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あおいやね

40代の女性のための住まいです。

大勢の友達が集い料理と食事を楽しむダイニングキッチン。
毎日の使い勝手に配慮した水廻り。
ちょっと距離を置いた和室。
SOHOとインナーガレージの併設。
そこに大きな片流れの屋根を被せました。

屋根の色は、ご禁制の青色。
施主の亡くなられたお父さんは大工で、好んで青いトタン屋根を葺いていました。
建てかえることになった既存の家も、青いペンキのトタン屋根でした。
そこで、記憶の継承として、大きな青い屋根を架けました。

新しい青い屋根は、青い屋根の歴史を知っている近所の方々にも好評です。

改築前の、既存の住宅が建つ敷地の様子。

青い大きな片流れの屋根の建築は、沈んだ印象だったこの場所を、明るく輝く場所に変えました。

人工色の青色の屋根は、空の青色とケンカするため、景観上は思わしくありません。
しかし『あおいやね』の緩やかな勾配の屋根は、表側からは屋根面が見えず、裏側からは傾斜のある地形から見下ろすため、空と重なりません。

正面の南面外観。

木戸を入ると、端正で可愛らしい姿の建築が出迎えます。
庭先の赤松を回り込んでアプローチします。

赤松は、既存の坪庭に残っていたものをそのまま残しました。
何年ぶりかに手入れした赤松は、予想以上にいい味で、好いアプローチができました。
基礎工事で出た残土で小山を築き、平べったい敷地に変化を付けました。

大きな鉄平石を渡って玄関にいたります。

玄関へ入ると、裏口まで土間が続きます。
土間の突き当たりを右に折れると、土間収納〜勝手口収納から台所へ続く裏動線です。

広間に上がる式台は、腰掛けて靴を履くのにちょうどいい高さの段差です。

広間へ入ると、台所〜寝室〜水廻り、2階の和室と、この家のおよそ全容が分かります。

影になる部屋が無いことは、一人暮らしの安心感に繋がります。

小上がりに造り付けたテーブルとベンチは、やむなく伐採してしまった柿の木を板に挽いて作りました。

持ち出した階段下がテレビの場所。その左が神様とご先祖様の場所。


主な内装は天井、壁ともに珪藻土入りの左官壁。
床暖房を設置した床は無垢に近い表情の現場塗装の床暖房用フローリング。

広間からは1間巾の大きな特製テラス戸で、デッキに繋がります。
デッキの木のフレームは、前庭と室内との間に距離感をつくります。

使用した木材は全て県産材。構造材は根羽杉、造作材は根羽桧です。
長野県の『信州ふるさと住まい助成金』から50万円の補助を受けています。

暑かった夏の日、日差しを和らげるためにヨシズを載せたら、海の家のようです。
デッキの突き当たりの縦格子に囲われた場所は、ガラス屋根が架かる洗濯物干場です。

洗濯物干場には洗面所から直に出られます。
洗面所から浴室まで、東に面して、朝日がそそぐ明るくて清潔な水廻りです。

浴室は桧板張り。水掛かりの多い腰壁から下はタイル貼り。
床はスノコ板で洗面所から段差無しでつながります。

窓の外は高塀で囲い、プランター置き場としてデッキをつくりました。
入浴中に窓から外に抜け出して一杯やりたくなるのは、想定外の事態でした。

2階の特別な和室。
天井が低く吹抜と一体の構成なので、一般の和室の構成を崩しています。
奇をてらわず、モダンな和の意匠でシンプルに納めました。

引き込みの障子を開け放てば、見渡す限り安曇野の景観が広がります。

実は、この和室は、天守閣なのです。
施主の先祖は彼の地の城主だったのですが、落ち武者となりこの地に逃れました。400年の時を経て再興された天守閣から、遠く彼の地を拝みます。

広間の夜の雰囲気。
天井面や壁面を照らす照明はありません。
吹抜の高い天井を暗闇にして、夜ならではのしっとりとした雰囲気をつくります。

>> 計画案
後日、
施主から、思いの丈がいっぱい詰まった作文をいただきました。
長文です。 
>> こちら


施工・建築工房時遊館
竣工・2008年8月
場所・安曇野市堀金
掲載・信州の建築家とつくる家6
  ・信州に住む。(KURA別冊)
受賞・第10回長野県建築文化賞優秀賞
 >> 審査委員講評

ブログ・安曇野建築日誌
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