入山(大鹿村) 2186m    2006,5,21踏査
「いりやま」と読む。三伏峠から塩見岳に登っていくと,その途中に本谷山という山があるが,その本谷山から北西方向に延びる長大な尾根上にある山である。この尾根には他に,二児山,黒河山などが点在している。

大鹿村はその昔,この入山あたりの自然林を根こそぎ伐採して一度はげ山にしてしまった。跡地にカラマツを植林したものの,稜線に近いところは風当たりが強いのか,いまだに笹原のままである。冬期に伊那谷から見ると,その笹原の部分だけが白く見える。(下の写真:右端の尖ったピークが入山)



従って,この稜線からの展望は伊那谷側も向こうの南アルプス側もそれはすばらしい。そのすばらしい眺めが歩いても歩いても続いていくのがこれまたすばらしい。
朝起きて,天候を確かめてから家を出た。

ルートマップはこちら

旧雨量観測小屋
登山口の写真を撮り忘れたが,あとでルートマップを見てもらえば,場所はむずかしくない。

登山口から10分も登ると,昔の観測小屋が建っている。10年以上前に登ったときと,まったく同じ雰囲気だった。中はどうなっているのだろうと気にはなるが,変なものがでてくるとイヤだから,ここは素通りしよう。
戸台層のチャートれき岩
そこからまた10分ほど,ササの中の踏みあとを進むと,ちょっと岩がちな場所がある。

地質をかじった私は本能的に岩質を見てしまう。れき岩だ。戸台層と名前がついているチャートの円れき層だった。地質に興味がない人にはここも素通りしてもらうしかない。
コルから入山を眺める
れき岩が過ぎると,いよいよカラマツ林の斜面が急になって,尾根も,踏みあともはっきりしない。はっきりはしないが,ときどき赤テープが残っているので,それをたどってまっすぐに登る。以前よりも,ササはおとなしくなった感じだ。

それを登りきると,ご覧のような展望地がまっている。正面が入山になる。
シラビソ林の立ち枯れ
尾根は左に曲がっていく。すぐにシラビソの立ち枯れの中に踏みあとが続いていくが,この林もまもなく途切れて,またササの原っぱに変化する。

以前はまだ枝が残っていたが,もう完全に死の森だ。鹿の皮はぎ食害のせいと言われている。
笹山の山頂
もう一度シラビソの密林をくぐっていくとまもなく笹山の頂上平地にさしかかり,腰丈のササ原の中にシカのけもの道をたどれば,そこが山頂だ。

コメツガの中木に「笹山」のブリキ?板が打ち付けてある。これも10年前と同じ。なにも変わっていないのがうれしい。
入山までのササの尾根
ここからは尾根の方向が変わっていく。笹山周辺はガスでもかかっていると迷いやすいから注意がいる。いや,ガスがかかっている日は行かない方がいいだろう。私でも迷う気がする。それぐらい平らで広くて同じような起伏がいくつもある。
こっちが先に見つけた
道中はササの中に無数のシカの糞がある。ササの葉っぱが食べつくされた代わりに,糞がころがっているという感じだ。

何度も何度もシカを見るが,こっちが気づく前に逃げてしまう。この写真はたまたま私が先に気づいたのでしゃがんで待って撮った。石のようにじっとしてカメラを構えた私を人だと思っていないようすだった。
振り返れば笹山
笹山から入山までの稜線歩きは約1時間30分。
右に伊那谷を見て,左に南アルプスを見て歩いていくと,その贅沢さもやがてあたりまえに思えるから不思議だ。

尾根には時々,シラビソの立ち枯れ林が残っていたりする。地質はずっとチャートのようである。
入山の山頂
ここもチャートのこぶだった。硬い岩なのでピークとして残っているのだろう。北斜面にはわずかながら雪が残っていた。

三角点の一本は深々と埋められ,もう一本は地上にごろりと転がされていた。
帰りにウグイス
同じ道を帰らざるを得ないコース。今日は周回するのは難しい。

時間の制約もない一人歩きなので,ウグイスに付き合ってやった。今回は鳴いている瞬間にシャッターを切った。ちょっと遠いが,ジャスピンだったのはうれしい。
林道近くのニリンソウ
旅の終わり,車道を走る車の音がすぐ下に聞こえるようなカラマツ林の林床に,うすむらさきの花びらをこっちに向けて,写真撮ってよと,ニリンソウの声が聞こえた。(ウソです)

構図を変えたり,しぼりを変えたりして10分も付き合ってやり,満足しながら3分で車に着いた。


本日のベストな一枚
右が笹山,左奥は中央アルプスの山並み


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