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社会主義考155資本主義への怒り—ウォール街から全世界へ常岡雅雄


望む人の誰にでも仕事を

人皆安心して生きれる社会を


 格差も貧困もない平等社会を創ろう


 丁度一カ月前の9月17日のこと。アメリカ・ニューヨークの中心街であり全世界の金融中枢であるウォール街で数百人の青年たちが「反格差—反貧困」の思いのもとに「ウオール街を占拠しよう!」と呼びかけ合って野宿と街頭デモに立ち上がった。このウォール街デモは瞬く間にアメリカ全土に広がった。更には10月15日には国際的「一斉行動の日」へと発展した。ウォール街「反格差」デモは僅か一ヶ月足らずのうちに「先進資本主義」米欧日諸国はじめ全世界に波及したのである。その広がりゆく「反格差—反貧困」デモの一端を手元の新聞から拾ってみる。


 ウオール街から全世界に広がる「反格差—反貧困」決起


 〈米格差デモ ボストンで141人逮捕—米主要都市に広がっている経済格差の是正を求める抗議デモが11日米東部マサチューセッツ州ボストンであり、遊歩道を占拠したとして141人が逮捕された。(中略)一方、ニューヨークでは数百人が高級ブランド店が軒を並べる目抜き通りから高級住宅地へデモ行進した。金融大手幹部や大手ニュース会社の最高経営責任者リチャード・マードック氏の自宅周辺で、高所得層への課税強化を求めるプラカードを掲げて練り歩いた。〉(朝日新聞10月13日)

 〈市民の怒り金融へ—米国の金融の中心地であるニューヨーク・ウォール街近くの公園での抗議行動は一カ月近く続いている。格差拡大や雇用情勢への若者らの怒りが、政府による「優遇」を受けてきた金融機関に向かう。飲食業で働くエイジェイさん(23)は「大学を卒業したのにまともな職がない。我々は苦しんでいるのに、大手銀行は政府に助けてもらった。政府と金融機関のつながりが強いからだろう」と憤る。〉(前同10月14日)

 〈米ニューヨーク・ウォール街で続く若者らのデモ賛同者が15日、アジアをはじめ世界各地の都市で「格差是正」を叫ぶデモを繰り広げた。インターネットを通じて、同日を「一斉行動の日」とするよう呼びかけが行われ、これに応じた人々が各地で行動を起こした。呼びかけ団体は世界80か国以上、900以上の都市でデモが予定されているとしている。

 オーストラリア・シドニーのビジネス街では、約2000人がデモを行った。(中略)呼びかけ人の一人マーク・グードカンプさんが「世界経済を動かす最も強力な人々に異議申し立てる必要がある」などと訴えた。台北でも、約100人の若者が超高層ビル「台北101」の周りでデモを行った。参加者は、「反階級社会」「仕事が欲しい」などと書かれたプラカードを手に同ビル周辺を行進、途中からビルの中にも行った。(中略)香港では、金融機関が集まる香港島中心部で約300人がデモを行った。〉(読売新聞10月16日)

 〈米ニューヨークに端を発した経済格差デモ(ウォール街を占拠せよ)は15日、英国やドイツ、イタリアなどの欧州から韓国、台湾などアジアまで世界各地に広がった。ロンドンの金融街シティでは、証券取引所前で数千人がデモ行進。建設作業員の男性(28)は「大勢の若者が失業に苦しむ中、公的資金に助けられた銀行の行員は高額のボーナスをもらっている。あまりに強欲だ」と怒りをぶつけた。

 ドイツでは欧州の金融センター・フランクフルトにある欧州中央銀行前に約5000人が集まった。格差デモはアジアに拡大。ソウル中心部の広場には若者や労働組合員ら約500人が駆け付け「私たちは1%に立ち向かう99%」などのプラカードを掲げ気勢を上げた。〉(東京新聞10月16日)

 〈反格差社会デモの「世界一斉行動日」とされた十五日、東京都内でも日比谷や新宿、六本木の各会場で百人以上が練り歩き、「格差をなくせ」「東京を占拠せよ(オキュパイ・トウキョウ)などとシュプレヒコールで気勢を上げた。日比谷公園が発着点のデモは、インターネット交流サイト「フェイスブック」を通じて知り合った都民らが企画し、約二百人が参加。気軽に参加してもらおうと多様な主張が促されたため、東京電力本店や経済産業省の前で「原発反対」「福島を返せ」の声も。〉(前同10月16日)


