一茶発句全集(1)・・・新年の部

最終補訂1999年9月5日

新年の部

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時 候

 

元日(元朝、日のはじめ、三つの朝)

    元日やさらに旅宿とおもほへず      西国紀行   寛7    「へ」→「え」
    橙やいつも律義に三ツの朝          玉の春     寛9
    元日にかわいや遍路門に立          西国書込   寛中    「わ」→「は」
    元日の寝聳る程は曇る也            文化句帖   化1
    元日も爰らは江戸の田舎哉          文化句帖   化4
    さながらのみちの悪<る>さよ日の始  文化句帖   化5
    礎や元日しまの巣なし鳥            化三―八写 化6
    元日や我のみならぬ巣なし鳥        化五六句記 化6    (出)『文化三―五句日記写』
    家なしも江戸の元日したりけり      七番日記   化7
    牛馬も元日顔の山家哉              書簡       化7    (出)『発句鈔追加』
    古郷や馬も元日いたす顔            七番日記   化7
    例の通[り]梅の元日いたしけり      七番日記   化8
    あれ小雪さあ元日ぞ 〜             七番日記   化11
    彼らにも元日させん鳩すゞめ        七番日記   化11    (出)『発句鈔追加』
    元日をするや揃ふ[て]小田の雁      七番日記   化14    「ふ」→「う」
    小菜畠元日さへをしたりけり        七番日記   化14
    ぬく 〜 と元日するや寺の縁        七番日記   化14
    鑓にやり大元日の通り哉            七番日記   化14
    我門は昼過からが元日ぞ            七番日記   化14    (異)同日記(化14)上五「我庵は」
    元日も立のまゝなる屑家哉          八番日記   政4
 (出)『発句鈔追加』 (異)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『文政版』遺稿 中七「立のまんまの」
    元日も別条のなき屑屋哉            八番日記   政4    (出)『発句鈔追加』
    元日やどちら向ても花の娑婆        八番日記   政4   (異)同日記(政4)中七「日本ばかりの」
                 『梅塵八番』中七「日本ばかり」『発句鈔追加』『梅塵抄録本』中七「我等ぐるめに」
    元日に曲眠りする美人哉            文政句帖   政6
    元日や目出度尽し旅の宿            文政句帖   政7
    元日はむりに目出度旅寝哉          政七草稿   政7
    世の中をゆり直すらん日の始        文政句帖   政7
    元日や庵の玄関の仕拵へ            文政句帖   政8
    元日や闇いうちから猫の恋          文政句帖   政8
    元日に十念仏のゆきゝ哉            文政句帖   政8
    苦にやんだ元日するや人並に        文政句帖   政8
                                        (異)『発句鈔追加』前書き「旅」とあり 中七「元旦すむや」
    元日の日向ぼこする屑屋かな        発句鈔追加
        元 日
    元日や上々吉の浅黄空              浅黄空
                                     (出)『自筆本』『俳諧寺抄録』『文政版』『希杖本』遺稿 真蹟
    昼頃に元日になる庵かな            発句鈔追加

 

年立つ(新玉の年)

    年立や日の出を前の舟の松          文化句帖   化2
    あら玉のとし立かへる虱哉          文化句帖   化5
         (出)『発句題叢』『浅黄空』『自筆本』『嘉永版』『発句鈔追加』『希杖本』『発句類題集』
    あら玉の春早々の悪日哉            文政句帖   政4
        新家賀
    年立や雨おちの石凹む迄            文政句帖   政5
            (出)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『文政版』遺稿 (異)『あつくさ』上五「新宅や」
    年立やもとの愚が又愚にかへる      文政句帖   政5
    あら玉や江戸はへぬきの男松        文政句帖   政6    「へ」→「え」
    梅さくや先あら玉の御制札          文政句帖   政6

 

今年

        遊民 〜 とかしこき人に叱られても今更せんすべなく
    又ことし娑婆塞ぞよ草の家          文化句帖   化3
                      (出)『発句題叢』『希杖本』 (異)『発句鈔追加』中七下五「娑婆塞なり草の庵」
    又ことし娑婆塞なる此身哉          七番日記   化11
                                               (出)『希杖本』(異)『発句鈔追加』下五「茶の煙り」
    神 〜 や今年も頼む子二人          七番日記   政1
        六十二のとし
    ことしから丸もふけ也娑婆の空      梅塵八番   政3    「もふ」→「まう」
    ことしから手左り笠[に]小風呂敷    八番日記   政4
        去十月十六日、中風に吹掛されて、有に比〓の夕の忌み 〜 しき虫となりしを、此正月一日はつ
        鶏[に]引越されて、とみ[に]東山の地の旭のみがき出せる玉の春を迎ひるとは、我身を我めづら
        しく生れ代りて、ふたゝび此世を歩く心ちなん。(〓は「亡」に「おおざと」)
    ことしから丸儲ぞよ娑婆遊び        八番日記   政4    前書き「掛」→「倒」「有」→「直」
                                             「比」→「北」「越」→「起」「迎ひる」→「迎ふる」
                                               (出)書簡(異)『発句鈔追加』上五「これからが」
    ことしからまふけ遊びぞ花の娑婆    八番日記   政4    「ふ」→「う」
                                                      (異)『浅黄空』『自筆本』下五「日和笠」

 

正月

    正月の子供に成て見たき哉          西紀書込   寛中
                                                             (出)『樗堂俳諧集』前書き「即興」
    正月やよ所に咲ても梅の花          文化句帖   化1
    正月のけしきになるや泥に雪        文化句帖   化2
    鳥なくや野老畳もお正月            文化句帖   化2    「老」→「郎」
    長閑しや梅はなく[と]もお正月      文化句帖   化3
    亀の身の正月も立日也けり          文化句帖   化4
    正月[や]猫の塚にも梅の花          文化句帖   化5
    正月や村の小すみの梅の花          化五六句記 化5
    古羽織長の正月も過にけり          文化句帖   化5
    正月がへる夜 〜 の霞かな          古今綾嚢   化6
    正月は迹の祭りや春の風            化五六句記 化6
    正月の町にするとや雪がふる        七番日記   化8    (出)『我春集』
    正月や外はか程の御月夜            七番日記   化8
    正月や奴に髭のなささうに          七番日記   化8
    正月も廿日過けりはをり客          七番日記   化9    「を」→「お」
    正月や梅のかはりの大吹雪          七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』
    よ所並の正月もせぬしだら哉        七番日記   化10
                         (異)『志多良』『終焉記』上五「人並の」、『句稿消息』上五「君が代の」
    正月や辻の仏も赤頭巾              七番日記   化11
    正月やゑたの玄関も梅の花          七番日記   政1
    正月や夜は夜とて梅の月            七番日記   政1
                                            (出)『おらが春』(異)『発句鈔追加』下五「梅の花」
    正月や貸下駄並ぶ日陰坂            八番日記   政2
    北国や家に雪なきお正月            八番日記   政3    (異)同日記(政3)上五「たのもしや」
    初雨や北国本のお正月              八番日記   政3    (出)『浅黄空』『自筆本』
    道ばたの土めづらしやお正月        八番日記   政3
    正月が二つありとや浮寝鳥          八番日記   政4
            (出)『浅黄空』(異)『自筆本』『希杖本』上五「正月の」、書簡 中七「二つあるとや」
    正月の二つもなまけ始かな          八番日記   政4  (異)『浅黄空』『自筆本』中七「二つは」
    後のゝは正月ぞともいはぬ也        文政句帖   政5
    正月も二つは人のあきる也          文政句帖   政5
    二つあれば又三つほしやお正月      文政句帖   政5
    二つでもつかひではなしお正月      文政句帖   政5  (異)同句帖(政5)中七「欲には足らず」
    正月の二つふたつとなまけけり      だん袋     政6    (出)『発句鈔追加』
    正月や店をかざれる番太郎          文政句帖   政6
    正月や目につく下司の一寸戸        文政句帖   政7    (出)『浅黄空』『自筆本』
        閏のありけるとし
    正月が二日有ても皺手哉            遺稿
    正月や現金酒の通ひ帳              浅黄空             (出)『自筆本』
    猫塚[に]正月させるごまめ哉        浅黄空             (出)『自筆本』

 

