THE  POWER  OF  PEOPLE

 

理性とヒューマニズム社会主義の道に立って岩田菊二


はびこる排外主義と民族差別の克服を!


 人民の力は、来年の2011年7月15日に40周年を迎える。40周年を前に今年5月に開催した第11回全国大会で、「人民の力40年史に確信を持ち三つの歴史的転形期に挑戦し、もうひとつの新たな飛躍を遂げるぞ!」と決意を固めあった。

 大会では、人力40年のなかで結成から今日まで、共に歩んできた同志の幅と厚みのある発言が相次いだ。40年といえば、立派な成人であり一家の主である。

 人民の力は、少数の勢力であっても社会の成人、政治の主となる気概と情熱を持って、新たな40年に向かって挑戦していく。人民の力11回大会が確認した方針は、今から新たに作り上げるというものではなく、今ある自分たちの存在の中から、豊富化して積み重ねていく道である。同志が一つとなって、理性とヒューマニズムの人力運動を広めていく道である。


 生活の中に浸透する排外主義


 今日本の社会に強まりはびこっている「悪しき思想」を、日ごろ強く感じている。名古屋でも頻繁に在日の民主的運動を妨害したり、外国人を標的にしてデモをする在特会(在日特権を許さない市民の会)の動きなどもある。「悪しき思想」とは排外主義、他者排斥、民族差別の動きであり、私たちの生活の中に天皇制と共に根強く存在している。

 例えば、先におこなわれたサッカーのワールドカップで、「サムライ日本」「日本人魂」「日本を背負う」などの言葉が新聞紙上にあふれ、国と国の威信をかけた戦争のように民族意識をあおっている。往々にしてスポーツはそうなりがちであるが、過去日本軍国主義のもとで日本人を戦場へ駆り立て闘わせていった様相が重なり合う。拉致問題では北朝鮮に対して経済制裁をつよめ、高校授業料無償化制度では朝鮮学校を排除した。

 在日から参政権を奪ったり、また外国人研修生や技能実習生を厳しい環境で奴隷状態に置いていること、外国人女性(妻)が家庭内暴力の被害にあうなど事件も後を絶たない。いま日本の社会は、こうした排外主義、民族差別に平然としているかのようであり、気付かないのか気付いても知らないふりをしているのか「悪しき思想」が生活の中に浸透していっている。


 海外で企業がつくる排外主義


 今、排外主義はグローバルに海外進出する日本企業の姿勢にも強く表れている。海外に進出する日本企業は、3万社に上ると言われているが中でも自動車関連、電機産業関連は上位を占めている。わたしは、フィリピントヨタ労組の支援する活動を行っている。

 10年前トヨタは、フィリピンにつくった工場の中に労働組合を作る動きを嫌悪して233名の解雇を行った。フィリピン最高裁判所の団交開催命令も無視をして、アロヨ政権を動かし弾圧を強めて行った。フィリピントヨタに入社した労働者は、当初国内では一流企業の労働者としてうらやましがられたが、当のトヨタ企業は、労働組合も認めない不当極まりない企業だったのである。

 今、中国でホンダに続き同じトヨタ系企業の中でストライキが行われている。低賃金、劣悪な労働条件の改善を求めての闘いであると報道されている。日本企業は安い土地で安い労働力を使って働かせることができるため、海外への進出は企業戦略として推し進めている。このストライキに対して日本企業は、当の政府に軍を投入させて弾圧させている。日本企業の海外進出は、形の変えた「海外侵略」であり根底には排外主義、民族差別からくる労働者蔑視がある。

 日本の労働者には認められ、フィリピンや中国などの労働者には労働組合もストライキもなぜ認められないのか。労働者が権利を主張し、行使することがなんの問題になるというのだろうか。世界中、労働組合の結成(団結権)やストライキ(団体行動権)は認められ行われている。

 こうしてこそ初めて、労働者側と資本側は対等に向き合える。労働者の運動は、安定した企業や社会を作る為の努力なのであり、決して破壊するための運動ではない。企業や社会の安定と発展をもたらすために、権利を求め、尊厳ある生活を求めて、ふつうの人のような生活を送りたいということである。

 日本企業や政府はこの労働者の目覚めに対して、しっかりと向き合ってその国の発展に努めなければならないのだが、現実は権力を使って弾圧し差別と蔑視の排外主義、他者排斥、民族差別を世界中に蔓延させている。


