THE  POWER  OF  PEOPLE

 

辺野古破壊は平和の破壊だ 岩田菊二


平和創造の活動を—根気強く続けて

新しい社会主義の道を前進する


 先月は、広島にいた。5日は三次市、6日は広島平和記念公園である。人民の力の全国平和創造ヒロシマ行動の参加であった。両日とも広島は、1971年以来43年ぶりの雨であった。被爆者の「涙の雨だ」いや「怒りの雨だ」という声も聞かれたが、広島は老若男女の平和の祈りをささげる人々で、特別の想いに包まれた。世界で唯一原爆を投下されたヒロシマ、そしてナガサキは、69年たった今でも悲惨な思いや深い痛みを抱えている。

 5日の三次市では、当時16歳で被爆された向井立子さんの証言を聞く機会があった。焦土化した広島、焼け焦がれた死体、もがき苦しんで死んでいく人々、死体で埋まった川、流れていく死人、校庭で燃やされる人間の煙、子供も妊婦も動物も・・・。彼女は、その時に見た光景が、今も鮮明に残っていると話された。「人の死というものが、いかにあってはならないことか、平和の実現に貢献することが生き残った私たちの役目だ」と心を込めて話された。彼女自身も84歳、被ばく者として狭心症や脳梗塞に苦しみながら、頑張っておられる姿に心が打たれた。

 その時私は想う。平和の創造とは、命を尊び守りあう心と有り様から始まっていくのだと・・・。人の命が突然止まり終わってしまう、しかも悲惨な形で奪われていく世の中は、決して平和な社会ではない。広島、長崎の原爆も帝国日本が戦争、しかも侵略戦争という非道な道を取らなかったら、絶対に起きなかったことである。軍国主義でもなく、天皇主義でもなく人命尊重主義をとっていくという日本であったなら、日本は大きく変わっていたことは明らかだ。

 今でも日本は、その世界大戦当時の悲惨な現状が引き起こされた歴史を引きずって存在し、新たな国家主義、ナショナリズムがつくられようとしている。秘密保護法や集団的自衛権行使容認、武器輸出3原則の放棄・・・。東日本大震災や福島原発事故の被災者の現状は、平和な日本を実感するにはほど遠く過酷で苦難な生活の中におかれている。

 原発は新たに再稼働の動きとなり、危険極まりない原発を世界へも輸出しようとしている。年間3万人の自殺者、2千万人の非正規労働者、ブラック企業化する労働現場、破壊される農業、肥大化する無形企業、5兆円にものぼる防衛費予算・・・。平和を実感するどころか、平和は破壊され不幸な境遇が続いて、いつ命が、いつ生活が今以上に壊されていくのか不安で、不気味な日本の現状である。


 平和は歴史と向き合わなければ始まらない


 安倍首相は、8月6日、9日と広島、長崎の平和祈念式典で行ったあいさつの中で、「世界恒久平和の実現に力を惜しまぬことをお誓いする」と述べた。安倍首相の平和とは、人命尊重の平和ではなく、国家(天皇)主義の平和であり、権力、軍力、資力を持つ者たちの似非平和である。昨年12月安倍首相は、朝鮮半島や中国などアジアへ侵略して暴挙の限りを尽くしたA級戦犯が祭られている靖国神社へ参拝した。その時安倍首相は、「今の日本の平和と繁栄は、戦場に倒れた方たちの犠牲の上にあることを思い敬意と感謝の念を捧げるとともに、不戦の誓いを堅持していく決意を新たにしていくための参拝だ」と述べた。今年の敗戦記念日も靖国へ玉串料を奉納するなど、その姿勢は何ら変わってはいない。なんと恥ずかしく、愚かな行為と言い訳か。前述したように、今の日本は決して平和ではない。

 しかも今の日本は、諸外国に対して平和を奪ってきた。

 たとえば1910年からの日韓併合時代に朝鮮国内で民族の主体性と尊厳、生命、財産、文化、言語などを奪い尽くし民族抹殺の行為を行ってきた。朝鮮半島を侵略し朝鮮半島の人々を殺し、朝鮮半島の人々の平和と繁栄を奪ったのは日本自身であり、その犠牲となった人々の尊い命、犠牲となった人々の痛みや苦しみを考えない、語らない、謝らない平和など、真の平和をつくろうとしている姿勢ではない。安倍首相は、抗議する中国や韓国に対して、「中国、韓国の人々を傷つけるつもりは全くない。中国や、韓国に対して敬意をもって友好関係を築いていきたい」と述べた。あえて言うことでもないが、「友好関係を築いていきたい」と考えるならば、日本が韓国朝鮮、中国に行った数々の蛮行、平和剥奪行為の「謝罪と償い」から始めていかなければならない。偏重する歴史教科書、竹島(独島)をめぐる韓国との軋轢、北朝鮮への経済制裁や関係悪化、さらに朝鮮高校無償化排除、聞くに耐えないヘイトスピーチなどの暴言等々。

