Australian Chainsawcarving Championships

いつだったか?カービングポストをのぞいていたら「3月にオーストラリアで初の国際大会を行ないます」という
投稿が入っていてなんとなく「初」という言葉に胸ときめいていました。
3月であれば仕事も少しは落ち着いているだろうし、行きたいナーなんて、、、、、
しかしながら情報が少なくて一時は諦めていたのですが、何とかオーストラリア人のマイケル氏と
コンタクトが取れていよいよ「やったるでー!」という気持ちでオーストラリアに乗り込んだのです。
今にして思えばこの時から「ハチャメチャカービング紀行」は始まっていたのですね。

今回の競技大会に日本からもう一人カーバーが参加した。
岐阜のKAZこと太田氏である、私は彼より先に日本を発った。
基本的に人に合わせることが苦手な私なので3月16日に空港で待ち合わせをし、そこで大会主催者に
拾ってもらう段取りだった。当日KAZと合流し、しばらく待ったがそれらしい人は現れない。
「いやいや困ったな」と思っていたら、見知らぬおばさんに声を掛けられた。
それが主催者の一人、ジョアンナさんであった。どうやら私がかぶっていた「STIHL」の帽子がキーだったようだ。
てっきりマイケルさんが迎えに来るものと思っていたので少し以外だった。
ただ結局マイケルさんの顔も知らないので大差はなかったであろう、、、
ジョアンナさんの車でメルボルンから彼女の家へと向かう、道中彼女との会話は
あまり良く聞き取れず、結構ピンチだった。
オーストラリアは英語圏だが独特のなまりがあってこれを聞きながら考えているとものすごく疲れる。
夕方、彼女の家に到着、ケビンさん、マイケルさんともお会いできた。
マイケルは映画俳優のショーン・ペーンに似ているなということで3人で話がまとまった。


↑ジョアンナさんと娘さん。(左)ケビンさんの家のすぐ上の丘から見た眺め(右)

今回のオーストリアの大会に出場する海外カーバーはみんな彼らの家にお世話になるようだ。
アメリカから来たジェーレン一家はケビンさんの家へ。ドイツ人カーバー達はケビンさんの
丘の上の別荘へ(ここが最高にいい眺めなのである)
そして私達はマイケルさんの別荘?というか空家に居候することになった。


↑ビーチウァ−スの町並み。(左)Mrマイケル氏とYマック氏、いい味出ている二人です。(右)

マイケルさんの別荘は「ビーチウァ−ス」という町のほぼ中心にあった。
この町はなんとも小さくまるで映画にでも出てきそうな感じのすばらしいところだった。
昔はゴールドラッシュに沸いた町らしいが、今は昔の面影も町の一部に残すのみとなった。
私が泊まる部屋にはナント暖炉があり、部屋もめちゃ英国風。普段は空家なのでちょっとカビ臭かったが
少しの間、窓を開けていたら気にならなくなった。
早速みんなで近くのスーパーに買い物に出かける。
オーストラリアの物価は10年前と比べるとはるかに上がっていて、旅行で来るとちょっと厳しいかな〜??
コーラが1本$2.5(1オーストラリア$は約90円)マック氏によるとタバコは$9したらしい。
ひえ〜〜お金が続かないっすー!早く作品作って売らないとーー!

3月17日 朝早くケビン氏が迎えに来た、うーん起きるのがツラいっす。
家を出ると道の脇でガラの悪そうな人がたくさんたむろしていた。聞くとこの時期の季節労働者らしい。
フルーツの刈り取りという仕事で、家の前はその集合場所という訳だ。
ケビンさんが怪しい黄色人種(私達)を連れて車に乗り込んだものだから、そこのボスがケビンさんに文句を言ってきた。
「うるせい!この野郎」低いドスの聞いた声はオーストラリアの朝の澄み切った空気に程よく響いたのであります。
そんでもって朝早く出たのは地元のラジオに出演するためだったんですね、アメリカ人のMrs.ジェーレンさんと私が出演することになる。
ビーチウァ−スからワンガレッタまで車で30分、そこの小さなFMラジオ局にお邪魔しました。
ワンガラッタ(Wangaratta)という町の意味はアボリジニの言葉で「川が交差する場所」なんだそうです。
スタジオでジェーレンさんと今回の大会の宣伝をしました。と、言っても
私に対する質問は「何年ぐらいカービングをしているのですか?」と「これが終わったら日本に帰るのですか?」
だけで、ほとんどジェーレンの喋りで終わってしまう。
その昔、KAZさんは短波ラジオでオーストラリアの放送を聞いていたそうです。

↑ワンガレッタのFM放送局(左)、結局ほとんどジェーレンが喋ってくれました。とほほ(左)

