24時間制限 71.5km  

第10回日本山岳耐久レース 

 

   2002年 10月13日 13時スタート (奥多摩)        

出走 1301名 完走 905名

成績 総合482位 19時間12分26秒 (ゼッケン 5102)

参戦記

     スタート地点は学校のグランドである。1300人の参加者が一斉にスタートし全員がグランドから出るまでに3分かかった。私がスタートラインを横切ったのは1300人中728番だった。(計測システムにより後でわかる)広い道路は全ての車が規制され、ドライバーはザックを背負って小走りする異集団の通過を待っていてくれる。短パン、ランニングシャツの者もいる。この服装にザックはなんとなくアンバランスである。山をなめてませんか! 

     初参加の私の作戦。@走らないで早歩きで通す。A昼間の明るい時間帯にできるかぎり距離を伸ばす。B食べながら歩く。C疲れる前に主食をとる。D立ち止まった時に多くのことをこなす。E下りの際、ひざに過度のショックを与えない。(右膝が弱いので)F上り坂は階段を使用せずわきの斜面を歩く。Gコースを絶対に誤らないこと。以上作戦は良かったが・・・・。

     スタートから約20kmの区間(第一関門)は参加者が数珠のように並んでいる。そこで“もよおしたくなり”隊列から離れると、順位はどんどん降下する。ファスナーを下げている間に5人。処理している間に20人。上げている間に5人。身つくろいをしている間に5人。計何人に抜かれたのでしょう。子どものころ歩きながら放尿した経験があるけど・・・・いい年をしたおじさんがそんなことをするわけにはいかない。スタート前に全てを済ませておくことが大事。       

     一番辛かったのは35km地点の三頭山の登りだった。7km先の第2関門でリタイヤしようかとさえ思ったが(自分だけ苦しいのではない)と思いなおすことにより“うさぎと亀”の亀のごとく、休まなければいつか着くだろうと歩き続けた。作戦である早歩きは三頭山でつきてしまった。

     膝は笑わない。三頭山を下るころから膝は笑うどころか凍てついてしまった。それも両膝である。荷重の全てを膝で受け疲労の塊がそこに定住してしまった感じである。足場の悪い下り道は慎重そのもので、いつもなら牛若丸のごとく?降りるのだが・・・・・膝は笑うどころか泣いていた。

● 膝の疲れの取り方は、高いベンチに座り両足を宙ブラリンにすると効果あり。槙寄山山頂ではずーっとそうしていたかった。

     寂しさ。暗くなったころから前後の間隔が開いてきた。前も、後ろをふりかえってもヘッドランプの明かりが見えないことはあたり前。寂しいことは事実であるが、「先を急ぐ」ので深く考えてはいられない。第2関門までの途中では、下界の集落の灯火が見え隠れするのでホッとする。三日月も星もでているのだが杉林に入ると真暗闇であった。第二関門(42km地点)から御前山(846km地点)までは追い越す人も居ず、追い越されることもないほど人気はなし。寂しかったナー。

     スタッフ。夜も徹して要所にいてくれた。まばらに通過する参加者に「ここは醍醐丸」「ご苦労さま〜」「頑張って〜」と声をかけてくれる。この人気に接すると疲れも一気に吹き飛んでしまう。スタッフの皆さん、テントも発電機も担ぎ上げご苦労さまでした。寒かったでしょ。

     道をなぜ誤らないか?「夜、道を誤るのでは?」このことが出場前の大きな不安であった。案ずるより産むが易しである。第一関門までの明るい時間帯は前後に人がおり地図すら見る必要もなかった。また、主催者により約500m毎に直径5cmぐらいのLEDランプが木に取り付けられ点滅していた。この赤い点滅灯を暗闇に発見すると「お!ルート間違いなし!」と確信がもてた。そして、日本山岳耐久レースの白い看板も何箇所かにあった。ヘッドランプは視野がせまく前方のみ照らし不要な分岐も目に入らず、心配過剰だったといえる。
     コース図。コース図とコンパスは必携品である。オリエンテーリングを趣味とする私にとって、この2つがなければ手足をもぎとられたようなもの。コース図は磁北線を記入したものをB6サイズに編集し、1回の折りなおしで後半が1目で見れるように工夫した。更に、要所に通過目標時刻を予め記入。ハイキングのコースタイムのほぼ2倍のスピードで走破しないと制限時間におさまらない。