今朝の春

        寛政五年元日 肥後八代正教寺にありて
    花じやぞよ我もけさから卅九        浅黄空     寛5    「じ」→「ぢ」(出)『自筆本』
   『俳諧寺抄録』(異)真蹟 上五「花じやもの」『七番日記』(化10)上五下五「花じやもの・・・廿九」
    老が身の値ぶみをさるゝけさの春    七番日記   化7
    けさの春四十九じやもの是も花      七番日記   化8    「じ」→「ぢ」
    けさ程やちさい霞も春じやとて      七番日記   化8    「じ」→「ぢ」
    口べたの東烏もけさの春            七番日記   化9    (出)『浅黄空』『自筆本』
    みどり子や御箸いたゞくけさの春    七番日記   化9
    骨つぽい柴のけぶるをけさの春      七番日記   化11
                                     (類)『七番日記』(化10)中七下五「柴のけぶりをけさの花」
    影ぼしもまめ息才でけさの春        七番日記   化14    「才」→「災」
   (出)『浅黄空』『自筆本』(異)『俳諧寺抄録』上五「影法師と」『発句鈔追加』下五「御慶かな」
        二つ子にいふ
    這へ笑へ二つになるぞけさからは    七番日記   政1
     (出)『おらが春』『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』(異)『発句鈔追加』下五「けふからは」
    鶯のいな鳴やうも今朝の春          八番日記   政2    (出)『嘉永版』
    弥陀仏をたのみに明て今朝の春      真蹟       政3
    けさの春別な村でもなかりけり      八番日記   政4
    先以別条はなしけさの春            文政句帖   政5
    小便もうかとはならずけさの春      文政句帖   政6
    散雪も行義正しやけさの春          文政句帖   政6    「義」→「儀」
                                                         (異)同句帖(政7)上五「散雪の」
    行灯のかたつぴらよりけさの春      発句鈔追加        (異)『文政句帖』(政8)下五「明の春」
    草の戸やいづち支舞の今朝の春      発句鈔追加
    けさ春と掃くまねしたりひとり坊    発句鈔追加
        四十年ぶりにて古郷に入
    ふしぎ也生れた家でけさの春        浅黄空
       (出)『俳諧寺抄録』(異)『自筆本』前書き「五十年ぶりで古郷に入」真蹟 下五「けふの春」

 

明の春(今日の春)

    乞食も護摩酢酌むらん今日[の]春    西国紀行   寛7
    あばら家や其身其まゝ明の春        八番日記   政2    (異)『嘉永版』上五「あばら家の」
    屋根 〜 の窓や一度に明の春        八番日記   政4
    武士町やしんかんとして明の春      文政句帳   政6
    行灯の片つぴらより明の春          文政句帳   政8    (異)『発句鈔追加』下五「けさの春」
    善光寺やかけ念仏で明の春          文政句帳   政8
        五十年ぶりで古郷に入
    ふしぎ也生れた家でけふの春        自筆本
      (出)真蹟(異)『浅黄空』前書き「四十年ぶりにて古郷に入」『俳諧寺抄録』下五「けさの春」

 

御代の春

    我宿もうたゝあるさまや御代[の]春  文化句帖   化3
    さかゆきに神の守らん御代の春      文化句帖   化4
    日の本や金も子をうむ御代の春      文政句帖   政7
                                      (出)同句帖(政8)(異)『自筆本』中七「金が子をうむ」

 

君が春

    へら鷺も万才聞か君が春            文化句帖   化3
    拙者義も異義なく候君が春          文政句帖   政5    「義」→「儀」

 

玉の春

    こけるなよ土こんにやくも玉の春    八番日記   政4
    青空にきず一つなし玉の春          文政句帖   政7    (出)『俳諧寺抄録』『自筆本』
                            (異)『発句集続篇』上五「大空に」、『浅黄空』中七「くも一つなし」

 

花の春

    象潟もけふは恨まず花の春          千題集     寛1
    頭巾とる門はどれ 〜 花の春        享和句帖   享3
    身じろぎのならぬ家さへ花の春      享和句帖   享3
    又土になりそこなうて花の春        文化句帖   化1
    君が世やよ所の膳にて花の春        文化句帖   化3
    薮並や貧乏草も花の春              文化句帖   化5
    朝笑いくらに買か花の春            化五六句記 化6
    家なしの身に成て見る花[の]春      化五六句記 化6
    大江戸[や]芸なし猿も花の春        七番日記   化7
    下京や闇いうちから花の春          七番日記   化7
    身一つも同じ世話也花の春          七番日記   化7
    我庵や菜の二葉より花の春          七番日記   化7
    おのれやれ今や五十の花の春        七番日記   化9    (出)『株番』
    五十年あるも不思儀ぞ花の春        七番日記   化9    「儀」→「議」
    すりこ木のやうな歯茎も花の春      七番日記   化10
    大雪の我家なればぞ花の春          七番日記   化12
    こんな身も拾ふ神ありて花[の]春    七番日記   化13
                          (異)『自筆本』上五「塵の身も」、真蹟 上五中七「塵の身を拾ふ神あり」
        吹風の上にやどれる境界もけさは人並に餅を祝
    ちりの身のふはり 〜 も花の春      句稿消息   化13
                        (出)『自筆本』(異)『浅黄空』『俳諧寺抄録』真蹟 中七「ふはり 〜 と」
    何なくと生れた家ぞ花の春          七番日記   化13
    ちり 〜 に居てもする也花の春      七番日記   化14
    爺が世や枯木も雪の花の春          文政句帖   政8

 

松の春

    門口や自然生なる松の春            八番日記   政4
    とてもならみろくの御代を松の春    自筆本             (出)真蹟

 

江戸の春

    引窓の一度にあくや江戸の春        文政句帖   政5
    家根の窓一度に引や江戸の春        文政句帖   政5

 

旅の春(初旅寝)

    雑煮いはふ吾も物かは旅の春        寛政句帖   寛6
    出て見れば我のみならず初旅寝      西国紀行   寛7
    嚔は我がうはさか旅の春            文政句帖   政5
    むさしのや大名衆も旅の春          文政句帖   政8

 

庵の春(窓の春)

    鶯のくる影ぼしも窓の春            八番日記   政3
        山家
    鶯のぐな鳥さへも窓の春            文政句帖   政5    (異)『希杖本』中七「ぐな鳥影も」
        草庵二句
    庵の春寝そべる程は霞なり          嘉永版
                                 (出)『発句題叢』『希杖本』 (異)『発句鈔追加』下五「霞けり」

 

おらが春(我が春)

    わが春は竹一本に柳哉              文化句帖   化1
    わが春やたどん一つに小菜一把      文化句帖   化2
    我春も上々吉よ梅の花              七番日記   化8    (出)『自筆本』前書き「はつ春」
                         (異)『随斎筆紀』『発句題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』中七「上々吉ぞ」
    わが春も上々吉よけさの空          七番日記   化11
      (前文省略)
    目出度さもちう位也おらが春        おらが春   政2    (出)『発句鈔追加』

 

初春

    しづけしや春を三島のほかけ舟      西国紀行   寛7
    なべ一つ柳一本も是も春            文化句帖   化1
    欠鍋も旭さす也是も春              文化句帖   化2
    はつ春も月夜となるや顔の皺        文化句帖   化2
         (異)『発句鈔追加』『発句題叢』『希杖本』『発句類題集』中七下五「月夜になるや人の皺」
    初春も月夜もよ所に伏家哉          文化句帖   化2
    はつ春やけぶり立るも世間むき      文化句帖   化4    (出)『七番日記』
    我門や芸なし鳩も春を鳴            文化句帖   化4
    貧乏草愛たき春に逢にけり          文化句帖   化5
    家なしの此身も春に逢ふ日哉        化五六句記 化6    (出)『文化三―八年句日記写』
    ふがいない身となおぼしそ人は春    七番日記   化10    「ふがい」→「ふがひ」
    世[の]中の梅よ柳よ人は春          志多良     化10
    男風今や吹らん島の春              七番日記   化11    (出)『浅黄空』『自筆本』真蹟
    狼も上下で出よ戌の春              七番日記   化12    「上下」→「裃」
    初春のけ形りは我[と]雀かな        八番日記   政4    (出)『自筆本』『発句鈔追加』
    一面にろくな春也門の雪            文政句帖   政5
    大雪のど[こ]がどこ迄ろくな春      文政句帖   政5
    小ばくちは蚊の呪や里の春          文政句帖   政8
        富士の画に
    初春や千代のためしに立給ふ        遺稿               (出)『文政版』

 

