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・音楽としての謡曲

  謡曲には、下に示す音階によって作曲された吟(ぎん=うた)の部分と、詞(ことば)の部分があります。 吟は、豪壮な感じの「強吟(つよぎん)」と歌うような感じの「弱吟(よわぎん)」があり、発声法や音階が異なります。

  オペラの音楽や伴奏にあたる「囃子(はやし)」は、笛(能管)・小鼓・大鼓・太鼓によって演奏されますが、太鼓が入らない曲もあります。囃子には、謡の伴奏と謡を伴わない楽器だけの演奏とがありますが、囃子の音階は、下に示す音階とは異なり、能独特のもので、吟の旋律とは必ずしも合いません。どちらかというと、その場の雰囲気を出したり、舞の拍子に合わせて演奏されます。謡の伴奏の時は、謡のリズムにテンポを合わせ、場の雰囲気を高揚させます。

 能管(のうかん)は、横笛で7つの指孔があります。竹製で長さ1尺3寸(約39Cm)、孔の部分を除き桜の皮を薄く切ったもので巻き、漆で塗り固めてあります。能の楽器の中で唯一旋律を奏でます。歌口が他の横笛にくらべ大きく、音を出すのに大変な稽古が必要です。

 小鼓(こつづみ)は、桜の木で作った胴の両側に2枚の皮をあて、調(しらべ=麻の紐)でゆるく縛ってあり、長さは8寸3分前後(約25Cm)です。打つときは、左手で持ち肩にかつぎ、右手で打ちます。打つときに左手の指で強く握ったり弱く握ったりして音色に変化をつけます。皮は、2才駒(馬)の皮がよいとされています。湿度と温度に非常に敏感で、演奏中もたびたび息を吹きかけたり、調子紙(打たない方の皮を湿らせて音色を調整するための和紙)を使って演奏します。何十年も使い込んだ古い皮ほどよいとされています。

 大鼓(おおつづみ)は、大革(おおかわ)とも呼ばれ、小鼓と同じように胴に馬の皮をあて、麻の紐で張ってありますが、張りのある音を出すため演奏の直前まで革を炭火で焙って乾燥させます。そのため傷みが激しく、小鼓と違って革は消耗品です。音も小鼓より高い鋭い音が出ます。長時間の演奏の場合は、途中で音が悪くなるため、焙りたての革と変えることもあるようです。また、演奏中に破れることもあります。大鼓のかけ声は、小鼓の柔らかい感じの声とは対照的に、男性的です。演奏の時は、小鼓も大鼓も、床几ににかけて演奏します。

 太鼓は、樫または欅の木で作った胴(直径8寸5分前後=約26Cm、高さ4寸6分前後=約14Cm)に牛革を貼り、麻の紐で締めてあります。演奏するときは、台に据えて床に置き、2本の撥(ばち)で打ちます。撥の当たる部分には、撥皮と呼ぶ小さい丸い鹿皮が貼ってあります。演奏の時は、笛と同じく舞台の床に着座して演奏します。

 

【強吟の音階】

【弱吟の音階】

   


・観世流謡曲の曲目・

<曲順・月別一覧表>

脇能(初番目物)

(1月)...神歌(翁),老松,高砂,鶴亀,難波

(2月)...弓八幡

(3月)...嵐山,淡路,右近,志賀,白髭,西大母,竹生島,寝覚,氷室

(4月)...代主,養老

(5月)...江(野)島

(6月)...賀茂(加茂),九世戸

(7月)...東方朔

(8月)...放生川

(9月)...呉服,逆矛,道明寺

(10月)...大社

(11月)

(12月)...絵馬,和布刈

(不定季)...玉井,白楽天,輪蔵

二番目物

(1月)...巴,朝長

(2月)...箙

(3月)...俊成忠度,忠度,田村,知章,八島(屋島)

(4月)...兼平

(5月)...頼政

(6月)

(7月)...生田敦盛,通盛

(8月)...敦盛

(9月)...清経,経政(経正)

(10月)

(11月)...実盛

(12月)

(不定季)

