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憲法9条平和主義日本で東アジア共同体へ 高橋扶吉


ヒューマニズム社会主義と憲法9条運動


「尖閣諸島=釣魚島」問題理性とヒューマニズムの心で


 沖縄県・尖閣諸島(中国名釣魚島)沖で中国漁船衝突事件の逮捕拘留中の中国人船長が「処分保留」で釈放され、日中間の国家関係や民族関係が緩和され急激な悪化を抑えることができ一時の安堵をすることができた。だが中国は強硬な構えを崩さない、又中国国民の反日デモがネットで呼びかけ内陸部で活発化している。中国側は激しい抗議を繰り返し、観光、政治、環境、産業などに対抗策と思われる処置を取るにいたった。

 こうした事件が直ちに、領土問題へ発展し、国家間の対立を深刻させ、反日行動へと燃え広がってゆくのは、日清戦争勝利以来、日本が中国に対して行なった侵略戦争と暴虐と「満州国建国」はじめ植民地主義的支配について、謙虚に反省をし、清算を思想としても、政治的にも、お詫びと償いを果たしていなかったためである。こうした姿勢は司法の場においても表れている、中国人強制連行群馬訴訟に対して、東京高裁は一審判決に続いて、強制連行・強制労働の被害事実は認定したが、そのうえで、2007年4月27日最高裁西松判決の判断にそって、戦時賠償請求権は、日中共同声明に基づいて放棄されたとして、全ての請求を棄却した。

 日中両国が譲らない「固有の領土」としての根拠は、日本政府は1885(明治18)年から現地調査をし、島が中国(当時清国)の支配が及んでいないことを確認し、1895(明治28)年に閣議決定で沖縄県に編入しました。戦後は沖縄とともに米軍の管理下に置かれ、一部の島は米軍の射撃訓練場として使われました。

 1972年の沖縄返還で南西諸島の一部として日本に復帰しています。日本政府は、尖閣諸島はどの国にも属さない無人島で、日本が先に占有することで領有権を得たとしています。「国際法上にも疑いなく、領有権問題は存在しない」との立場です。

 それに対して中国は歴史的根拠として、16世紀の明代、倭寇の潜入を防ぐため、島を含む東シナ海を防衛水域に決定。明・清の時代に琉球王朝へ派遣された使者の残した地誌でも中国帰属は明らかと主張しています(『毎日新聞』10・1)。

 歴史的根拠として「国有の領土」主張をするのなら、琉球王国にも権利がある。中国・台湾と琉球には、深い交流の歴史がありました。少なくとも1972年までは、琉球弧と台湾には「国境らしい国境はなかった」と言っても、言い過ぎではありません。例えば琉球王国時代は、中国の明朝、清朝冊封体制が敷かれており、進貢貿易を中心とした交流がありました。明治天皇政治による台湾侵略(1874年)、琉球処分(1879年)、日清戦争(1894年)、下関条約・台湾合併(1895年)の過程でも、〈国境〉は流動的で明確化されてなかったはずです(『琉球孤の発信』高良勉著・御茶の水書房、P87)。

 1968年の国連調査で、海底に豊な石油資源や天然ガスがある可能性が指摘されると、中国や台湾は自らの領土だと強く主張をするようになりました。そして、調査報告を期に尖閣諸島釣魚島をめぐる中国の領土紛争が目立つようになる。

 尖閣諸島=釣魚島の領土問題を、幾度も経験をしてきた領土の問題をめぐって憎みあい争いあい、破壊しあい殺しあってきた政治へと導いてはならない。力の政治ではなく国家間が互いに譲り合う政治を行なうべきであり、領土問題こそ「理性ある政治」が求められています。

 日本や中国(台湾)の労働者・民衆は、帝国主義的・覇権主義的な政治に抗し、国家間を越え東アジア民衆との連帯の前進へ、流れをきずきあげて行くことを目指さなければなりません。


 菅政権武器輸出「三原則見直し」

 軍事優先の国家へ向かう道を歩むもの


 海外への武器輸出を禁止している「武器輸出三原則」の見直しについて、北沢防衛相は「見直し」を繰り返している。

 民主党の外交・安全保障調査会は10月22日、国会内で役員会を開き、全ての国への武器輸出を禁じている「武器輸出三原則」の見直しのあり方などについて、11月中に提言をまとめて政府に提出をする。

 三原則は、兵器の共同開発の必要性などから北沢俊美防衛相が見直しを提起、政府が年内改定予定の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の焦点となっている。