春立つ

    春立といふばかりでも草木哉        享和句帖   享3
    春立や四十三年人の飯              文化句帖   化1
        両国橋上看紫曙
    春立や見古したれど筑波山          文化句帖   化1
           (出)『七番日記』『発句集続篇』前書き「窓前」、『発句題叢』『発句鈔追加』『希杖本』
    春立やよしのはおろか人の顔        文化句帖   化1
    ちぐはぐの下駄から春は立にけり    文化句帖   化2
    春立や草さへ持たぬ門に迄          文化句帖   化2
        不二賛
    けぶりさへ千代[の]ためしや春の立  文化句帖   化4
                    (類)真蹟 前書き「不二山」、『発句鈔追加』「我国はけぶりも千代のためし哉」
    沙汰なしに春は立けり草屋敷        文化句帖   化4
    春立やかゝる小薮もうぐひすと      文化句帖   化4
    春立といふより見ゆる壁の穴        文化句帖   化5
    春立と狙も袖口見ゆる也            文化句帖   化5
    春立や我家の空もなつかしき        文化句帖   化5
    門 〜 の下駄の泥より春立ぬ        七番日記   化7
    春立と申もいかゞ上野山            七番日記   化7    (出)『嘉永版』
    春立や夢に見てさへ小松原          七番日記   化8
    春立や菰もかぶらず五十年          七番日記   化9    (異)同日記(化9)中七「先人間の」
    春立やみろく十年辰の年            七番日記   化9
    春立や午にも馬にもふまれずに      七番日記   化14    「午」→「牛」
    足元に鳥が立也春も立              七番日記   政1
    春立や弥太郎改一茶坊              七番日記   政1
                                                   (異)『八番日記』(政2)下五「はいかい寺」
    春もはや立ぞ一ひ二ふ三ケの月      七番日記   政1
    春たちて磯菜も千代のためし哉      八番日記   政3    (異)『梅塵八番』中七「磯菜の千代の」
    春立や二軒つなぎの片住居          八番日記   政3
    春立や庵の鬼門の一り塚            八番日記   政4
                                         (出)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『発句鈔追加』
    春立や切口上の門雀                八番日記   政4    (出)『発句鈔追加』
    ろくな[春]立にけらしな門の雪      文政句帖   政5
    春立や愚の上に又愚にかへる        文政句帖   政6
                                         (出)『文政版』遺稿(異)『自筆本』中七「愚の上を又」
        蓬来
    春立や米の山なるひとつ松          文政句帖   政7    「来」→「莱」
    はる立や門の雀もまめなかほ        発句鈔追加

 

春来る

    葎家も春になりけり夜[の]雨        文化句帖   化2
    うつくしき春に成しけり夜の雨      七番日記   化2
    あつさりと春は来にけり浅黄空      七番日記   化11
                           (出)『浅黄空』『自筆本』『俳諧寺抄録』『発句鈔追加』『希杖本』真蹟
    御傘めす月から春は来たりけり      七番日記   化11
    湯けぶりも月夜の春となりにけり    七番日記   化11
    ひへ餅にあんきな春が来たりけり    七番日記   政1    「へ」→「え」
    今春が来たよふす也たばこ盆        八番日記   政2    「よふ」→「やう」
    さればこそろくな春なれ門の雪      文政句帖   政5
    まんろくの春こそ来れ門の雪        文政句帖   政5
    まんろくの春と成りけり門の雪      文政句帖   政5
    ろくな春とはなりけり門の雪        文政句帖   政5
    草の戸やどの穴からも春の来る      発句集続篇
        門松立ず煤はかず
    春来ても別条のなき草家かな        真蹟

 

小正月

    召仕新しき哉小正月                西国紀行   寛7

 

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天文

 

初日(初日の出)

    鶏鐘の鳴りしづまつて初日哉        辛亥遍覧   寛3
    松竹の行合の間より初日哉          寛政句帖   寛4
    中々にかざらぬ松の初日哉          其日庵歳旦 享1
    首上て亀も待たる初日哉            享和句帖   享3
        唐詩伝心借
    我々が顔も初日や御代の松          享和句帖   享3    (出)『文化句帖』
    上段の代の初日哉旅の家            文化句帖   化1
    上段の代の先あふ初日哉            文化句帖   化1
    みいらともなりたがりてやはつ日の出七番日記   化9
    朝雫皺手につたふ初日哉            七番日記   政1    (出)『発句集続篇』
    内中にてら 〜 鍬の初日哉          七番日記   政1
                                       (異)『浅黄空』上五「家内中」、『自筆本』上五「家内に」
    隠家は昼時分さす初日哉            七番日記   政1
    はつ旭鍬も拝れ給ひけり            七番日記   政1
    土蔵からすじかいにさすはつ日哉    八番日記   政2「すじかい」→「すぢかひ」(出)『嘉永版』
    ぬかるみに〓つつ張てはつ日哉      八番日記   政2    (〓は竹冠に「工」「卩」)
                                                             (異)『梅塵八番』中七「杖突張て」
    心から大きく見ゆる初日哉          八番日記   政3    (異)『梅塵八番』上五「心がら」
    神とおもふかたより三輪の日の出哉  遺稿
        初日
    よその蔵からすじかひに初日哉      浅黄空             「じ」→「ぢ」(出)『自筆本』

 

初空

    壁の穴や我初空もうつくしき        七番日記   化8    (異)『我春集』上五「節穴や」
    初空へさし出す獅子の首哉          七番日記   化8    (異)『我春集』『発句題叢』『浅黄空』
                                 『嘉永版』『発句鈔追加』『希杖本』『しきなみ』下五「あたま哉」
    初空を拵へているけぶり哉          七番日記   化8    「い」→「ゐ」
                                                               (異)『我春集』中七「今拵へる」
    初空にならんとすらん茶のけぶり    七番日記   化8
    初空の色もさめけり人の顔          七番日記   化8
    初空のはづれの村も寒いげな        七番日記   化8
    初空のはな 〜 し[さ]を庵哉        七番日記   化8
    初空のもやうに立るけぶり哉        七番日記   化8
                                                 (異)『自筆本』中七下五「もやうに立や茶の煙」
    初空のはゞかり乍茶のけぶり        七番日記   化8
    初空や緑の色の直さむる            七番日記   化8
    うす墨の夕ながらもはつ空ぞ        七番日記   化11
    うす墨のやうな色でも初空ぞ        七番日記   化11
    塀合や三尺ばかりはつ空[ぞ]        七番日記   化11
    松間や少ありてもはつ空ぞ          七番日記   化11
    松並や木[の]間 〜 のはつ空ぞ      七番日記   化11
    誂の通り浅黄のはつ空ぞ            七番日記   化14    (出)『自筆本』
    草枕雨のない日が初空ぞ            七番日記   化14
    初空をはやしこそすれ雀迄          七番日記   化14
    初空を夜着の袖から見たりけり      七番日記   化14
    はつ空にはやきず付るけぶり哉      七番日記   化14    (出)『発句集続篇』
    はつ空の祝義や雪のちら 〜 と      七番日記   化14    「義」→「儀」
    初空の行留り也上総山              七番日記   化14
    西方のはつ空拝む法師哉            八番日記   政2
    初空やさい銭投る握し先            八番日記   政2
        旅に降られて
    雨のない日が初空ぞ翌も旅          浅黄空             (出)『自筆本』真蹟
    はつ空を拵へる也茶のけぶり        浅黄空

 

御降り

    御降や草の庵ももりはじめ          八番日記   政2
    大雨や元日早々に降り給ふ          八番日記   政3    (異)『梅塵八番』中七「春早 〜 と」
    御降りの祝義に雪もちらり哉        八番日記   政3    「義」→「儀」
    ござつたぞ正月早々春の雨          八番日記   政3
                           (異)同日記(政3)上五「ござりけり」、『梅塵八番』中七「正月早く」
    まんべんに御降受る小家哉          八番日記   政3
    御降りをたんといたゞく屑屋哉      希杖本             (出)『発句集続篇』前書き「元日雨」

 

阿闍梨荒れ(阿闍梨帰る)

    大吹雪今やあざりの御帰か          七番日記   化11

初霞

    我笠ぞ雁は逃るな初霞              化五六句記 化6

 

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人事

 

恵方(明の方、年徳神、恵方棚、年棚、年神、恵方詣)

    吾恵方詣は正月ざくら哉            西国紀行   寛7
    寝勝手に梅の咲けり我恵方          文化句帖   化5
    あばら家も年徳神の御宿哉          七番日記   化7
    よは足を又年神の御せは哉          七番日記   化11    「よは」→「よわ」「せは」→「せわ」
    年神や又も御世話に成りまする      七番日記   化12
    うらの戸や北より三が明の方        七番日記   化14
    足の向く村が我らが恵方哉          七番日記   政1    (異)同日記(政1)中七「村を我らが」
    鶯や折戸半分明の方                七番日記   政1
    大雪や出入の穴も明の方            七番日記   政1
             (異)『八番日記』『発句集続篇』中七「出入の穴を」、『発句集続篇』前書き「在柏原」
    おくさがや恵方に出し杖の穴        七番日記   政1    (異)同日記(政1)上五「畠縁や」
                               『自筆本』上五「大原や」、『浅黄空』上五中七「大原や兄方に向し」
    とし棚の灯に鍬の後光哉            七番日記   政1
    とし棚や闇い方より福鼠            七番日記   政1
    吾庵や曲たなりに恵方棚            七番日記   政1
    雪降や夜盗も鼻を明の方            八番日記   政2
    すゝけても年徳神の御宿哉          八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「煤びても」
    年神に御任せ申五体哉              八番日記   政4
    とぶ工夫猫のしてけり恵方棚        八番日記   政4    (異)『梅塵八番』中七「猫がしにけり」
    呑連の常恵方也上かん屋            八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「春連の」
    こね土の百両包や兄方棚            文政句帖   政6  (出)同句帖(政7)『浅黄空』『自筆本』
    紙張りの狗も口を明の方            文政句帖   政7    (出)『浅黄空』『自筆本』
    下駄はいて畠歩くや兄方詣          文政句帖   政7
    線香を雪につゝさす兄方哉          文政句帖   政7    (出)『浅黄空』『自筆本』
    とし棚やこんな家にも式作法        文政句帖   政8
    とし神やことしも御世話下さるゝ    自筆本             (異)同句集 下五「たてまつる」

