WESTPORT 2002
「THE BIG ONE」

このお話は今から約2年以上前のことで思い出せない部分もありますが、私がチェンソーアートを
始めるきっかけを作ってくれた大会です。是非最後まで読んでください。

私がチェンソーアートの世界に入り込んだきっかけは今大会の前年、2001年に知り合いが
この大会に出場し、賞を取って帰ってきたことに始まる。
彼の作った作品を見て「本当にこんなものが作れるのか?」と思った。
そんな時、アメリカからブライアン・ルース氏が日本にやってきて手ほどきを受けたことで
本格的なチェンソーアートへの道が始まりました。

チェンソーアートを始めて数ヶ月後、私は壁に当たっていた。
自分で「何を彫ったらよいのか?」よくわからなくなっていた。「とにかくいろんなことを吸収したい!」
そう思っていた時にこのウエストポートの大会を思い出し、知り合いに「今年は行かないのか?」と尋ねてみた。
答えは「行かない」ということだった。
諦めきれない私は、わずかな情報を頼りにアメリカへコンタクトを取った。
そして数日後、ピーターさんという方からメールが来た。
「今年は7月31日から8月4日まで行ないます、よかったら参加申込書を送ります。」という返事。
うれしくて飛び上がった、そしてすぐに妻へ相談。
結婚してから新婚旅行などというものに行ってなかったのをネタに「新婚旅行だ!」と説得した。
妻が心配したのは飛行機と子供のことだった。
彼女は生まれてこの方、飛行機に乗ったことがないらしい、、、
そして娘はまだ1歳半だ。
どう考えても無謀である。
それでも甘い話をあの手この手で持ち出し、最後は私の気迫に負けたのか?
家族でのウエストポート大会行きが決定した。

7月25日 成田発 バンクーバー径由シアトル行きの飛行機に乗った。
とにかく子供が心配だった、「騒いだらどうしよう、、、」そんな不安もなんのその
よく寝てくれて助かった、、。それにあかんぼうを連れているとすべてにおいて優遇されるのはありがたかった。
バンクーバーからシアトルへは小さなプロペラ機でガタガタ揺れてさすがに私も怖かった。
それでも何とか無事シアトルに到着、レンタカーを借りて郊外へ、その日はタコマという町に泊まる。
夜、時差ぼけで子供が寝れずに泣いていたら隣の部屋の宿泊者から「うるさいっ!」と苦情が来た。
外に出て子供が泣く止むまで、抱いていた。ホテルの前を通り過ぎる車のヘッドライトが哀愁を誘い
まるで映画の中のシーンのように思えた。

7月26日 もう1泊同じホテルに泊まることにして身軽になってシアトルの町へ。
ちょうど、シアトルマリナーズが本拠地で試合をするとのことで球場へ足を運ぶ。
何も知らなかったので当日券が買えるものと思っていたがそんなものはあるはずもなく
仕方なくダフ屋からチケットを買うことにした、結構高いことを言われたのでどうしようか?迷っていると
試合が始まった。そしたらチケットが途端に安くなり、結局正規の値段で買えた。
喜んで球場に入ったらラッキーなことは更に続く!ライト側スタンド席の前から9番目、イチローが目の前です〜!!
おまけに大リーグの試合ってめちゃめちゃノリが良くて雰囲気が最高でした。最後は大魔人佐々木で抑えて試合も勝ったしね。


7月27日 買い物するためオレゴン州へ移動、ワシントン州は州税が8%かかるため、
Tax Freeのポートランドまで移動して必要なものを購入しようと決めていた。
チェンソーショップ、ホームセンター、アンティークショップとグルグルまわる。

「明日は観光してください。」と妻から念を押される。
一人旅のようにはいかないのである。

7月28日 オレゴン動物園に行きました。私も動物の勉強になりました。

↑すごく大きなトーテムポール、作ってみるのもたのしそー!