 金持ちに増税を—戦争でなく雇用を


 〈反格差デモ全米で—NY中心街に数千人—「1%の富裕層ではなく99%のための民主主義を」—世界各地で15日に起きた格差是正を求めるデモは、同調を呼びかけたインターネットサイト「世界変革のための連帯」によると82カ国・地域の951カ所に上がった。運動の発火点となった欧州や米国だけでなく、アジアや中東でも集会があった。

 米国ではニューヨークだけでなく、ワシントンやロスアンゼルス、ボストン、シカゴなどの主要都市でもデモが繰り広げられた。「震源地」のニューヨークではマンハッタンのど真ん中、タイムズスクエアに数千人が結集。観光客が見物するなか、デモ参加者が警官隊と衝突し、一時騒然となる場面もあった。参加者の多くは20〜30代だ。「金持ちに増税を」「戦争ではなく雇用を」などと書かれたプラカードを掲げ、「我々は見捨てられ、銀行は救済された」と連呼した。デモは17日で発生から1カ月になる。「我々は99%」というプラカードを持ったイーライ・シェーラさん(24)は「デモを続けることで、皆がこの意義を考え、対話が生まれる。その結果、政府や政治家に変化への大きな圧力をかけることができる」と語った。

 カリフォルニア州にあるソノマ州立大のロバート・ガーリング教授は、デモが一カ月弱で全米規模になったことについて「公的資金で救済した金融機関の幹部が豊かに暮らす一方、庶民は高い失業率に苦しむ。『不公平、不公正』という若者の怒りに理があると多くの国民が共感した」と分析する。〉(朝日新聞10月17日)

 〈反格差デモ 一部暴徒化—「一斉行動の日」ローマ、70人負傷—NYでは80人逮捕—ローマ中心部で15日、「格差是正」を求めるデモの一部が暴徒化して警察官と衝突し、70人以上が負傷した。インターネットを通じた「一斉行動の日」の呼びかけに呼応したデモは、ポルトガルやスペインなど欧州各国に広がった。米ニューヨークの繁華街でも同日、反格差デモが行われ、AP通信によると、16日未明までに80人以上が逮捕され、警官2人が負傷した。シカゴでは175人が逮捕された。

 ローマのデモは当初、平和的に繰り広げられたが、途中から覆面姿の過激派メンバーが加わり、ハンマーなどで銀行や店舗の窓ガラスを割ったり、車に放火したりして様相が一変した。警官隊が暴徒に向け催涙弾などを発射して鎮圧を図り、観光客でにぎわうローマ中心部は騒然とした雰囲気に包まれた。伊メディアによるとデモには労組、若者グループなどが参加し、地方からも貸切バスで首都に結集。数万人が参加した。

 (中略)ポルトガルでは15日、首都リスボンや北部ポルトで、それぞれ2万人がデモに参加し、「(国の)借金は我々が作ったものではない」などと叫んだ。15日にはアテネ、マドリード、パリ、ロンドンなどの欧州の主要都市で大規模なデモが行われた。〉(読売新聞10月17日)

 〈【ニューヨーク=弟子丸幸子】経済格差の是正を求め、米国で始まった反ウォール街デモは世界各地に拡大した。発信源のニューヨークでは16日も千人規模の集会が続いた。デモは17日で開始から一カ月を迎えるが、デモの拡大とともに各地で主張も多様化し、一部では過激な行動も見られるようになった。

 「ウォール街を占拠せよ」をスローガンに始まった抵抗運動は、モデルになった中東民主化運動「アラブの春」と同様にネットを通じて急速に拡大。世界各地に飛び火したことで第2段階に入った。15日には「世界での一斉行動」が呼びかけられ、オーストラリアや韓国、台湾、日本などアジア各地でもデモ行進や集会があった。

 米国では15日、首都ワシントンやロサンゼルス、ボストン、シカゴ、マイアミなど全米規模でデモが発生。観光名所の繁華街タイムズスクエアで約5000人が行進した。デモ隊と警察当局による小競り合いが起きた。ロイター通信によると、米大手銀行の敷地への不法侵入で24人、交通妨害で42人と計約70人がニューヨークで逮捕された。

 イタリアからの報道によると、ローマでは高失業率を背景に、数万人がデモに集結。マスクかぶった数百人のデモ隊が車両に放火したり、店舗の窓ガラスを割るなど暴徒化した。警察当局は催涙ガスの使用などで応じ、衝突に発展した。70人以上が重軽傷を負う事態となった。「ブラック・ブロック」と呼ばれる覆面のグループが車やごみ箱に火をつけるなどしてデモを過激化させたという。イタリア国外から来た過激派も協力して、過激な行動を繰り返したもようだ。