 日本が平和な時代を作っていくためには、ヒロシマやナガサキなど、平和の破壊を引き起こした侵略戦争と植民地支配の「反省・謝罪・償い」を行うことから始まっていくのだと私は考える。


 「命の海—辺野古」破壊は、「平和の破壊」だ


 そして再びというか新たにというか、平和の破壊行為が沖縄県名護市辺野古で始まった。15年以上に及ぶ米軍普天間飛行場移設は、住民抜きの日米協議や政府、沖縄側との交渉を通じて、県外や県内など紆余曲折しながら、辺野古が候補地として集約されてきた。

沖縄防衛局の手によって、先月14日からブイやフロートの設置が始まり、18日には、名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事に向け、海底のボーリング調査に着手した。

 普天間基地の移設問題は、新たな局面を迎え海上ではボートやカヌーを出して工事の中止を訴え、キャンプ・シュワブのゲート前では、基地建設に抗議する行動が、非暴力で続けられている。

 人民の力東海も微力ながら、先月19日「辺野古の新基地建設に抗議する」街宣行動を行った。また、杉下芳松さん(8月26日〜9月4日)と井下外茂さん(8月26日〜29日)が現地行動に参加した。

 辺野古・大浦湾沿岸域には多くの種類のサンゴが生息し、サンゴの大群落はクマノミなどサンゴ礁生物のオアシスになっている。砂地には絶滅の恐れが極めて高いジュゴンの好物の海草類が藻場を作り、周辺ではジュゴンが先月も何度も確認されている。辺野古沖は、沖縄県が「自然環境の厳選な保護を図る海域」、環境省が「日本の重要湿地500」に指定しているという。また、日米の自然保護団体などが工事の中止を求める「沖縄ジュゴン訴訟」は、米サンフランシスコ連邦地裁が新たな申し立てを受理し、2012年に休止した訴訟が再開されたという。那覇市議会は先月22日、政府に対し、名護市辺野古への基地建設工事の即時中止と移設断念を求める意見書を賛成多数で可決した。沖縄県議会も今月3日、臨時会を開き海底ボーリング調査に抗議し、新基地建設工事の即時中止を求める意見書を賛成多数で可決した。

 自然豊かな辺野古・大浦湾に沖縄防衛局は、ボーリング調査を開始して、傷つけている。自然豊かな海に生まれ、営々と生きてきた地元沖縄の人たちは、まさにこのボーリング調査は、自分の体自身が痛めつけられ、えぐられている想いでいっぱいだろう。辺野古の豊かな自然と生態系を守る、そのことによって、同時に持続可能な生活が保障され、平和という命の尊厳が守られるのだと闘いつづけているのだ。


 命の尊さを心に抱いて「平和の創造の道」を歩む


 人殺しのための新基地建設は、大量の土砂埋め立てによって、私たちの想像以上の直接的、間接的な海・山の破壊に加え、新たな基地からの有害物質による海域汚染、軍艦や軍用機による事故などの不安と騒音公害をさらにもたらすことになり、決して沖縄の基地負担軽減とはならない。

 第二次世界大戦において、日本で唯一地上戦が行われた沖縄、その沖縄戦において住民4人に1人が死亡するという悲惨な体険をした沖縄、米兵による少女暴行事件など強姦事件や窃盗事件に苦しめられている沖縄、米軍機、ヘリコプター事故による被害をこの間受けてきた沖縄。ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争に出撃し、多くの人々を殺傷してきた沖縄米軍。この沖縄で人殺しのための、総工費4000億円の新たに始まった辺野古基地建設。原発事故に苦しんでいる福島の人たちの苦難な生活をよそに・・・。

 真の「平和」とは、命を尊ぶ思想や姿勢から始まっていく。国籍や民族、宗教や門地、性別などを問わない、生命の大切さからつくられていく。ヒロシマ、ナガサキの被爆者たちの心は、それを教えている。

 私たちは、人の命を守り育てる人々と平和を創造するために、粘り強く、根気強く闘いながら新しい社会主義に向かって歩んでいく。

(9月4日)