1619SEの製作             <2016.0625 Start>

事の起こりは、昨年の妙高オーディオ倶楽部発表会にさかのぼります。
いつものように、開始前に現地に到着、狙いはフリー-マーケットでした。お、今回はあまり多くないなとの印象でしたが
ふと見ると、「遺品整理」の文字、そして何本かの真空管がありました。【500円均一】の文字・・・・

最初は取り立てて興味もなかったのですが、「遺品整理」になにか引っかかるものがありました。そんなことから、6G−K16
2本と1619を2本購入しました。

6G−K16はダンパー管としていずれ使うこともあるだろうという想いでしたが、1619については黒のメタル管とだけわかり
ましたが、それ以上は何も知識がありません。でも、何か気になることがあり購入を決めました/

帰宅してから調べてみると、2.5Vのフィラメントの5極管の直熱出力管であることがわかりました。出力は3〜4W程度取り
出せます。直熱出力管というと今まで【2A3】・【300B】・【845or211】と3極管を使って製作してきましたが、5極管の直熱
出力管は初めてです。どんな音がするのだろうという興味がありましたが、やはり「遺品整理」ということが引っかかります。
なんとか有効に使ってあげたいものだと思いました。

まずは、ネットで1619の製作例を探してみました。結構あったのがPPやパラシングルの製作例でした。が、とりあえずは、
2本しかありません。新たに買い足すことも考えましたが、素性のわからない管でそこまではという想いから、シングルエンドで
製作するしかなさそうです。探してみるとフロービスさんのHPに製作例がアップされていました。とりあえず、それを参考に、組
んで見ることにしました。


新たに必要なパーツは、PT<2.5Vの電圧タップが必要です>、さらにOPT<他からの流用も考えましたがなかなか思うよう
なOPTが手元にありません>、初段に6SQ7-GT<手持ちがなく、他の回路を当てようかと思いましたが、使ったことがないの
で使ってみようと思いました、μ=100の三極管です>

以上のことから、PTはPMC-2A3(ノグチ)、OPTはOPT-S14<アンディクスオーディオ扱い、初めて使ってみました。一次が2.5K
・4K・7K・10Kとユニバーサル仕様です、6SQ7-GTはバンティックからとも考えましたが、アンディクスオーディオのOPTと一緒に
アンディクスオーディオさんからゲットしました。1本1400円でした。


まず、フロービスさんのHPの製作例を参考に回路図を書いてみました。

    

お恥ずかしい限りですが、とりあえずこれでいきます。

製作はいつものように木枠とアルミ天板の組み合わせです。さほど苦労もせずに組み上げました。できあがって音出しです。
PT、OPT、6SQ7-GT以外は手持ちのパーツで間に合いました。

直熱管のため、ハムバランサーの調整は必要です。無帰還の時はちょっとハムが乗りましたが負帰還をかけることでハムは
ほとんど気にならないレベルまでになりました。

         
     ハムバランサーと取り付けパーツ         チョークのケースは今回自作  黒のつや消しで塗装

           
     B電源はチョーク出口から各CHごとに    1619のカソードは470Ωのパラで235Ω       配線全体のようす


       
            完成                             今回は裏ぶた付きです



聴いてみた音は「ちょっと不思議な音」でした。直熱管らしいクリアな音ではある
のですが、なんというか「軽い」のです。これが1619の音なのかとそのときは納得していました。折しも訪ねてくれた知人にも聴
いてもらったのですが、「軽いね」という評価でした。

しばらくしてから、健康診断のつもりで測定してみることにしました。いつものように、入力対出力特性・周波数特性と測定してみ
て、まぁまぁのものかなといたのですが、ダンピングファクターを測定してみてびっくり!!! 

  なんと、DF=0.2

しかありません!! これが、あの「軽い音」の原因だったようです。

今まで直熱出力管として製作した2A3や300Bは三極管、かたや1619は5極管の直熱出力管です。同じように考えていたアン
プビルダーとしての素人レベルがばれてしまいました。

そういえば、上杉さんの6V6のMFLの製作記事があったことを思い出しました。さらもう一度、データを調べ直してみると、5極管
の無帰還のアンプのDFは通常【0.1〜0.2】であることにたどり着きました。

そう、5極管の出力管では負帰還をかけることが定石のようなのです。

負帰還とすればOPTから初段へ戻すことやUL接続にするなどの方法があります。
ます、考えたのがSGタップを使ってUL接続とすることです。しかし、用意したOPT-S14にはそのSGタップがありません。と、なると
SGタップのあるOPTに変更するかとも考えたのですが、OPT-S14はユニバーサル仕様として一次側にいくつかのインピーダンスに
対応できるようになっています。もしかしてと考えて、アンディクスオーディオさんからOPTに添付されてきたデータを検討してみると
10Kに対して4Kのタップがほぼ50%の巻き線であることにたどり着きました。つまり、4KのタップをSGタップとして使えるかもしれ
ないと考えたのです。以前の製作例でもそのような使い方をしてある例があるので不可能ではないと思いますが、なにせ初めて使
うOPTです。本当にUL接続として機能するのかはわかりません。 とりあえず、えいや!の精神でトライすることにしました。

音を聞いてみると、ちょっと違います。動作も特に問題なく動作しているようです。少し低域が締まった音になりました。このとき初
段へのNFBはかけてありません。この状態でダンピングファクターを測定してみると、なんと【DF=2】となっています!!

調子に乗ってOPTから初段へのオールオーバーのNFBをかけてみました。さらに音が締まって聞こえ、「おお、この音!!」といっ
た音を聴くことが出来ました。

ただ、NFBは調味料であり、かけ過ぎると平凡な音になってしまうきらいがあります。そこで、聴感を頼りにNFB量は変えてチェック
してみました。

規定は、1.5KΩですが、3KΩ・2KΩ・1KΩと変えて聴感チェックをしてみました。その結果で自分で納得できたのが1.5KΩで
したので、最終的に1.5KΩのNFBでいくことにしました。測定してみるとNFB=−17.5dB<実測>、そして問題のダンピングファ
クターはDF=4(周波数によっては5まで上がる>でした。

最終的な回路図です

    クリックで大きな図になります・・・戻るにはブラウザで

諸特性を測定してみました。

<UL接続 NFBなし>

   

<UL接続 NFB-17dB>
   

現在、工房でエージング中ですが、ちょっといいです。直熱出力管の世界に引き込まれそうです。佐久間さんではないのですが、直
熱出力管、いいですね。ちまたに傍熱管と直熱管の議論がありますが、改めて直熱管の魅力を再認識した次第です。

        
211・845の1KVの世界にちょっとびびっていましたが、450V程度のB電圧駆動の製作例もあり、そんなのもいいかぁとも思い、
機会があったら製作してみようと思いながら1619SE_UL接続の音を楽しんでいます。