     眠気に勝つ。これは無理なことである。第二関門で稲荷寿司をほうばり再スタートしたのは午前零時を少々超えていた。腹も満たされ時間的にも睡魔が襲う頃である。それはまぎれもなくやってきた。御前山に登り(標高差400m)次の大岳まで(朝4時)はヘッドランプの灯りが右に左にゆれ動き、酔っ払いのごとくである。この11kmの区間が最も眠かった。朝5時頃になると目がさえてきた。ヘッドランプをザックにしまった6時には徹夜明けの気分で眠気はどこかに消えたものの、頭はボヤっとしており疲れが体全体に現れ、とうとう日の出山を目前にして、ザックを下ろし大の字に横になってしまった。疲れだけのために横になったのはこの1回だけである。そのまま沈没しそうだったので、気を入れ5分後には歩きだした。

     失敗したのはヴァーム。体脂肪の燃焼効率を高めるという人気の商品である。飲料水はルールにより2リットル以上持参となっている。私はヴァームを溶かした水2リットルとポカリスエット0.5リットル持った。ヴァームは初めの500ccは飲むことができたが後は体が受け付けてくれなかった。気持ちが悪くなり、無理すると吐き気さえ・・・・。公式給水地点(第二関門)までポカリスエットで耐えた。疲れた時に飲むポカリスエットはきわめて甘く感じ、後をひいた。半分は生水を持つべきだった。第二関門の公式給水所でヴァームを薄めたがこれでも飲めなかった。空けて真水にしたかったがルール上2度も給水を受けることができない。万が一にそなえ15km先の水場までこのヴァームを捨てなかった。重いお守りだった。

     必要以上の買い物が一つあった。それは高輝度LEDのヘッドランプで3、5、7灯切り替え式である。3灯より7灯の方が明るいと思っていたが違った。3灯の方が明るいのである。3灯型なら半額で買えたはず。歩きながら多灯だと何故暗いのか考えた・・・・電圧降下、1灯当りの電流値が減少、容量不足・・・等など。メーカーはLITGT TOOL.8900円。固定バンドは頭の周囲と脳天で3本に分かれておりフィット感は良好。電池消費量も少なくGOOD
商品。
     もう一つの笑えぬ失敗はこれ。ついつい美形のお尻に気をとられ一時的にオーバーペースになったこと。この20代と思われる女性、世のため人のためとスピードをすこ〜し落としてくれれば、おじさん楽だったのに・・・・。黄色のキャメルバッグを背負い、黒のタイツでイカったな〜〜〜。どこで振り切られたのだろ〜?登山の場合、目線は前行く人の尻あたりになるのはあたりまえ。でも、こんな色目を使えるのもスタートから3時間程度。以降は疲れて何にも考えられないし、あたりも暗くなってきて男か女かババ様かわからなくなる。朝まで追いかけたという勇者もいた。

     まだまだ失敗はある。それは身に余る高額パンツを初めて着用したためケツズレを起こしたこと。イヤ〜動くたびに痛むこと、痛むこと。パンツの縫い目が尻の割れたところに当たり(入り)・・・詳細に説明できないのが残念ですが・・・・。既に詳細。これはF社の吸汗・即乾スポーツパンツ。これをワコールのコンデショニングウエア(通称CWX,そうイチローがモデルになってるタイツ)で覆ったのでよけい痛かったのかも。いつもの猿股がよかった。縫い目はサイドにもっていくようF社に意見しなくては・・・股ズレは聞いたことがあるけど、ケツズレとはネ・・・参った。参った。
     さーこのCW-XのPR。嘘か本当か?・・・・・結果は本当。71km走ったにもかかわらず翌日、翌々日になってもさほ筋肉痛が発生しなかった。不思議である。優れ物だ。ワコールは女性の為の企業にあらず。走行中の蓄積疲労感はやむ得ない。
欲を言うと、パンツ部分はメッシュにならないかな〜〜。

