第3号 2001年5月発行

目次 ご挨拶

    ゆき

   田んぼの水

   最近作ったもの 引出し付き食卓四人展・コカリナのパンフ他蔓細工

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麦の穂が出揃い、周囲の田んぼではもう田植えが始まっています。私たちの田では初めて挑戦した陸苗がそれなりに育っています。天気が続き、渇き気味の田畑に立つと梅雨入りが待ち遠しいように思えます。皆様いかがお過ごしですか。

 4月に発行予定だったのにすっかり遅くなってしまい、すみません。3月から用意していた原稿は少々時期はずれなものになってしまいました。

 ジャガイモ植え、稲の苗作りに始まり、種々の野菜の種まき、苗作り、そして植え付けと、一仕事終えても、次の仕事が山積みで気の抜けない日々が続きます。それに加え、木工も仕事がたまる一方で、感謝しつつ、外仕事や内仕事をやりくりしています。

 この春、芽吹きを控えた山肌にポツンポツンとこんもり白い花をつけたコブシの花が見られました。コブシのたくさん咲く年は「いい世の中(豊作)になる」とここらの人が教えてくれました。励みになります。

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 [弓]


カメムシ

 秋の終わりにカメムシがたくさん出ました。薪置き場、干した洗濯物の間、家のなかまでも。
 修が、「カメムシがたくさん出る年は雪が多いって言う。今年は雪が多いのかな」と教えてくれました。
 実際、12月中にも数回、年が明けるとお正月から早々に降りだし、1月の末には70年ぶりといわれる大雪が降ったのです。

雪害 

 音もなく降り積もる真っ白い雪が、怖いものだとは思ってもみなかったことでした。
 雪崩が土砂くずれを誘発して道路は封鎖。その土砂くずれとともに落ちた大きな石が止めてあった車のフロントガラスに命中し、助手席前部をめちゃめちゃに壊された人もいました。

 枝に積もった雪の重みに耐えかねた木が何本も折れ、倒れながら電線を切ったり、電線に積もった雪の重みでコンクリートの電信柱が折れました。3〜4日に及ぶ停電は和合の人もはじめての経験だったようです。山の中に散在する家の中で一人きりで暮らしているお年寄りも少なくありません。その中には、電気炊飯器、ホットカーペット、ファンヒーターなど、電化生活をしている人もいます。湯たんぽひとつを抱いて布団に入ったきりでいたという話も後になって聞きました。
 幸い、薪ストーブ、豆炭こたつ、文化釜(ガスコンロで飯炊く鍋)を使っている私たちはとりたてて困ったことはなく、ろうそくに灯をともして、暗い夜をしのぎました。

 1日留守にしていたこともあり、土砂崩れにより道路が封鎖されていたことも大分後になるまで知りませんでした。道路が寸断されることは、梅雨時期、台風時期としょっちゅうなので、皆慣れっこでいるせいか、そんなに騒ぎにもならない和合なのでした。

雪山

 雪が降って真っ白になった山は面白い。毎朝犬の散歩で歩いているのに、全然知らないことが見えてきます。なぜって、色々な動物の足跡が見えるから。

 人の歩く道をトボトボとひたすら歩いていくキツネ。山から人の道へ入っては、警戒し、オロオロと戻っていくウサギ。人の道を横切る獣道には大きなイノシシの足跡。急斜面も平気で濶歩するシカ。山畑で収穫し損なったカボチャをむさぼり食べるサル。初めて知る世界。
 動物たちはただいつものように行動しているだけなのだろうけれど。

田んぼの水のこと

 一昨年の冬は雪が大変少なく、ツイているなぁと思っていた私には、和合の人々の間で交される「雪が降らんで、今年は水が大変だ」という会話の意味がわからず、なんとなく聞き流していました。
 そしてその意味は、田んぼの仕事がはじまってから思い知らされたのです。
 山の涌き水や、小さな沢から直接それぞれの田んぼへ水を引く和合の山あいの田では、山に降り積もった雪がじわり溶けて浸み込み保たれる水の量が大きく影響するのです。