 菅直人首相の私的諮問機関の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、8月に首相に提出した報告書も、三原則の緩和を求めており、党調査会ではこの報告書をもとに議論を始めている(『毎日新聞』10・23)。

「武器輸出三原則」見直しの背景を、現在ビジネス(防衛省新指針の中で触れた「武器輸出三原則」見直しネット)によると、①国内の軍事産業の生き残りとしての「海外との共同開発」としての。日本の軍事産業の構造の問題として、②経済界からは、国際共同開発・生産への参画を可能とする武器輸出三原則等の見直しの検討を求める意見が出されている。③日本経済連は今年7月に策定した「新たな防衛計画の大綱に向けた提言」のなかで、「国際共同開発への参加のため、新しい武器輸出管理原則の確立が必要」とうたっている。④共同開発に参加する側にとって、開発投資の削減だけでなく、先端の防衛技術から取り残されないようにすることも狙いに含まれている。⑤「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、武器輸出三原則見直しの決断はできる限り早く行なわれることが望ましいと報告している(抜粋)。

 菅直人首相・北沢防衛相は「武器輸出三原則」を守るといながら「見直し」を示唆している背景には、日本の軍需産業による強い要求があるからです。

 「武器輸出三原則見直し」は、平和と協調としての、平和のうちに生存する道ではなく、アメリカのアジア覇権政治とともに展開をして行く政治方向であって、軍事産業優先の国家へと歩み、戦争のできる国へと変質させるなにものでもありません。「武器輸出三原則の見直し」反対の意思表示を労働の場、生活の場から起こしてゆく事が求められている。


 世界の中の憲法9条非武装日本の道へ


 5・3憲法集会で伊藤千尋さんの講演を聞き、アフリカ沖の島カナリヤ諸島に憲法9条の碑があることを知る。碑が「ヒロシマ・ナガサキ広場」に白いタイルに青い文字で憲法9条の条文がスペイン語で焼きつけてある。平和を考える広場なら、広島と長崎から発想する象徴的なものとして日本国憲法9条にしたと話された。

 日本国憲法9条が、私たち日本人だけでなく、世界のなかに憲法9条が必要だと思っている人たちがいる。世界に憲法9条を広めなければならない。

世界で平和憲法が日本にでき、次のコスタリカでは、悲惨な内戦を二度と起こさない思いから新憲法を制定する(コスタリカ共和国憲法 1949年11月8日公布・施行)。

 現在軍隊がない国が29カ国あります。ヨーロッパ諸国6ヶ国、南太平洋諸国10カ国、インド洋諸国3カ国、中米・カリブ海諸国10カ国に、絶対平和主義の武器を持たない国家が苦難の道のりを経て現存をしている(歴史教育者協議会・編)。

 日本は、平和憲法と言われながら自衛隊という世界3位規模の軍隊を持っている。しかしコスタリカでは、本当に軍隊はない。警察と国境警備隊以外は何もないのです。

 今、日本は、憲法9条を取り戻さなければならない。軍事同盟の日米安保条約隷従から決別し、自立した「非武装・非軍事同盟」国家への道を目指して切り開いて行かなければなりません。


「あらゆる場」で憲法を語り「9条の実体化」の道へ


 今私たちに求められていることは、日米安保条約隷従から決別し、国境を越え国家や人種や民族や宗教を越えて、「平和主義国家への道」を模索してゆかなければなりません。

 『「活憲の時代」コスタリカから9条へ講演集』(伊藤千尋著)によると、「平和の輸出」平和憲法を持つ国の責任は、まわりの国も平和にすることと、その活動を紹介しています。

 1980年代、コスタリカの周りの国、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラの3カ国が内戦をしている。コスタリカ大統領は3国を尋ねて、政府側とゲリラ側に「対話による解決」を説いて回った結果、3つの内戦が終りました。自分の国の平和を維持するだけでなく、近隣諸国の平和への実践が「平和の輸出」として具体化されました。

 日本がアジアとともに平和と繁栄と進歩を進めようとするには、過去を謙虚に反省・清算し、憲法9条を活かす国にならなければなりません。

誰でも平和を願い、求めている。反戦平和と結びついている憲法9条を取り戻して、「憲法9条国家の道」に立って、労働の場・生活の場・学ぶ場や「あらゆる場」に於いて、平和憲法を語り、「憲法9条の実体化」を模索しつつ、アジアの労働者民衆との連帯が私たちに問われています。

                    (2010年11月5日)