 このほか欧州ではポルトガルのリスボンで約5万人がデモに集まったほか、スペインのマドリードや財政危機問題を抱えるギリシャでも大規模なデモが発生した。ロンドンのデモには内部告発サイト「ウィキリークス」の創始者であるジュリアン・アサンジ容疑者も参加した。

 各国のデモの主張は必ずしも体系化されておらず、反戦や反核、脱原発といった経済格差とは関係ない内容も含まれ、多様な不満を吸収する形となった。

 経済危機の広がりを背景に、欧州では数万人単位の大規模なデモに発展する傾向が目立った。ユーロ圏でのデモは緊縮財政と増税への反対論が多く、主張や要求が具体的。経済格差の是正を求める米国のデモとは異なる内容となった。〉(日本経済新聞10月17日)


 次は10月29日—全世界で数百万人が決起する

 仕掛け人のカレ・ラースン氏語る


 なお、これらの一挙に全世界規模に広がった「反格差—反貧困」デモの「仕掛け人」であるカレ・ラースン氏について、10月17日の読売新聞は次のように伝えている。

 〈デモ仕掛け人 カレ・ラースン氏—ニューヨークから世界に波及した「格差是正」を求めるデモを7月中旬、数々のキャンペーンを展開する社会派の雑誌「アドバスターズ」(カナダ・バンクーバー)がホーム頁で呼びかけた。仕掛け人となった創刊者〉カレ・ラースン氏(69)に電話で狙いなどを聞いた。

(問)「なぜ『ウォール街占拠』を呼びかけたのか。」

(答)「ウォール街は資本主義の象徴。2008年の金融危機の根源で、世界に影響を及ぼした。ウォール街に対しカナダからも戦いを挑む権利はある。5月から7月にかけて計画を練った。」

(問)「デモは手慣れた人が組織しているように見える。」

(答)「中核の数人は欧州各地のデモに参加し、組織化や食糧供給などを学んだ。米国で爆発的な支持を得て運動が生命を得た。」

(問)「急速に世界に広がったのはなぜか。」

(答)当初から(ネットで)デモを生中継した。ネットでの情報発信は強力かつ重要な要素だ。」

(問)具体的な要求に欠けるとの批判もある。

(答)今度、数週間で明確な要素が出る。今月29日に世界中で数百万規模のデモを行い、(投機目的の)金融取引に1%の税金を課すように要求する。今の世界経済は地球規模のカジノだ。」〉(読売新聞10月17日)


 資本主義の廃絶に向かう—価値観と構想と政治を


 20世紀末期から21世紀初期の今日までの四半世紀25年間を大きく世界規模で振返ってみるならば、そこには三つの画期的事態のあることに気が付く。

 第一は、ソ連を中心とした「現存社会主義体制の崩壊」である。第二には、チュニジアから始まってエジプト、リビア、シリアなどへとドミノ的に波及して目下前進中の中東・アフリカ地域における「反独裁—反専制」民衆革命闘争である。

 そして三つ目が、僅か一か月前にウォール街デモから始まって瞬く間に全世界に波及してゆきつつある「反格差—反貧困」決起のうねりである。

第一の「現存社会主義体制の崩壊」とは、スターリン主義的独裁体制を崩壊させた「人民の民主主義革命」であった。第二の中東・アフリカ地域における「反独裁—反専制」革命「アラブの春」とは、これもまた、「人民の民主主義革命」である。いずれも、独裁体制や専制体制に対する民衆決起の人民革命ではあるが、それは「資本主義を否定する」革命ではなく、「資本主義の道をより大きくひらく」ところの政治革命であった。

 しかし、今、我々が目前にしている「反格差—反貧困」決起とは、その具体的な主張や要求は様々であっても、その本質は「資本主義への怒りと否定の噴出」である。究極的には「資本主義の廃絶を求める」闘争である。

 即ち、今全世界に噴出しうねり始めた「反格差—反貧困」決起は、「第一」「第二」の革命とは「比べようもなく重く困難な課題への挑戦」として始まり全地球規模に展開していっている。「資本主義の廃絶」という「前人未到の人類史的課題への挑戦」という本質をもって、この「第三の全世界的事態」は始まっていっている。

 そうであるならば、(一)この「資本主義を廃絶する」価値観と原理と、(二)その「廃絶後の社会と世界を建設する」構造的構想と、(三)その「実現に接近してゆく政治的な戦略と戦術」の探求と実践が我々の前に巨大な重みをもって横たわっている。どんな壁厚く道遠かろうとも、「資本主義廃絶の道」こそ米欧日諸国のもっとも核心的な進路!

(2011・10・17)