 過去の歴史の清算の中から克服の道を


 2010年の今年は、「韓国併合100年」の年であり、わたしたちは東海の中で「100年と向き合う日本の良心をつくろう」を合言葉として、「韓国併合100年」東海行動を発足させた。

 3月に130名でたちあげ集会を行い、月1回の街宣行動、署名活動を行い、7月には朝鮮人の強制連行で作られた地下壕のフィールドワーク、8月に入っては、韓国併合、植民地支配に関連する映画会や写真展なども準備を進めている。そして、その集約的行動として8月22日の「韓国併合に関する条約」調印、あるいは同29日の条約公布をにらんで、「韓国併合と向き合う集い」(仮称)を8月28日に計画している。東海行動実行委員会には、東海で日本と朝鮮半島との友好連帯のために活動している9団体が加わり、30名を超える団体、個人の賛同で資金を賄って運動を進めている。

 この運動の趣旨は、韓国朝鮮との平和で友好な関係を作ることであるが、その最も前提となるのが日本の植民地支配と侵略の責任を明らかにして、日本帝国が行った朝鮮半島やアジア侵略の歴史的認識を正しく受け止め、反省と謝罪、補償の措置をとることである。日本社会にはびこる排外主義、民族差別はこの行為があいまいにされ続け、あるいは意図的に隠されふたをされてきたからに他ならない。

 日本と日本人が行った過去の過ちを正しく認識し、反省をすることができたならば、日本が世界の中で信頼され友好な国と認められるであろうし、排外主義、民族差別の思想は絶対に克服されていくだろう。

 いたわる気持ち、思いやる気持ちを日本人の心の中にもっともっと根付かせていくことができなければならない。虐げられ、悩み、苦しめる人々に心を寄せる「日本の良心」を「韓国併合100年」にあたって広げていかなければならない。もちろんなにごともそれはまず、自分自身から始まっていく。

 戦後一貫して政治の中枢を握ってきた自民党政権を倒し、民主党政権が誕生して1年になろうとしている。圧倒的な国民の変革の想いが民主党への投票という行為に現われ、民主党は政権第一党の位置を獲得した。だが、鳩山政権は、8カ月で挫折した。

 民主党が目線を民衆に置くならば、日本の資本主義構造そのものを作り上げているアメリカからの抑圧や資本・官僚の利権と支配に、はっきりと闘う政治を進めなければならなかった。いま菅新政権のもとで初めての国政選挙、参議院選挙が7月11日投開票で行われている。この巻頭言執筆中は7月の参議院選挙の渦中であり、結果は出されていないがマスコミは菅政権体制に大きな影響は出ないと報道している。

 菅首相といえば、長良川河口堰の反対でたびたび運動に参加して、市民派、環境派との印象が強い。しかし、菅新政権もまた「高校無償化」の対象から在日朝鮮人の子弟が通う朝鮮高校を除外する動きであり、拉致問題の対応や在日参政権の問題でも前向きに「論議」をする動きではない。日本社会に根付く差別と排外主義が表面化し、問題視されていることを民主党政権は、助長しているのだ。朝日新聞は、「外国人登録者数は220万人を超え、永住資格を持つ人は91万人。日本はすでに多様なルーツを持つ人で構成されている。地域社会に根付いた人に、問題解決や街づくりの責任を分かち合ってもらう。

 母国とのつながりは尊重しつつ、住民として地方選挙への参加を認めるのは、妥当な考え方だ」(7月5日朝刊「社説」)と民主党のマニフェストに注文を付けている。国連の人種差別撤廃委員会が発表した日本の人権状況に関する見解は、日本政府に対して人種差別の扇動に歯止めをかけるよう要請すると同時に、メディアの責任についても言及しているという。


 ヒューマニズム社会主義の道へ


 日本社会に蔓延する差別と排外主義は、国際的に対応を求められているのだ。来年は名古屋で移住連(移住労働者と連帯する全国ネットワーク)第8回全国フォーラムが開催される。今その実行委員会に参加して、その成功のために努力しようとしている。

 わたしたちは、第11回大会で理性とヒューマニズムの社会主義をめざすことを確認した。わたしたちは、一つ一つの運動の中から自分も含めて、排外主義や他者排斥、民族差別をなくすよう作り替えていかなければならない。そして非暴力、人間愛に貫かれたヒューマニズム社会主義を、人力40年の節目にふさわしく打ち固めていかなければならない。(7月6日)