 今年は水が少ない、という覚悟がある和合の人々は、少しずつ準備を早めて対策を練っていたのでしょう。田植えなどが遅れたという話しもほとんど聞きませんでした。
 そんなことは何も知らない私たちは、田植え前に水をはって、耕し、平らにならす作業が遅れ、当然ですが田植えも遅れました。収量にもひびき、痛かったです。

 こんな経験をしたので、「今年の雪はエラかった(多くて大変だった)で、おかげに水はいいな」という会話に深くうなづくことができるのでした。(と、安心していたのも束の間。3月、4月と例年になく降雨量が少なかったため、水が渇いてしまい、今年もまた田んぼに水がたまらなくて大変苦労をしています。)

雪が溶けて

 

福寿草の花が一番に春を知らせてくれます。まだ、枯れ草に被われた殺風景な地面に、黄金色の花が陽の光りを受けて輝く姿は本当に眩しいばかりです。きっと、いよいよ春が来るぞ、という嬉しい気持ちも反映して、余計に光って見えるのでしょう。
山にはマンサクやナナカマド。なぜかはじめに咲くのは黄色い花ばかりです。
 風がまだひんやりとし、太陽の光がキラキラする黄色い春。芽吹きを準備する木々のように私の体にも力が涌いてくる気がします。

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  [修]


 今年は昨年までとは違う田んぼ2反6畝(約800坪)を借りることになりました。田んぼの仕事でまず最初にやること、それは水路の点検です。和合のような山間部では水路はたいてい洞(小さな沢)から引いてきます。
 当然ですが田んぼでは水は欠かせない条件の一つです。水利権という言葉がありますが、田んぼを作っている人にとって水の権利は大変重要なものになります。また、田んぼだけではなく、畑や生活用水についても厳しい決まりがあります。田んぼの用水はたいてい1つの家に1つの洞と決まっています。

 今年借りた田んぼの水源は橋のたもとで車を降りて、200mくらい上流に遡ったところにあります。ほんの少しの距離なのですが、これがかなり険しい道で登山のガイドブックに載れば、「荒廃、進入注意!」なんてコメントがつくような恐い道沿いに、直径10センチくらいの黒パイプ(ポリエチレン製?)が延びています。常に一定の傾斜をつけるために、ある部分では柱を立てて空中に持ち上げ、ある部分では地中に埋めて延びています。その水路の冬の間に傷んだ箇所を点検、修理するのですが、この冬は記録的な大雪だったためにかなりひどい事になっていました。 パイプが外れているくらいならば良いのですが、雪の重みで倒れた樹がパイプに被いかぶさっている所が、数カ所。そのうちの1ケ所はパイプがかなり太い樹の下敷きになっていました。さらに上から押し出して来た土砂や樹木で水路が流されてしまった箇所も。とても私1人ではお手上げ状態でしたが、お隣の田んぼの水路が並行してある部分でしたので、その方のお世話になってなんとか水を通すことができました。

 さて、今は合成樹脂でつくられたパイプを買ってくればなんとか修理できますが、その昔はどうやって水路を引っ張ってきたのでしょうか。初めて見たときは大変驚きましたが、木の丸太を彫って樋を作り、それを渡して水路にしていたのです。木製の樋の残骸やそれを作る道具は、こちらへ来てから度々目にしたことがありますが、現代人には気の遠くなるような仕事です。

 田植えは5月25日から月末にかけてになりそうですが、実はこの田植えまでの期間がとても忙しい。水路の点検から始まって、田を起こし、畦(あぜ)を作り、水を入れて代かき、その一方で苗を作らなければいけません。今年は大雪だったので、水には不自由しないだろうと油断していましたが、4月からの日照りで代かきの水が溜まらず、大変苦労しています。雨が待ち遠しい毎日です。

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引出し付き食卓 [修]     巾×奥行×高さ(@)1600×1000×700

 

1月の半ば頃です。町の教育委員会から電話があって「3月に町で文化祭をやるのだけど、なにか出展してくれないか」とのこと。まあ注文を受けていた食卓を作る予定だし、あれを出せばいいだろう、と軽い気持ちで引き受けました。しかし、後になってよくよく聞いてみると、町の4地区(阿南町は40年ほど前に、4村が合併してできた町で、今でも旧4カ村が4地区として扱われています。)から1人づつ選ばれて展示会をやるという話しで、しかも他の3地区からは、日本画家、洋画家、陶芸家が出展することになっていました。ちょっと場違いかなとも思いましたし、自分の作ったモノをためている訳じゃないし迷いましたが、モタモタしているうちにポスターが出来てしまっていました。昔に納品したものを数点かき集め、よろず耕房の案内など展示して、なんとか展示の点数では他の人とバランスがとれたかな?という感じでした。

