6BQ5(T)PPの製作
真空管アンプの製作を再開してまもなくの頃、友人にあげようと6BX7差動PPアンプを製作した。どうせならUSBDACも内蔵してあげようと
と思って内蔵して組み上げた製作記#7の6BX7差動PPアンプであった。ところが、組み上げてみてUSBDACのレベルが低くて他の音源と
のバランスがよくない。どうしたものかと考えあぐねている間に時間がたってしまっていた。
この間、製作した真空管アンプも相当の数になって組み立てのノウハウも少しは身についたと思っている。
一方、USBDACのレベルの低さについてはFETを使って増幅回路を通してみることもやってみたが、ペルケさんのサイトにトランスを使った
レベルアップの手法が掲載されているのを知った。これは、簡単なことではないと思い、友人にあげるアンプにUSBDACの内蔵は諦めるこ
とにした。(まぁ、これでUSBDACのレベルアップについて方向が見えたことは収穫ではあったが・・・・)
さらに、使用した球6BX7であるが、たまたまアムトランスで入手できたのだが現在では入手が少し難しい状態だ。もし、友人の手元にいっ
ても保守管理の点からは問題がある。そんなこんなから、6BX7にこだわらず入手しやすい球を使って組み上げることを思い立った。
それにしても、いろいろ検討したがシングルエンドにすると新たにOPTをゲットしないといけないが、ISOが廃業の今日ではケース入りOPT
(見栄えの点から)、入手もむずかしい・・・、何とか現有のTANGOのPT・OPT・CH(いずれもケース入り)を活かせないかと検討を重ねた。
サイトも参考にしながら、最終的にたどり着いた結論が6BQ5(T)PPなのである。
これだと、電源トランス(GS-115D)の容量も何とかクリアできるし、FE-10-130というCHやFE-10-10というOPTも活用できる。6BQ5のペア-
も3ペア-所有している。
早速製作開始
シャーシ加工からだ、丸穴はドリルやホールソーを使うことで結構簡単に空けることができるが、問題はトランスの角穴だ。以前はドリルで
一列に穴を空けて、それをニッパーで切り開くという方法で行っていた。ただ、これだとアルミの板厚が2mmや3mmとなると、なかなか容易
なことではない。無理して空けると穴が汚くなってしまったりして・・・
と、いうことで最近の手法は角穴の対角線上にドリルで穴をあけてジクソーの刃が入るだけのスペースを確保する。この時、空ける角穴の
線上にこだわらなくても、とにかくジグソーで切り抜けば、その後ジグソーを何度か走らせることで思った角穴を空けることができることがミ
ソだ。大まかに空けて後はやすりで仕上げればいい。もっとも、最近はこの方法に慣れてきたのかジグソーで空けた角穴がほぼ完璧に近
くなり、やすりがけは仕上げやバリ取り程度までに慣れた。・・・・以上参考までに。
ジクソーで大まかに切り込む ほぼ四角く切り込めた
この時、最初からきちんと切ろうとせずに、
対角線という切り始めの位置関係を利用して
少しずつ切ろうとする線に近づけていくのがコ
ツです。
こうして、いつものこだわりの木枠と天板というパターンでシャーシ加工が終了。今回は友人にあげるので、天板だけでなく底板も必要
だろうと付けることにした。
木枠と天板・・・きわめてオーソドックスな配置だ 底板・・・安全面からも付ける必要があるだろう
回路は、これもオーソドックスな12AX7のPK位相反転を経て、6BQ5の三結のPPだ。
・・・いつものようにクリックすると拡大します。もどるはブラウザで。
組み上げるにはさほど時間がかからなかった。組み上げ完了した段階で、人にあげるので諸特性を測定することにした。
そこで、一つ問題が・・・・歪み率が右と左で大きく違ってしまったのだ。右がNFBなしで1W時1.2%ほどなのに対して、左はいろいろ試行
錯誤しても5.4%よりさがらない・・・。この違いはどこから?! ドツボにはまってしまった。
あれこれ思いつく限りのことはしてみた。(・・・・中、略) 最終的にたどり着いた結論は配線の仕方だった。
初段へのB電源供給部 電解コンデンサーの下のデカップリングの抵抗 最終的な組み上げのようす
上の真ん中の写真で、上の220KΩが左、下が右へ供給している。左は初段がすぐ近くであるのに対して、右はシャーシ右端なので、配線
材で延長して供給している。つまり、左は個のでパップリング回路が初段に近くなってしまっていてかぶるように配線してあったのだ。
そこで、右の写真のようにかぶらないように配線し直して近いが何とか配線材で供給するようにした。この結果、右も左も結構いい値を示
すことができた。
歪み率計・・・要は、総合歪みを示しているのだということ、電源回路のノイズが初段にかぶることによりしっかりと載ってしまっていたと考え
られる。
こうしてできあがった。
正面から 底板もしっかり付けた 電源スイッチはスペースの関係から右端に
出力は4Ω(黄)と8Ω(赤)
< 測 定 結 果 >
健康診断的意味合いでに、諸特性を計測してみた。
○動作電圧・・・上記の回路図に記入
○特性
入力対出力 周波数特性(1KHz 1W)
高調波歪み率(5) ダンピングファクター
○波形観察
1KHz 1W サイン波 1KHz 4W 1KHz 5W
頭がつぶれ始めてクリップしている
100Hz 1W 方形波 1kHz 1W 10KHz 1W 100KHz 1W
わずかにザグがある
○ 容量負荷 いずれも、右(赤)はそのままスルー波形、左(黄色)のみ負荷を与えた波形
10kHz 1W 出力オープン 10KHz 8Ω+0.1μF 10KHz 8Ω+0.47μF
○積分補正
10kHz 積分補正(右補正有り・・・左肩のひげが消えている、左補正なし)
○仕様
出力回路構成 6BQ5三結プッシュプルエンド
使 用 真空管 12AX7 ×2、6BQ5 ×4
最 大 出 力 5W+5W
無 歪 出 力 3.4W (所要入力 0.5V)
周波数 特 性 20Hz〜30KHz(−1dB)
全高調波歪率 0.1%以下(1KHz1W時)
ダンピングファクター 約 6.6(可聴域)
残 留 ノイズ 0.2mV以下
本 体 サイズ 310Wx209Dx153H(外寸)
消 費 電 力 70W
何とか、まとめ上げた。エージングを済ませて譲り渡したいと思っている。
簡単な説明書を付けてあげたいと思っている。