TTC(トリプルトーンコントロール)アンプの制作
このHPにも山水のTTC(トリプルトーンコントロール)を元にして真空管回路に置き換えたTTC回路図をアップしてあったのですが、
以前追試をするも、私の実力不足からかその確認はできていませんでした。ただ、参考になればと思いアップしてあったのですが
、やはり自分で追試してみることが必要なのだろうなとは感じていました。
(注:以前アップしてあった回路図はやはり間違いがありました。この制作を通して訂正した回路図をアップしてあります)
も一つ、今までのところ、基本的に余計なものは何も付け足さないという基本的な考えがあって、トーンコントロールといった付加回
路には手を出すことはありませんせんでした。
ただ、それは実際に経験してみてないことになります。上杉さんの持論の展開をみても、一応納得する部分はありますが、それに
しても腰が重かったのも事実です。
一応自分のリスニングルームの環境も整ってきた段階で、次の制作へのモチベーションを考えていたときに、TTCの追試と上杉さんのTCへの持論の展開への敬意というか、確かめもしないで、持論を持ち出すことの負い目を感じました。
そんなことから、TTC(トリプルトーンコントロール)アンプの追試を試みましたので、そのレポートです。
まず発端は「初歩のラジオ」に掲載されていた山水のTTCを真空管回路に置き換えるという制作記事です。
その回路図はこちらです
※以前にアップしてあったものは間違いがありました、訂正してあります。
また、フラットアンプ構成に加筆してアップしてあります。その回路図はこちらです。
この回路図、要はBAX型NFトーンコントロールに中音用の回路を付け足すというものです。
まず、この回路で制作してみました。が、よく動きません。ケースを小さなものにしたために、トーンコントロール用のサブパネルを
使うようにしたのですが、このためチェックがしづらいのです。
また、トーンコントロールの回路の制作に不慣れということもあり、ミス配線が原因のようです。
ただ、この経験からいくつかトーンコントロール配線のノウハウをつかむことができたようです。
1)調整用のVRの3端子が入力側にくること
2)調整用のVRの端子は同じ向きにすると配線がしやすいこと
この失敗をうけて、それなら回路の簡単なLUX型TCに中音の回路を付加すればいいのではないかと思い、早速制作してみました
。結果は、またもや失敗でした。中音域のLRC素子が影響してしまい、トーンコントロールがバラバラということになってしましました。中域の変化が高域まで及んでいます。これは失敗です。
このときの回路図です。<これは失敗です!!>
そこで、再度BAX型トーンコントロールに挑戦ということになりますが、改めて制作源記事を読み返してみると、それなりに各音域
に影響がないように定数を設定してあるようです。そこで、とりあえず現記事に忠実に追試することにしました。ケースの関係から
相変わらずトーンコントロール用のサブパネルを使いますが、今までの失敗や経験から何となく製作のコツがつかめたようです。
こうしてできあがったのが、TTCトランス出力ラインアンプです。
詳しくは測定をしてみないといけないのですが、聴感上はうまくTTCが効いているようです。
こうして一応できあがったのですが、いくつか問題がありました。
1)ハム音があること
・・・・どうもトーンコントロールを構成する後段のグリッドへの配線にハム音が乗るようです。
この対策として、あまり好きではないのですが、この配線にだけはシールド線を使うようにしました。この結果、少しハムノイ
ズは少なくなりました。
2)TC段に使う真空管をどうするか
・・・・最終的に5670Wを使うことにして最終仕上げとしました。
源回路では12AX7を使っていますが、今回は出力段のECC99を使うためB電圧が低く(200V超)、12AX7系は使うこと
がはばかれました。そこで低いB電圧での使用される6DJ8(6922)を起用すべく考えました。ただ、これにも問題がありまし
て、というのもゲインが高くなりすぎるので、TCの前段は単段アンプではなくカーソドフォアロとすることにしましたが6DJ8が
カソードフォアロに使用できるのか不安になりました。(後で6DJ8をカソードフォアロに使用しても問題ないことは判明したの
ですが)
そこで目をつけたのが5670Wでした。ただ、ピン配列が独特なので、最初から制作し直しということにはなりますが、私に
とって初めて5670Wを使ってみるという経験を得られて他のは好かったです。ちなみにこの5670Wに灯を入れてみて
明るく輝くことにはびっくりしました。12AX7系のヒーターが点灯しているのかわからないことに比べると、こいはコウコウと
輝いてくれます、ケースの中に隠し込んでしまうのは惜しい、この輝きを楽めるアンプを制作してみたいと思った次第です。
