入浴中の事故=溺水はなぜおこるか:
1994年の東京都監察医務院の調査では、入浴中の突然死564件のうち464件は心筋梗塞や脳溢血、動脈瘤など高血圧や動脈硬化が起因として起こる病気によるものでした。その他の100件が病気以外の原因によるものです。つまり入浴中の事故のうち80%は高血圧が原因となる病気がその時に悪化するものなのです。それでは入浴中にどうして高血圧などが悪化するのでしょうか。

入浴中の循環器系の反応:
そこで入浴が人体に及ぼす影響について検査した結果があります。まず41℃で入浴した場合、体温は湯船に入って10分すると上昇を始めます。それとともに脈拍数が上昇していきます。それにひき換え血圧は直後では変化せず、むしろ徐々に低下していき、15分で安定します。しかし湯の温度を42℃としますと、湯船に入った直後だけ血圧が上昇するのです。また浴室の室温が低い場合は、出浴時に血圧が上昇するのがわかりました。

入浴時の事故を予防するために:
前述したことから入浴時に血圧の変動を大きくしないための方法が、結果的に入浴時の事故を予防するための方法となります。すなわち、
(1)入浴温は41℃以下にする、
(2)湯船には10分以内つかるだけとする、
(3)浴室の温度を高くする(24〜25℃程度) ことが必要です。具体的にはお年寄りの入浴は一番風呂にはしないようにして、少し湯温が下がった状態で、しかも浴室が暖かくなって入浴してもらうのが良いかと思います。もちろんこまめに声をかけてもらうことも必要です。独り暮らしの場合は裸になって浴室にはいるのではなく、一度ふたを開けに行ってもらい、それからトイレなどに行き、それから入浴してもらうのが良いかと思います。

もし入浴中の事故を見つけたら:
上記のような予防策をとっても不幸にも入浴中に病気が悪化することはあり得ます。もしうちの人がそれを見つけた場合の対処法を説明しましょう。もちろん息をしていないような場合は人工呼吸を始めねばなりませんが、まず湯船から出すことが必要です。よほど力がない限り裸の濡れた意識のない人を担ぎ上げることは困難です。まずは人手を集めることが必要です。しかしその間顔だけは水から出しておくことが必要です。まずは湯船のふたを利用してください。顔を上げ、湯船のふたを顎の下に入れて顔を水から出た状態に維持します。それが困難な場合は湯船の栓を抜き、水を減らすことで顔を水から出た状態にしてください。そうしておいて何とか人を集め、湯船から出してあげてください。その後はもし呼吸していないなら、人工呼吸を始めることが必要です。
 

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