THE  POWER  OF  PEOPLE

 

二ヵ月後の人力第12回全国大会人力東海 岩田菊二


貧困と差別をなくし

平和と平等の地球社会主義を行く


 私たち人民の力は、5年前(2010年)に第11回全国大会を開催した。

 そして、今年(2015年)5月に人民の力第12回全国大会を開催する。

 5年前の11回大会で、私たちは「世界」も「日本」も「人民の力」も大きな転形期にあると、時代を特徴づけた。


「破壊」をもたらす転形期の世界


 19世紀から20世紀にかけてアメリカ、西欧,日本など先進資本主義国家に支配されてきた中国やインド、オーストラリア、ロシア、ブラジルなど発展途上にあった国々が、急速に新興資本主義国家として登場してきたことは、21世紀の転形期世界を示す大きな特徴であった。

 第11回全国大会はこのことをとらえて、これからの世界と新たに始まった21世紀について、「競争と侵略と戦争を本質とする資本主義がグローバル化して、全地球規模に蔓延していく」時代であると位置づけた。いま、アメリカを頂点とした資本主義体制は、より一層グローバル化して、激しい利権争いを作り出し侵略、戦争という形でそのはけ口を求めている。

 イラク、アフガニスタン、イスラエル、アルジェリア、ミャンマー、ウクライナなど現在25ヶ国以上の国や地域で内戦、戦争が起きているという。先日私が見たウクライナの内戦のテレビ映像は、私たちと同じ街や地域が、一夜にして破壊される映像だった。豊かな自然も美しい家も歴史あるビルも楽しさを与えてくれたスタジアムもすべてが一夜にして破壊され、そこには悲しみや苦しみに暮れる人々がいた。どこの争いもそうであるように、戦争とは自然の破壊、街の破壊、人間の破壊、生き物すべての破壊など「破壊」のみをもたらすものであり、新しい発展的なものは何一つ生まれない。

 その戦争や内戦の一番の犠牲者になっているのが、女性や子供たちだ。残虐兵器の犠牲となって殺傷されたり、暴行や虐待、テロリストや兵員としても扱われたりしている。戦争に巻き込まれる子供兵の救済や地雷撤去などに取り組んでいる鬼丸昌也氏(NPO法人「テラ・ルネッサンス」理事)の記事が報道された(『中日新聞』1月9日)。鬼丸氏は、「誘拐などによって主に内戦に加担させられる子供兵は、世界に25万人以上といわれる。子供兵に、出身の村を襲わせたり、親を殺させたりするケースも珍しくない。二度と故郷に戻れないと思わせるためだ」とその実態が話されている。


争いの犠牲者—それは女性や子供たち


 この問題は日本にも、関係している。内戦の多くは、レアメタル(希少金属)や宝石、石油といった資源の利権争いから起きており、その要因を日本の三菱や三井、住友などの総合商社も作り出しているのだ。さらに鬼丸氏は「日本では昨年、武器輸出三原則が撤廃され、武器や軍事技術の輸出が解禁された。子供が内戦に参加できる理由に一つは武器の小型化にある。その武器を製造しているのは米国やロシアなど。日本もいずれ、そうした国の一つに名を連ねる日が来ないとは限らない」と日本の動きに警鐘を鳴らす。国連児童基金(ユニセフ)の推計によると、世界の子どもの10人中1人にあたる約2億3000万人が、紛争下の国や地域で暮らしているという。

 先日、「世界の1%の富裕層が、世界の48%の富を独占している」という報道を目にした。こうした貧富の格差はますます世界的に広がっている。世界から、貧困と差別こそなくさなければならない。多くの戦争や内戦は、その貧困と格差の拡大によって国家、人種、民族、宗教などで対立しているからである。世界的に蔓延する貧困と格差を無くすために貢献していくこと、そして罪のない老人や女性や子供たちの援助を率先して行うことが、日本が世界に示す平和主義だ。


戦争への道をすすむ—日本の転形期


 だがしかし安倍政権は、「積極的平和主義」と銘打って、戦争ができる日本へと作り直そうとしている。武器輸出三原則の撤廃、自衛隊の海外派遣、秘密保護法施行、集団的自衛権行使容認、安全保障関連法の見直し、膨張する5兆円予算の防衛費、沖縄辺野古の米軍新基地建設等々、日本の侵略を彷彿させる新国家体制への転換は、日本の転形期をもっとも表現している事態である。