7月29日 再びワシントン州へ!せっかく来たんだから、このままウエストポートに向かうのでなく
広大な自然を満喫して行こうということになり、オリンピックナショナルパークへ!パークといっても公園ではなく
とても巨大な国立公園である。森の木も日本とは比べ物にならないくらい大きい!!
巨大な針葉樹の森や入り江を抜け、夕方小さな町のモーテルに泊まる。

スキューバダイビングのツアーもやっているそのモーテルの部屋からは内海の静かな景色が広がっていた。
部屋も素敵でかみさんがとても喜んでくれたのでした、また訪れたい宿です。

7月30日 いよいよ競技会場ウエストポートへ!期待と不安の出発だ。
途中の町でカービングショップを見つけたので立ち寄る、見るものすべてが新鮮である。

US.HWY12号線に出て西へ向かうと木材の町「Aberdeen」を通る。
ここのスーパーに立ち寄ったら、本のコーナーに木工の本やら昔のきこりの写真集やら
色々売っていた、さすが木材の町だと感心してしまった。(きこりの写真集買いました)
12号線から州道105号へ入る、ウエストポートまで約40マイルだ。
だだっ広い森を通り過ぎると海が見えてきた、とても美しいおだやかな入り江だ。
いたるところに「crab」と書かれた看板が目につく、どうやら蟹を食わせてくれるらしい。

しばらく行くとガソリンスタンドのある交差点で州道とウエストポートタウンへの分岐点に着いた。
もう近くまで来ているのが感覚でわかる、心臓がドキドキしていた。
小さな街を抜け、木々の生えていない広い場所に出る、陸の終点ポートに出た、そこがウエストポートの
競技会場である。初めてみる海外競技、初めて見る海外カーバー。「やってきたぞー!!」
興奮するなというのが無理である。
車を止めて大会の主催者スティーブ・バッカス氏を探す、ひときわ大きいその人がそうだ!
「Japanese Carver−−−!!!」と大きな声で叫ばれる。
ビックリしたけど嬉しかった、アメリカ式の出迎えなのだろう。
オレゴンのカーバー、ナイル・トーマス氏を紹介され彼の横にカービングスペースを作らせてもらう。
彫刻の材はパイン、末口で70センチぐらいだろうか?これでも一番小さい材を選ばせていただいた。
場所の準備を整え、町の入り口のモーテルにチェックイン、ここのご夫婦は最近このモーテルを
中古で購入しリフォームしながら営業しているとのこと、だんなさんは元きこりで若い頃の
写真を見せてくれた、アダ−ビーンの町で買ったきこりの本に載っている人にそっくりなのが
おかしかった、とても気さくな方です。持参のガスバーナーでご飯を作り、海苔と卵、お味噌汁の夕食。

↑彫刻する木はパイン、末口直径70cmほどか。西海岸のトップカーバー、ブラッド・シャープ氏とボブ・キング氏、
過去のウエストポート競技大会で優勝している。

7月31日 いよいよ今日から大会がスタートする、緊張を期待であっちこっちキョロキョロ
落ち着かない日本人である。朝食をご馳走になった近所のレストラン「Cowboy Bobs」の女主人が
「今年は日本人がたくさん来る
」と言ったので「今年は僕だけだよ!」と言ったら驚いていた、
余程、去年のインパクトが大きかったのだろう。
チェンソーはマーク・コープさんからSTIHL046とナイル・トーマスさんからハスクの42(だったと思う)をお借りした。
とても感謝なのだが、046ほどの大きいチェンソーは初めて使うのでとても怖かったし、ハスクはソーオイルの出が悪く
何度もチェンが外れてしまう、テンショナーを張ってもすぐにダラダラにチェーンが伸びてしまうのだ。
メインカービングの午前中はそんなこんなでチェンソーに慣れるのに費やしてしまった感じだった。
11時からクイックカービング始まった、余り材の様なレッドシーダーの木をもらってお地蔵様を彫る。
決して大きくないサイズとレッドシーダーの香りがなんとも良かった。
楽しく彫れたのが功を奏したのか?$120で売れてノービスクラス2位に入った。

気分よく1日目が終了、どっと疲れる。体ががたがたじゃーい!
ホテルに帰る車の中でカミサンが今日あったことを珍しそうに話してくれる。
その中でもおかしかったのが「トイレ逆流」事件である、用を足してお水を流すと
みるみるうちに水が逆流、床を濡らしてはいけないと思った彼女は
おもむろに昨日ご飯を炊くのに使ったコッヘルを便器に入れ、排水を流しに移したと言うのだ。
頑張って汲み取り、何とか落ち着いた頃に便器を見ると注射器が出てきたという、詰まりの
原因はそれだったらしい。アメリカらしいというかナント言うか、、、、
安宿ならではの体験です。
その晩、そのコッヘルでご飯を炊いたのは言うまでもありません。

8月1日 朝起きると体が重い、筋肉痛なのだ。


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