THE  POWER  OF  PEOPLE

 
労働運動の立場と思想	人力東海 佐伯昭二

「朝鮮3・1独立宣言」闘争に想いを馳せて
地球社会主義の視点から 労働運動の再生を!

 いきなり私事で恐縮だが、5年前から腎臓が悪化し、現在、週三回クリックで血液透析にお世話になっている身である。私が通院するクリニックも患者の高齢化がすすみ、次第に足腰が弱くなり、車椅子に頼る患者が多い現実がある。それを毎日見ている私は、67歳であることから、自分もそのような将来の姿を想像してしまう。したがって、なるべく車椅子に頼らないために、普段から体力をつけておこうと思い立ち、透析導入以降、毎日、散歩を行い、足腰の衰えを防いでいる。私の住む所は郊外であるので、付近には田んぼや畑、里山、川などがあり、自然に恵まれた環境の良い地域である。今は冬の最中であり、まだ空気は冷たいが、道端には水仙の芽が出はじめ、小川を流れる水も雪解け水が混じっているらしく、水量も多くなっており、春の気配を感じるこの頃である。日本もかなり自然環境が破壊されてきたが、まだ自然は人間にさまざまな恩恵を与えてくれる。この営みに感謝したいし、この環境を次世代に引き継いでいくことは、現代社会に生きる私たちの使命である。
 このように季節は、確実に春に向かっているが、依然として「冬の時代」のままの現象がある。それは日本労働運動の現状である。かつて1973年の春闘では30%の賃金引上げを勝ちとり、1975年には国労が一週間のスト権ストを打ったことをピークにし、その後、総評解体、連合の発足を契機に、日本労働運動の階級性、戦闘性は骨抜きにされ、遠い昔話になってしまった。
 最近はアベノミクスを掲げる安倍政権によって、政権が賃上げを経営者に要望する「官製春闘」とか「おこぼれ春闘」とか言われるようになり、ストライキで闘う春闘の姿は、ほとんど見られなくなってしまった。労働運動の後退は、原発の再稼働、沖縄の辺野古基地建設、集団的自衛権容認の閣議決定、特定秘密保護法の成立など、安倍政権のフリーハンドを許すことになり、労働運動の再生がないかぎり、政権の打倒、反戦・平和、明るい社会建設もままならない情況である。もちろん日本国内においても、さまざまな心ある人びとが、日夜労働運動建設のために粉骨砕身努力されていることも承知はしているが、まだ大きな流れになっていない現状でもある。
 そこで私なりに、日本の労働運動の再生に向けて、その一助として、次ぎの2つの視点を提起したい。1つは「朝鮮3・1独立宣言」闘争に学び、反省と決意の日にしていく労働運動の質をつくることである。2つには、安倍政権が全地球的な覇権を確立しようとしているなかで、私たち労働者・市民も当然にもその全地球的な視点から捉え対峙していくことである。以下、順に触れてみたい。

「朝鮮3・1独立宣言」闘争を
反省と決意と行動の日にしていく労働運動の質をつくる

 「朝鮮3・1独立宣言」については、2008年3月1日号の「人民の力」誌巻頭言において常岡雅雄代表が提起して以降、微力ながら全国で取り組んできているが、ここで少しおさらいをしてみたい。
 明治政府の天皇制日本は、朝鮮半島に侵略し、1910年「日韓併合条約」を結ばせた。帝国日本の暴虐と圧政に対して、朝鮮民衆は1919年3月1日、ソウルのパコダ公園に結集し、全世界に向かって「3・1独立宣言」を発し、全国で200万人余の民衆が集会に参加して、民族解放と独立を訴えた。帝国日本は警察、軍を動員して徹底弾圧を図った。教会に閉じ込め銃殺、民家への放火と銃殺、拷問やはりつけ殺戮など、言語を絶するものであった。その結果、4万6948人が逮捕され、4万5562人が負傷し、7509人が殺された。この大弾圧によって、その後の朝鮮民衆の闘いは非合法へと余儀なくされたが、1945年の帝国日本の敗北で、ようやく朝鮮民衆は「独立・解放」へと向かっていく。
 日本にもっとも近い朝鮮半島で行った帝国日本の暴虐の数々を、私たちは深く心に刻まなければならない。反省と謝罪を繰り返し、帝国主義に共に闘う同志として「受け入れられる」日本の労働運動の質を高めていく必要がある。来る「3月1日」をそのように捉え、新たな「闘う国際連帯の日」としなければならないであろう。

