歌番号

266 

作者

柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ) 

ひらがな

おうみのうみ ゆうなにちどり ながなけば こころもしのに いにしえおもほゆ

万葉歌

近江の海 夕浪千鳥 汝が鳴けば 心もしのに 古思ほゆ  

原文

淡海乃海 夕浪千鳥 汝鳴者 情毛思努ニ 古所念 

琵琶湖に夕日が射し込み、きらきらと水面を照らしている。至福の時と言うのだろうか?小鳥たちも一日の終わりを、感謝しているかのごとく、お互いに確かめ合いながら今日の無事を喜んでいるかのように鳴き合っている。天武朝近江に都が置かれ、壬申の乱で天武朝が敗北すると、また飛鳥地方に遷都してしまった。そんな華やかりし頃の近江を懐かしんで、この歌を詠んだのであろう。
人麻呂は宮廷歌人ということは判っているが、出生など謎の多い人物とされている。日本一の歌人としては、そのプロフィールが判らないというのもなんだか不思議な話ではあるがかえって人麻呂のミテリアスな魅力に繋がっている。また、その死についえは、様々な憶測を呼んだ。有名な梅原猛氏の「水底の歌」では、人麻呂は山陰の島で、死刑にさせられたという大胆な仮説だ。人麻呂の歩んだ人生の過酷さと、その歌の雄大で澄んだ音色のアンバランスさが、今日1300年以上経過した現在にも新鮮に響いて来るのであろうか。