 

御忌参り

    御忌参りするも足品手品哉          八番日記   政4

 

畚下し

    それそこの梅も頼むぞ畚おろし      文化句帖   化5
                                                 (異)『七番日記』(政1)中七「梅を[も]添よ」
    引下す畚の中より雀哉              七番日記   政1
    梅の花まけにこぼすや畚下し        希杖本
    三日月や畚引上る木末から          希杖本

 

人日(七草粥、七草爪)

    垢瓜や薺の前もはづかしき          七番日記   化10    「瓜」→「爪」
                      (出)『志多良』『句稿消息』『浅黄空』『自筆本』『文政版』『希杖本』遺稿
    人の日や改がゆし庵のかゆ          七番日記   化10    「がゆし」→「がたし」
        人日本堂
    人の日や本堂いづる汗けぶり        七番日記   化12 
                                       (異)『発句集続篇』前書き「善光寺」中七「御堂出て来る」
    正月は青菜のかゆも祝かな          文政句帖   政6

 

斎日

    梅咲や地獄の門も休み札            八番日記   政3
    けふこそは地獄の衆もお正月        八番日記   政3
     (出)『自筆本』(異)『希杖本』上五「けふの日や」(類)『七番日記』(化9)下五「花見哉」
    斎日もさばの地獄はいたりにけり    八番日記   政3   (異)『自筆本』下五「鳴りにけり」
    斎日は踏るゝ臼も休み哉            八番日記   政4
    斎日やぞめき出されて上野迄        希杖本

 

百足小判

    同じ世をへら 〜 百疋小ばん哉      七番日記   化9    「疋」→「足」
                                          (異)『株番』前書き「猫・小判」中七「へろ 〜 百疋」

 

店おろし

    三寸の胸ですむ也店おろし          文政句帖   政6
    不士山もかぞへ込けり店おろし      文政句帖   政6
    物陰に笑ふ鼠や店おろし            文政句帖   政6

 

粥杖

    粥杖に撰らるゝ朶か小しほ山        文化句帖   化1

 

どんど(飾焼く、左義長)

    左義長や夜も天筆和合楽            七番日記   化11
    ちさいのはおれが在所のどんど哉    七番日記   化11
                                         (異)同日記(化13)上五中七「ちさいのがおらが在所の」
    はやされよ庵の飾のけぶり様        七番日記   化11
    山添やはやして[も]なきどんどやき  七番日記   化11
    世[の]中はどんどゝ直るどんど哉    七番日記   化11    (異)『発句集続篇』上五「世の中が」
    小かざりや焼るゝ夜にはやさるゝ    七番日記   化13    (出)『句稿消息』
    御祝義に雪も降也どんどやき        七番日記   化13    「義」→「儀」
    下手もへはおれがかざりぞ 〜 よ    七番日記   化13    「へ」→「え」(出)『句稿消息』
    左義長に月は上らせ給ひけり        七番日記   政1
    左義長や其上月の十五日            七番日記   政1
    どんど焼どんどゝ雪の降りにけり    七番日記   政1

 

藪入り

    ちぎりきな藪入り茶屋を知せ文      寛政句帖   寛5
    藪入のわざと暮れしや草の月        享和句帖   享3
            (出)『七番日記』『版本題叢』『嘉永版』『希杖本』『発句類題集』『発句集続篇』遺稿
                         (異)『発句鈔追加』中七「わざとくらしや」、『発句題叢』下五「二月月」
    やぶ入の先に立けりしきみ桶        文化句帖   化1
    やぶ入の残りおほがる上野哉        文化句帖   化1
    やぶ入やきのふ過たる山神楽        文化句帖   化1    (異)遺稿 下五「山祭り」
    やぶ入や先つゝがなき墓の松        文化句帖   化1
    藪入よ君が代諷へ麦の雨            文化句帖   化1
    やぶ入の顔にもつけよ梅の花        文化句帖   化5    (異)『流行七部集』下五「もゝの花」
    やぶ入のかくしかねたる白髪哉      文化句帖   化5
    藪入が柿の渋さをかくしけり        化五六句記 化6
    藪入や桐の育もつい 〜 と          化五六句記 化6
    大原や後れ藪入おくれ梅            七番日記   化7
    藪入や墓の松風うしろ吹            七番日記   化7    (出)『文政句帖』『文政版』『はなの』
    藪入が供を連たる都哉              七番日記   化10
       (出)『志多良』『希杖本』(異)『句稿消息』上五「藪入も」、『発句集続篇』上五「藪入の」
    藪入の大輿の通りけり              七番日記   化10
    藪入の供して行や大男              七番日記   化10    (出)『句稿消息』
    藪入やうらから拝む亦打山          七番日記   化10
                                              (類)同日記(化11)上五下五「出代や・・・日枝の山」
    淋し[さ]や逢坂過る藪入駕          七番日記   化14
    藪入が必立や思案橋                七番日記   化14
    藪入が藪入の駕かきにけり          七番日記   化14
    藪入の片はなもつや奉加橋          七番日記   化14
    藪入や犬も見送るかすむ迄          七番日記   化14
    藪入や涙先立人の親                七番日記   化14
    藪入や二人して見る亦打山          七番日記   化14
    藪入や三組一つに成田道            七番日記   化14
                         (出)『浅黄空』『自筆本』(異)『嘉永版』『千題集』中七「三組一所に」
    藪入や連に別て櫛仕廻ふ            文政句帖   政8
    藪入りや二人並んで思案橋          浅黄空             (出)『自筆本』

 

子の日(小松引き)

    榎迄引抜れたる子[の]日哉          文化句帖   化1
    月見よと引残されし小松哉          文化句帖   化1
    相馬原子[の]日の時の松ならん      文化句帖   化5
    姫小松祝義ばかりに日が伸る        七番日記   化13    「義」→「儀」
    烏帽子きてどさり寝ころぶ子[の]日哉七番日記   化14
    太刀佩て芝に寝ころぶ子[の]日哉    七番日記   化14
         鶴の賛
    人の引小松の千代やさみすらん      八番日記   政3    (出)『自筆本』『発句鈔追加』
                                                         (異)『嘉永版』中七「小まつに千代や」
                                 『発句集続篇』前書き「鶴の絵に」上五中七「小松曳人の千代をや」
    小松引人とて人のおがむ也          八番日記   政4    「お」→「を」
               (出)『自筆本』『文政版』遺稿(異)『梅塵八番』中七下五「人とて人をながむかな」
    袴着て芝にごろりと子の日哉        自筆本             (出)『文政版』遺稿

 

蓬莱

    蓬莱に南無 〜 といふ童哉          七番日記   化8    (異)『おらが春』『発句題叢』
                             『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』中七下五「なんむ 〜 といふ子哉」
                                   『我春集』『版本題叢』『嘉永版』『発句集続篇』下五「子供哉」
    蓬莱に夜が明込ぞ角田川            七番日記   化8
    蓬莱の下から出たる旭かな          七番日記   化8
    蓬莱や只三文の御代の松            七番日記   化8 (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』遺稿
    蓬莱や先昌陸が御代の松            七番日記   化8
    蓬莱を引とらまへて泣子哉          七番日記   政1
    蓬莱の天窓をしやぶる幼哉          七番日記   政1

 

喰積み

    喰つみも小隅の春と成にけり        文化句帖   化5

 

門松(松飾り)

