上五「さく花の」
    陽炎やけふ一日の御成橋            八番日記   政2
    陽炎や手に下駄はいて善光寺        八番日記   政2
           (出)『梅塵八番』前書き「居去」、『発句集続篇』前書き「膝行」、『嘉永版』『希杖本』
    陽炎や寺に行かれし杖の穴          八番日記   政2
               (異)『浅黄空』『自筆本』中七「寺へ行かれし」、『ときは草』中七「いとしき人の」
                                             『文化句帖』(化2)中五下七「いとしき人の杖の跡」
    陽炎や掃捨塵も銭になる            梅塵八番
    陽炎の内からも立在郷哉            発句題叢   政3
                                                 (出)『希杖本』(異)『文化句帖』下五「葎哉」
    陽炎の中からもたつ浅生哉          版本題叢   政3    (出)『発句鈔追加』『嘉永版』
    陽炎や目につきまとふ笑い顔        八番日記   政4    「い」→「ひ」
             (出)『梅塵八番』『発句鈔追加』前書き「九十六日の間、雪のしら 〜 しき寒い目にあい
               て、この世の暖さをしらず仕廻しことのいた 〜 しく、せめて今ごろ迄も居たらんには」
                                 書簡 前書き「みどり子の二七日の墓」、真蹟 前書き「一七日墓詣」
    陽炎の立や垣根の茶ん袋            文政句帖   政5
    陽炎や庵の庭のつくば山            文政句帖   政6
    陽炎やそば屋が前の箸の山          文政句帖   政6    (出)『文政版』『梅塵抄録本』
    陽炎や馬のつけたる階子坂          文政句帖   政7
    陽炎や薪の山の雪なだれ            文政句帖   政8
    陽炎や長刀形りの紙草履            文政句帖   政8
    陽炎に一本乗のいかだ哉            随斎筆紀
    陽炎の立とて伸す土足かな          希杖本
    陽炎も片側のみぞうら借家          希杖本
    陽炎や犬に追るゝのら鼠            浅黄空     (類)『自筆本』上五中七「春雨や犬にとらるゝ」
    陽炎や鍋ずみ流す村の川            希杖本

 

佐保姫

    佐保姫も虱見給へ梅の花            化五六句記 化5
    さほ姫のばりやこぼしてさく菫      七番日記   化7
    さほ姫の染損ひや斑山              八番日記   政3

目次へ戻る