TAMURA A-875アウト ラインアンプの製作
                           <2016.0205 Start>

柳沢さんのタムラのPPタイプのラインアンプの製作に触発されて製作してから「ラインアンプはトランス出力!!」には
まりました。

今まで、 A-8713  A-22  HL20K-6 と製作してみました。どれもそれなりの音を響かせてくれてとても満足です。と
はいえ、A-8713ラインアンプは柳沢さんのコピーでしたが、A-22以降は自分なりの設計でしたので試行錯誤の連続で
した。ですからできあがった作品は、どれもプロトタイプですので見栄えの点ではちょっと見劣りする点は否めません。
ただ、それぞれそれなりに対応しましたので、それなりの仕上がりになっているのではないかと自画自賛しています。


それぞれの音を聞いている工房の机においてあるA-875ライントランスを眺めながら、こいつをどう料理してみようかと
常々考えていました。思えば、昨年の21th真空管オーディオフェアでちょっと清水寺的にサンオーディオさんからゲット
してきた代物、トランス出力のラインアンプ製作の最終章的なものなるはず・・・

【A-875ラインアウトトランス】

タムラから発売されている、シングル出力用ラインアウトトランス。一次はインピーダンス17KΩ、ただし直流は7mAしか
流せない。二次は600Ωと150Ωが選択できる。そして何より特徴なのはNF用巻き線を持っていることだ。

   <A-875 単体の周波数特性>
    
    ストレート・・・何も接続せず                          二次側に1.5KΩ接続



まず、必要なパーツをそろえるために、以下の3つを解体した。

○6414SEPPラインアンプの解体・・・これは実は先のNF-CREQアンプ製作のために解体したもの。今回の製作ではそ
                       のケースを流用することにした

○6BM8ロフチンホワイトSEアンプ・・・PT、ヒーター電源容量とB電圧確保のためPCM-100Mが必要だった、
                       縦型電解コンデンサーも流用・・・上杉さんの製作ノウハウの活用

○SNOYセレクターボックス利用ラインセレクター・・・最終的に100KΩのMN型バランスVR、RCAジャックが必要だった

○その他・・・先のTTCラインアンプからは4回路6接点のセイデンのロータリースイッチを取り外して流用しています。

<最初の構想>

A-875と6414SEPPラインアンプの解体したケースを眺めていると、こいつらを使って作ってみようと思うようになった。

      最初に考えたこと

 1)A-875ラインアウトトランスを使うこと・・・NF巻き線は活かしたい

 2)「柔道耳」のためバランス回路は必需・・・手持ちの50KΩACのVRを使う
    ※「柔道耳」
      柔道をやっている方はピンとくるはず。高校時代柔道をやっていたので外耳が内出血をおこしそのまま放置して
      おくと外耳が変形してしまう。このためオーディオ的にはとても不利、右左の聞こえ方が変わってしまうのだ。オー
      ディオフェアの試聴会でも時々無意識に変形している左耳に手を添えてしまう、アンプの発表者の方には不審な
      思いをさせてしまうことになっているかもしれない(柳沢さん、大橋さんごめんなさい)
      ただ、このACタイプのVRを入れることによって損失が-3dB、今回最終的には損失が0dBのMN型が必要になった
      ので、SONYセレクターボックス利用ラインセレクターを解体することになった。

 3)TTCラインアンプで使ったECC99を出力段に使いたい・・・岩村さん曰く「ECC99の直線性の良さ」の活用

<製作のようす>

 まず最初に回路図1を元に製作しました。

    
 ケース・・・6414SEPPラインアンプの流用  主なパーツの取り付け  底側から            上側から

    
       配線のようす・・・回路図1             ヒーター回路の配線・・・最近の定番のNJM-317Fを使う、JRC製モールドされているので絶縁が不要



                  *** 今回の製作の目玉?! ***

        
     セレクターは4回路6接点のロータリースイッチで             A875に挟まれている箱形のパーツは
      コールド側も切り替える                           4+4μFのオイルペーパーコンデンサー
     ボリュームは東京光音の600Ωアッテネーター                   