 歴代の政権では見られなかった50か国以上という多くの国や地域を安倍首相は訪問し政治、経済、軍事、原発などでの協力を求めてきた。今年1月には中東へ行き、「イスラム国」に日本人が拘束されているということを承知で、「イスラム国」を敵国とする国々へ2億ドルの支援表明を行った。そして事態は、拘束されていた湯川遥菜さんと後藤健二さんの殺害という最悪の結果を招いてしまった。安倍首相は、中東への「財政支援は軍事支援ではなく人道支援だ」といっているが、そんなごまかしが通用する世界ではないことは明らかだ。

 アメリカが、2001年の同時多発テロの報復としてアフガニスタンに侵攻したとき、日本はテロ対策特別措置法を成立させ、インド洋上で給油活動を支援。2003年にはイラク特措法を成立させ、日本の自衛隊は米軍等の物資や米兵の輸送を担ってきた。そして昨年7月、集団的自衛権の行使容認とともに多国籍軍への戦闘支援の拡大を図る安全保障政策を閣議決定した。明らかに「イスラム国」に敵対する、アメリカをはじめとする他国の支援を進めてきたし進めようとしているのだ。安倍首相は、今回の人質事件で「テロに屈することは絶対にない」と語って、自衛隊が海外で他国のために武力行使ができるように法整備を進めていこうとしている。「イスラム国」とみられる側からは、「今や全ての日本国民と日本の施設が(テロの)標的だ」というメッセージが出されている。安倍首相の下で、日本はアメリカとともに「対テロ戦争」に加わろうとしている。今世界で起きている戦争、内戦が示すように、憎しみは憎しみを生み報復は報復を呼ぶということであり、武力による和解は絶対にないということだ。


日本の過去を問い—今を問う


 いま日本は、過去に行った行為を問い直さなければならない。過去日本はアジアを侵略して、朝鮮半島や中国の人々を虐殺し、文化や言語や財産を奪い尽くしてきた。武力による侵略は、2千万人以上の人々の命を奪い、それに対するアジアの人々の憎しみや悲しみはいまも生き続けている。敗戦70年、「従軍慰安婦」問題をはじめとした日本が犯した責任が、世界で問われている。日本は侵略や殺戮、植民地支配を反省し、二度とその過ちをおこなわないと憲法で誓った。だが、政府は集団的自衛権の行使を可能にするための安全保障関連の法案を、今の国会に提出する方針だ。そして5月の連休明けから議論していく動きである。

 今年8月に出されるであろう「戦後70年」の安倍談話も、侵略という過去の行為に目を閉ざす新国家主義的談話を出そうとしている。憲法が示す基本的人権尊重、主権在民、平和主義を根底から覆して、「平和憲法に根ざす日本」に深い傷を負わせようとしているのだ。日本は今こそ日本の過去を問い、今を問わなければならないのに・・・。


自由で自立した個として—地球社会主義の道を行く


 私たちは、安倍政権の新しい形の侵略国家日本づくりと、対峙していかなければならない。そのため、私たち自身も問われている。

 5年前におこなった人民の力11回大会は、人民の力の転形期として年齢がかさみ、退職などによる社会的位置の変化、そして人間的な成長の過程にあると導き出した。その転形期は今なお継続中である。いま私たちは、日本住む一人の人間ではなく、世界人=地球人に住む一人として考えていかなければならない。なぜなら、たとえば日本の資本は、世界に進出して、貧富の差を拡大している。

 たとえば日本は、世界中の外国人労働者を受け入れて長時間、低賃金労働を強いている。たとえば、日本は世界から多くの観光客を誘致し続けている。たとえば日本は、円高円安差益の犠牲を労働者に転嫁している。たとえば日本の資本は、世界的なマネーゲームによって富を独占している。たとえば安倍政治は、世界へ自衛隊を派遣しようとしている。たとえば日本は、米軍に辺野古に新基地建設を与え、米軍をはじめとした世界の戦争を支えようとしている。たとえば日本は、武器も原発も資本も世界に輸出しようとしている。たとえば日本は、TPPのように日本の農業を破滅させようとしている。日本は、グローバルに展開する世界資本の中の一翼として、世界の労働者を苦しめ殺していくのだ。世界では民衆の解放、格差と貧困をなくすために闘っている人がたくさんいる。

 私たちは、視野を世界に向けて闘う人たちと共生していくために自分の置かれている現状を、自分自身が変革していく、自立した個として飛躍していかなければならない。地球社会主義とは、国家も民族も宗教も性別もこえて平等で平和で、思いやりある世界を目指していくことだ。そのために私たちは、心を世界に向け自立した個を鍛え、そして自立した個の塊が社会を変革していく力となっていくようにしなければならない。今年5月に開催する第12回大会は、その個の塊が響きあって、地球社会主義を前進するようにしていこう。転形期下の人力として苦楽を分かち合って、新たな人力40年を開拓していくのだ。