「International X-Treme Carving Competition」
2004.6.24〜26 ペンシルバニア州シネックスビル

6月22日(火) 朝、オレゴンから飛行機でペンシルバニアへ移動、シカゴ径由で7時間のフライト。ひたすら眠る。
 地図で見るとオレゴンは西海岸、ペンシルバニアは東海岸なのでアメリカ横断なんです、ちなみに時差が3時間。
朝出たのにフィラデルフィアに到着した時にはもう陽が傾きかけていた、なんか損した気分である。
オレゴンでチェンソーや防護類を一式、UPSで送ったので荷物のチェックは問題なく通過。
バスでレンタカー会社まで移動、手続きを済ませて車に乗り込んだときはあたりは真っ暗!
初めて来た場所で右も左もわからん?地図を見ながらフリーウェイにのったのは良いが南と北を間違えて
いきなりニュージャージー州に入ってしまう。今来た道を引き返そうとUターンしたら一方通行で危うく来た車とぶつかりそうになったり、
橋を渡ったら料金所があり$3とられたり、散々なスタートである。
やっとの思いでフリーウェイR76から州道202号Westに抜けた時は夜10時を回っていた。
目指すはシネックスビル!ではなくダッチカントリーのランカスター!大会会場に行く前にどうしてもアーミッシュが
見てみたかったのである。「アーミッシュって何?」思った人は映画「刑事ジョンブック・目撃者」をご覧あれ!
それでも簡単に説明すると、もともとオランダから入植してきた現代文明を否定し、厳格な宗教原理によって生活している人達で
基本は農業、原動機や電気を使用しないので彼らの交通の手段は馬、トラクターも使用しない。
電気も使用しないので家の明かりはランタンという徹底的なこだわりを持っているのだ。
チェンソーなんてもちろんない、、、、

途中でどうしても眠たくなったのでスーパーの駐車場で車中泊 Zzzzzzzz.....


6月23日(水)  朝7時まわりの車の音で目が覚める。ランカスターまで約30マイルといったところか?
今日で4日間シャワーを浴びてない、いいかげん髪の毛も体もベトベトだ。
目の前のマクドナルドで朝セットを購入、コーヒー、エッグマフィン、ハッシュドポテトがついて合計$3。
昨日の間違えて引き返した橋の通行料金と同じだがこっちのほうがずいぶん価値があるぞ!と思ってしまう。
私が感じたペンシルバニアの印象は歴史のある田舎町といった感じ。アメリカの元首都でもあるし、独立宣言が
行われたのもペンシルバニアなんだって!明るい時に走ってみたら石造りの家や古い木の家がたくさん建っていて素敵だ。
なだらかな丘陵地に広大な畑が続いているのも印象的。まわりを見ながら走っているとほどなくランカスターに到着、
特に他と変わった町ではなく普通だった。「アーミッシュはどこ?」「馬車は?」あれれっ???
そこで近所にア−ミッシュの製品を売ってるお店があったので入って聞いてみる。
「アーミッシュは農民だから町にはいないよ、郊外に出てみなされ。」
なるほどその通りである。
地図を広げ、だだっ広いところへ車を走らせる。っと「お〜!!」黒い服来た人が馬車で走ってる!!
アーミッシュらしき人を発見!ほんとに本当だったんですね、感動しました。
畑も馬で耕してるし、独身者は屋根なし、既婚者は屋根つきの馬車に乗っている。
子供はキックボード見たいもので道を走っているし!(自転車はだめらしい)
ランカスターの観光を満喫し、シネックスビルに向かう。相変わらず方向と道がうまく理解できないがなんとか到着。
田舎町に突然遊園地のような場所、そこにシネックスビルのチェンソー大会の会場がある。
一般客に混じって奥のほうの草原に車を止める事になり、しばらく歩いて会場を探す。
フェンス越しにそれらしきところを発見、ただし一般客の場合入場するのにお金がいるので
チケット売り場のおじさんに私がチェンソー競技者であることを伝えるとすぐに通してくれた。
この辺は日本と違って大らかですな。
出店の脇をトコトコと歩いていくとネットに囲まれた中に大きな丸太がたくさん立っている、やっと着いた。
ネットの横にさらに個人サイズのネットが張られていて作品が置いてあった。
城所さんのデモンストレーションブースである。彼は今日までの3日間ここで1日4回の
ショーを行っていた。彼らと再会を喜び残りのショーを見せてもらうことにした。
マイケルブレイン氏、ブライアン氏とも再会。マイケルは会場の横に大きなトレーラーハウスを置いて
競技期間中はここに滞在するのだという。
「私も後ろのほうでテントを張って滞在してよいか?」とブライアンに聞いたところ
なんと彼のトレーラーハウスに滞在させてもらえることになった。
なんでも以前はベンさん(ベンリズニ−氏)が所有していたものだそうでとてもきれい、
シャワー、冷蔵庫、テレビ、エアコンまである。イヤッホー久々シャワーが浴びられるぞ!