    門松やひとりし聞は夜の雨          享和二句記 享2
    門の松おろしや夷の魂消べし        文化句帖   化1
    住の江ものべつけにして門の松      文化句帖   化1
    ちる雪に立合せけり門の松          文化句帖   化1
    門松の陰にはづるゝ我家哉          文化句帖   化5
    折てさす是も門松にて候            七番日記   化9
       (出)『発句題叢』『希杖本』(異)『版本題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』中七「それも門松」
    小一尺それも門松にて候            七番日記   化9
    わか草よわか松さまよ門の松        七番日記   化11
    犬の子やかくれんぼする門[の]松    七番日記   政1
    から崎や門松からも夜の雨          七番日記   政1
    君が世や主なし塚もかざり松        七番日記   政1
    独寝やはや門松も夜の雨            七番日記   政1
    より殻を貰てし[て]も門の松        七番日記   政1
    主ありや野雪隠にも門の松          八番日記   政4
    門松や本町すじの夜の雨            文政句帖   政5    「じ」→「ぢ」
    雑巾のほしどころ也門の松          文政句帖   政6
    敷石や欲でかためし門の松          文政句帖   政7
    かま獅子が腮ではらひぬ門の松      文政版

 

飾り(輪飾り、注連飾り)

  赤馬の口はとゞかずかざり縄          七番日記   政1
  赤馬や口のとゞかぬかざり縄          七番日記   政1
  輪飾や辻の仏の御首へ                七番日記   政1
  御地蔵の御首にかける飾り哉          八番日記   政2(類)『梅塵八番』(政3)下五「ちまき哉」
  二[つ]三[つ]藪にかけるやあまり七五三八番日記   政2
  又ことし七五三かけ[る]也顔の皺      八番日記   政2  (異)『梅塵八番』中七「七五三潜るなり」
  あばら家や曲た形に門飾              文政句帖   政8
  つんとしてかざりもせ[ぬ]やでかい家  文政句帖   政8
  吹ばとぶ家の世並や〆かざり          文政句帖   政8
  皺顔のかくれやはせん七五三飾        希杖本
  ひよ[い] 〜 と藪にかけるや余り注連  希杖本

 

福茶

    福豆も福茶も只の一人哉            七番日記   化10
    お袋の福茶をくめる指南哉          梅塵八番   政3
    正月のくせに成たる福茶哉          文政句帖   政8
    外からは梅がとび込福茶哉          文政句帖   政8    (異)書簡 上五「外ならば」

 

福わら

    福わらや雀が踊る鳶がまふ          七番日記   化11
    福わらや十ばかりなる供奴          七番日記   化11

 

水祝ひ

    逃しなや水祝るゝ五十聟            七番日記   政1 (出)『浅黄空』『自筆本』『文政版』遺稿
    用捨なく水祝ひけり五十聟          七番日記   政1    「用捨」→「容赦」

 

年始(年始帳、年始状、年頭、年初、年礼、御慶、礼者、門礼)

    門の春雀が先へ御慶哉              七番日記   化10    (出)『発句鈔追加』
    大御代やからたち垣も御慶帳        七番日記   政1
    かつしかや川むかふから御慶いふ    七番日記   政1
    ざぶ 〜 と泥わらんじの御慶哉      七番日記   政1    「じ」→「ぢ」
                                           (出)『自筆本』(異)『浅黄空』中七「泥わらんじで」
    武家丁やからたち藪も年始帳        七番日記   政1
        巣鴨
    楽な世やからたち藪の年始帳        七番日記   政1
    今しがた来た年玉で御慶哉          八番日記   政2
    年頭に孫の笑をみやげ哉            八番日記   政2
         (異)『梅塵八番』上五「年頭の」(類)『八番日記』(政2)上五中七「何よりも孫の笑が」
    白髪の天窓をふり立て御慶哉        八番日記   政2
   (異)『希杖本』上五中七「白髪天窓ふり立 〜 」、『梅塵八番』『発句鈔追加』上五「白髪天窓を」
    深川や川向にて御慶御慶いふ        発句題叢   政3    (出)『浅黄空』『自筆本』『希杖本』
        王子
    御年初を申入けり狐穴              八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「年始礼」
    御年初の返事をするや二階から      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「御年始の
    堅人や一山越てから御慶            八番日記   政4
               (異)『浅黄空』中七下五「山越して来ていふ御慶」、『自筆本』中七「山越して来て」
    門礼や片側づゝは草履道            八番日記   政4
    門礼や猫にとし玉打つける          八番日記   政4
    上下で下たぶらさげて御慶哉        八番日記   政4
    下駄持と二役するや年初道          八番日記   政4    (異)『梅塵八番』下五「年始道」
    米直段許り見る也年初状            八番日記   政4    「直」→「値」
                                                         (異)『梅塵八番』下五「年始帳」
    武士やいひわけ云てから御慶        八番日記   政4
    年玉を貰ひに出る御慶かな          八番日記   政4
    年礼や下駄道あちは草履道          八番日記   政4
    途中にて取替にする御慶哉          八番日記   政4    (出)『浅黄空』『自筆本』
    武士村やからたち垣の年始状        八番日記   政4
    坊主天窓をふり立て御慶哉          八番日記   政4    (出)『だん袋』『浅黄空』『自筆本』
    も一つ狐の穴へ御慶かな            八番日記   政4
    画暦のはんじくらする礼者哉        文政句帖   政6
    影法師に御慶を[申す]わらじ哉      文政句帖   政7    「じ」→「ぢ」
    むく起[の]小便ながら御慶哉        文政句帖   政7
    親里の山へ向て御慶哉              文政句帖   政8    (出)『発句鈔追加』
    供部屋がさはぎ勝也年始酒          文政句帖   政8    「は」→「わ」
    百旦那ころりころ 〜 御慶哉        文政句帖   政8
    両方に小便しながら御慶哉          文政句帖   政8
        一人旅
    影法師もまめ息才で御慶かな        発句鈔追加         「才」→「災」
                                                     (類)『七番日記』(化14)下五「けさの春」
    しんぼしてわらは笑ぬ御慶哉        浅黄空             (出)『自筆本』
    つぶれ家の其身其まゝ御慶哉        希杖本
        武家町
    年礼やからたち垣に名前札          発句集続篇

 

年玉

    年も玉御とし玉ぞまめな顔          七番日記   化11
    我庵やけさのとし玉とりに来る      七番日記   化11    (出)『句稿消息』『発句題叢』
     『希杖本』『嘉永版』『発句鈔追加』『発句類題集』(異)『浅黄空』『自筆本』上五「草の戸や」
    かくれ家や猫[に]も一つ御年玉      八番日記   政2
    番丁や窓から投る御年玉            八番日記   政2
    一番のとし玉ぞ其豆な顔            八番日記   政4
    江戸衆や庵の犬にも御年玉          八番日記   政4
    年玉を配る世わなき庵哉            八番日記   政4
    とし玉を二人前とる小僧哉          八番日記   政4
    とし玉に見せ申也豆な顔            八番日記   政4
    とし玉の上にも猫のぐる寝哉        八番日記   政4
    とし玉や留主の窓からほふりこみ    八番日記   政4    「ほ」→「は」
    とし玉を天窓におくやちいさい子    文政句帖   政6    「ちいさい」→「ちひさい」
    とし玉のさいそくに来る孫子哉      文政句帖   政6
                                 (出)『浅黄空』『自筆本』(異)同句帖(政7)下五「小わら哉」
    年玉を犬にも投げる御寺哉          文政句帖   政7
    年玉をおくやいなりの穴の口        文政句帖   政7
    年玉をおとして行くや留主の家      文政句帖   政7
    [年玉]を見せに行く也孫の顔        政七草稿   政7
    年玉やかたり猫に[ぞ]打つける      文政句帖   政7
    [年玉]やかたる 〜 欲の山          政七草稿   政7
    年玉や猫の頭へすでの事            文政句帖   政7
    [年玉]や札張り替へてもとへ        政七草稿   政7
    年玉や懐の子も手ゝをして          文政句帖   政7    (出)同句帖(政8)
    ばか猫や年玉入れの箕に眠る        文政句帖   政7
    巡り 〜 ととる年玉扇哉            文政句帖   政7
                                               (異)『自筆本』上五中七「廻り 〜 てもどる年玉」
    いく廻り目だぞとし玉扇又もどる    浅黄空
    こりよそけへいつけて置けよお年玉  真蹟
    とし玉茶どこを廻て又もどる        浅黄空

 

筆始め(吉書、吉書始め)

    書賃のみかんみい 〜 吉書哉        八番日記   政2    (出)『希杖本』『発句集続篇』
    小坊主が棒を引ても吉書始          八番日記   政2    (異)『梅塵八番』下五「吉書哉」
    つい 〜 と棒を引ても吉書哉        八番日記   政2
                      (異)同日記(政4)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』真蹟 上五「子宝が」
    わんぱくや先掌に筆はじめ          八番日記   政2    (異)『希杖本』中七「先試みに」
    子宝や棒をひくのも吉書始          発句鈔追加

 

