THE  POWER  OF  PEOPLE

 

社会主義考130 鳩山政権の「友愛」政治 常岡雅雄



「ヒューマニズム社会主義」の道に立って


 鳩山政治に清々しさを覚える


「友愛」政治に共鳴する「悠々社会主義の心」


 「削減25%」を「人類が自然と共生する世界」へ


 今朝(9月23日)の朝日新聞によれば、昨日ニューヨークに着いた鳩山由紀夫新首相は国連の気候変動サミットの開会式で日本の温室効果ガスの「90年比25%削減」を世界に公約した。この妨害覚悟の勇気ある画期的な世界誓約と清々しい姿勢に私は共感する。

 近代500年の「資本主義支配と工業化と都市中心」の西欧文明と資本主義の発展とグローバル化がもたらす止まることを知らない「地球自然と人類世界の破滅の危機」に地球上の誰もが恐怖と不安を覚えながら日々を生きている。この終末的危機から脱けだして「安定的で永続的な世界」へと人類は何としてでも進路を転換させなければならない。人類世界の構造を「資本主義支配でも工業化でも都市中心でもない新しい文明様式」へと変革して行かなければならない。私たちはその「もう一つの世界」「新しい世界」への「転換の方向」を「人類が自然と共生する世界」への転換であり「自然の中に埋め戻された人類世界」としての「農業を主とし工業を副」とする「農主工副の世界へ」と提起してきた。

 この「新しい文明様式」への大変革の「世界観と政治綱領と決意」を「備えているか否か?」を鳩山政権に問わなければならないことを前提とした上で、鳩山「25%削減」公約が私たちのめざす未来方向に沿う意義をもつものとして、私たちは鳩山公約に共感できる。その実現の鳩山政治を応援しながら、私たちは私たちなりに自分たちが直接にできる場で実践していくのである。


 東アジア共同体を国家をこえた普遍的共同体へ


 更に、朝日新聞によれば、中国側からの強い要望で日米首脳会談に先立ってニューヨーク到着直後に行なわれた胡錦濤国家主席との初会談で、鳩山首相は東シナ海のガス田共同開発などを通じながら「友愛の外交」をもって日中両国で「東アジア共同体」構築を目指そうと提唱した。

 鳩山首相の提唱する「東アジア共同体」とは東アジア域内の諸国家による「国家間の共同体」である。更に、その主軸をなす日中をはじめ東アジア諸国家は基本的に「資本主義段階の国家」なのだから「資本主義的な共同体」である。私たちの目指す「東アジア共同体」は、鳩山提唱の「国家間の共同体」「資本主義段階での共同体」とは次元が違う。私たちが目指す「東アジア共同体」は、私たちが追求しつづけている「徹底民衆主義とヒューマニズム社会主義」の思想と路線にたって、民族の枠も国家の枠も超越し諸民族と諸国家を貫いて共同する「普遍的な共同体」即ち「労働者人民の共同体」なのである。

 したがって、(一)私たちは鳩山提唱とは異次元の構成と戦略方向をもって「東アジア共同体」の建設のために努力するのであるが、同時に、鳩山提唱にたいしては(二)それが「国家間の資本主義的な共同体」ではあっても、例えば「東アジアの非核地帯化」のように、それが「平和的で人間的で友愛的な性格と方向」を採ってゆくように働きかけて行かなければならないし、(三)他方では、それが「帝国主義的で軍事的・戦争的・侵略的な共同体」「アジア主義的な排外主義共同体」へと落ち込んでゆかないように監視し、そうした反人類的で反人間的な偏向にたいしては闘っていかなければならない。


 まずは一歩でも米国隷従日本から主体性日本へ


 ところで、一年前に遡るが、安倍氏に続く福田康夫氏の「突如たる政権投げ出し」(昨年9月1日)直後、それは今号から丁度1年前の10月1日号巻頭言(社会主義考118)であった。私は、「問われるのは、もはや自公ではなく、野党勢力の覇気と責任感である」と民主党を主軸とした野党勢力に政治的責任感を問いかけながら「全野党政権づくりの円卓を!」「沈没しつつある自公政権の再浮上を許さず、まずは、民主主軸の全野党政権を国民の前に!」と民主党政権への政権交代の期待を表明してきた。

 些細な点は別にして、今回の画期的な「民主党政権の出現」は、この一年前の期待とその底流をなす私の政治戦略思考が適切であったことを私に確信させてくれる。私は、この政治戦略思考にもとづいて今後も、民主党政権の政治にたいする態度をとってゆく。

