THE  POWER  OF  PEOPLE

 

鳩山政権と米国に望む佐伯昭二


沖縄・日本から

全ての米軍基地を撤去せよ


「対等な日米関係」こそが世界を変える!

鳩山政権は「沖縄の心」に忠実であれ!


 鳩山政権が、米軍普天間基地の移設問題で迷走している。北沢防衛相は「新しい道を模索するのは難しい」と辺野古案を推している。岡田克也外相は「嘉手納しか残された道はない」と嘉手納基地への統合案を示した。鳩山首相は名護市長選挙後に結論を先送りにした。

 一方、アメリカ政府は、10月20日のゲーツ国防長官、11月13日のオバマ大統領の相次ぐ来日によって、鳩山政権に移設先を名護市辺野古崎とする2006年の日米合意を強く求めた。他方、戦後一貫として米軍基地被害に苦しむ沖縄県民は「11・8辺野古への新基地建設と県内移設に反対する県民大会」を開催し、21000人が参加し、その反対意志を内外に示した。

 この問題解決の解答は、次の1点に限る。つまり「普天間基地の撤去と辺野古への新基地建設拒否」これが大局的にみて自然の流れである。鳩山政権は、アメリカから恫喝されようが、日本の保守反動勢力からさまざまな攻撃があろうが、腹をすえて、この結論を貫き通すことが最善の選択である。


 その結論は以下の理由による


 一つには、民意の反映である。先の「8・30政権交代」選挙で、沖縄の4選挙区全てで「辺野古移設反対」を主張する民主党候補が勝ったことである。沖縄県に国政選挙が導入された1972年以降、はじめて自民党議席がゼロになった。また選挙直前に行われた「琉球新報」と共同通信社の世論調査でも、普天間基地の国外・県外移設を求める意見が55・6%と過半数を得て県民は、はっきりと「ノー」を示した。また民主党は2008年7月に明らかにした「沖縄ビジョン2008」では「県外移転模索、国外移転目指す」と記述し、2009年9月9日、民主党・社民党・国民新党の連立政権樹立にあたっての合意文書では、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方について見直しの方向で臨む」と確認している。

 政治とは民意の反映である。たとえ国家間の合意事項といえども、当時国の政権が変われば、それまでの外交関係も変わるのも自然なことである。外交であっても、民意を反映するのが民主主義の根本であるから、「民主主義の国・アメリカ」は否定できないであろう。

 二つめは、普天間基地のあり方である。「普天間基地返還合意」は、1996年4月、当時の橋本龍太郎首相とアメリカ・クリントン大統領間で合意した。それからすでに13年を経過している。アメリカが世界戦略をすすめるうえで、どうしても普天間基地の代替地が必要ならば、13年も放置するはずはない。米軍にとって、普天間基地の代替基地など重要でないことが見えてくる。

 三つめは、「主権と平和の勝利」の世界的な流れである。南米のエクアドル共和国からこの9月、米軍が完全撤退した。エクアドルのコレア大統領は、今年の11月に期限切れとなるアメリカとの基地貸与協定を延長しない旨を通告したため、米軍は今年の7月を最後にマンタ基地からの作戦飛行を停止していた。そして9月に、最後の部隊が撤退し、米軍が使っていた区域や施設は全てエクアドルに返還された。

 この基地貸与協定は、1999年「麻薬の密輸取り締まり」を口実として、アメリカが当時のマフアド大統領に10年間の基地貸与協定を結ばせることに成功する。しかし、その狙いは隣国・コロンビアの親米政権を援助し、反政府勢力の掃討作戦であることが、はっきりしてくる。また基地周辺では、米兵による犯罪やエクアドルの漁船が米艦船から攻撃や拿捕される事件などもあり、国民の米軍への不信感が高まっていた。

 こうしたなか2006年11月の大統領選挙で、基地貸与協定の更新拒否を掲げるコレア氏が当選し、基地撤去への期待が大きくなった。2007年4月には制憲議会の召集について国民投票を実施し、国民の承認を得る。制憲議会は、外国軍基地禁止条項を含む憲法法案を可決し、同年9月に国民投票にかけられ、投票率約94%、約64%の賛成で承認された。今年の1月には、ボリビアでも、外国軍基地の設置を禁止する新憲法法案が、国民投票で承認された。1990年代にはアジアのフィリピンでも米軍基地が撤去されており、民衆の闘いが政治を動かしており、その流れに日本・沖縄も乗っていかねばならない。(以上の項については『週刊金曜日』2009・11・20、776号から引用)

