PART2

さてさて、山の本棚の左上の一角をまず見ていただこう。


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@『処女峰 アンナプルナ』 モーリス・エルゾーグ著 近藤等=訳 白水社1995年 定価1300円
 1950年、フランスの若い登山家9人が世界で始めて8000m峰登頂に成功した記録。登頂は果たしたが下山中のアクシデントで隊長のエルゾーグらはひどい凍傷にかかる。
 山岳ドキュメンタリーとしては世界の大ベストセラーだろう。中学校の図書館にも簡訳版が置いてあるぐらいだ。
 本文最後の有名なフレーズ。
「アンナプルナ、われわれがなにひとつ報酬がなくとも行ったであろうアンナプルナこそ、われわれの生涯の残りを生きる宝なのだ。この実現によって、一ページがめくられ・・・新しい生活がはじまる。
 人間には、他のアンナプルナがある・・・・」

A『日本アルプス』 W・ウェストン著 岡村精一訳 平凡社2000年 定価1359円
 
牧師なのに山ばっかり登っていたと思われるウェストンだが、その健脚ぶりは登山家以上かもしれない。南アルプス地蔵ヶ岳のオベリスクの初登もウェストンらしい。
 2005年の夏、私もオベリスクに登ったが、私の後から登ってきたイギリスの青年に、「ウェストンが初めて登ったのだ」と言ったら、「そうか、それなら自分も登ろう」と言って登っていった。「日本アルプス」を読んだことがあるかと聞いたら、「読んではいない」と言っていた。
 日本の山岳史には金字塔を立てたウェストンだが、本国イギリスではそう評価は高くないのかもしれない。ありがちな話である。
 学生の時に読んだ本だが、何度かの引越しでなくなってしまい、いま棚に納まっているのは最近新しく買った本である。

B『氷壁』 井上靖著 新潮社1957年 定価310円
 2006年にNHKがこの小説をリメークしたドラマを放映した。穂高がK2になっていたり,切れたザイルがカラビナに変ったりしていたが,だいたいのストーリーは同じだった。
 高校時代に読んだときには,山に恋愛は無用だなと思い,今もその考えは同じだ。恋愛だとか職場のしがらみだとか,そういうドロドロした現実から離れるために山に行くというのが一つの目的になっているわけだから,こんな小説はドラマ化してもつまらんだろうと思った。
 本棚に飾っている氷壁はある知人からもらった本で,要らないからということで他の何冊かの本といっしょに我が家にやってきた。本としては大事にしてやりたい。

C『私の北壁』 今井通子著 朝日新聞社1962年 定価420円
 登山家の今井さんは信州とは縁が深い。大町市のいなかに別荘があって,そこの田畑で米や野菜を作っているとある講演会で聞いた。だからしょっちゅう信州には来ているらしい。
 夫であるダンプさん(高橋さん)はカモシカスポーツのオーナーで,最近リニューアルされた松本店で先日お見かけした。(2006,7月)
 大町市で何度か行われる山岳関係のシンポジウムに今井さんが出られるときには,伊那谷から車を飛ばして聞きにいくミーハーな私である。

Dキャンプシックス F・S・スマイス著 朋文堂1959年 定価390円
 東京の古本屋で1000円で買った。
 1933年のエベレスト遠征隊に加わった著者の個人的な記録で,第6キャンプまで伸ばしたのに登頂はならなかった。登頂はできなかったが,古いピッケルを発見したことから,かつてエベレストに挑戦したマロリーとアーヴィンが果たして登頂したのかしなかったのかの論争が再燃する。でもその決着はいなだについていない。
 ノースコルからまるで自分も登っているような臨場感があるいい本だと思う。

つづく
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