     ○ 4回路6接点のロータリースイッチは、その効力を確かめたTCCラインアンプから取り外した。このアンプの方がメ
        インになるだろうとかんがえたからである。
     ○ ボリュームは、東京光音の600Ωのアッテネータ。実はこれ2015年の21th真空管オーディオフェアのアムトランス
       の物品ブースで見つけたもの。他からの取り外しのジャンク扱い、2個で2000円(安っ!!) そして、この使い方の
       アイデアはアンディクスオーディオさんのHPから頂いたものだ。
     ○ A-875に挟まれた箱形のパーツは2015年の秋の妙高オーディオクラブの発表会のフリーマーケットで見つけたも
       の、1個400円で、2個ゲット。4+4μFのオイルペーパーコンデンサーでWVは175Vで、今回にはぴったり


こうして第1段階の組み立てが終わって、そのスペックを検討してみて、満足できるものではなかった。
ここから、試行錯誤を繰り返すこと数回、何とか思い通りのラインアンプに仕上がったような気がする。
とはいえ、まだまだのところもあるが、とりあえずKP(完パケ)とした。

以下は、その試行錯誤の記録です。



【回路図1】・・・管球王国Vol.にあった上杉さんのEQアンプからヒントをえた直流をコンデンサーでカット
         する発想の回路

            ・・・イメージとしてご覧ください
                    こうした構想で作成した回路図           

  実際にくみ上げてみると、

    1)A-875ラインアウトトランスのNF巻き線は活かしてない 無帰還・・・THDは約1.2%(at1KHz 1V出力時)

    2)出力が出てない  利得がかせげていない


【回路図2】・・・・ならば、無線と実験(2015No.)の岩村さんの製作記事を参考にクラーフ結合でトライ
           

  くみ上げてみると

   1)出力はさほど増大しない・・・バランス用のAC型VR(挿入損出-3dB)をMN型(挿入損出-0dB)に変更して少
                      し増大
   2)が、相変わらずNFBはかけられない


【回路図3】・・・・NF巻き線を活用するためにカソードのグランド設置のためA-875をプレートに接続する回路
          7mAの壁に挑戦、ECC99系の真空管(プレート電流が大きい)はあきらめ、12AU7を選択。
          本当は、6SN7をターゲットに検討していたが、ヒーター電圧とソケットの改造のため断念。
           

   1)出力は満足するほどに増大
   2)NF巻き線を活かせる見通しがついた

【回路図4】・・・今回の製作の最終形、ようやく自分の求めものができたのかなと思う

           ・・・クリックすると拡大 戻るにはブラウザの戻るです
            ※回路図の電圧値は計算値です 出力段の真空管はECC99から12AU7に変更してあります


   1)ひずみ率は狙い通りの0.5%(at1Vout 1KHz)に納めることができた
   2)何より音が気に入った。測定の結果を見るととてもおすすめなものではないのだが、出てくる音は今までとは
     異次元の音がする。クリア、それでいて低域も高域もちゃんと聞こえる。何よりも音の押し出しが効いている。
     低位もきちんとしている。特にボーカルは中央に「口」がみえるのだ。
     まだ、エージングもすんでない状態であれこれ表するのも問題だとは思うが、とりあえずの印象である。これで
     トランスアウトのラインアンプも最終形なのかなと思わせてくれた。


現在、測定を終えてエージング中。たぶんリスニングルームで常用のA8713PPラインアンプと入れ替わると思う。
私は、PPよりやはりSEの音が好きなのかもしれない。

参考までに 測定の結果です。
        
      

      

波形観察・・・サイン波形は特に問題ないので省略です     【いずれも1KHz at 1V出力時】

            
     立ち上がりにピーク発生    NFBに1500Pを追加、ピークがとれた            参考 クラーフ結合

【100Hzと10KHz】

          
    100Hz・・・周波数特性通りだなぁ       10KHz 補正前         補正後

ご覧の通りです。特に周波数特性は大きなかまぼこ形でお世辞にも良好とはいえません。ですが、聴感上は前述の
通りです。低域についてはまだ検討の余地があるかもしれません。A-875単体の周波数特性とアンプの周波数特性
の違いは何なのだろう・・・? 追求してみる余地は残されているような気がする。

もうしばらく工房でエージングしてから完成としてリスニングルームに設置します。

まぁ、いろいろ試行錯誤した分苦労しましたが愛着のわく作品になりました。


<216.01.26追記>
・・・というより別物のラインアンプになりました。

<追記にともない、全面改訂とも思ったのですが、こののたうちまわりをそのままの方が参考になるやも知れんと、追
  記という形でそのままアップすることにしました。ちょっとごちゃごちゃした紙面になりますが、ご容赦ください。>


