6EM7SE(UL)の製作

【きっかけ】

ひょんなことから6EM7をゲットすることができた。
柳沢さんの6EW7SEPPを作りたくなったが、6EW7が入手できそうもない。以前、クラシックコンポーネンツに立ち寄った際に
シルバニアで2800円(本)であった記憶があるが、その後HPにも掲載がないし・・・

そうこうしているうちに、ふと立ち寄った【フロービス】のHP、なんと10EW7のペアーがあるではないか。10EW7は6EW7のヒータ
ー電圧違いの球。ヒーター電圧さえクリアできれば問題ない。即、注文。併せて同じTVの垂直偏向用の球で6EM7(GE)もゲット。

このフロービスというHP、パーツの販売だけでなく製作記事も掲載されておりおすすめ。何を隠そう2WayCHデバイダーの製作
も、このフロービスの製作記事が大いに参考になった。ちなみに、通販でのゲットであったが対応はしごく良かった印象がある。

さて、本題だがこの6EM7という球、本来はTVの垂直偏向用の球であるが、μ=70とP0=10Wの二つが封入された複三極管
である。いわば、6EW7と同様な球と考えていい。さらにいえば、6BM8や6GW8のGT管版といってもいいかも知れない。
ゲットしたのはいいが、どう使おうか考えている内に半年ほどたってしまった。

6GW8のコンパクト版リメイクや10EW7SEPPを作っていると、6EM7をどう料理しようかという思いがよぎる。さりとてさほど製作記
記事も掲載されていないし・・・。そんなこんなしている内に何とかロードラインの理解も進んで、自分である程度設計もできるよう
な状況になってきた。そこでいくつかの書籍やHPを参考に、自分でロードラインを引いて設計して組み立ててみようと思った。幸
い、データシートはフランクリンのHPにあるので、データ的には問題がない。

【設計の構想】

実際にやってみると、いろいろ戸惑うことがあって不安も隠せないが、そこは真空管というアバウトなデバイスに期待してエイヤ!
の感覚でやってみることにした。


まず、出力部の検討から始める。Eb=200VとしてRL=3.5KΩでロードラインを考える。
バイアスが32VほどになるのでEbb=200+32=232V、このときのIp=46mAと想定。

これから、バイアス抵抗は、Rk=31V÷46mA=673.9≒680Ω
OPTはノグチのPMF−6Wを使う予定。
PTは250V100mAくらいがとれればいいので、ノグチのPMC−100MとかPMC−130Mが候補になる。さほど電圧が高くないこ
と(電圧降下の分で発熱も抑えたいので)、許容電流の余裕からPMC-130Mをチョイス。
初段の設計は、ごく普通の3極管の回路を参考にする。(一応ロードラインは引いてある)

以上の構想に、ネットの記載等を参考にして変更を重ねて、最終の回路が以下のものです。

            (クリックすると大きな図が見れます、もどるはブラウザのもどるです)

【製作】

製作は、定番の木枠とアルミ天板です。今回アルミ天板に縁は付けずに木枠と同サイズのアルミ天板を載せるデザインにしました。

         
                 全 景                           裏 側
OPTは、流用したPMC-6Wです。二次は8Ωオンリーです。一次は、3K・5K・7Kのユニバーサルタイプです。3.5KΩ負荷も検討しまし
たが、三極管の場合は高い負荷の方が出力は減りますが、歪み的には有利ということで、今回は5KΩ負荷とします。
CHは最近発売されたPMC−813Hです。PTも今回のために新規に購入しました。
他のパーツは手持ちを活用です。そのため、B電源に使用した電解コンデンサーは回路図のものと違っています。
 黒の電解コンデンサーは150μF450V、青色の電解コンデンサーは68μF400Vです。

【試聴・追い込み】

完成して、即音出ししてみました。
全体的には低中域によった感じです。低音がしっかり出ていて、ですが高音もしっかり出ていています。最初NFBなしで聞いてみましたが、
やはりちょっと重たい音でした。そこで、NFB=1.5KΩで聞いてみました。重さは少しとれた感がしますが、音の傾向は変わりません。
エージングで変わるかなと思って、少し聞いているとPTの発熱があります。ひどく熱くなる訳ではないのですが、気になります。
そこで、6L6G_SEで実証済みの電源ダイオードをPT直付けからリード線で引き出す方策を試みてみました。これでPTの発熱はほとんど気
にならなくなりました。(ダイオードって結構発熱するんですね・・・)

製作した翌日に測定をしてみました。
        
               周波数特性                       入出力                  歪み率(カソード抵抗1.5KΩ)

周波数特性、入出力はそれなりのものだと思うが、歪み率はちょっとショックだった。他の製作記事からあまり良くないことはわかっていた
が、これ程とは・・・と、思う。

そこで、何とかならないかと考えていたところ、「初段のカソードを増やすことで音がいきいきとなった・・・」という書き込みを思い出した。
早速、初期の1.5KΩから 1.8KΩ、2.7KΩ、3.3KΩと変えてみた。 増やすことで歪み率が改善された。また、音もよりクリアになった感じが
する。測定をしてみると次のようになった。
       
           カソード抵抗  1.8KΩ                    2.7KΩ                    3.3KΩ
           いずれも、出力2W程度までのもの、1.8KΩのみ100Hz・1KHz・10kHzを測定、他は1KHzのみ、3.3KΩだけ縦軸12%まで表示

これを見ると、だんだん良くなってきていることがわかるが、3.3KΩまでにすると1W以上はよくなるも1W以下ではかえって良くない。
この結果から、カソード抵抗は2.7KΩとすることにした。こうして前述の回路図となった。

             
       工房のいつもの場所でエージング中            出力段の第2ユニットはさすがにヒーターも明るくともる

出力1Wほどのかわいいアンプであるが、6EM7という球、いいですね。小ぶりでかわいいものです。BGM的な使い方ならいいかも知れません。
D.F.もありますので、結構低音も出ていて、私好みの音だと思います。
分からないなりに、いろいろカットアンドトライ的なところもあった製作でしたが、自分でロードラインを引いて見たりして結構楽しめました。
ひとつ、スイッチはPTの後ろに付けましたが、「使い勝手がよろしくない!!」 でした。

                

   ※我流的なところだらけだと思います。諸兄に不都合など何か教えて頂けるならうれしいです・・・

【最終仕上げ】

最初の仕上げでは、出力段のカソードは680Ωとしたのですが、ネットなど参考にして820Ωで組み上げました。その特性が上記のものですが、
これでもいいのですが、はやり最初の設計が気になります。そこで、設計通りに出力段のカソードに680Ωを取り付けようすを見ることにしました。
音の印象は、少しベールがかかっている感じですが、押し出しは強くなったような気がします。とりあえずこれで特性を再度測定してみることにします。