THE  POWER  OF  PEOPLE

 

社会主義考122開け!アメリカの転換世界の転換 常岡雅雄



   オバマ讃歌


「オバマ大統領」と呼ぶべきであろう。或いは「オバマ氏」と。

だが、「オバマ君」と「君呼び」するのを許しておくれ。

君は、僕の息子の世代なのだから。

打ちよせるハワイの高波に見事にサーフィンしていたオバマ君。

それは、僕の息子をみるようなのだから。


時は、2009年1月20日の真昼。

所は、帝国アメリカの首都ワシントンの連邦議会議事堂の前。

僕の日本は日付けが進んで21日の午前二時。

眠くても、おきていなければならない歴史的「その時」なのだ。

帝国アメリカにコロンブス以来の変化がくる「その時」なのだ。


僕は見た。

アメリカ合衆国第44代大統領として登壇した君の姿を。

白人帝国アメリカの最高指揮者となった黒人青年の姿を。

津波のようにおしよせて首都を埋めつくした200万の人々の姿を。

僕は聴いた。この200万の人びとに語る君の確かな言葉を。


真冬の深夜の居間に、ただ独り。

僕は、君を見ている。君を聴いている。

僕の瞼がじわりと熱くなる。涙がにじむ。息子のような君の言葉に。

僕はあるがままになっている。心が素直になっている。

頭が若返っている。息子にもひとしい君の言葉に。


その君の姿と言葉に僕のからだは揺れている。

君の善意に揺れている。君がくれる希望に揺れている。

君がうみだす安心に揺れている。

あのアメリカが変わるのだ。

あの青年があのアメリカを変えるのだ。


清々しい「オバマのアメリカ」が萌えだす。

好きになれなかった「ブッシュのアメリカ」が萎んでいく。

戦争のアメリカ棘だらけのアメリカ理不尽なアメリカ。

そのアメリカに遂に黒人大統領をうみだした「草の根」アメリカ。

その「草の根」が咲かせたオバマ君きみのアメリカが始まる。


君を求めた「草の根のアメリカ」「人民のアメリカ」が漕ぎ出す。

オバマ君、人びとに語りかける君の心は「善意」だった。

アメリカの再生を説く君の頭脳は「理性」だった。

全世界に訴える君の目は輝いていた。

君のその目は「理想」で澄んでいた。


君の「理性」と「善意」が人びとを信じさせた。

君の「理想」が人びとの胸を熱くした。

君は、人びとの心に希望の火をともした。

黒人青年の理性と善意が帝国アメリカの舵を取る。

踏みにじられてきた「草の根」の理性と善意が萌えはじめる。


棘だらけで道理の通じなかった帝国アメリカ。

傲慢で我が儘だった超大国アメリカ。

そのアメリカを君の理性と善意と理想が舵を取る。人々を励ます。

偏狭と憎悪と敵意にかわって、君には広さと優しさがある。

ハードにかわって、君にはソフトがある。


アメリカが変わる。世界が変わる。

アメリカは転換できる。世界は転換できる。

君は、アメリカと世界の人びとに感じさせた。信じようと思わせた。

危機と混迷と闇の世界に「オバマの陽」が射しはじめた。

人々の胸に「明るさ」の炎が燃えはじめた。


建国のアメリカでは平等であった。力強い自由があった。


平等と自由が生む逞しい創意があった。

強靭で清々しい意志があった。

その「建国アメリカの精神」を君は思いおこさせた。

国を拓いた先人たちの「苦難苦闘と不屈の意志」を君は語った。

レーガンではないアメリカ。ブッシュではないアメリカ。


ああ、若々しかった建国のアメリカ。


それを今、君が大統領の座から語るのは、誠に君にふさわしい。

白人帝国アメリカに初めて登場した黒人大統領のオバマ君。

君は自分を生んでくれた父親の境遇を語った。

60年前だったらレストイランで食事もさせてもらえなかった親父。

君の黒人の親父に同席を許さなかった白人帝国アメリカ。


その屈辱の親父の息子だから。

君が、その白人帝国「アメリカの建国」を語るのは君にふさわしい。

思いあがって傲慢で偏狭で恐ろしかった白人帝国。

元々の人びとを人と思わず滅ぼして聳え立ってきた強国アメリカ。

人と見なされずとも有色の人々が生きねばならなかった白人の帝国。


しかし、永遠の帝国などあろうはずがない。帝国アメリカもまた然り。

共生にしか道がなくなった帝国アメリカ。

オバマ君、君はそこに登場した。

そして、その国の新しい復活にふさわしく君は語る。

建国の白人先駆者たちの偉業を君が語るのは君にふさわしい。

共に新生に向かわねばならないアメリカにふさわしく君は振舞う。


和やかに語る君の全身には勇気と鋼鉄の意志が棲んでいる。


君が「語ったこと」には呼びかけがある。求めるものがある。

君が「語らなかったこと」に節度がある。抑制がある。

君が語らなかったことは「君そのもの」だからだ。

君の言葉は人をとらえた。だが、言葉には「言わない言葉」もある。

もともと、君は「行いの人」なのだ。


本当の「意志と勇気」は「言葉」ではなく「行い」である。


オバマ君きみは歴史の人だ。

人類有史いらいの奴隷たち。被差別者たち。底辺に生きる貧者たち。

その幾重にも層をなす苦難と苦闘と血の歴史。

オバマ君それが君の故郷なのだ。

その苦難の民衆の歴史の結晶として君は登場した。


君は、あの偉大のゆえに凶弾に斃れたキング牧師の息子なのだ。


オバマ君君は可能性の人だ。

歴史が君を送り出し、君は歴史を創る。

君はそれを知っているし、それを自覚している。

帝国アメリカを「アメリカでないアメリカ」に創り変える。

アメリカ一極世界を「アメリカに卑屈でない世界」に導き変える。


「脱アメリカのアメリカ」「脱アメリカの世界」

その可能性は君によってすでに始まっている。

その君の力は「草の根アメリカ」の善意と理想と理性だ。

その可能性の旅が2009年1月20日に始まった。

「脱アメリカの日本」「脱アメリカのアジア」「脱アメリカの世界」


その旅を僕たちは君と共に歩く。

                      (一月二十四日)