グローバルな安倍政権に対し全地球的な視点から対峙を

 2年前に誕生した安倍政権は、今までの自民党政権と違って大いなる野望をもった凶暴政権である。この2年で「地球儀を俯瞰する外交」で50カ国以上の国を訪問し、原発、武器、技術力などをトップセールスで売りまくっている。祖父・岸信介がなし得なかった大東亜共栄圏をはるかにしのぐ世界共栄圏を目ざしているのでは、との説もあるほど、全世界的に政治的・経済的・軍事的に覇権を確立しようとする意図が見えてくる。1月26日に召集された通常国会に昨年閣議決定した集団的自衛権の行使容認を裏付ける安全保障法案と同時に、「あらゆる事態に、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を整備することが重要だ」と菅官房長官は、1月19日、自衛隊海外派遣の恒久法案を通常国会に提出、成立を目ざす考えを示した。自衛隊を「いつでも、どこでも、自由に」派遣する法案である。1月29日現在、問題になっている「イスラム国」による日本人人質問題では、この事件を利用し、自衛隊による日本人救出や、米軍主導の有志連合への参加など模索し始めている。さらに1月29日の中日新聞によれば、政府・自民党の中に「日本版CIA」の構想もあるという。まさに「戦争をする国」へ一直線ですすめているのが安倍政権である。
 アメリカ、中国が一歩リードする世界市場分捕り合戦の一角に日本も食い込もうとする新たな帝国主義的市場分割競争にあって、日本における労働者・市民の姿勢は、当然にも地球的視点から対処しないと有効に対決しえない現状である。

2つの視点から日々の実践を!

 社会主義政党や階級的労働運動の不在が、日本の労働運動を大きく後退させ、連合に見るような資本に従順な労働組合が主流の日本の労働界にあって、「闘う労働運動」を再構築することは至難の業である。しかも、昨年の12月17日厚生労働省が発表した2014年の労働組合基礎調査では、雇用者に占める労働組合員の割合(組織率)は、2014年6月末時点で17・5%となり4年続けて過去最低だった。組合員数も0・3%減の984万9000人だった。一方、女性の組合員数は305万4000人で前年より2万人増え、パートなどの組合員数は、5万6000人増え97万人となり非正規の多い産業で組織化が進んだと報じていた。正規社員から非正規労働者が増え、本工労働者の組合離れが進んだ現状である。働いても食えない、という年収200万円以下の「ワーキングプア」と言われる階層が存在することなどは、いかに労働者が資本に搾取されているかの証左であり、労働者や社会的弱者と言われる人たちは、困窮化の極地にある。今こそ労働者の期待に応えることができる労働運動の再生と登場が求められている。
 このように否定的な社会の現状であるが、「座して死を待つ」わけにはいかない。「貧困と格差」が拡大し、窮乏化を余儀なくされるなかで、労働者・市民の怒りも募ってきており、その闘う土壌はある。あとはいかに働きかけて、闘う土俵に載せる先進的労働者の献身的な役割が求められている。
 この東海においては幸いにも、その萌芽が生まれつつある。1つ目の課題である国際連帯では、市民レベルであるが、「韓国併合」100年にあたる2010年1月に、本誌「うらよみ時評」でおなじみの磯貝治良さんを代表とする「韓国併合100年」東海実行委員会が結成され、「3・1」行動や恒常的に朝鮮問題、日韓連帯行動が取り組まれている。また毎年、笹島日雇い労働組合と共同して、日韓労働者連帯集会の開催、また友人たちも参画している名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊支援行動では、日韓の共同行動が取り組まれている。さらに人民の力として毎年11月韓国民主労総大会に参加し、拘束労働者支援団体や韓国鉄道労組と交流を深めている。また微力であるが、毎年9月には、フイリピントヨタ労組の来日に合わせて、名古屋で支援・連帯行動を取り組んでいる。
 2つ目の新しい労働運動建設では、「開かれた労働運動建設」の下に「いつでも、誰でも入れる労働組合」作りを進め、2008年4月に友人たちが中心となって「あいち悠々労働組合」を結成し、労働相談を基本にしながら、労働者のさまざまな要求に応えている。現在は組合員が20数名になり、地域の信用・信頼を得つつある。
 資本主義社会では、すべての富は労働者階級が生産する。いわば社会の主人公であるが、現実社会は、まったく正反対の立場に追い込まれ、搾取され収奪され阻害された存在になっている。このゆがんだ社会構造を転換し、まさに労働者が社会の主人公として報われる社会にしていかなければならない。「労働者の春」を求めて共に闘わん。
(1月31日)

er_ben_zude_bukou.html