初暦

    すりこ木と並べて張るやはつ暦      文政句帖   政6
    どち向て酒を呑ぞよはつ暦          文政句帖   政6
    よ所のゝでらちを明けりはつ暦      文政句帖   政6    (出)『浅黄空』『自筆本』
    入用のおつ張るはつ暦              政七草稿   政7
    砂壁や針で書てもはつ暦            文政句帖   政7
    張壁や打つけ書のはつ暦            文政句帖   政7    (異)『自筆本』上五「荒壁や」
    古壁や巨燵むかふのはつ暦          文政句帖   政7    「巨」→「炬」
    古壁や釘で書たるはつ暦            浅黄空

 

初夢

    初夢に古郷を見て涙哉              寛政句帖   寛6
    正夢や春早々の貧乏神              七番日記   化8
    何のその上初夢もなく烏            八番日記   政4
    初夢の目出度やけして夕けぶり      八番日記   政4
    初夢を拵へて売る夜寒哉            文政句帖   政7    (異)『発句集続篇』下五「会所かな」
    初夢に猫も不二見る寝やう哉        文政句帖   政7    (出)『文政版』遺稿
    初夢の不二の山売都哉              文政句帖   政7
        寄下女恋
    初夢も御座に出されぬ寝言哉        文政句帖   政7
                                        (異)同句帖(政8)上五中七「はつ夢の御座へ出されぬ」

 

初笑ひ

    片乳を握りながらやはつ笑ひ        文政句帖   政6    (出)『浅黄空』『自筆本』
    乞食やもらひながらのはつ笑ひ      文政句帖   政6

 

稲積む

    一はなに猫がいねつむ座敷哉        文政句帖   政6
                                                (出)『自筆本』(異)『浅黄空』上五「一番に」

 

諷ひ初め

    鶯が迹をつけゝり諷ひ初            文政句帖   政6
    膝の子も口を明く也はつうたひ      文政句帖   政6

 

弓始め

    一ぱいにはれきる山の弓始          享和句帖   享3

 

若湯(湯始め)

    江戸住は我 〜 敷[も]若湯哉        八番日記   政2
    湯始の注連とらまえて立子哉        希杖本
        去年より銭湯の始れば
    人の世は此山陰も若湯哉            希杖本

 

ふいご始め

    百福の始るふいご始哉              文政句帖   政8

 

罪始め

    浴みして旅のしらみを罪始          寛政句帖   寛5

 

着衣始め

    きそ始山の梟笑ふらん              文化句帖   化5
    釈迦どのにいくつの兄ぞ着そ始      八番日記   政4
                                           (異)『梅塵八番』上五中七「釈迦どのゝいくつの年ぞ」
    雪車引や揃小みのゝ着そ始          文政句帖   政7

 

春着

        無衣
    明ぼのゝ春早々に借着哉            享和句帖   享3

 

若水

        三崎野中の井は遊女柏木がかたみ也
    わか水のよしなき人に汲れけり      文化句帖   化5    (出)『文政版』遺稿
    わか水[や]見たばかりでも角田川    七番日記   化11    (出)『発句集続篇』
        かつしか
    茶けぶりや我わか水も角田川        七番日記   政1
    名代のわか水浴る雀哉              七番日記   政1
        (異)『八番日記』下五「烏かな」、『おらが春』『発句鈔追加』上五下五「名代に・・・烏かな」
    欲どしくわか水つかふ女哉          七番日記   政1
    若水に白髪吹かせて自慢哉          七番日記   政1
    わか水も隣の桶で仕廻けり          七番日記   政1
    わか水や並ぶ雀もまめな顔          七番日記   政1
    若水や先は仏のしきみ桶            七番日記   政1
    庵の井もけさ若水と呼れけり        八番日記   政2
                             (出)『発句鈔追加』(異)『希杖本』中七下五「けさ若水に汲れけり」
    三文が若水あまる庵哉              八番日記   政2
                                                    (異)『希杖本』上五下五「三文の・・・我家哉」
    新桶は同じ水でもわか 〜 し        文政句帖   政5
    石川やわか水といふも一盛          文政句帖   政5
    ちとの間[に]はやわか水でなかりけり文政句帖   政5
    一桶をわか水わか湯わか茶哉        文政句帖   政6
    わか水[や]わらが浮ても福といふ    文政句帖   政6
    小さい子やわか水汲も何番目        文政句帖   政7
    目覚し[に]わか水見るや角田川      文政句帖   政7
    わか水の歯に染[し]のもむかし哉    文政句帖   政7
    わか水や土瓶一つに角田川          文政句帖   政7
    若水やそうとつき込梅の花          『嘉永版』

 

年男

    とし男とし女にもひとり哉          文政句帖   政6    (出)同句帖(政7)

 

手まり(てまり唄)

    手まり唄一ひ二ふ御代の四谷哉      七番日記   政1
    鳴く猫に赤ん目と云手まり哉        八番日記   政3
                                   (異)同日記(政4)『自筆本』『文政版』中七「赤ん目をして」
    柴門やけまり程でも手まり唄        文政句帖   政5
    猫の子にかして遊ばす手まり哉      書簡

 

羽つき

    つく羽を犬が加へて参りけり        七番日記   政1    「加」→「咥」
                                                         (異)同日記(政1)下五「もどりけり」
    つく羽の落る際也三ヶの月          七番日記   政1    (異)同日記(政1)中七「下る際也」
                           『発句鈔追加』中七「下りぎはなり」、『発句集続篇』中七「落る際より」
    つく羽の転びながらに一つかな      七番日記   政1 (異)『発句鈔追加』中七「転びながらも」

 

凧(切れ凧)

    家飛 〜 凧も三つ四つふたつ哉      西国紀行   寛7
    凧青葉を出つ入つ哉                西国紀行   寛7
        浦輪を逍遥して
    遠かたや凧の上ゆくほかけ舟        西国紀行   寛7
    日でり雨凧にかゝると思ふ哉        西国紀行   寛7
    日の暮の山を見かけて凧            享和二句記 享2
    家二つ三つ四つ凧の夕哉            文化句帖   化2
    凧今木母寺は夜に入るぞ            文化句帖   化2
     (出)『七番日記』遺稿(異)『自筆本』中七「はや木母寺は」、『浅黄空』下五「夜に入かゝる」
    山かげや藪のうしろや凧            文化句帖   化2
    けふも 〜 風引かゝる榎哉          文化句帖   化4    「風」→「凧」
    狙引は猿に持せて凧                文化句帖   化4
    機音は竹にかくれて凧              文化句帖   化4
    凧麦もか程の世也けり              七番日記   化7    (異)同日記(化7)中七「麦もケ様な」
    朔日や一文凧も江戸の空            七番日記   化7
    今様の凧上りけり小食小屋          七番日記   化8    「小食」→「乞食」
                                                     (異)『発句題叢』『文政版』上五「美しき」
    今様の凧の上りし山家哉            我春集     化8
    里しんとしてづんづと凧上りけり    七番日記   化8    「づんづ」→「ずんず」
    辻諷凧も上ていたりけり            七番日記   化8    「い」→「ゐ」
                                                         (異)『我春集』下五「居りにけり」
    番町や夕飯過の凧                  七番日記   化8    (出)『我春集』
    人の親凧を胯で通りけり            七番日記   化8    「胯」→「跨」
    凧臼井の外は春じやげな            七番日記   化10    「臼井」→「碓氷」「じ」→「ぢ」
    大凧や上げ捨てある亦打山          七番日記   化10    (出)『志多良』『句稿消息』『希杖本』
    京辺や凧の上もむつかしき          七番日記   化10
    山寺や翌そる児の凧                七番日記   化10    (出)『句稿消息』『希杖本』
    大凧のりんとしてある日暮哉        七番日記   化11
    凧の尾を追かけ廻る狗哉            七番日記   化11
    山陰も市川凧の上りけり            七番日記   化11
    生神[の]凧とり榎たくましや        七番日記   化12
    切凧や脇よれ 〜 といふ先へ        七番日記   化12
    凧きれて犬もきよろ 〜 目哉        七番日記   化12
    人真似や犬の見て居る凧            七番日記   化12
    反故凧[の]あたり払て上りけり      七番日記   化12    (出)同日記(化13)
    おはむきに犬もかけるぞ凧          七番日記   化13    (異)同日記(化13)『句稿消息』
                      『浅黄空』『自筆本』『発句鈔追加』『発句集続篇』書簡 中七「犬もかけるや」
    気につれて凧もかぶりをふりにけり  七番日記   化13
    背[中]から狙が引也凧の糸          七番日記   化13
    大名の凧も悪口言れけり            七番日記   化13
    凧上てゆるりとしたる小村哉        七番日記   化13    (出)『句稿消息』『文政版』書簡
    凧抱たなりですや 〜 寝たりけり    七番日記   化13
    凧のかぶり猿が守りする日也けり    七番日記   化13
    何がいやでかぶりふりけり凧        七番日記   化13
    寝たいやらかぶりふりけり凧        七番日記   化13
    一とろに御代の大凧小凧哉          七番日記   化13
    反古凧や隣は前田加賀守            七番日記   化13
    本町の行留り也凧の糸              七番日記   化13
    むつどのゝ凧とくらべて自慢哉      七番日記   化13
    門前の凧とり榎千代もへん          七番日記   化13
    親よぶ[や]凧上ながら小順礼        八番日記   政2
    西山や今剃児の凧                  八番日記   政2
    乞食子や歩ながらの凧              八番日記   政3
                                                 (異)『浅黄空』『自筆本』中七「貰ひながらの」
    小順礼もらひながらや凧            八番日記   政4
    すゝけ紙まゝ子の凧としられけり    文政句帖   政5
    凧上ていかにもせまき通り哉        文政句帖   政5
    凧の糸引とらまへて寝る子哉        文政句帖   政5
    凧の尾を咥て引や鬼瓦              文政句帖   政5
        駿河台
    日の暮に凧の揃ふや町の空          文政句帖   政5
    まゝつ子やつぎだらけなる凧        文政句帖   政5
    赤い凧引ずり歩くきげん哉          文政句帖   政7  (異)『浅黄空』『自筆本』上五「赤凧を」
    あそこらがえどの空かよ凧          文政句帖   政7
                                         (異)『発句集続篇』上五中下「あそこから江戸の空かと」
    江戸凧の朝からかぶり 〜 哉        文政句帖   政7
    江戸凧もこも 〜 上る山家哉        文政句帖   政7
    おとらじと一文凧も上りけり        文政句帖   政7
    順礼や貰ひながらの凧              文政句帖   政7
    大名のかすみが関や凧              文政句帖   政7
    まゝ子凧つぎのいろ 〜 見へにけり  文政句帖   政7    「へ」→「え」
    大凧やりんとうごかぬ角田川        希杖本
    切凧のくる 〜 舞やお茶の水        浅黄空    (出)『自筆本』
    芝浦や上げ捨てある凧              浅黄空    (出)『自筆本』
    凧抱て直ぐにすや 〜 寝る子哉      浅黄空