     驚いたことは、登山道のいたるところに参加者が討ち死にしていたこと。ヘッドランプをつけたまま、夜空を照らし眠っている者。おにぎりを抱えたままうなだれている者。薄着(走る服装)のまま11度の気温下で睡眠・・・・そのまま↑・・・・。寒さで起きるようだが、大きな事故が起こらないことが不思議。リタイヤ400人。完走率70%は納得できる数字である。マットを敷き防寒着を着込み爆睡してる者もいたな〜。24時間制限なんだよ!起きろ!

     関心があったのは計測情報をインターネットで流したこと。スタートに始まり各関門での通過者と時刻が各家庭で確認できる仕組みである。関門ではアンテナを手にしたスタッフが参加者のシューズや足首につけられたデータキャリア(タグ)の情報を読み取っていた。誤読があった場合に備え、ゼッケンNO.も控えていた。この業界ではRCチップと呼んでいる。このシステムによって、家庭では「お父さん、第一関門を682位、5時間27分で通過。“頑張っている”」とわかります。(電源はスタッフが担ぎ上げた発電機)

     今回、風邪が完全に治ってなかったようで鼻がすっきりせず、ウエストバッグからテイッシュをだしてはかんでいた。これがけっこう厄介で、足元が危ないのでどうしてもスピードを落としてしまう。前方を行く人が手鼻をかんでいるのをみてコレダ!以降、真似をした。切れが悪いのでぬぐいさるのは木の葉っぱ。それほど、立ち止まるのが惜しいんです。汚くてごめんなさい。いやー、鼻で呼吸ができないと口で補うので口内が乾いてしまい、喉が乾きいつもよりこまめに水を飲んでしまった。ゴール後、声がでなかったのは口で呼吸をしていたので喉がやられたのだろう。

     特製パン。疲れてくると、入るものもなかなか入らない。出るものは出る。特製のパンも後半は水といっしょに飲み込んだ。この特製パンとは我が必殺技。お披露目しましょう。レーズン入りのバターロールを中割しソーセージを詰め込み、パン全体をつぶしコンパクトにする。それをウエストバッグに小分けし歩行中食べる。レーズンは水気があるから食べやすいはずが、疲れてくるとそれでも飲み込みずらかった。そんなときは水で押しこんだ。ソレホド過酷。

     いつも、山登りには煮干や少量のウイスキーを持参する。今回、忘れずに煮干を20匹ほどウエストバッグに詰めたが・・・・噛み砕いた煮干が口内の水分をすっかり吸い取ってしまうので、いつまでも喉を通らない。口の中は粉、粉、粉。疲れてくると、ウエストバッグから漂う煮干の匂いも悪臭に感じ・・・・たいへんでした。

もともと匂いに敏感なんもので・・・ネ。

     聞かせたくない話だが、話したいこと。水分を補給した後や小休止した後の歩行再開直後、腸の働きが活発になるようで“おなら”をひんぱんにもよおした。前後に灯りがないことを確認し、“我の推力はこれにあり”と思い切って連発。闇夜に潜む動物は「なんじゃこの人間は!」といぶかってたことだろ〜。それにしてもよく出たな〜〜〜。

