天界



新入り「ここはどこですか?」
長老「天界だよ」
「じゃあやっぱりあっしは死んだんですか?」
「そうじゃ、最初は変じゃがすぐ慣れるて」
「ここでは餓えの苦しみも死の恐怖もなく快適と言えば快適じゃ」
「あっしはどうすればいいんですか」
「別に仕事もないので好きにしてれば良い。眠る必要も無いが寝ても良いしボーッとしていても良い。どうしても仕事がしたければ会社もあるし、年は取らない、ずーと死んだときのままだ。」
「えーっずっとこのままなんですか」
「そう、ずーっとだ」
「70才で死んだからじゃあずーっと70のまま?」
「そう70のまま」
「.....」
1週間後
「あのー長老」
「なんじゃ」
「あの子はそうすると20才で?」
少し離れた場所に若い娘が海で泳いでいる。
「20才で死んだ者はいつまでも20才じゃよ、若い者は若い者どうし仲良うやってる」
「あそこで苦しそうにしている人は?」
「ああ、胃ガンで死んだのでずーっと痛いらしい」
「えーっじゃあ若くて健康なうちに死んだ方がいいじゃないですか」
「まあ、あっちの世界はせいぜい100年、こっちの世界はずーっとだからな、それは言えるな」



あれから早いもので10年が過ぎた。
「長老、慣れるとここも良いところですね、年は取らないし病気もない、食べなくても平気だし、寝なくても良い、それに何より女性が優しい。まあ若い女性は 少ないけど、取り合いにもならないし、これだけ人口が多いと不思議とバランスが良いものですね。
ところで長老はここへ来て何年くらいですか?」

「私はまだ2000年位だったな、ほれっあそこにいる体格の良いのがいるじゃろう、彼は1億年だそうじゃ、人類の最初の頃の人種だな。原始人といってもこ こで1億年も勉強しているから頭は良い、パソコンも自由自在だし何カ国語もマスターしている。昔は早死にだったからここでは若くて元気じゃ。今ではみんな の人気者じゃ。」

「がっちりしていますね。ところで2000年というとキリストスと同じくらいですか、あっしはまだ見かけないけどここにキリストスっているんですか?」

「ああ、昔一度見かけたことがある。今は近くにいるかもしれんぞ。彼も人気者だな。
苦しみながら死んでここに来て今なお苦しんでいる人をなんとか救おうとがんっばっているそうじゃ。」

「なんとかなるんですか」

「それがどうもうまく行かなくて悩んでいるようだ。彼の超能力治療中は楽になれるのだがやめるとすぐに戻ってしまう。わしも苦しんでいる人を見るに付け何とかしてあげたいと思うのだがわしのような凡人には何ともならん。」

「あっしのいた時代にはMという種類の人がいて痛みを喜びと感じる人がいましたよ」

「ああ、昔からいたな。でもそれは救いになるんじゃろうか、ここでは勉強した知識は身につくが体力はなぜか変わらない。だからMではない人をMにできないと思うのだが、どうじゃろう。
矛盾しているな。たとえば腹痛に苦しんでいる人が、その痛みを喜びにかえることができるものなのじゃろうか。」

「そうかMってそういうものじゃ無いですね。だめかー」


次の日。
「昨日の続きだけど、...」
「昨日と言うと、痛みをなくす件だったな。」

「こんな事を考えてみました。つまり学習リモコンです。」
「学習リモコンは知っている。2000年前は無かったけど今ここでは使っている。それがどうかしたかね」
「キリストスの超能力治療ってたぶん「気」の力だと思うんです。それも飛び抜けて強力な。
それを記憶して痛みで苦しんでいる人に照射し続ければその間痛みは無いはずです」

そして超能力波形学習リモコンを作った。
ここにはありとあらゆる人材がいて作ること自体はあんがい簡単なのだ。

しかし肝心の波形を発生する物質がなかなか分からなかった。
「気」の成分は普通の学習リモコンと違い「赤外線」ではないのだ。

と、ここで例の原始人のするどい感が働いたのだ。
「この鉱石に不思議な力を感じる。これを使ってみなしゃんせ。」

ちょっとおかしな日本語が、まじめなのかふざけているのか分からない。
日本語を教えた人が古い人なのだろう。

「あとはキリストスを探してリモコンに学習させるだけじゃ、あーもしもし」
長老はおもむろに携帯を取り出した。
「キリちゃんか?この辺で長老と呼ばれているわしじゃ、うんうんそうか、なにすぐそばにいる?」
「ちょうどすぐそばまで来ていた。10分もすればここに来てくれるそうじゃ。」
「長老っ!昔一度見かけたくらいでどうして携帯番号知っているんでかー!。」
「おおっ良くそこにつっこみを入れてくれた。実はわかりにくいギャグなんじゃ、わかりにくくて心配していたところじゃ、このことを説明するとだなー、1時間位かかるがよいかな、むかしむかし...」
「長老、今はそんなことを言っているときではありませんよ」

などと言っている内にキリストスがやってきた。
「さっそく記憶させてみましょう。やり方は学習リモコンと同じで記憶ボタンとセットするボタンを押してと、じゃあここへ波形を送って下さい」
「完成じゃ!」

「じゃあ試してみましょう、体の痛い人お願いします。」
「はいっ、はいっ、はいっはいっはいっ」
なんだか「あるある探検隊」みたいなかけ声だ。

スイッチオン
「おおっ痛さが徐々に無くなって行く!これはすごい発明だ」
スイッチオフ
「いたた、早くスイッチを入れてくれ」

スイッチオン
「おおっ快適だ」
スイッチオフ
「いたた、早くスイッチを入れてくれ」

スイッチオン
「おおっ快適だ」
スイッチオフ
「いたた、早くスイッチを入れてくれ」

スイッチオン
「おおっ快適だ」
スイッチオフ

「おいっいつまでやっているんじゃ、痛がっている人で遊ぶな」
「すいません、本当にこのリモコンの効果かどうか試していたんです。」

スイッチオン
「快適?あれっいててて、効果が無くなったみたいです」
「電池が終わった」
「サンヨーのeneloopにしてなかったのか」