 四つめは、「対等な日米関係」をつくると、民主党は政権公約したが、それを実行することだ。11月13日、オバマ大統領の来日のおり、日米首脳会談にて、来年は日米安保50周年となり、「日米同盟の深化」を約束したが、これは「対等な日米関係」をつくるとした民主党政権公約に相反する内容だ。広島・長崎に原爆を投下され、敗戦を余儀なくされた日本は、戦後も沖縄をはじめ各地に米軍が駐留し、巨額な基地維持費を負担させられたうえ、アフガン・イラク戦争にも巻き込まれ、戦後一貫としてアメリカへの隷従を強いられながら、さらに鳩山政権が「同盟の深化」を謳うことは、政権公約の「対等な日米関係」とは逆な方向へすすむことになる。日本には過去の侵略戦争の反省から、アメリカ政府の指導もあって「非戦・非武装」を世界に誓った憲法9条がある。

 この9条は外国軍の駐留(もちろん自衛隊も)を認めていない。「国是」である憲法9条を前面に出しながら、米軍の撤退を求めることこそ「対等な日米関係」の構築である。これには多少勇気がいるにしても、かつてアメリカ・ブッシュがイラク戦争を開戦するとき、フランスやドイツは明確に反対意志を示したが、その後、独米・仏米関係は悪化していない。日本がアメリカに「アフガンから撤退しなさい」「日本や世界各地に派兵している軍隊を引き上げなさい」と言えることが「対等な日米関係」ではないだろうか。その関係ができてこそ、アジアに世界に平和をもたらすことができると私は思う。

 五つめに、「沖縄の心」である。アメリカという国は「戦争・差別・民主主義」が混在するという実に不思議な国である。植民地時代から400年の歴史があるが、常に戦争を繰り返してきた。植民地戦争・独立戦争・対先住民戦争・南北戦争・第二次世界大戦・朝鮮戦争・ベトナム戦争・アフガン戦争・イラク戦争など、頭に浮かんだだけでもかなりの戦争体験をしてきた国である。また国内においては「貧困と差別」が激しい国でもある。

 しかし、2008年には黒人初のオバマ大統領を選ぶという「民主主義の国」でもある。これは画期的な出来事であろう。よって、さまざまな差別を受けてきた黒人大統領であるオバマ氏なら、米軍の基地被害に苦しむ「沖縄の人びとの心」がわかる大統領であると思う。

 しかも、今年の4月プラハで「核なき世界」を宣言した大統領である。「核なき世界」とは非戦・非武装の思想に相通ずる考え方だと思う。この大統領の魂に訴えることができれば、沖縄から日本から全ての米軍基地を撤去できるのではないだろうか。

 六つめには、アメリカの国内事情がある。オバマ大統領の来日直前に、フォートフッド米陸軍基地での陸軍少佐による銃乱射事件があり、13人が死亡し30人が負傷した。またイラク・アフガニスタン戦争の長期化に伴い。軍隊での自殺は増加傾向にある。今年だけで165人を数え、過去最高であった昨年の133人を上回ったという。今年の5月には、バグダッドで米軍兵士が、精神科医師ら5人を殺害する事件も起きている。

 これらはまさに「人間がこわれている」状況であり、このままでは戦争遂行能力も問われる状況だ。ベトナム・イラク・アフガニスタン戦争による心的外傷後ストレス障害(PTSD)も数多いとマスコミは伝える。一方国内においても、アフガン戦争に反対する集会・デモも頻繁に行われるようになり、戦争の継続も困難な状況がある。


 オバマ大統領に広島・長崎・沖縄の訪問を


 この11月、私たち「人民の力」はオバマ大統領の来日のおりには、ぜひとも広島・長崎・沖縄を訪問してほしい」と在日アメリカ大使のジョン・ルース氏にファックスを送ったが、日程不足もあり、今回は実現できなかったが、近い将来にぜひ実現してもらいたいものだ。原爆症や基地被害に苦しむ人びとを当事者であるオバマ大統領はじかに見る責任がある。その惨状を見てこそ「プラハ宣言」の信憑性も高まる。アメリカ国民が望むならば鳩山首相は真珠湾を訪問するのも必要なことだろう。

 2010年こそ、新しい「対等な日米関係」をつくるためにも、沖縄・日本から全ての米軍基地を撤去させねばならない。私自身もそのために微力であるが奮闘していく決意である。

                       (11月23日)