30A5_SE(UL)の製作



【きっかけ】

ストックしてあった球、30A5を使っていつかは製作してみようとは思っていた。この30A5という球、かつてはトランスレス五球スーパーなどに
使われていた。そういう意味ではオーディオ用のアンプには使われることもあまりないようだ。事実、ほとんど製作記事もないし、ネットでもとんど
見かけない。ただ、私的には、手持ちが有り、使わなくなって久しいこの球をいつか使ってあげたいとは思っていた。
しかし、いざ組み上げようとすると、そのヒーターが30Vがネックになってしまっている。それに、組み上げたところでアンプとしての有用性は
いかほどのものか・・・・ そう考えると、組み上げることに二の足を踏んでしまっていたことも事実だ。

そんな折、先の6EM7SE(UL)の製作に気をよくして、自分でロードラインを引いてみて製作する快感を味わい、手持ちの球の活用シリーズの
最後として30A5の製作を思い立った。また、最近ノグチトランスから発売されている【PMF−5WS】という出力トランスを使ってみたいという
こともその製作のきっかけにもなってはいる。
ただ、トランスレス五球スーパー用の球故に、100V前後のB電圧なので先に製作した初めて組んだアンプのパワートランスを流用することにした
ので、6GW8SEは解体することにした。6GW8SEは、いずれコンパクトをテーマに再度組み上げようと思っている。

【構想】


まず、その30Vというヒーター電圧の問題からだ。最初に思いついたのが、トランスレス球ということからAC100Vで点灯できないかということだ。
30Vだから2本で60V、残り40Vだから20Vの球を探してくればいいのだ。そうしている内に探したのが【WE408A】という球だ。ヒーター電圧は20V
でおあつらえ向き、ましてはWEである、特性的には6AK5と同等という。多分この球もその20Vというヒーター故に使いづらい球なのだろう、入手は安価で可能だ(バンテックでは800円(本)で売られている。)
ところが、最終的にこれはNGということになった。30A5のヒーター電流は0.15A、WE408Aのそれは0.05A。これらを直列につなぐことは。電圧的にはOKでも、電流的にNGなのだ。ネットで調べてみると回路的には不可能ではなさそうだが、このために複雑化するのはイヤなので、他
の手を考えた方が良さそうだ。
幸い、流用することにしたPTは、110V250mAと6.3V3.3Aの巻線がある。30A5のヒーターは2本で0.3Aなので専用のトランスを使い、初段には
PTの6.3V3.3Aの巻線を活かせばいい。ということで30A5のヒーター用にSELの基板用PT【PK−30030】30V0.3Aをチョイス。初段は、手
持ちの6AU6WCの三結として進めることにした。


【設計】


これがまた、やっかい。ほとんど製作記事はない。そこで6EM7SEと同じ感覚でエイヤッ!!とロードラインを引き、とりあえず回路図を書いてみ
た。

       クリックすると大きな図になります。もどるにはブラウザの戻るを使ってください>


OPTは先述のノグチのPMF−5WSをチョイスしたが、30A5の負荷は3.5KΩ負荷だ。PMF−5WSは5Kと7KΩ負荷だ。ただ、二次側には
4・8・16Ωがある。そこで16Ωに8Ωをつないで一次側3.5Kとして使う。ついでにSGタップもついているのでUL(ウルトラリニア)接続とした。

【製作】

          
               前面                           内部
                                                写真中央部は30A5ヒーター用トランス

OPTは先述のPMF−5WS、CHは同じ大きさのPMC−813Hを使用した。シャーシは定番の木枠とアルミ天板(木枠と同じ大きさ)。
B電圧のブリッジダイオードと電解コンデンサーは10Pの平ラグを利用して組んだ。パーツはほとんど手持ちを使った。カップリングコンデンサー
は指月の0.15μFのフィルムコンデンサー(実は、後でこれに助けられる・・・)。パーツについては特別なものを使っていないので、特に説明は要らないと思う。

【試聴・追い込み】

組み上げて、試聴。音が出るのだが、しばらくすると音が消えてしまう・・・。何がいけない?! テスターを当ててみると30A5のバイアスが出てい
ない。しばし、配線を追ってみると、なんと!グリッド抵抗がない!! なんということでしょう。単純なミスでした。グリッド抵抗を接続すると、ちゃ
んとグリッドバイアスが6.2Vほどでほぼ設計値となった。(一件落着・・・ お恥ずかしい・・・)

グリッド電圧を測ろうとしてテスターを当てると、音が回復するもまた出なくなる。 指月のフィルムコンデンサーには自己回復力があると聞いたこ
とがあるが、このおかげで助かったということか・・・

音が出て見ると、まぁ、それなりの音が出ていると思う。昔の電蓄よりはましかな?!(自己満足)
一通り、電圧をチェックするも、ほぼ設計値の値だ。

測定をして、追い込みをしてみた。

まず、測定してみてNFBの抵抗を検討してみた。

     NFB抵抗     NFB量(実測値)    歪み率(at 0.5W)
     2KΩ       -2dB          2.4%
     1KΩ       -4dB          1.4%
     670Ω      -6.5dB          1.4%


 以上から、NFBは1KΩとした。

次に、初段のカソード抵抗だが、当初は2KΩであった。カソード電圧を計測してみると

      カソード抵抗    カソード電圧
        2KΩ         1.157V
       1.8KΩ         1.12V
       2.7KΩ         1.4V

 以上から2.7KΩとした。

さらに特性を測定してみると、次のようになった。

       
             周波数特性                    ダンピングファクター                     歪み率

まぁ、こんなものかなと思う。 0.5W程度で使う分にはほどよい感じで音が出てくる。最大は2Wほどだが、実用上は1W程度だろう。

こうして、手持ち球の活用シリーズは最終段階となった。音もまぁまぁなので、時々聴いてあげようと思う。

手持ちの球はこれで全て活用してあげたということになり,アンプの製作も一段落といったところだろう。

10EW7_SEPPや6GW8SE(UL)は、すでに配線済みで、一部パーツがそろい次第完成となるので、これから何か製作したいとすれば、その球を
求めるということになる。実は、6CW5が2ペア-手持ちであるのだが、6CW5の三結は6RA8に近いとのことだが、どうなのだろう。元気が出たら製
作してみようと思うが、新たに球を求めるにせよ、それだけのモチベーションがわくアンプの構想がでできたら考えようと思う。