THE  POWER  OF  PEOPLE

 

社会主義考125 海をこえて社会主義連帯の絆を結ぶ 常岡雅雄



 東アジアに労働者民衆共同体の流れを


 私たち「人民の力」は今年で三回目になる全国連鎖行動をおこなった。韓国と日本の労働者をむすぶ「日韓労働者連帯全国連鎖行動」である。今回は名古屋と長野の二都市でおこなった。(詳しくは7〜8頁参照)。04年9月の第一回は函館、仙台、東京、横浜、新潟、長野、名古屋、浜田、松山、直方、宮崎など全国11都市12箇所でおこなった。昨08年4月の第二回目は函館、仙台、東京、新潟の4都市でおこなった。そして今回は名古屋と長野である。

 ここに浮かびあがっているように、残念ながら傾向的にたどっている開催箇所の減少は、私たち「人民の力」の活動領域と政治的関係が大きく広がってきた反面、その広がりに組織と財政の力がついてゆけなくなっていること、むしろ、活動と政治の発展に比して組織力と財政力が次第に後退してきていることを物語っている。


 日韓労働者連帯の全国連鎖行動を今後も続ける


しかし、私たちは、この日韓労働者連帯の全国連鎖行動を今回以降も行いつづけていく。

 「労働者民衆の闘う連帯と協働」を「アジア太平洋地域において」追求していくこと。更に大きく「全地球規模にグローバルに」追求していくことそれは、当然のことであるが、21世紀における私たちが絶対に避けてはならない基本的な進路である。その大局的な進路のうえで、更にまずは具体的近接的に「東アジアにおける労働者民衆の闘う連帯と協働」を築きあげていくことを私たちはめざさなければならない。いま、私達が三回をかさねた日韓労働者連帯全国連鎖行動は、この「労働者民衆の東アジア共同体」創りのためのもっとも近い地域実践であり、どんなことがあっても継続してやり抜いてゆかなければならない。

 「資本の東アジア共同体か!」「国家的国民主義的な東アジア共同体か!」「帝国主義的な東アジア共同体か!」「侵略と戦争含みの東アジア共同体か!」それとも「労働者民衆の東アジア共同体か!」「反戦平和の東アジア共同体か!」「ヒューマニズムの東アジア共同体か!」私たちは後者の「労働者民衆の、反戦平和の、ヒューマニズムの東アジア共同体」構築の道に立って、その主柱の一つとして「日韓労働者連帯の道」に力を尽くして行かなければならないのである。組織と財政の力が後退の道をたどっていようとも、私たちはこの世紀的課題から目をそらさない。この自らさだめた世紀的課題を背負って前進しつづけていく。


 韓国・不安定労働撤廃連帯全国委員長

 梁漢雄さんの人柄と思想と熱弁に同志を見る


 この今回の全国連鎖行動のために、韓国全土に広く根をはって強固な労働者組織である「全国不安定労働撤廃連帯」の梁漢雄委員長が来日して名古屋と長野で熱烈に講演してくれた。

 40代も今年が最後という梁漢雄さんは仏教学で大学院も卒業した仏教徒として韓国通信(KT)に入社した。入社数年後には、KTの過酷な労働者支配と韓国通信労組(KT労組)の労使一体を許さない闘士として姿をあらわし、体制派ナショナルセンター・韓国労総下のKT労組の民主化推進委員会の委員長に就いてKT労組民主化にむかって闘いつづけた。この間、「韓国通信民営化」反対闘争の指導責任を問われて解雇逮捕復職解雇逮捕と転変した。そして、95年に解雇されて復職できないまま、民主労総の公共連盟首席副委員長(委員長職務代行、01年)、鉄道・発電・ガス民営化反対闘争本部共同代表(02年2月)、民衆連帯組織委員長(04年)、KTX非正規職闘争支援対策委員長(05年)、社会変革現場実践労働者戦線(略・労働戦線)執行委員長(07年)、全国不安定労働撤廃連帯委員長(09年2月)などを歴任して、今日に至っている。仏教学を修めた仏教徒がその深い人間性の故に、韓国社会の非和解的な階級矛盾と熾烈過酷な階級激突のなかで、労働運動と社会変革の闘士、社会主義をめざす革命的労働者へと人間飛躍を遂げてきたのである。