ラジオ出演が終わると大会の会場へ移動、場所は町外れの農業祭り会場の一角。
日本でいうところの赤松がたくさん置かれていたのですぐにわかった。(このページの白黒のバックがそうです)
ユーカリの木がいい間隔で生えていて木陰が出来ている、目の前の草原も素敵だ。
「なんて素晴らしい場所でカービングが出来るんだろう」とうれしさがこみ上げる。
他の会場も明日からのお祭りの準備で牛やら馬やら巨大なトラクターが運び込まれてくる。
なんと飛行機も運び込まれていた。
ひと通り見てケビンさんの家に戻る、程なくやることもなくなり皆庭でダラダラと過ごす。
日本人はこの「ダラダラ過ごす」ということに慣れていない人種だなとつくづく思う。
何かせずにはいられないと思ってしまうのですね。
その後、丘の上のケビンさんの別荘前でドイツ人カーバーとプチカービングが始まった。
ケビンさんのチェンソーをお借りする、「大会ではこれを使ってくれ」と言ってくれた。
10台ほどあったが、海外カーバー全員で使うのは少ないのではないかと思い、聞いてみると
「当日会場でも用意する」と言われて一安心?カービング用チェンソーが少ないぞ!!


(左)ドイツ人カーバー・ジェンスさんの作品、ナント全長20センチユーカリの枝からノーマルバーのみで作り上げた。
(中央)
同じくドイツ人カーバー・アンドレアさんカモノハシを彫った。(右)おいらです。白鳥彫ってます。

3月18日
 朝ジェーレンさんのレンタカー車でワンガラッタへ、会場で朝食を摂りカービングブースのセッティング。
と、いきたかったが何となくすべての段取りが悪い。まず、それぞれの木を動かすための道具がない、
またそれに対する指示が主催者側から伝達されていないため皆が動きようのない状態だ。


(左)アンジ−のトラックに乗せられた彫刻、ちゃんとベットに寝かせられているが見たらみんなビックリするだろうな。
(右)今回おいらが選んだ木、比較していただければ大きさがわかると思います。9時間は無謀だったか?


9時半競技開始予定なのにフォークリフトが来たのが9時、おまけに起伏のある場所でそいつがスタックした。
やっとの思いで木を移動させ、チェンソーを取りに行くとケビンの車にはほとんどチェンソーが残っていなかった。
もちろんカービングバー付きのチェンソーは一台もない、いいチェンソーはドイツ人カーバーがキープしている。
もう一人のケビンさん(ウエストポートで一緒だった)になんとか026と046をお借りする。
KAZに至ってはバーの長さが1mを越す066マグナム(90cc)ときたもんだ、幸い隣同士だったのでそれらをシェアすることにしたが
これが至上最悪の状況であることに2人の考えが一致した、時間が押している状況でそれ以外の
チェンソーと手配することは不可能であった。
主催者ケビンに聞いても「うまくシェアしてください」と言われるだけで解決の策はない。
彼も初めての大会主催でパニックになっているのが見てとれたし。
2時間遅れて競技スタート、そしてすぐ「うわっ!なんじゃこりゃ」なのである。
026バーが曲がってます、まっすぐ切れませーん。
066はパワーがあっていいんだけど、高い位置で使用するととても怖い!それに通常であれば
ラフラットで使用するチェンソーだから20分も使用すれば充分だ、おまけに疲れる。
が、私達がチェンソーを選ぶ余地はない。これらで勝負しなければならない。
ハーフタイムでランチ、KAZも「だめだー!」と泣きを入れていた、後半は少し落ち着いて
空いているチェンソーはないか?探してみようということで少し冷静さを取り戻したようだ。
ほんでもって私はカービングバーチェンソーがないのであれば、逆に今あるチェンソーで
どこまで出来るものか?挑戦してやるという発想に切り替えた。(半分やけくそではあったが、、、)


(左)陽気なオーストラリアンカーバー作っている作品がイカス!(中)アメリカンカーバー・ジェーレンさん (右)背の高いKAZでも踏み台のって大きなチェンソー

後半KAZがどこからともなく共立のトップハンドルチェンソーを調達してきて彫刻を始めたが
硬いパインではまだまだ出番がないようだ、それにしても27ccと90ccの組み合わせって究極だなと思ってしまう。
私のほうもハーレイ・モーガンさんというカーバーから「何ででっかいチェンソーばっかで彫ってんの?」と聞かれ
訳を話したらSTHIL 023カービングバー仕様を借してくれ、やっとこさ彫れる状態になった。一日目終了の20分前である。
思うように彫刻が出来ないまま1日目が終了する。なんだかドッと疲れてしまう。
明日は3時間しか競技時間が無い、本当に彫れるのか?不安は尽きない。




(左)チェンソーを貸してくれたケビンさん、2003年のウエストポートでお会いして以来だ。
後ろの煙は山火事でドキドキした。オーストラリアの問題点だと言う。
(右)晩御飯にステーキが食いたいと行ってマイケルに連れて行ってもらう。ここは故ネッド・ケリーの故郷でもある。

