50EH5パラSEの制作

6RA5パラシングルアンプの制作に気をよくしていると、また何か作りたくなってきた。そこで思いついたのがトランスレス球50EH5だ。

この球、かつてはクリスタルピックアップのポータブル電蓄などで単球アンプとして結構活用されていた。ヒーターが50Vなので、2本でAC100Vで点灯でき、入力感度も高いのが特徴的だった。

この球を使うにつけて、いくつか検討してみた。

まず、入力感度が高いこと
 このことは、多分単球で駆動できるだろうと思うが、調べてみるとその入力電圧は0.3Vほど、もし、NFBをかけたとするともう少し高くなるはず。そうなると単球駆動ではおぼつかない恐れがある。だが、元々高い入力感度なのでさほどの増幅率は必要ないはず。いろいろと考えてみた末、たどり着いたのが6AU6WAの三結だ。これでもμは21程度なので、過分すぎるかもしれない。NFBをかけることとVRのロスを考えて、これでいくことにした。

つぎに、6AU6WAには小型のヒータートランスをあてがい、50EH5のヒーターはAC100Vを使うことにした。もちろん、ビリビリがいやなのでヒーターアースはできない。ハムが心配になる。
 このことは、ビリビリ防止をかねて絶縁トランスを使うことにした。以前購入してあったものなので70AV、ちょっとオーバースペックかもしれないが、使えるだろうと思う。ハム対策としてはB電源にチョークやフィルターを厳重にして対処することにした。

あとは、エイヤッ!で書いた回路図が以下のものである。 ※現在は6AU6→6C4WAに変更してあります
           
クリックすると大きな画面になります。戻るにはブラウザの戻るを使ってください。

         
         組み上がった50EH5パラシングルアンプ                      内部の様子
       
中央の大きなケースがが絶縁トランス、縦長のケースはチョーク   簡単な回路の割に小さなシャーシに無理矢理くんだので結構込み入っている

 測定してみると、最大出力約1.4W このときの入力は0.3Vほど(入力感度高っ!!)。NFBは100KΩで約−15d<実測値>かけてある。もう少しかけて入力感度を下げることも可能なのだが、NFBを深くかければけるほど音が薄っぺらくなってしまうので、視聴の結果この値とした。
 心配したハムは全くなし、静寂の中から音が飛びだしてくる。厳重なB電源のフィルター効果かもしれない。

音はというと、結構いい音になっていると思う。出力の小ささは仕方ないとしても音質的には十分満足できる音だ。単にBGM用なら十分だ。ただ、強いていえば先の6AR5パラシングルアンプと同じで、使われていなかった球たちを使ってあげたという感がしなくもない。これだけの手間暇かけて製作する価値は「使ってあげたい」という一念だけだろう。
しばらく聴いていたが、さすがに50Vの明々とともるヒーターは、それなりに魅力的だ。気が向いたら追い込みをしてあげたいと思っている。


初段を変更しました!!

入力感度が高いことはずっと気になっていた。初段は6AU6の三結として、またプレート電圧も100Vほどの供給、プレート抵抗も47KΩとして増幅度を下げるように設計してみました。増幅度(μ)は20以上のはずで、後は組んでみて考えようという路線でした。
結果は高すぎました。NFBを大量にかけても見ましたがそれでは音の鮮度も下がってしまいました。やはり初段の変更が一番かなという結論になりました。入力感度を下げるには、要は増幅度(μ)の低い球にしてあげればいいのだ。

   余談ですが、この6AU6、JAN球やNOS球をいろいろ差し替えましたが、どうしてもハムやノイズが取り切れません。
   何気に挿してみた東芝の6AU6、ピタッと静かになった。すごいじゃん、made in JAPAN!!
   ・・・そういえば、ほかのHPでEQアンプに使っていた6AQ8も、6922やUSAのより国産のがいいという記事があったこ
   とを思い出しました。

考えたことは、
 ○MT7ピンであること(ほかのものだと、シャーシ配列から何から大幅な変更になってしまう・・・作り直しはしたくないし)
 ○増幅度はμ=20以下のもの

さて、どうしたものかと真空管ハンドブックをはじめいろいろ当たってみました。その結果、見つけたのが6C4という球です。この6C4という球は、12AU7の片ユニットと同等と考えていいと思います。ちょうど6SN7の片側を使って6J5があるのといっしょのパターンです。ネットで調べてみると一本1700円・・・うーん、考えちゃうなぁ。折しも所用で上京することがありましたので、ついでに秋葉原によって探してみることにしました。12DT8を購入する計画もあったので、立ち寄ったクラシックコンポーネンツさんで6C4WAを見つけることができました。1本1000円、2本購入してきました。

この6C4WAという球、μ=19だしヒーターも6.3VでMT7ピンですので、そのまま挿せるのですが6AU6とはピン配列が違います。当然、配線のし直しが必要です。それでも、ヒーターピンは同じですからさほどの作業量ではありません。

配線をし直して、早速音出し・・・・OK、OKです。入力感度も低くなりました。(測定してないので正確ではないのですが、おそらく0.5〜1V位の間かなと思います) ずいぶん使いやすいアンプになりました。音も、中低音の厚いパラシングルアンプの特徴がよく出ています。決して電蓄の音ではありません。

しばらく聴いてみましたが、いいようです。むしろ感度が低くなった気さえします。プレート抵抗を高くするとかNFBを浅くするとか方策はありそうです。いずれにしても、まぁ満足いくアンプになりました。