 名古屋の集会で、長野の集いで、梁漢雄さんは192㎝にも達する長身の背筋をしゃんと伸ばして語りかける。空虚なアジテーションでは決してなく、苦闘の実践に裏付けられた人間的な重みをもって、心からの連帯と協働の思いをこめて、日本人労働者に力強く語りかける。

 「労働組合とは資本主義に反対することだ。資本主義に反対しない労働組合は労働組合ではない。それは資本の労働組合、即ち、資本労組でしかない。」

 私たちは、そこに国家と資本の過酷で横暴な支配に抗して闘いつづけている労働者闘士の心からの声をきいた国家も民族もこえて階級的な思想と精神でひびいてくる同志の声を聞いた及ばずながらも、既存労働運動の変革をめざして登場し懸命に歩きつづけてきた私たち「人民の力」の同志がそこにいるのを知った。

 企業主義でも労使一体でも労使協調でも組合主義的でも天皇制的でも帝国主義的でもスターリン主義的でも教条主義的でもない、主体的で自主的で大衆的で階級的な労働運動があるはずだ。私たちは、及ばずながらも、その道を歩き続けてきた。この私たちに、梁漢雄さんが同志として語りかけてくれているのだ。同志の心が国家と民族をこえて伝わってくる。彼の心と私たちの心が共鳴しあっている。


 例え「雨垂れの一滴」であろうとも

 資本主義にたいする革命の道を進みつづけよう


 考え込むように静かに、梁漢雄さんはこのようにも語った。

革命への心の準備をしよう革命は春風のように来るかもしれない。日本人もそれを信じよう諦めず革命にむって行こう雨だれであっても、その一滴一滴が岩をも砕く。革命をめざす一つひとつの行いが、資本主義を突き崩して、きっと革命をもたらす一生をかけて闘いぬいてゆこう、自分の世代から次の世代、そのまた次の世代へと革命の理想と意志を繋いでゆこう。

 それは数々の苦難の経験を噛みしめて固く決意された言葉だ。それは深く考えぬかれた言葉だ。思考に思考をかさねてきた知性の言葉だ。

 私たちはここにもまた、国家と民族をこえて聞こえてくる同志の声をきいた。ここにもまた、国家の違い、民族の違いはあっても、志を等しくする革命の同志のいるのを知った。

 人権も安定も未来もない非人間的な生き方に労働者をおとしいれる「非正規労働・不安定労働」体制を社会存立の基礎構造として構築して強化しつづけていく資本主義をこのまま許しておいてはならない。その暴虐の社会構造は革命しなければならない。「資本の原理主義」にほかならない新自由主義の暴走が不可避的にもたらした世界大恐慌が日韓のみならず全世界の労働者たちを強襲して提起しているのは、資本主義の救済でも補強でも改築でもなく、その資本主義そのものを革命することである。

 かつて仏教徒であって今、不安定労働者として韓国労働運動の最底辺からの闘士として苦闘しつづける不安定労働撤廃連帯の全国委員長である梁漢雄さんは「資本主義の革命」を日本の労働者に熱烈に語りかけているのである。この梁漢雄さんの心と意志が本気でなくて何であろうか。その梁漢雄さんの「呼びかけ」が真実でなくて何であろうか。かつて仏教徒であった闘士は今や、資本主義に対する革命の闘士として私たちのまえに立っている。

しかも、この革命の闘士は自分の思い込みに酔う革命的空論家ではない。激情に突き動かされてひた走るだけの激越家でもない。彼は、事実を確実に見定め、物事を深く考察しておこなうことのできる冷静な意志をそなえた「深い知性の人」である。だからこそ、彼の構えは大きく楽天的なのである。そこに私たちの歩む「悠々社会主義」の「国家と民族をこえた同志」のいるのを私たちは見る。

 日韓労働者連帯全国連鎖行動など、今、私たちが行っているのは「雨垂れの一滴」かもしれない。「だが、それが資本主義を革命することに通じているのだ」と私たちに語りかけて彼は帰国した。日韓労働者連帯も、東アジア労働者民衆共同体も、この絶えることのない「雨垂れの一滴」なしにはありえない。

                  (09・04・25)