3)カソードフォアロについて改めて勉強し直しました
お恥ずかしい話ですが、簡単にカソードから出力すればいいと考えていました。が、違うことがわかりました。詳しくは別項
に覚え書きとしてまとめておきますが、カソードフォロアについて理解したことは収穫でした。
ケース作り・・・今回別項で紹介します スペースが狭いため背面はあらかじめ配線しておく 主なパーツの取り付け完了
トーンコントロール部サブパネル 内部の様子 完成したTTCアンプ
バラックによるECC99の動作テスト
これは、TTCの動作とは直接関係ありませんが、最近はまっているトランス出力に対応するため、出力段は岩村さんおすすめの
ECC99を採用しました。初めて使う球なので、ロードラインを引いて動作の確認をしてみました。ちなみに出力トランスは、ハシモトのHL-20K-6(一次20KΩ、二次600Ω、最大許容DC電流30mA)です。
とりあえず、トーンコントロールアンプが完成しました。
最終的な回路図はこちらです。
<※気をつけてください・・・回路図中の5670Wのピン番号は違います>
駆動させてみて、まず思ったことは思ったよりトーンコントロールは効き具合が劇的なものではないことです。特に、中音域は低域
や高域に比べてその半分程度の効き具合です。でも、反面劇的な効き具合がもし現実なものとなれば、それって本当に必要なも
のなの?? という疑問がわいてきます。隠し味や調味料はほどほどに・・・ですかね。
そして、この制作を通して本格的なトーンコントロールアンプの制作を考え始めました。そこで、私のバイブルに新登場の上杉さん
の新バイブルからヒントを得て「TAT−1」を原型に本格的なトーンコントロールアンプの制作が始まりました。 そのいきさつは別
項で紹介します。
また、上杉さんの記事にあるように【入力切り替えのセレクターはコールドも切り替える】はその効果を確認できたことは収穫
でした。と、いうのもホットだけの切り替えだとゲインをあげていくと漏れた音が聞こえてきます。コードルも切り替えることでそのこと
はほとんどなくなりました。安心料かもしてませんが・・・。
兎も角もこうして、トーンコントロールアンプの一連の制作をしてみてその制作ノウハウをゲットしたことは収穫でした。これからまた
トーンコントロールアンプを制作するのかということは、ほぼないとは思いますが、貴重な経験でした。
<2016年1月17日追記>・・・・ハム音の対策
上記のように通常使用には問題がないとはいえ、ハム音はちょっと気になっていました。折しも#62のA-875のラインアンプを製
作中に<タムラのトランスは誘導ハムに弱い>という書き込みを見て、再度A-22のライントランスの対応を思い出しました。
そうです、このハム音は誘導ハムではないかと思い始めました。そこでいろいろ試行錯誤してみると、どうも出力トランスのサンス
イのHL-20K-6への誘導ハムではなく、どうもTTCトーンコントロール部への誘導ハムであることがわかってきました。そういえば、
私の製作例ではあまり使わないシールド線を使った見たことを思い出しました。
ならば、このTTC部への誘導ハムをカットするためにはどうしたらいいのか、思い出しました。鉄板です。早速試してみると、なんと
ハムノイズはぴたりと収まりました。
鉄板の取り付け 取り付けには菊座金を使ってアースをきちんととるようにした
ちなみに、配列の全体像はこちら
これをみると、ハシモトのHL-20K-6の誘導ハムへの対策は結構優秀なのでは?と思わせてくる
また、今回A-875のトランス出力のラインアンプを製作するに当たってコールド側の切り替えもしたくなったので、このアンプからは
取り外し、代わりに通常のホットのみの切り替えとした。
ホットのみの切り替えにしたので配線周りがかなり余裕ができた
こうして何とかアンプの存在を気にしなくて聴けるアンプにはなった。
とりあえず、TTCの追試という目的は達成できたのかなと思う。私はジャズはあまり聴かないので例の「サックスが浮かび上がって
くる・・・」とういうことはあまり感じないが、それでもMidをあげていくと、ボーカルがセンター上にはっきりと浮かび上がってくるという
効果は確認できた。また、ECC99とトランス出力の確認もできた。まずは私の中では、KP<またまたNHKの放送用語、完パケ>
である。
でも、こいつ、どこでどうやって使ってあげればいいのだろう? 確かに低域の不足しがちな小口径のSPシステムなどと組み合わ
せるにはいいのかもしれない。工房のメインのラインアンプ?! だが、さほど差し迫った必要感も感じない。TTCがなくても十分
な再生ができているといえばそうなのかもしれない。
まぁ、TTCあるいはTC(トーンコントロール)アンプの製作ができた、TCについていろいろとノウハウが蓄積できたということになるの
だろうことで完。いずれ必要になったときに使ってあげたいと思う。