     靴ズレ防止。私の足指は素直でない。右足の中指は薬指に3分の1覆いかぶさっている。だから長距離歩くと薬指にタコができ痛みを感じる。その防止策として薬指に傷バンソーコーをはり、5本指靴下をはきそれぞれ分離させた。これはアシックスの丈の短いもので、くるぶしの下までしかないが腰が強く脱げないすぐれもの。高いヨ!さらにその上に登山用の靴下をはいた。左足は外反母趾と同じ形状で関節がそれは見事に飛び出ている。若かりしころ柔道による脱臼を放置していた為だ。これは特に痛いということはないが、左右同様の処置をした。大成功。

     さー問題のシューズ。下見の際は愛用の軽登山靴を使用したものの下りの際、爪先が痛く散々だった。今回、軽量化も考慮し3つのスポーツ店を物色しその挙句サロモンのXa pro gtxを選んだ。選択の基準は、@地面のグリップ力、A水気に強い、B荷重がかかっても形状がすぐにくずれない、C土踏まずを押し上げるフィット感、D踵面がR状になっている。以上の5点である。靴形状は外人向きで幅狭だったため通常より5mm大きい26cmを購入。レース中、爪先も痛くなく快適であり今回の装備の中で満足の1点だった。専門店のスタッフの方々、アドバイスをありがとう。

     ザック。必要と思われる物品をかき集め22リットルのザックに入れてみたが、入りきらず、35リットルのザックに決定。結局、初参加ということもあり装備に万全を期した結果であるのでいたしかたない。ザックはドイター製、私の所有する中で最も背負いやすく申し分なし。背中とザックの間に空間ができる形状で硬めのヒップサスペンションもフィットする。22リットルのザックより500g重い1.5kg。

     総重量は12kg。レースには重すぎることがわかっている。極力、ザックを圧縮し振動防止につとめた。2リットルの水も通常のポリタンなら減るに従い空間ができ水がチャポンチャポン揺れ、気になるのだが今回チュ−ブ式にしたので水が減ってもタンク内部に空間ができずよかった。

     ストック(ステッキ)を使用する登山者が最近増えている。私は一昨年まで年寄りのようだ・・・と見下してきたが、補助具として有効だったことをスノーボードのハイクアップ時経験しているので、膝のトラブル発生にそなえ1本持参した。リタイヤするにも自力で下山しなくてはならないのでネ。ホント、過酷。自信がなければエントリーできないヨ。今回、30km地点から両ひざに疲労が蓄積し痛んだものの通常の過労と判断し全工程使用しなかった。ストックは保険さ。

     頭の保護。帽子はムレるのでもともと嫌い。ただ流れでる汗がわずらわしいので白色のヘアーバンドをいつもしている。汚くなってきたので今回新調。ヤマハからエレッセに。メーカーはどうでも良いけど。口の悪い友人は頭に包帯している・・・と言うがリストバンドと共に便利な小物である。今回ヘッドランプが重みでしだいに下がり、ヘアーバンドがずり上がる不具合があった。幅広タイプを使用しその上にヘッドランプのバンドを重ねるとおさまりが良いだろう。
     万が一・・・に備え、2つ持ったものは、コース図、コンパス、ランプである。

     最後に、なぜこんなレースに参加したか?自分でもよくわからないが平地の70kmは無理だろうが、山なら歩けるのではと思っただけ。なんといっても起伏があって楽しいじゃありませんか!舗装もしてない山道を!山が好きなんです。

     コースのあらまし。五日市会館前の学校(標高170m)をスタートし登山道を登り約20の山頂をきわめ、約71.5kmを踏破するものである。標高の最も高い山は三頭山1527m。公式給水ポイントは月夜見第二駐車場 1.5リットルのみ。

     途中の成績

スタート 728番            五日市会館前

 第一関門 682位  5時間27分51秒 浅間峠      22km地点

第二関門 504位 10時間52分15秒 月夜見第二駐車場 42km地点

第三関門 468位 16時間29分32秒 御岳山(長尾平) 58km地点

 ゴール時 482位 19時間12分26秒 五日市会館前   71.5km

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