 加えて、それより更に1年前の07年9月1日号巻頭言(社会主義考105)では、私は「小沢政治をおしあげ、米国のポチから自主飛翔の鳩へ!」と提唱した。時は、当時の安倍首相が「安倍か小沢か?」と政権選択を国民に投げかけた参議院選挙(07年7月29日)で「民主党が圧勝」し「自公政権が大敗」したときであった。国民はすでにこのとき自公政権ではなく民主党政権を選択していたのであった。しかし、安倍首相はこの参院選にしめされた国民意識の大勢を無視して政権続投した。

 時の最大の政治的対決点は「テロ対策特措法の延長か否か?」であった。民主党の小沢代表(当時)は「テロ特措法の延長」に「拒否!」の態度を採った。この民主党代表しての小沢政治を、私は「肯!」とした。その「小沢政治をおしあげ米国のポチから自主飛翔の鳩へ!」と主張した。

 「テロ特措法とは『ブッシュのポチ=小泉』政権が日本の国家と国民を世界覇権国家アメリカの侵略戦争に引きずりだしていく首輪であり鎖」なのであり、その「テロ特措法の延長を認めない」政治とは、まさに「帝国アメリカの戦争政治に対決して『国家規模で遂行する平和の政治』そのものなのである」と判断したからである。

 更にそこで、私は次のように続けている「更に、そのことは、如何にもまことしやかな『日米同盟』の美名の下に『帝国アメリカに隷従させられている日本』を『帝国アメリカのくびきから解き放っていく道』へとむかわせることを意味する。すなわち、21世紀をきりひらいていく世界平和潮流のなかに日本が国家として身をおいて『自立自主日本の道』を歩みはじめるのである。また、そうでなければならないし、労働者階級・勤労人民の意思とエネルギーをもってそうさせなければならないのである。そうであるならば、保守政治家でありながらも、小沢一郎民主党代表は21世紀日本の進路にとって決定的に有意義な選択と決断をしたということができるであろう。」(本誌07年9月1日号巻頭言)

 私は「脱アメリカ自立自主日本の実現」をめざせばこそ「テロ特措法延長拒否!」の道を選択した小沢政治にたいして支持表明をしたのであった。


 沢渡り・峠越え・尾根歩きも遠い高峰を目指せばこそ


 更に、「8・30政権交代選挙」直前の本誌09年夏季合併号巻頭言(社会主義考128)は、(1)その主題を「政権交代と悠々社会主義」「表層地滑りの中で地殻変動の道を行く」とし、(2)人力実践の本筋を「矛盾の坩堝日本」の「構造的体制的な矛盾への挑戦」とあらためて確認したうえで、(3)直面する「政権交代選挙」に対しては〈「自公政権をこれ以上延命させない」行為」〉〈「民主党政権の登場にプラスになる」行為〉〈「マイナスにならない」行為〉を私たちはとるべきことを表明した。

 この「政権交代選挙」を振り返り、そして、いよいよ実際の展開へと鳩山政治が始動しはじめた今において、これまでの提唱や表明に現れている私たち「人民の力」の「ヒューマニズム社会主義」運動としての戦略思考についてあらためて確認しておかなければならない。すなわち、人力実践の「本筋」(戦略)は「構造的体制的な矛盾への挑戦」であり、戦術(即ち、戦略追求上の「過程的課題」)は、その戦略追求から判断して、その時その場で妥当と判断される課題を実践するのである。

 私たちは、あらためて、この「人民の力」政治の戦略思考「ヒューマニズム社会主義」運動の戦略戦術を確認したうえで、これからの「隷米日本における鳩山政治」と「帝国アメリカにおけるオバマ政治」の展開に友愛と平和と進歩と協調への心をもって対応してゆかなければならない。


 20世紀を教訓に予測と警戒と準備を


 最早ここでは問題意識を語る紙幅がないが、この「保守反動の自民党政権」を選挙打倒して登場した「革新進歩の鳩山民主党政権」が今後どのような展開をたどってゆくのかその政治過程でどのような傾向や勢力や運動が生じてくるのかそして更に如何なる政治過程に転形してゆくのか?

 悲劇も喜劇も茶番もふくめて20世紀世界の経験を教訓として予測し警戒してゆかなければならない(例えば、合法を駆使しつつ暴力と排外主義と煽動をもってワイマールから登場したヒトラー)。そして私たちは私たちなりに、主体的に準備を進めるべきことを知らなければならない。

(09年9月23日)