音的にはまぁまぁののですが、何となく物足りない・・・そんな気がずっとしてました。

そうこうしているうちに、このラインアンプのメインはやはりA-875ラインアウトであることに気づきました。直流は7mA
しか流せない、この制約の中でどう仕上げていくのかということがポイントになります。

まず、NF巻き線を活かすためにアンディクスオーディオさんのHPを参考にして2段のアンプ構成を考えました。この結
果、今回の売りである4μFのオイルペーパーコンデンサーはあきらめることになります。
ゲイン不足を懸念していたので、今回21th真空管オーディオフェアでアンディクスオーディオさんからゲットした12DW7
でくんでみます。この12DW7という真空管、12AX7+12AU7という変わった構成です。ゲインの高い出力管ならこれ1本
で位相反転してプッシュプル増幅が可能かもしれませんね。

この構成で書き直した回路がこちらです。
            

結果的には予想通りのゲインが得られました。12AU7や12AT7でも動作します。音的にもタムラのトランスの特徴がよ
く出ているというか低域にシフトした音です。
ボーカルの押し出しは結構あります。落ち着いた音で、クリアな感じもします。私好みの音ですが、他の人にはどう聴こ
えるかなと思います。

まぁ、これはこれとしてKPとしましたが、高域の早めの減衰が気になります。前述のようにA-875単体では結構高域も伸
びているのに・・・・、もう一つ気になっている点があります。NF巻き線を使っているのに歪み率が思ったほど下がっていま
せん。

そこで、思い出したのが6SN7です。

       
      6819のIp-Eb曲線                   6SN7のIp-Eb曲線


これは、Ip-Eb曲線ですが、比較すると今回の出力段の7mAあたりの曲線の立ち上がりに注目してみると、断然6SN7が
有利のように思いました。6189も12AU7の高信頼感で、12AU7も6SN7もかたやMT管かたやGT管としてそれぞれ互換性
があるとされていますが、これを見る限りでは今回の使用条件では6SN7に歩がありそうです。そういえばアンディクスオ
ーディオさんのオリジナルも6SN7でしたし、他の佐藤進さんの製作記事でも6SN7でした。同等管の12AU7でなく、6SN7と
いうことに何かしら意味があるのかもしれません。まぁ、当初から6SN7が気になっていましたし、手持ちにRCAの6SN7
もあります。こうなると変更するのには、あまり時間は必要ではありませんでした。早速、変更作業です。

                   

今回、MT管の穴を開けてしまってあるのでホールソーは使えません。そこで登場するのが昔から使っているシャーシパン
チです。1.5mmのアルミ板なので少々苦労しましたが、何とか穴開け完了。試作品のレベルの製作の泣き所でシャーシに
は至る所に穴が開いてしまい見苦しいのですが、仕方ありません。

回路的には真空管を置き換えるだけですので、ヒーター回路以外変更点はありませんが、再掲しておきます。

      ・・・いつものようにクリックで大きな図になります、戻るにはブラウザで・・・
       ※そのままですが、測定器とにらめっこの結果、初段のプレート抵抗は47KΩ→100KΩに変更してあります

リメイクして、早速音出しです。音的にはA-875ライントランスが大きく影響しているのでしょう、以前のものと同系統だと思
います。

しばらくエージングしてから測定してみました。その結果です。

  

  

  

                         <方形波の観察>

    


低域はかなり改善されましたが、やはり周波数特性は大きく変わりません。が歪み率は劇的に変わりました。0.5V出力で
は手持ちの測定器では測定不可能領域かもしれません、1V出力で0.05%、出力電圧4Vでも0.5%以内に収まっています。
また100Hz・1KHz・10KHzといった周波数でもほとんど差がないのが大きな特徴かもしれません。

さすが、NFB−16dB(実測)といったところでしょうか。20KHzでは−1dBです。ちなみにNFBなしでは20KHzでは−4dB
でした。まぁ、10KHz以上は聞こえない私の耳ではOKとしましょうか(笑)


高域はもう少し伸びないかといろいろ試してみましたが、今回はだめでした。と、いうことで今回はこれでKPとします。
実用上は特に大きな問題はないと思います(私には10KHz以上は聞こえません)ので、また、何か思いついて高域が伸び
るようにできれば<追記>ですが、とりあえずはこれでKPとします。