 今回やってみてよかったのは、地域の人たちにこんなことをやっている奴が町内にいる、と知ってもらえたこと。うちの山から昔伐った木があるから見においで、作ってもらいたいモノがある、なんて話しがちらほら出てきたこと。新しい人とのつながりができたことが、大きな収穫でした。

      ◆ ◆ ◆

 ところが、万事が順風満帆という訳ではありません。この仕事までは、隣の浪合村の村営木工センターで機械を借りてやっていたのですが、浪合村内で「村外の人間に村の施設を使わせるのは気に喰わん」と言い出した人が出てきました。役場の人は施設の有効利用のために使って欲しいと言ってくれるのですが、地元の人の反感を一番気にしてやっていたので、木工センターの利用はあきらめ、思いきって自前の工房を準備することにしました。

 幸い阿南町で大工を引退した人が、自分が作業場にしていた小屋を使わないかと言ってくれていたので、そこを借りて中古の機械をいくつか揃えました。3月はその作業場の準備に追われて注文を受けていた仕事がまったくこなせず、4月にそのしわ寄せが来てさらに田んぼの仕事も始まったので、しばらく大変な時期が続きそうです。まあ、仕事がなくて暇を持て余しているよりだいぶ良いのですが。

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4人展パンフ [弓]

 この4人展の会場で配る小さいけれど、フルカラーのリーフレットのレイアウトを、役場に勤める和合の方から頼まれました。新転地でこんなふうに力をあてにされることは、ズシンと嬉しい出来事でした。


コカリナの解説書など [弓]  文:修

 飛騨で木工を勉強していたときの仲間で、三嶋健という男がいます。彼は、長野県の東のほうにある北相木村に家族と一緒に移り住み、森林組合の作業班で働くかたわら、コカリナという木製の楽器を作っています。片手におさまるくらいの小さな木管楽器ですが、これで1オクターブ以上の音域を出します。

 彼の作るコカリナに添付される解説書のレイアウトを、弓が請け負いました。また、彼の木工房三四五(さしご)のロゴマークのデザイン、名刺も作りました。

 コカリナはもともとハンガリーの楽器でしたが、3年前の長野オリンピックのときに道路などを造るために伐採された木を使って、国内でコカリナを作るグループができました。彼らは現在ソルトレークシティーオリンピックのために伐採された木を使ってコカリナを作っています。三嶋もNPO日本コカリナ協会公認コカリナ製作者です。 「木工房三四五」のコカリナはひとつ4500円。興味のある方は下記まで問い合わせて下さい。ただ、これからの季節は森林組合の仕事が忙しくなるため、納期は延びそうということですが。

 長野県南佐久郡北相木村山口3745-1 / 0267-77-2340 三嶋 健


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蔓細工 [弓]

 今年は雪ばかりで猟もなく、静かな冬を満喫し、念願かなって蔓細工に存分に浸ってしまいました。

 秋のある日にかきあつめた軽トラック山盛りの蔓は整理するだけでも丸一日かかってしまいました。使えない部分や、使いにくいものも多く始末も大変で、欲張りを反省しました。

 この冬作ったものは、暮らしの中で欲しいなぁと思っていたものばかり。名も知らない野の草をちょっとつんで飾る一輪差し。畑におやつをもっていく手提げかご。洗濯機の上にちょうどおける脱衣かご。野菜かごなどなど。いずれも練習をかねたへたくそなものばかりで、使っているうちに早速あっちこっち壊れてきますが、それでも自分で作ったモノが暮らしにあるということ、巡る季節の中に自分が埋もれてゆくことが嬉しいのです。使いながら、丈夫に作るにはどうしたらいいか、どんな材料を集めたらいいか、また一年考えます。畑や田んぼの仕事に行く道で、どこに蔓が生えているか今からチェックしています。

 この冬は欲張らず、選りすぐりの材料を集めて、長く使えるものを作りたいと思っています。

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