 

万歳(万歳楽)

    万歳よも一つはやせ春の雪          享和句帖   享3
    万歳のまかり出たよ親子連          文化句帖   化1
    万歳のけふも昔に成りにけり        文化句帖   化5
    大声や廿日過ての御万歳            七番日記   化8
         (出)『我春集』『版本題叢』『嘉永版』『発句鈔追加』(異)『発句題叢』中七「廿日過て」
    万歳や馬の尻へも一祝              七番日記   化8    (出)『句稿消息』
    万ざいや門に居ならぶ鳩雀          七番日記   化8    (出)『発句集続篇』
    万ざいや汝が梅はどの位            七番日記   化8
    万ざいや麦にも一つ祝ひ捨          七番日記   化8
    万才や五三[の]桐の米袋            七番日記   政1
    万才や東風にふかるゝ餅袋          七番日記   政1
    鉄下戸であのけんまくや万ざい楽    八番日記   政4
    誰目[に]も下戸とは見へず万ざい楽  八番日記   政4    「へ」→「え」
    万歳のははりにしやべる雀哉        八番日記   政4    「ははり」→「かはり」
                      (異)真蹟 前書き「けさの春」、『文政句帖』(政5)中七「通りにしやべる」
    万才の下戸とはさらに見へざりき    八番日記   政4    「へ」→「え」
    我門や乞食万歳にていはふ          八番日記   政4
    万歳や面もかぶらずほゝやれと      八番日記   政7

 

猿廻し

    雨の日や狙起[さ]るゝ猿まはし      西国紀行   寛7
    舞扇猿の涙のかゝる哉              七番日記   化7    (異)『発句類題集』下五「かゝる也」
    舞猿も草臥顔はせざりけり          七番日記   化13
    我国は猿も烏帽子をかぶりけり      七番日記   化13
    我国は猿も祈祷をしたりけり        七番日記   化13(異)『八番日記』(政8)上五「幣とつて」
    わか狙が見い 〜 舞や赤い袖        七番日記   化13
    御座敷や菓子を見い 〜 猿が舞      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』下五「猿の舞」
    親狙がをしへる舞の手品かな        八番日記   政4
    舞猿や餅いたゞきて子にくれる      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』中七「餅いたゞいて」
    矢の先や子を[背]負ひつゝ猿廻      政七草稿   政7

 

大黒舞

    乞食も福大黒のつもり哉            七番日記   化10
    舞込だ福大黒と梅の花              七番日記   化10

 

獅子舞

    獅子舞や大口明て梅の花            七番日記   化8
    門獅子やしゝが口から梅の花        希杖本

 

春駒

    乞食の春駒などもかすみ哉          七番日記   化10
    春駒の歌でとかすや門の雪          七番日記   化13
    春駒は竹でしてさへいさみけり      八番日記   政3
                                               (出)書簡『梅塵八番』(政2)下五「いたみけり」
    春駒や人が真似てもいさましき      文政句帖   政5
    春駒を人のしてさへいさみけり      希杖本

 

雑煮(雑煮売り、雑煮餅、雑煮膳)

    君が世や旅にしあれど笥の雑煮      寛政句帖   寛5
    雑煮餅深山榊もおり添よ            享和二句記 享2
    無造作に春は来にけり粟雑煮        七番日記   化10
        八丁堀貧乏町に春をむかへる
    我庵や元日も来る雑煮売            七番日記   化14  (異)『浅黄空』『自筆本』上五「窓先や」
    神の代はおらも四角な雑煮哉        七番日記   政1
    金時も十面作る雑煮哉              七番日記   政1
    目出度といふも二人の雑煮哉        七番日記   政1
    しん 〜 とすまし雑煮や二人住      八番日記   政4
    捨人もけさは四角にざうに哉        八番日記   政4    「う」→「ふ」
                                                         (異)『梅塵八番』中七「今朝は四角な」
    最う一度せめて目を明け雑煮膳      真蹟       政4
    もと 〜 の一人前ぞ雑煮膳          文政句帖   政6

 

若餅

    わか餅やざぶとつき込梅の花        発句題叢   政3    (出)『発句鈔追加』『希杖本』

 

鏡餅(福手、飾り餅)

    お袋が福手をちぎる指南哉          八番日記   政2
                                           (異)『おらが春』『発句鈔追加』中七「お福手ちぎる」
        十一日石太郎没
    かゞみ餅祝ひしかひもなく烏        八番日記   政4
    かざり餅仏の膝をちよとかりる      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』下五「ちとかりる」

 

歯固め

    歯固にかんといはする小粒哉        八番日記   政2
    歯固の歯一枚もなかりけり          八番日記   政2
    台所の爺に歯固勝れけり            八番日記   政4
                                               (出)『自筆本』(異)『浅黄空』下五「勝れたり」
    人並に歯茎などでもかためしか      八番日記   政4
    人真似に歯茎がための豆麩哉        文政句帖   政6    「麩」→「腐」
    かたむべき歯は一本もなかりけり    希杖本
    歯固は猫に勝れて笑ひけり          希杖本

 

福鍋

    とぢ蓋もけふは福鍋 〜 ぞ          文政句帖   政5

 

福俵

    福俵よい事にして猫ざれる          浅黄空
    よい事に猫がざれけり福俵          自筆本

 

屠蘇(屠蘇袋)

    とそ酌もわらじながらの夜明哉      さらば笠   寛10    「じ」→「ぢ」(出)『題葉集』
    朝不二やとそのてうしの口の先      七番日記   政1
    御関やとその銚子の不二へむく      七番日記   政1
    月代にとそぬり付て出たりけり      七番日記   政1
    ぬれ色やほの 〜 明のとそ袋        七番日記   政1
    皺面にとそぬり付るわらひ哉        八番日記   政4
    とそ銚子あゝ真似するも嘉例哉      八番日記   政4  (異)『梅塵八番』中七「つぐ真似するも」
    俵から俵の上やとそてう子          文政句帖   政6    (異)同句帖(政8)中七「俵へとるや」
    とそ袋釣しておくや鉢の松          文政句帖   政6
    鬼ばゝと呼れてとその祝ひ哉        文政句帖   政8

 

寝正月

    霞む日も寝正月かよ山の家          文化句帖   化2
    正月を寝てしまひけり山の家        文化句帖   化3
    正月を寝て見る梅でありしよな      文化句帖   化4
    正月やごろりと寝たるとつとき着    文政句帖   政5

 

七草(七草打つ)

