胸痛を伴う病気は様々なものがありますが、比較的頻度が高くしかも適切に診断し治療をおこなうと予後が良好なものが、狭心症です。狭心症の胸痛は胸が締め付けられるとか、つぶされるようなとか表現され、左の肩の痛みや左腕の痛みを伴ったりすることがあります。階段を上ったり、坂道を歩いたり、自転車をこいだときに胸痛が始まり、休むと数分で胸痛がなくなります。休むと症状が消えるので放置されがちですし、症状は持続しませんので夜間の救急外来に受診することはあまりありません。しかし徐々に進行し心筋梗塞になることがありますから、昼間受診し循環器の医師の診察を必要とします。⇒狭心症

夜間受診することになるのはむしろ心筋梗塞かもしれません。胸痛の性状は狭心症に似ていますが、胸痛は強く休んでも痛みは持続し、冷や汗を伴うことが多いです。半分の方に狭心症の既往がありますが、半分の方は突然の発症です。胸痛の場所は左前胸部が多いですが、みぞおちの部分であったりもしますので注意が必要です。夜間でも我慢せず、十分以上続く場合は救急車を呼んで病院で治療を受ける必要があります。⇒心筋梗塞

生命の危険という意味では心筋梗塞以上かもしれないのが、大動脈瘤に伴う胸痛です。これも突然に発症する極めて激しい胸痛です。前胸部に始まったり、背部痛で始まったりして、背中や下の方に痛みが広がっていくのが、解離性動脈瘤と言われるものです。冷や汗を伴い、その他様々な症状が伴うことがあり、かえって見逃されることもあります。急いで治療をする必要があります。胸部に出来た大動脈瘤が破裂した場合も激しい胸痛で発症します。それまでに動脈瘤と言われていた場合も有りますが、全く気づかれずに突然発症する場合もあります。冷や汗を伴ったり、血圧が極端に下がって意識がなくなったりします。極めて予後が悪い状態です。⇒胸部大動脈瘤の破裂

心臓や大動脈に対して比較的生命の危険が少ないのが肺に伴う胸痛です。若者に多く、特にやせ形の男性に多いのが、自然気胸に伴う胸痛です。これも突然発症しますが、咳を伴ったり呼吸困難を伴ったりします。気胸を起こした側の胸が痛みます。予後は比較的良好と言いましたが、まれには肺の虚脱がひどくて生命の危険を伴う場合もあります。漏れた空気を外に出してやる必要がありますから、夜間でも受診する必要があります。⇒自然気胸

咳や痰を伴う胸痛は胸膜に炎症が波及して痛みが出てくるものです。咳や痰の出る時期があり、胸痛が始まります。息を吸ったときに痛みが強くなるような胸痛はこの胸膜炎のことがあります。⇒胸膜炎

突然の呼吸困難を伴った、胸痛の場合は肺動脈塞栓症のことがあります。足の浮腫があってから続発することもありますが、全く突然発症する場合もあります。重症な場合はショックに陥ったり、突然意識がなくなりますし、そのまま死亡する場合もあります。エコノミークラス症候群といって、長時間座ったままだったり、長期臥床していて初めて歩いたりしたときに起こったりします。⇒肺塞栓症

肋骨や肋軟骨、肋間神経に伴った痛みも胸痛となります。しかしこれは様子を見てもよいものです。今までの胸痛と違ってこれはその場所を押すと痛みがあるので分かります。指で押して特定の場所に痛みがある場合は、局所のものですので安静にして、翌日受診してもらえばよいかと思います。⇒肋骨、肋軟骨の痛み

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