6月24日(木) ここ何日かテントや車の中で寝泊りしていたので足を伸ばして寝れるキャンピングカーは快適。
ブライアンに「よく眠れたか?」聞かれたので「うん、もーサイコー!」と答えておいた。
今日の夕方からいよいよシネックスでの競技が始まる、それまでにいろんな野暮用を済ませておきたかった。
オレゴンからチェンソーが届いていないのも気がかりだった。
(後で知ったのだが、荷物がセキュリティーに引っかかって戻ってしまったという、
ボブキング氏が他の方法で何とか送ってくれたらしいが、結局競技中には届かなかった。)
まず郵便局に行き、いらない
荷物を送る。実はアンティークショップでいろんなくだらないものを
買ってしまって荷物が異様にふえている、このままでは帰れないのである。
それとホームセンターでゴーグルやグローブを買いなおす。
ランチを食べて競技会場に戻るとカーバーが続々と集まっていた。
今回のこの大会にはREDMAXがスポンサーになっていたのでカーバー全員にG3300USA仕様とチャップスが
配られた。おかしなことにチャップスは日本人サイズで出来ていたのでビックサイズのスティーブには
バックルが届かず、新たにゴムでウエストを追加していた。これは笑えた。
巨人のロッドさんはひざ下までのショートチャップスだった。
チェンソーが来ない私に急遽ブライアンに預かってもらっていた自分のチェンソーを城所さんに
用意していただく(その節は本当にありがとう!)プラス城所さんからハスクバーナ346XPもお借りした。
ラインナップとしては以下のようなセレクトになった。
REDMAX G3300 12”カービングバー仕様 1台
STIHL MS180 12”カービングバー仕様 1台
STIHL MS360                 1台
ハスクバーナ 346XP              1台
が、しかしここで初めて競技のルールを聞かされる。
「カービングバーは一台のみ、そんでもってREDMAX使ってね!」
もちろん私も今回の武者修行でREDMAX様よりスポンサーしていただいてますから
使うのは当然ですし、むしろ事情が事情とはいえ、申し分けない気持ちもありました。
が、しかしMS180のノーマルバーなんて持ってないすよ、、、、、
結局それ以外の3台でこのハイレベルな競技に戦いを挑むことになった。
「これじゃーバイクでいったらスクーターの上がいきなりナナハンだよってなもんですよね」(涙)
午後7時前、会場に続々と観客が集まってくる。私のまわりはアメリカでもトップクラスの
マスターカーバーばかり。緊張「うーん場違いな場所に来てしまったかもしれない」と思ってももう遅い。
世界NO1のハイスピードチェンソー競技がのショーが始まったのである。
一斉にエンジン音がうなりを上げ、チップシャワーが舞い上がる。
今までに経験したことのない緊張感で頭の中が真っ白になった。

今回、メインカービングで彫ろうと決めていたのはセミである。
が、彫ったことは一度もない。また例のごとくイメージトレーニングで
ぶっ付け本番、相変わらず世界を相手にいい度胸である。(ただ何も考えてないだけなのであるが)
ただ細かいところまで頭の中で考えておかないと度つぼにはまる、今回もそうだった。
考えながら彫っているのでなかなか先に進まない。
「あ〜一回ぐらい練習しとくんだった」と後悔するのだ。
あっという間にメインの1日目の1時間15分が終了した。

45分の休憩を挟んでクイックカービング開始!テーマは「海」
「えー45分??短ーい!!」これもまた考えていなかったウミガメを彫る。
なんだかなー?的ウミガメが完成。ホントなんだかなーである。
木屑や道具を片付けて1日目が終了。
マイケルのトレーラーに自分のチェンソーを保管させてもらう。

↑すごくかっこいいマイケルのトレーラー、この後部にチェンソーを保管させていただいた。


6月25日(金) ブライアンの息子のザックが悲痛の表情で私の泊まっているモーターホームに来た。
どうやら蜂に刺されたらしい、モーターハウスのある場所は芝生でシロツメ草が生えており、その花を
目当てに蜂が盛んに蜜を取っている。朝はさほどではないが午後見るとたくさんいる。
ザックに「気をつけなよ〜」と言っておきながら私も足の小指を刺される。
いっ痛〜!!
私もマイケルのモーターホームに泣きついた。「いてーよー」とか言ってたら
マイケルはなにやらお茶碗と重曹のようなものを持ってきて足の小指にふり掛けた
しばらくしたら不思議なことにかなり痛みがひいた。マイケル博士に感謝である!
お昼はどこぞの町へ行きみんなでイタリアンレストランで食事をした。
食事の時間を大切にするアメリカ人らしくゆっくりと徐々に料理が出てくる。
話をしながらランチかあ〜、おいらはドカっと出てきてドカっと食べるタイプなので
あまりこういうのは苦手なんだな、、、、日本料理でも会席料理とかは食べた気がしないんです。
一つ一つはおいしかったけどやっぱ後になって考えてみるとあまり覚えてないんです。