    七草の音に負じと烏かな            西国紀行   寛7
    七草を敲き直すや昼時分            文化句帖   化1
    七種やとんともいはぬ藪の家        七番日記   化12
    七草を打てそれから寝役哉          七番日記   化14    (出)『浅黄空』『自筆本』
    青ひ物ない七草もいはひ哉          八番日記   政4    「青ひ」→「青い」(出)『文政句帖』
    七草やだまつて打も古実顔          八番日記   政4    「古」→「故」
    七草を内 〜 に打寝坊哉            文政句帖   政6
    七草や夜着から顔を出しながら      文政句帖   政6
    七草は隣のおとで置にけり          文政句帖   政6

 

若菜摘み(若菜売り、初若菜、朝若菜)

    しろしめせや民の心苦も若菜摘      寛政句帖   寛5    「心」→「辛」
    きのふ迄毎日見しを若菜かな        我泉歳旦   寛12    (出)『浅黄空』『自筆本』
    茜うら帯にはさんでわか菜[摘]      享和句帖   享3
        匪風
    釜粥を洗ふて待や野はわか菜        享和句帖   享3    「ふ」→「う」
    切株は御顔の際やわかな摘          享和句帖   享3
    竹かごにすこしあるこそわかな哉    享和句帖   享3
    細腕の日の大きさよ朝わか菜        享和句帖   享3
    三足程旅めきにけり野はわか菜      享和句帖   享3
    わかなつみわかなつみ 〜 誰やおもふ享和句帖   享3
    わか菜摘袂の下や角田川            享和句帖   享3
    雨だれの名ごりおしさよ花わかな    文化句帖   化1    「お」→「を」
    あらためて鶴もおりるか初わかな    文化句帖   化1
    こて 〜 と鍋かけしわか菜哉        文化句帖   化1
    三足程旅めきぬ朝わか菜            文化句帖   化1
    一桶は如来のためよ朝わかな        文化句帖   化2
    みぞるゝもにくゝやはあらじわかな売文化句帖   化2
    夕空ののゝ様おがめわかなつみ      文化句帖   化2    「お」→「を」
    わかな摘鷺も淋しく思ふやと        文化句帖   化2
    わかなのや一葉摘んでは人をよぶ    文化句帖   化2
    けふはとて垣の小すみもわかな哉    文化句帖   化4
    こよろぎや磯さまたげに摘わかな    文化句帖   化4
    ちる雪をありがたがるやわかなつみ  文化句帖   化4
    朝陰や親ある人のわかなつみ        七番日記   化7    (出)『発句集続篇』
    鶯に一葉とらするわかな哉          七番日記   化10    (出)『発句集続篇』
    一人前こぼして走るわかな哉        七番日記   化10
    江戸芥の山をゑりはりわかな哉      七番日記   化11    「ゑりはり」→「えりわり」
    負た子が先へ指[さ]すわかな哉      七番日記   化11
    出序にひんむしつたるわかな哉      七番日記   化12    (異)『句稿消息』上五「お序に」
                   『浅黄空』上五中七「お序に引んむしつても」、『自筆本』中七「引んむしつても」
                                書簡 中七「ひんむしらるゝ」、『鶴巣日記』中七「ひんむしりたる」
                                 『蛙水歳旦帖』中七「三葉程つむ」、『栗本雑記五』下五「初若菜」
    わかなつむ手つきも見へて角田川    七番日記   化14    「へ」→「え」(出)『自筆本』
    翌からは初わか菜[と]ははやされじ  七番日記   政1
    温石のさめぬうち也わかなつみ      七番日記   政1    (出)『発句集続篇』
        おのれ老人なれば
    女衆に出し抜れつゝつむわかな      七番日記   政1
                                 (異)『浅黄空』『自筆本』中七下五「出しぬかれけりわかなつみ」
                                                 『自筆本』中七下五「出しぬかれたるわかなつみ」
    鶴形の雪のちよぼ 〜 わかなつみ    七番日記   政1
    二葉三葉つみ切て来るわかな哉      七番日記   政1
    四五軒で一把[を]分るわかな哉      八番日記   政2
    手のごひで引かついだるわかな哉    八番日記   政2
    竈の門に置するわかな哉            八番日記   政2
    朝わかなつむや社参のもどりがけ    八番日記   政4
    大原や人留のある若菜つみ          八番日記   政4
    かすむ程たばこ吹つゝ若菜つみ      書簡       政4
    小坊主に行灯もたせて若なつみ      八番日記   政4
    鶏に一葉ふるまふわかな哉          八番日記   政4    (異)『発句集続篇』中七「初を振廻ふ」
    一引はたばこかすみやわかなつみ    八番日記   政4  (出)『浅黄空』『自筆本』『発句集続篇』
    転んでも目出度いふ也わかなつみ    文政句帖   政5
    爺が家のぐるりもけふはわかな哉    文政句帖   政5
    畠の門錠の明けりわかなつみ        文政句帖   政5
    髭どのに叱られにけりわかなつみ    文政句帖   政5
    姫君の御手にふれしわかな哉        文政句帖   政5
    脇着の柄にかけたるわかな哉        文政句帖   政5    「着」→「差」
    童に刀持たせてわかなつみ          文政句帖   政5
    江戸へ出て皺の寄たる若な哉        文政句帖   政7    (出)同句帖(政8)
    刀さす供めしつれてわかなつみ      文政句帖   政7    (出)『浅黄空』『自筆本』
    尻餅の迹は小町がわかなつみ        文政句帖   政7
    二葉三葉たばこの上に若な哉        文政句帖   政7  (異)『発句集続篇』中七「たば粉の上の」
    三葉程つみ切て来若な哉            文政句帖   政7
    脇差の柄にぶら下る若な哉          文政句帖   政7
                   (出)『浅黄空』『自筆本』(異)同句帖(政8)『嘉永版』中七「柄にぶら 〜 」
    不断見る野[の]なりながらわかな哉  文政句帖   政8
    わかなつむ小じりの先の朝日哉      遺稿

 

薺摘み(薺打つ)

    あの藪に人の住めばぞ薺打          文化句帖   化1
    わかい衆や庵の薺も唄でつむ        七番日記   化11    (出)『句稿消息』
    夜着の袖から首出して薺哉          七番日記   化14

 

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動物

 

初鶏

    君が代を鶏も諷ふや餅の臼          享和句帖   享3
    君が世の鶏となりけり餅の臼        享和句帖   享3
    初鶏に神代の臼と申べし            享和句帖   享3
    君が代の鶏諷けり餅むしろ          甲子遍覧   化1
    餅臼に鶏諷ひけり君が代と          七番日記   化14

 

初烏

    門の木のあはう烏もはつ音哉        七番日記   化8
      (出)『句稿消息』(異)『七番日記』(化11)『句稿消息』『発句鈔追加』真蹟 下五「初声ぞ」
                                                        『希杖本』上五下五「門先の・・・はつ声ぞ」
    だまつても行ぬやけさの遅烏        七番日記   化8
    さあ春が来たと一番烏哉            七番日記   化11
    馬引もからす烏帽子や初烏          八番日記   政4
    杜[の]陰しかも出がけのはつ烏      八番日記   政4    (異)『梅塵八番』上五「藪の陰」
    提灯もちらりほらりやはつ烏        文政句帖   政7
    大武家の飯すみ切てはつ烏          文政句帖   政8
                                          (異)同句帖(政8)中七「飯日は過ぬ」「飯は過けり」

 

初鶯

    赤下手の初鶯や二つ迄              七番日記   化11
                                                   (異)同日記(化10)『自筆本』中七「鶯鳴や」
    うら窓やはつ鶯もぶさた顔          七番日記   政1    (異)『自筆本』中七「初鶯の」

 

初声

    有合の鳥も初声上にけり            八番日記   政4
    初声はあはう烏でなかりけり        文政句帖   政6

 

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植物

 

若菜(磯若菜)

    ちま 〜 と住すましたり梅わか菜    享和二句記 享2
    空錠と人には告よ磯菜畑            文化句帖   化2    (類)『其日庵歳旦』下五「田打人」
    いさら井や磯のわかなの水かゞみ    文化句帖   化3
    某も世に有さまのわかな哉          七番日記   化7

 

福寿草(元日草)

    岩がねや塵をし分て福寿草          寛政句帖   寛6    「を」→「お」
    大雪をかぶつて立や福寿草          文政句帖   政7
    川添や金が子[を]うむ福寿草        政七草稿   政7
    小さくても上殿す也福寿草          文政句帖   政7    「上」→「昇」
    帳箱の上に咲けり福寿草            文政句帖   政7    (異)同句帖(政8)上五「帳面の」
    神国や草も元日きつと咲            文政句帖   政8    (出)『自筆本』

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