THE  POWER  OF  PEOPLE

 

社会主義考132アメリカ隷従を見つめるところから常岡雅雄


 国を問い自分を問うて

 国の「かたちと心」の脱皮へ


 今年もまた12月1日号が巡ってきました。毎月循環的に襲来する原稿期限に追われる焦りとストレス、無から搾りだす辛苦の繰りかえしである「巻頭言社会主義考」も、今年はこれが最後となりました。


 寒風に抗して闘う鉄道労働者韓国と日本


 いま、11月26日朝のこの瞬間に、韓国では、鉄道労組が早朝4時から全国ストライキに入っています。韓国労働運動のナショナルセンター・民主労総では、毎年11月初め、首都ソウルをはじめ主要都市で幾十万の労働者が街頭にくりだして堂々と多彩に労働者大会をおこないます。それは、先進闘士たちの苦渋と血と汗と死によって彩られた苦難の実践の結実として「御用労働運動からの脱皮と民主化」をかちとっていらい恒例となってきました。私たちは今年も代表団を送りました。その際に、韓国鉄道労組の全国本部とソウル本部を連帯訪問しました。

 その韓国鉄道労組が「民営化を許さない!」「団体交渉に応じよ!」「大量解雇を撤回し原職に復帰させよ!」「非正規労働者を正規労働者にせよ!」「鉄道に社会性の確立を!」などを主張し無期限ストライキに突入しているのです。いま、巻頭言執筆に先立って、この闘う韓国鉄道労組に「連帯と激励のメッセージ」を送りました。

 日本では、中曽根政権が強行した「国鉄の分割民営化」いらい23年を越えて長期闘争化してきた「国鉄労働者1047名の解雇撤回闘争」が、歴史的な政権交代によって登場した鳩山政権に「解決への政治決断」をもとめる年末闘争を進めています。今日夕刻には、国労36闘争団などの「四者・四団体」が、民主党幹事長時代の鳩山言明「24年を越させない」の実行をもとめて、国会近接の星陵会館に全国結集します。国会前では、かつて国鉄鶴見の列車機関士であった佐久間忠夫さんが、1047名解雇者中最高齢の77歳にもかかわらず敢然決起して解雇撤回闘争の最先端に立ち、真冬の首都ビル街の冷え込みと寒風にさらされながらハンスト座り込み闘争を敢行しておられます。それは、ひとしく解雇撤回を鳩山政権に求めて11月1日から「国会周辺54日連続マラソン」をくりひろげておられる中野勇人さん(47、北見闘争団)の不屈の献身と闘いへの佐久間さんの心をこめた渾身の階級的連帯闘争でもあります。私たち「人民の力」の同志たちも、遠く函館闘争団からも宮崎闘争団からも、そして国労長野からも、更には訪韓連帯行動から帰ってきたばかりの人力代表団からも、この国会前国鉄闘争の一端に加わっています。


 さて、民主党を主軸とした民主・社民・国民新の三党連立政権である鳩山政権は、戦後日本を牛耳って日本の「国のかたち」と「国のこころ」を「アメリカ隷従へ」と仕立てあげてきた「保守反動の政権」にかわる「革新進歩の政権」として大きな期待と歓迎を受けて登場してきました。

 難関極まりない「沖縄の普天間基地移転」問題や画期的な「事業仕分け」問題をはじめとする鳩山政権の政治展開を見つめつつ、今年の「巻頭言社会主義考」の締め括りとして、あらためて、これからの日本の進路について考えてみたいと思います。鳩山政権とは日本政治の歴史上にどのような意味をもつのか「鳩山政権の政治史的意味」に頭をひねりつつ、そもそも「今日の日本とは一体何なのか」という「日本の構造的意味」について考えてみたいと思います。


 自立していない日本アメリカ隷従の精神と構造


 それは、21世紀初頭の現在の日本にまで通じていることであり、そして、その度合いを一段と増幅深化させていることでありますが、戦後日本の「最大の過ち」、或いは、言い換えれば「構造的な禍根」は、戦後日本が「アメリカに隷従する国になってしまってきた」ことであります。

 それは、もちろん、日本から求めてそうなったのではないでしょう。何事もなく自然の成り行きによって、そうなったのでもないでしょう。帝国主義日本が帝国主義アメリカに「軍事的に敗北する」ことによってそうなったのであります。まさに、アメリカの軍事力という「武力によってそうなった」のであります。