三番目物

(1月)...二人静,東北

(2月)...梅,雲林院,胡蝶

(3月)...釆女,鸚鵡小町,小塩,西行桜,源氏供養,千手,誓願寺,熊野,羽衣,吉野天人

(4月)...大原御幸,杜若,草子洗小町,藤

(5月)

(6月)

(7月)...関寺小町

(8月)...姨捨,芭蕉,楊貴妃

(9月)...井筒,江口,住吉詣,野宮,半蔀,仏原,松風,身延,六浦,夕顔,遊行柳

(10月)...定家

(11月)...葛城

(12月)

(不定季)...檜垣,吉野静

四番目物

(1月)...望月

(2月)... 安宅,花月,室君,弱法師

(3月)...芦刈,桜川,墨田川,摂待,東岸居士,道成寺,百万,藤戸,船橋,盛久

(4月)...蟻通,歌占,善知鳥,雲雀山

(5月)...木曽,楠露,小袖曽我,夜討曽我

(6月)...鷺,水無月祓,

(7月)...禅師曽我,天鼓,班女

(8月)... 雨月,女郎花,小督,七騎落,春栄,蝉丸,木賊,三井寺

(9月)...阿漕,梅枝,鉄輪,通小町,菊慈童,砧,恋重荷,俊寛,正尊,殺生石,

     卒都婆小町,大仏供養,玉葛,鳥追舟,錦木,橋弁慶,花筐, 富士太鼓,

     枕慈童,松虫,三輪

(10月)...柏崎,咸陽宮

(11月)...三笑,忠信,龍田

(12月)...鉢木,巻絹

(不定季)...藍染川,葵上,浮舟,景清,邯鄲,現在七面,高野物狂,自然居士,土車,

      唐船,仲光,錦戸,放下僧,籠太鼓

切能(五番目物)

(1月)...金札,野守

(2月)...海士,春日龍神,当麻,羅生門

(3月)...国栖,鞍馬天狗,皇帝,須磨源氏,第六天

(4月)...石橋,鵺

(5月)...鵜飼

(6月)

(7月)...大江山,土蜘蛛

(8月)...安達原,絃上(玄象),融

(9月)...一角仙人,岩船,烏帽子折,熊坂,項羽,鍾馗,猩々,大瓶猩々,張良,飛雲,

     紅葉狩,雷電

(10月)...昭君,谷行

(11月)...車僧,小鍛冶,船弁慶

(12月)

(不定季)...碇潜,合浦,舎利,善界,大会,松山鏡,山姥,龍虎


謡曲の分類について

  能を分類する方法は、目的や着眼点によって、いくつかありますが、ここに紹介した方法は、番組構成上からの分類です。

脇能(初番目物):

  一日のプログラムの最初に置かれる能で「神能」とも言います。多くは、前シテが神の化身の老翁、後シテが神体です。天下太平、国土安全が主眼です。

二番目物(修羅物):

  本来は、生前の戦の罪によって、死後、修羅道に堕ちた武人たちの苦しみを、描くものです。しかし、現行の曲においては、修羅道の苦患の場面は後退し、生前を回想する戦物語(多くは敗戦談)が主眼となっています。

三番目物:

  鬘(かづら)物とも言います。女性をシテとし、歌舞中心の優美な場面を展開します。

幽玄の情緒が最も濃く、舞は、夢幻能では、情感の高まりとして設定され、現在能では劇中舞踊の形をとります。

四番目物:

  「神・男・女・狂・鬼」の「狂」に当たるものですが、実際には、狂乱物以外の種々の形態を含みます。どの分類にも入らない能を集めた「その他」の意味で、「雑能」とも言います。離別した愛人や、我が子を求めてさまよう狂乱物や、現世への断ちがたい妄執をあらわす執心物など、文学的主題の濃厚なものが多くなっています。 

切能(五番目物):

  一日の最後に上演される能です。山奥、水中、月世界など、異界からの来訪者を主として扱います。にぎやかで豪快、あるいは爽快な曲が多くなっています。


(このページの解説の部分は、三省堂発行の「能の事典」を参考にしました。)


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