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安曇野の平屋の家

安曇野に建つ50代の夫妻のための平屋の住まいです。
東側に配置した玄関を入ると、全長12間(22m)の空間が西に広がります。そこに、ダイニングキッチン〜リビングルーム〜和室〜ベッドルーム〜バスルーム〜と、暮らしの高さが低くなる順番に部屋を並べて、ワンルームのように一体に構成しました。

建物の軸線は、安曇野のシンボルの常念岳に一直線に向かいます。
二方向の道路に面する敷地を生かし、通り抜けできるクルマの動線を設定し、途中に駐車スペースを配置しました。そこに建物本体と一体の大きな片流れの屋根を架け、おおらかで伸びやかな外観をつくりました。

西には建物と一体の高い塀をめぐらし、西側に配置した水廻りのプライバシーを保っています。

車椅子の身内のために、道路から室内まで段差がないことを求められました。
交通量の少ない市道側をメインのアプローチにして、室内の床面までの1.8mの高低差を、引きのあるスロープで吸収しました。
道路からガレージ、玄関、室内にかけて、全く段差のないフラットな床が続きます。

玄関とガレージは土間収納で結ばれます。
土間収納は、勝手口収納としてキッチンともつながります。

段差の無い玄関は、床仕上げを変えて上下足を区切り、靴を履くときなどに腰掛けられるベンチを設えました。

玄関から室内まで、全ての出入口が引戸です。暮らしに応じて閉じたり開け放ったりして暮らします。

南側に大きなガラス窓のサンルームを配置しました。サンルームは、内と外を穏やかに繋ぐ、空間の緩衝地帯です。
夏は深い軒が日射を遮蔽して、北面の低い窓から導いた卓越風を南面の高窓に抜き、爽やかな室内環境をつくります。冬は陽差しが部屋の奥まで差し込み、土間床へ蓄熱し、日差しと薪ストーブの暖房で暖かく暮らします。

機械設備に頼りきらない、安曇野の自然の恵みを享受して快適に暮らす、環境と共生する住まいです。

掃き出しの開口部からは、外のデッキにフラットな床でつながります。
周囲に開けた地形を生かし、敷地境界には塀やフェンスなどの囲いを作らず、基礎工事の残土などを利用して地形をアンジュレーションすることで、敷地と周辺の環境をおおらかに繋げました。
どこまでも自分の敷地が続いているかのようです。

ブラインドなどの目隠しを取り付けていないので、外の風景がいつでも見渡せます。
外からの視線は、サンルームが緩衝地帯になり、ほとんど気になりません。

フラットな床と同じく、天井もフラットに継ぎ目が無くつながります。
内部仕上げは、床はカエデのフローリング、壁と天井は珪藻土入りの左官仕上げです。

チェリーの造付家具はオリジナル設計。
制作はフレームの甲高さん。

薪ストーブはドブレ。
設置は暖炉館の金森さん。

リビングからの見返し。

和室は落ち着いた雰囲気に仕上げました。

和室の先は、両側から使える本棚で緩やかに区切ったワークスペースです。

暖房は薪ストーブの他にPSパネルヒーターを完備しました。

四方の窓から視線が外に抜けます。

ワークスペースは、夫婦それぞれのスペースを平等に並べて設置しました。
机は造り付け、中央には手持ちの収納家具を納めました。

ワークスペースを区切る本棚のマスは、透明度の違う3種類の板を使い分けることで、さまざまな使い方を発想させてくれます。

玄関方向の見返し。
突き当たりの左手が玄関です。

ワークスペースの向かい側が寝室。
手持ちの本棚を利用して転倒防止用を兼ねた接続板で自立させ、夫婦のスペースを仕切りました。

南に面した明るいトイレ。

西の突き当たりの洗面所。
正面の窓からは真正面に常念岳が望めます。
窓ガラスは壁に引き込まれて全開になります。

毎日を気持ちよく暮らすために、明るくて気持ちのいい場所につくりたい水廻りです。

浴室は桧板張り、水掛かりの多い腰壁はタイルです。
大判のタイルは目地割りが大切です。
例によって、板壁の目地とタイルの目地を通していますが、誰も気が付いてくれません…

窓の外は高い塀で囲い、外からの視線を気にせずに入浴できます。

建築前の敷地の様子。

緩やかに傾斜する田園風景。
まわりは開けていてどこまでも視線がとどき、西には安曇野のシンボルの常念岳がそびえ、北は白馬連山、東から南にかけて美ヶ原の麓に広がる松本の市街地から南アルプスまで望める絶好のロケーションです。
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ここに、まわりに広がる安曇野の田園地帯に調和する、ゆったり伸びやかでゆとりと開放感のある平屋建ての住まいをイメージしました。


安曇野の民家から連想される、切妻屋根、白壁、屋敷林、などの紋切り型のエレメントを用いないで、北アルプスをひかえた里山の裾野の安曇野の田園風景の中に違和感無く馴染む、据わりのいい佇まいを創出しました。地域に暮らす住民や通りすがりの人々の誰もが、安曇野の風景のひとつとして印象にとどめてくれるのではと思います。

>>  計画案
施工・建築工房時遊館
竣工・2010年5月
場所・安曇野市堀金
掲載・KURA2011.2
  ・信州の建築家とつくる家7
  ・住まいnet信州vol21
受賞・第11回長野県建築文化賞奨励賞
 >> 審査委員講評
  ・信州の「住まい方」コンクール優秀賞(長野県建築士会会長賞) 

ブログ・安曇野建築日誌
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