 この戦後日本の「構造的な禍根」からの「自己脱皮をとげる」ことが、戦後日本の最大の課題でありました。それは、戦後64年を経た現在もなお直面しつづけている「根源的な課題」なのであります。明治以来の帝国主義日本がくりひろげたアジア・太平洋侵略の帰結として帝国主義アメリカに完膚なきまでに敗北して、その帝国主義アメリカに軍事占領されてしまったことに、根源的な原因があります。増幅深化しつつ今日につながる「戦後日本という国家」の「国のかたちと心」は、ここにこそ根源を求められなければならないのだと思います。

 「帝国主義アメリカに隷従する国家になってしまった」と言うとき、それは戦争の勝者アメリカの圧倒的軍事力によって全面武装解除されてしまって、その「軍事力の前」に「従属せざるをえなくなった」ということだけを指しているのではありません。さらに、政治としても、社会としても、経済としても、思想としても、精神としても、アメリカに従属する国になってきたのです。「軍事力だけ」ではなく、国民一人ひとりの「精神に至る」までアメリカに従属する国になってしまったことを意味させて、僕は「隷従」という言葉をつかってきました。

 例えば、(一)普天間基地をはじめ日本最大の軍事基地化された沖縄の悲劇、(二)ブッシュの戦争政治に呼応したイラク・アフガン派兵の戦争国家化、(三)違憲の自衛隊の存在と展開、(四)漫画的で悲劇的でありながら日本国家論の思想的人間的社会的な核心をなす戦後天皇制、(五)戦前から戦後今日に至るまで日本に構造的に巣食いながら日本社会を腐蝕させている官僚制、(六)自公政権に至る保守政界の腐敗堕落、(七)近代国家として恥ずべき格差社会、(八)資本主義日本の構造的生命線を担わされているワーキングプア労働者層の広汎な創出、(九)年間3万人をこえて生み出されつづける人間悲劇の窮極たる自殺者、(十)日本社会の隅々にまで張りめぐらされ日本人が生れ落ちた瞬間から生涯にわたって晒されつづける非人間的な徹底競争主義、(十一)アメリカ隷従という根本的なことから国民の目を常にそらさせ続けてきた公認メディアの精神的思想的な堕落と腐敗、(十二)国家の根本問題に当たっては判断回避してしまった最高裁はじめ高等司法の哀れむべき堕落と腐敗これらは「矛盾の坩堝日本」のほんの一部にしかすぎませんが、これらの全ての根源は、まさに「アメリカに隷従した日本」という戦後日本の「最大の禍根」にこそあるのだと思います。

 崩壊した自公政権にいたる戦後保守勢力は、帝国主義アメリカの軍事占領に支えられて日本政治の実権を握ってきました。そして、「嘘と欺瞞と詭弁の政治」の限りを尽くして「アメリカに隷従する国」へと戦後日本をみちびき構造化させてきました。この戦後保守反動勢力の「嘘と欺瞞と詭弁の政治」にこそ、この「最大の禍根」の「主体的な根源」があるのではないでしょうか。公認のメディア界がこの米国隷従化の煽動者として振舞いつづけてきました。国民の一人ひとりが、この「嘘と欺瞞と詭弁」の「政治と煽動の洪水」に慣らされ信じこんできました。したがって、「国民一人ひとり」の「思想的精神的な麻痺と怠慢と腐敗」にもまた、「主体的な根源」があると言わなければならないと思います。

 その「嘘と欺瞞と詭弁の政治と煽動」の最高傑作こそが「日米同盟」論ではないでしょうか。「隷従しているもの」が「同盟の幻想」に浸ってやまないアメリカの帝国主義者たちは内心の高笑いが止まらないのではないでしょうか。


 自分自身を問うことから始めよう


 いま、鳩山政権が直面して辛苦している普天間問題とは、その根源はこの「アメリカ隷従の日本」という「戦後日本の最大の禍根」の「巨大な壁」なのではないでしょうか。「県外・国外移設」をマニフェストした鳩山政権が問われなければならないのは当然であります。しかし、「政権を問うだけ」=「政府に預けてしまうだけ」では済まないのではないでしょうか。「アメリカ隷従日本」として戦後保守勢力が築きあげてきた「戦後日本の構造と精神の全体」が、従って、突き詰めれば「国民一人ひとり」が「自分自身の問題」として問われているのではないでしょうか。

 「革新進歩の政府」と「国民の一人ひとり」が「総がかり」で「アメリカ隷従のかたちと心に成り果ててしまってきた日本」からの「脱皮の道」を模索して行かなければならないのではないでしょうか。(09・11・26)