競技開始前にベン・リズニ−さんがやってきた、久々の再会である。元気そうでした。
PM7時、2日目のメインカービングが始まった。夕方から怪しかった天気が始まって早々に雨に変わった。
あまりに激しい降りになったため、競技が一時中断。小雨になるのを待って競技が再開されたが
この日は競技時間が30分短縮がされた。が、そんなときに限って自分の調子がよかったりする。
彫りながら「あっココこうしよ」とか「こういう風に作ったらおもしろいかも」とひらめいて若干の変更を
してみたりした。ただセミを彫るだけではなく、セミが地面から出てくる穴とサナギを追加したことに
よって作品に一連のストーリーを持たせることにしたのだ。
調子よく2日目のメインを終えたので、このままの勢いで頑張るぞー!と思っていたらクイックでまたズドーンと落とされる。
何を勘違いしたのか?土台の高さを勘違いしてチェンソーで切り落としてしまった。
すなわち作品が自立して立っていられないようになってしまったのだ。
これには我ながら情けなくなってしまい落ち込んだ。(今考えてもあ〜情けない)
雨に濡れた体とチェンソー、早々モーターホームに退散して寝てしまった。
ちなみにクイックカービングのテーマは「鳥」でした。

6月26日(土) 初日にクイックカービングで作った作品が$75で売れた。
買ってくれた人が「素晴らしい作品だ」と褒めてくれた。昨日の落ち込みはどこへやら?
単純な私はこれだけで元気になっちゃうんです。
朝、マイケルが「日本食をご馳走するから食べに来ないか」と自分のモーターホームに招待してくれた。
中はお世辞にもきれいではなかったが、手際よく作ってくれた。
来日時に買ったという日本の茶碗やお箸もありました。
料理は「きゅうりの酸っぱい和え物」、「サーモンのステーキ」、「チャーハン」
正直期待してなかったんだけどこれがおいしいっ!
「おおっ、マイケル。いけるよこれっ!」とおいら。
マイケルは「むふふふっ」と得意げな表情だった。(なんか楽しいな)
ここで少しマイケルのお話。マイケル(本名マイケル・ブレイン)にはバンバンという
愛犬(ボクサーの雑種らしい)がいます。マイケルはこのバンバン(マイケルは「ベエンベエン」と呼ぶ)を
とても愛していてこのコンビが見ていてとても面白い。
何といいますか?子供みたいなんですよ。
マイケルは放っておくと一人で話しています、そして一人で納得して怒って笑っている感じ。
時々意見を求められる時もあるけど、話をしていても非常に楽しい。
少年の心を持った大酒飲みの優しい巨人、それがマイケルなのである。
そんな彼は今回の競技の2000、2002,2003年のチャンピオンなんですよ。すごいねー!

3日目最終日のメインカービングが始まった。昨日の短縮された30分が加算され少し時間が長くなった。
今日は見に来てくれたお客さんが最高に多い、みんな自然とボルテージが上がったことだろう。
イヤマフ越しにチェンソーの音がガンガン聞こえてくる。ここまできたらおいらも作品を完成させるのみ
自然とチェンソーを持つ手に力が入る。

PM8時 3日間に分けて行われたメインピースの競技が終了した。
PM9時 間髪いれずにクイックカービング!テーマはオープン。
つまりなんでもいいってこと!皆思い思いの作品を彫っていく。
おいらが選んだのは子犬、45分間彫りまくりでーい!
最終日ののクイックカービング審査は審査員によるものではなく
「オーディエンスジャッジ」と言われる会場にいる観客の拍手によって決められる。
一人一人の競技者がブライアンから紹介され拍手される、どの競技者にもとても大きな拍手が送られた。
その12人のカーバーの中からひときわ拍手の大きかった5人のカーバーが選ばれ、
光栄にもその中の一人に選ばれた。(デニス、ウェイン、スティーブ、ケイジ、私)
そこからもう一度拍手審査が行われ、この偉大な賞を日本人カーバーのケイジが手に入れた。

こうしてシネックスコンペティション競技のすべてが終了した。
みんなへろへろになりながらも出店のビアガーデンで浴びるようにビールを飲む。
今回優勝できなかったマイケルは早々と自分のモーターホームで酒を飲み
乱入してきたかと思うとおもむろにビールを40杯も買ってきてジェンに怒られていた。
警備のおまわりさんもREDMAXの帽子をかぶってビールを飲んでいる。
なんてハッピーなんだろう。

慣れない環境や食事、最低限の道具の中でよく頑張ったと思う。
作品にも100%満足は出来ないが、それも実力ということで納得した。
チャンスをくれたブライアンやジェンに感謝します、ありがとう。
またチャンスがあればこの様な大会にドンドン出て行きたいと考えている。

リザルト

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