3月19日 
朝、ベットの中で「果たして今日はまともに彫刻が出来るのだろうか?」「もう3時間しかないし、、」
なんてイジケていたらKAZとマックさんは近所のスタンドでモーニングのサンドイッチとコーヒーを食べてきた
らしい。おまけにカウンターの女の子が可愛かったなどというので余計損した気分である。
今日はドイツから来たイェンツさんが地元のラジオ局に出演した。
会場に着いてみるとオーガナイザーのケビンが昨日遅れた分の2時間を今日追加するという事で
3時間の競技時間が5時間に増えた。ラッキーである。
状況は昨日と変わらないが競技がスタートしてまもなく、すぐ後ろにSTIHL021が
置かれているではないか??「やややっ???」
誰のかわからないがおそらく私を不敏に思い、心優しいカーバーが貸してくれたのだろう。
ありがたくお借し、KAZが日本から持ってきた12インチのカービングバーに変更しやっと本来の彫刻がスタートした。
それでも時間は刻々と過ぎていて決して余裕のカービングどころではない。
まして龍のウロコをつける作業は気が遠くなるほどエンドレスなのである。
全体的な仕上げは無理なので顔の部分だけでもきれいに彫ろうと心がける、、、
PM2時メインカービングの終了の合図が出され競技終了、すぐさまクイックカービングが行なわれる。
KAZはフクロウのレリーフ、おいらは蛙を彫った。

(左)お茶目なオージー娘、(右)陽気なオージーカーバー(オヤジカーバーではない)
競技中に彫った帽子とブーツを履いてポーズ!イカスぜ!


表彰式では優勝がドイツのイェンツ、準優勝がタスマニア州のエディー・フリーマン、3位がドイツのアンドレアスと
ドイツ勢が健闘した。
クイックカービングでは何とKAZが優勝したのでした。
カーバーズチョイスではまたイェンツが選ばれた。
こうしてオーストラリア初の国際大会が幕を閉じた。

(左)優勝者ドイツのイェンツ、ハキハキした良きお父さんである。(中央)3位のアンドレアス、足元にあるイノシシは私がもらって日本に持って帰ってきました。
(右)アンジ−の妹、ダイアナさん。物静かでアーティスティックな彼女、アンジ−とは大違いである。(失礼)




(左)私のメインピース「龍」デザインは日本ではなくアジアだった。
(右)KAZの作品「ライオンの親子」思わずニヤケてしまうかわいいデザインだ。


クイックカービングの作品がお客さんに売れた。すごく嬉しい!

3月19日
朝8時起床、終ってみれば早いものでホッとしたような悔いが残るような大会である。
が、海外の素晴らしいカーバー、オーストラリアの人々と共に楽しんだ大会として忘れることはないだろう。
過去に2度ほどバイクでこの大陸を駆け抜けた時とはまったく違う経験だった。
荷物をまとめ、マイケルの別荘を後にする。ある意味ココも忘れる事の出来ないすごい所だった。



今日は大会で知り合ったハーレイさんのお宅にバーベキューパーティーに呼ばれており
お邪魔する予定だ。その後KAZとYマック氏はメルボルンの高級カジノホテルで一泊し日本へ、私はドイツ人カーバーと
メルボルン市内のジョアンナさんの知合いのお宅にステイさせてもらう約束になっている。
ケビンの家で待ち合わせをして皆でハーレイさんの家に向かうはずがなぜか出発する気配がない、、、、
朝飯も食べずに2時間以上外で待たされていてしまう、KAZと朝飯を食べに行こうとマイケルに
車を出してもらって町へパンを買いに行く。これがマイケルにとって不幸の始まりであった。
マイケルの携帯にケビンから連絡がきて「出発するから帰って来い!」と言われたのだろうか?
マイケルが慌てて車を出そうとバックしたその時、直進してきた車とぶつかった。。。
「ガシャー−ン!!」と音がしてすごい衝撃が私達にも伝わった。
我を失い、混乱するマイケル。相手と連絡先を交換してケビンの家に戻る間も
動揺したマイケルの運転の危ない事危ない事。
KAZは「来年はレンタカー借りて来た方がいいな」と相変わらずのマイペース。

結局お昼に行く予定のハーレイさんの家に到着したのは午後2時を過ぎていた。
それでも自然保護区にある彼の家は自然が一杯で素敵である。
カラフルな野生の鳥が餌付けされて家の周りをウロウロしている。

パーティー風景、手前左が事故でショック状態のマイケル氏。

夕方メルボルンへ移動、すっかり夜になってしまい、カジノへ行くのが遅くなってしまったKAZ達と別れ
ジョアンナさんの知合いの方の家にお世話になる。
夜は街でイェンツさんが優勝賞金で皆にピザをおごってくれました。
終ってみればハチャメチャで歯切れの悪い海外遠征であったが、こういうのがチェンソーカービングの大会なのかな?と
勝手に納得して今回の旅を終らせていただきます。
サンキューマイケル!イエスイエスイエス。



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